薫「コイツ、イタチの癖に頭が良いな。しかもイケメン」
タギツヒメに思わぬ再会してから三ヶ月経った。
神奈川の鎌倉市にある『守護聖地』と書かれた看板がある二階建ての建物。
その中でカウンター席やレストランのように並んでいる座席。壁にはクラシックカーの壁画や動物の写真が飾られている。
ここはイグナイト達が働いている喫茶店で、子供からお年寄りまで気軽に入りやすいという評判を得ている。便利屋稼業もやっており、働きが良い事から依頼者が殺到してるという。
ここのマスターが姿を見せるの稀であるらしい。
「俺達がいない間に、あの事件が起きてたって聞かされた日を思い出すな~」
「相模湾岸大災厄と最近起きた鎌倉特別危険廃棄物漏出問題だな。あんな凄い事が起きてるって教えてくれれば俺達は直ぐ帰国したのに」
カウンター席にはイグナイトとジェットが座っていた。
相模湾岸大災厄と鎌倉特別危険廃棄物漏出問題は、彼らが倒したとされた筈のタギツヒメが関わっている。しかし、彼女がどのような方法で復活したのか未だ解らない。
海外で修行してる間に知っておけば助けに行けたのにと二人はため息をつく。
「アイツなりの配慮だよ。お前達がちゃんと集中出来るようにな」
暖簾がかかった台所から、コーヒーが入ったカップを持った青のポニーテールの少年が出て来た。
彼は烏天狗の荒魂、ディープハリケーン。守護聖地のマスター……ではなく、マスターに店番を頼まれた店員。
脚が速い上に空も飛べ、S装備のコンテナを軽く抜き去る事も容易いが、イグナイト達と外へ出て仕事が出来なくて恋しく感じてるものの、それをコーヒーを淹れるのに集中した結果、客から良い評判を得る位の腕前を手に入れた。
「それに、お前等はアイツが選んだ『切り札』だからな」
彼はイグナイトとジェットにカップを置く。
「配慮か。確かに、俺達がそういった事件を耳にしたら修行どころじゃ無くなるからな」
「んで、アイツは今どうしてる?」
ジェットはディープの言葉に納得し、イグナイトは『アイツ』はどうしてるかを尋ねる。
「お前等が帰国する前に海外へ行ったよ」
「という事は、見つからなかったって事だな」
やっぱりなため息をついてコーヒーを口にするジェット。
自分達がここにいない間に見つかると信じて修行していたが、その結果を聞いて期待が外れたからだ。
するとイグナイトは何かを思い出したのか、ディープにこう尋ねる。
「そういえば、人間達がノロを用いた違法な研究を行ってるって噂を聞いたんだが……」
「アイツが調べたモンによれば、その噂は本当らしい。折神家と鎌府女学院が関わってるとの事だ」
「ノロは珠鋼を精製する時に出ちゃった不純物で負の神性があるからな。そういった研究を行っていてもおかしくないしな」
ディープは新聞をカウンターに出し、ジェットはテレビを点ける。
新聞では鎌倉特別危険廃棄物漏出問題の記事が取り上げられ、その関係者の証人喚問を受けている様子が放映されているニュース番組がテレビで映る。肝心なノロを用いた研究だけが記事やテレビで取り上げられていない。
とはいえ、刀使に対する世間からの風当たりが強くなったのが現状である。
「でもまぁ、改変前よりマシになってるってアイツが言ってたぜ」
テレビに目を向けてコーヒーを飲むジェット。
「とはいえ、刀使の出撃数が多いのに変わり無いんだよな。この現状で俺達が出来る事といえば、ご近所から全国で困った人達を助ける事だ」
「その通りだな。んじゃ、のんびりコーヒーを飲んでる所で悪いが、仕事だ」
ディープは書類を取り出し、イグナイトとジェットの手元に置く。
彼が置いたのは、この喫茶店の近所に住んでいる小学生の男の子からの依頼である。
「小学生から? 確かに守護聖地は便利屋稼業をやってるからどんな依頼も引き受けるが……」
依頼書を見て困惑するような表情になるジェット。
「ディープ、この依頼者の両親は『守護聖地』について知ってるのか?」
