まるで新品の電球のように光った人間が一人。空気に触れておぎゃあと叫びをあげてからいくつ夜が更けてきたことか。
不思議なことに日が過ぎていくほどそれまでではあり得なかった現象を当たり前のように起こす人間は増えていく。
そしてついに人間は残り2割を残し、その現象を身に付けていった。
後にその現象を人間は個性と呼ぶ。
個性を身に付けると言っても身に付け方は人それぞれ。産まれた途端に発現するものや、徐々に発現させるもの。やはりそこも踏まえて個性というのだろうか。
「君はどう思うかね?勇気ある少年よ。」
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緑谷出久は考える。
自分の個性の反動でボロボロになってしまった指はこれから他の個性把握テストを行うにはあまりにも痛く、大きなハンデとなることはわかっていた。
それにも関わらず個性を発動させてしまったのは、焦りからきていたものだったのだろうか。
悩んでいても仕方がない。何か策を探さなければ、策を、何か策は……
そうして脳を働かせている間に隣に立っていた中性的な顔立ちをした僕と同じ新入生は、痛みをほんの少しだけ忘れさせる程に僕を驚かしてみせた。
頭に生えた耳に背中な方で揺れている尻尾、顔の特徴からして、この子の個性は"猫"で、間違いないだろう。
性別は女の子だろうか?
少し緊張しながらも彼女の目線を追ってみるが、彼女は別に僕のボロボロに折れた指を心配して話かけた訳ではなかったらしい。
「ふむ、解答はなしか。まあ私の中でもう既に解は存在している。君が態々口を動かす必要はない。そう、私が君に話しかけたのはもっと他の、ああ、君は私が語り終わるまで口を開く手間をとる必要はないよ。ではさっそく、ヒトの本能に従って、私の頭の中を支配する疑問を一つ、ぶつけさせてもらおうとしよう……おっと、失礼。自分の名も語らぬままに疑問を君にぶつけるのはいささか失礼であったな。」
彼女が口を開いて数十秒。
ここまで聞いて気付く。
自分がもう一つのピンチを迎えているということに。
「だがしかし、あの教師はおっしゃっていた。ああ、アイザワショウタと名乗っていたか。ならば私はアイザワ先生と尊敬の念を込めて呼ぶべきであろう。相澤先生は先程、こうおっしゃっていた。"お友達ごっこをしたいなら余所へ行け"と。だから私がきちんとした苗字と名前を君に披露する必要はない。私のことはジャッジと呼んでくれ。それはもう、まるで愛おしい猫を愛でるときと同じように、親しみを込めて……な。ああ、君の名は知っているよ。ミドリヤ、だろう?名は先程知ったが数ヶ月前にテレビでバクゴウとともに映っていたのを見たことがあるよ。」
一方的に話を進められ、困惑する。
「さて、そろそろ本題に入ろうとしよう。個性というものは人それぞれで種類が異なる。ああ、まあ、当たり前のことだよ。そんなこと、この世界の残り2割……無個性の人間だって知っている。しかし、な、君は知っているか?個性の種類がどんなに違くても、"高校生にもなれば使いこなせる"という点では、皆共通している、という事に。ヒーローを目指す少年少女なら尚更だ……君は十歳にも満たない子供のように、その個性を使いこなせていない。個性というものは、そこに個人差はあるが、自然と身体に馴染むように、使いこなせるようになってゆくものだ。個性は自身の身体の一部。意識せずとも、身長が伸びるのと同じように、体重が重くなるのと同じように、個性も成長していくのだよ。だから君は私からみて不思議で仕方がなくてな。君の個性はこの中の誰よりも飛び抜けている。まるで"今まで他の人間が使っていた"みたいにな。だが、今の君をみて、私は思ったよ。まるで君は"身体が個性に追いついていない"ようだ、とね。個性は身体と共に成長する。なのに身体が個性に追いついてないというのはおかしいことだろう?」
彼女の言葉は遠回りしているみたいに、簡潔に物事を伝えようとしない。
だが、ここまで彼女が語った言葉だけでも僕の心に焦りをもたらすには十分であった。
「……つまり、だ。私が聞きたいことは一つ。その個性、"誰から貰った"ものだ?」
「おい、お前ら、話している暇があったらさっさと移動しろ、俺はさっきもいったはずだ。時間は有限。そして此処はお友達ごっこをする場所じゃない、とな」
僕の心臓は爆発寸前。
相澤先生がきてくれなかったら、さらに追い詰められていたことだろう。
「時間は有限。その通り。しかし、ミドリヤ君に非はない。この私が勝手にミドリヤ君に語りかけていたのだから。事実、彼は先程から一言も言葉を発していない。ああ先程というのは私が話し掛けてからという意味であって、決して5秒前とか呼吸を1つする前とかそんなに短い期間ではなく……つまりこれはお友達ごっこではないということです、相澤先生。」
「いいから移動しろ」
先生の言葉を聞いて隣を見てみれば、もうすでに彼女の姿は見えなくなっていた。
雄英生になって登校初日。
もう既に沢山のピンチが緑谷を襲っていた
緑谷出久は考える。そのおかげで少しは指の痛みを忘れていたのかもしれない。
だがしかし、考えても考えても、除籍を回避する策など一つも出てきてくれないし、ジャッジと名乗った同級生の言葉に返す、一言ですら彼は思い付くことがないのであった。
ジャッジ君は語彙力溢れた哲学的な猫なので、台詞はとても長いです。
だがしかし、第1話にてもう既に問題発生。
ジャッジ君の語彙力溢れた台詞を日常で『やばい』とか『尊い』が殆どをしめる私が表現できるかが心配だ……