「知らないだろうな。俺達の活動を耳にして、親に言わず調べたんだろう。今日来るから、ソイツの話を聞けば解る」
ジェットはもう一度、依頼書をじっくり読む。
相手は小学生で、その依頼内容で引き受けるかどうかの悩み所である。
ドアが開くと同時に鈴が鳴り、イグナイト達はそこに目をやる。入り口には、黒のランドセルを背負った男の子が立っていた。
「ご到着だ。君が、この守護聖地に依頼書を送ったんだね?」
「はい……」
ディープは男の子に尋ねると、元気なさげな返事が返って来る。
「そうか。じゃあ、そこの席に掛けようか」
ディープは右手を近くの席に指すと、男の子はイグナイトとジェットと向かい合って座る。
書類を手に持ち、ジェットは彼と書類を交互に見る。
「えっと、確かに君は、この近くに住んでいるツトム君だっけ?」
「はい……」
「では、ツトム君。この依頼書に書かれている依頼は、『落ちたラジコンヘリを探してほしい』で良いんだよね?」
「はい……」
ツトムはジェットの質問に対し、返事をする。
だが、ツトムの声は何だか暗いとディープは気付く。
「そのラジコンヘリっていうのは、具体的にはどんな特徴かな?」
「……」
イグナイトは落ちたラジコンヘリについて尋ねると、ツトムは黙ってしまう。これに二人は、少し困惑したような顔になる。
やれやれと、ディープはツトムにこう言った。
「ツトム君、どんな特徴か解らないと、お兄さん達は見つけられず困ってしまうんだ。大丈夫、ここは僕達以外の人達はいない。それに、この事を誰にも言わないから」
「……」
言ったら拙いかもしれないが、特徴を教えないと探しようが無い。
ツトムを意を決し、顔を上げる。
「小さくて赤いヘリコプターです」
「成る程。小さくて赤いとなると、足元に気を付けなきゃだな」
ツトムの言葉に冷静に分析し、ジェットは次の質問をしようとする。
「では、次の質問。この守護聖地は喫茶店としての仕事と困った人を助ける仕事をしているんだ。それを聞いてここへ来る人達が多い。君のお父さんとお母さんは、ツトム君がここに依頼をしている事を知っているかな?」
尋ねられたツトムは再び俯き、黙り込んでしまう。
ディープが言ってた事が確信になったとジェットは彼を見る。
「守護聖地は依頼されたらちゃんとやるんだけど、君はまだ小学生だ。親と同伴でないと、引き受けるのが難しくなる。君の依頼によっては、お金が掛かる時があるんだ。僕達も出来るなら君の頼みを引き受けたいが……」
「お父さんとお母さんには言わないでください!!」
ジェットが説明している途中、ツトムは立ち上がって声を上げてしまう。
「あのヘリコプターは、お父さんとお母さんに僕にくれた誕生日プレゼントなんです。もし、失くしたって知ったら僕……」
泣きそうな顔になるツトムに、彼は困惑してしまう。
守護聖地について説明しているだけでこんな事になるとは思ってなかったのだろう。
するとイグナイトは、ツトムの肩を優しく叩く。
「親から貰ったプレゼントを失くしたら、悲しんじゃうって思うよね。その気持ちは解るよ」
「え?」
「解った。君の依頼、無料で引き受けるよ!」
「おい、イグナイト……」
イグナイトの言葉でツトムは驚くような顔になり、ジェットは更に困惑し、ディープは「アイツらしいな」と微笑む。
「その代わり、依頼が終わったら俺達と約束して欲しい事があるんだ。それは聞けるかな?」
「約束して欲しい事?」
何を約束して欲しいんだろうとツトムは首を傾げる。
「その仕事、僕も混ぜてくれ!」
すると扉が開く音と共に声がし、イグナイト達はそこに向くと……
「困っている少年を助ける男、エイティバレット!」
某蜘蛛男のようなセリフとポーズを決めるエイティの姿が見えた。
これに苦笑いを浮かべるツトムとディープ、ジェットは呆れるようにため息をつく。
「話しは聞かせてもらったよ。丁度僕、依頼の仕事が終わったから、参加させてもらうよ!」
「そりゃ良いけど、女の子とのデートは?」
「……」
イグナイトの質問でエイティは急に蹲る。
ツトムが来る前、彼は好きになった女性とデートへ誘おうと嬉しそうに外出した。
ここへ戻り、蹲っている彼を見て失敗したんだとジェットは察する。
「すまない! すまない! 空気読まず聞いてごめんな!」
そんな彼に青ざめて慌てるように謝罪するイグナイト。
「良いんだ……僕は元から女に恵まれないダメ男さ。デートの誘おうとしたら断られた。その理由が彼氏とホテルに行くとかなんとか……」
「悪かったよエイティ! 折角、俺達の仕事を手伝おうとここへ戻って来たってのにタブーな質問しちまってよぉ! 今度何か詫びをするから。そうだ! 合コンのセッティングしておいてやるからさ~!」
「合コン……うぅ……」
「うわぁぁぁぁ!! やっちまったぁぁぁ! 更に傷を広げちまったぁぁぁぁ!」
蹲って落ち込むだけでなく、泣きそうになるエイティにイグナイトは頭を抱えて叫ぶ。
エイティの失恋の回数は絶賛更新中である。その中で彼にとってトラウマである『合コン』という地雷を踏んでしまったからだ。
そんな光景にディープは苦笑いをし、ジェットは呆れる。
「ディープ、ジェット! 援護を、援護を頼む!」
「こうなったエイティは面倒くさくなりそうだからな」
「イグナイト、言葉はちゃんと選べよ?」
ジェットとディープはイグナイトと共に根気強くエイティを励ました。そんな光景に、ツトムは少しだけ笑みを浮かべる。
彼らを見て緊張が和らいだからだ。
それから数分後、何とか立ち直ったエイティは、ツトムにラジコンヘリについて尋ねた。
「それで、そのラジコンヘリが落ちた日にちと場所って覚えてるかな?」
「三日前です。場所は案内をします」
こうしてイグナイトとジェットとエイティは、ツトムと共にラジコンヘリが落下した場所へ向かう。
「ここかぁ……」
「成る程な。道理で所々で渋る訳だ」
「これは、かなり掛かりそうだね~」
だだっ広い公園の雑木林前に立っているイグナイト達。
この雑木林の中にツトムのラジコンヘリが落ちてしまったのだ。
「ツトム君、親に言って欲しくない理由はこれかな?」
エイティの質問にツトムは頷く。
ここにラジコンヘリが落ちた事を親に話せば、どういう顔をするか解っているからだ。
そんな彼の為に何としてでも見つけようとイグナイトは雑木林を見る。
「行こう。例え荒魂が来ようと刀使が来ようと、やるんだ!」
「そうだな。俺達は依頼人の要望にちゃんと応えないとな」
「ツトム君、必ずラジコンヘリを見つけるから、ここで待ってるんだよ!」
イグナイト達は、ツトムを安全な場所へ移動するように言い、雑木林へ入る。
そこから少し進んだ先の広い場所に止まり、互いに顔を合わせる。
「ツトム君が言ってたラジコンヘリは小さくて赤い。目立つかもしれないが、足元には注意した方が良いぞ」
「解った。ラジコンヘリを見つけた時と荒魂に遭遇した時の為に、トランシーバーを持ってきたよ」
エイティは二つのトランシーバーを取り出し、イグナイトとジェットに渡す。
「本当なら荒魂は刀使に任せるべきだけど、来るまで時間が掛かる。見つけ次第、連絡してから戦闘に入ってね」
「あぁ」
「了解だ」
イグナイト達はそれぞれ散らばり、ラジコンヘリの捜索を始めるのであった。
西の方へ行ったエイティは、そこで手当たり次第に探すが、見つからなかった。
それらしき色の物を見つけても全く違う物だったりする。
現在、ラジコンヘリが見つからず近くの木に寄りかかりながら座って休憩している。
彼の隣には赤色のハンカチやバッグ、使い捨てで使用済みの避妊具等が置かれている。
「はぁ……見つからない。それらしき物を見つけても全くの別物。中にはとんでもない物もあるし……」
隣に置いてある落とし物に目をやり、溜息をつくエイティ。
「特に避妊具はちゃんと持ち帰ってよ! 僕がこれ持って捨てに行こうとするとあらぬ誤解を受けるから! 万年失恋男でセ○レがいない僕が、こんなの持ってたってしょうがないじゃない! つーか、コレの持ち主のカップルは何やってるんだよ!!」
避妊具を見て悲痛というか色んな心の叫びが混じったようなツッコミをする。
これをもって捨てに行く時にイグナイトとジェットや刀使に遭遇したら、あらぬ誤解を受ける事間違いなし。特にイグナイト達から哀れな目で見られ、刀使からドン引きされてしまう。
何とかしなければと、エイティは考えるのだった。
(公園から出て、トイレ行くフリしてゴミ箱へ捨てに行くのは良いけど、その途中で刀使と合っちゃうし。逆にコレを放置して赤色のハンカチとかバッグとかノート等の落とし物を交番に届ける。でも、コレ見つけた人達の顔が浮かんじゃうし……どうすれば……)
失恋記録更新中の彼にとって、避妊具を扱うような事には縁遠いチェリーボーイである事から悩んでしまうのも無理もない。その上、この避妊具が切っ掛けで、ここが立ち入り禁止エリアに指定されてしまう。
このままでは、ラジコンヘリの捜索からイグナイト達や刀使達を回避して避妊具を処理する方法に時間を使ってしまう。
そう焦り始める寸前、何か思いついたように木の枝の葉っぱを見る。
これは使えるかもしれないと、不敵な笑みを浮かべる。
「そうと決まれば、早速始めるしかない!」
何かを意気込むように寄り掛かっていた木によじ登るのであった。
イグナイトはどうしているかというと……
「ホント見つからないな」
「誰かに拾われたり、荒魂に喰われたんじゃねぇの? ってオイ! 俺達は散らばって探しに行ったんじゃなかったのかよ!?」
いつの間に自分が探している場所にいたイグナイトにツッコむジェット。
「確かに別々になったんだが、俺の行った場所がハズレだったからこっちに来た」
「偶然なのか……狙っているのか……」
前者か後者か解らず、ジェットは呆れるように片手で頭を抑える。
「赤くて小さいラジコンヘリだろ? それらしき色と形状を見つけると別物だったりするんだよな~。ラジコンヘリの特徴らしき物が視界に入った時は『マジでぇ!?』って感じで向かったら違ったりした時、テンション下がるんだよなぁ~」
「確かに、ここの雑木林で落とし物をするヤツがいるな。殆ど赤いヤツだが、何でだ?」
「今はハズレくじを引いた気分だぜ~」
そう言ってジャケットを開いてから少し上げると、消火器や郵便ポストといった大きな物と特撮のソフビや変身ベルト等の玩具、そしてドレスやパーカー等といった布類が地面に落ちる。しかも殆ど赤。
イグナイトが別の所で見つけた落とし物である。
それを見てジェットは真顔となり……
「何でこの雑木林に落とし物が沢山あるんだぁぁぁぁぁぁ!?」
というツッコミのような感じで叫んだ。
「つーかポストと消火器は無理があるだろうが! お前のジャケットは一体どうなってるんだ!?」
「四次元空間に繋がってたりするかもしれないからな~。沢山出てきた落とし物に筋は通るだろ?」
「何処の猫型ロボットだよ、お前は!?」
そんな漫才みたいなやり取りをしていると、茂みが揺れる音がし、二人はそこへ振り向く。
荒魂の可能性があるかもしれないと、構える。
その茂みから出てきたのは、赤と白を基調とした学生服姿の少女と青と白を基調とした学生服の少女だった。
二人の少女は、御刀を装備している。
「あれ? 豪炎寺君と河原君」
「何だ、可奈美か。荒魂かと思って構えちったよ」
イグナイトとジェットは、安心したように構えを解く。
赤白の学生服を着た彼女の名は衛藤可奈美。
伍箇伝の一つである美濃関学院の中等部二年生で、御刀の千鳥を持つ柳生新陰流の剣術を使う刀使。
誰でも親しみやすい位に明るいが、剣術の事になると熱くなる位の剣術オタクで、現実と夢でも鍛練に余念がない。その為、他の刀使より実力が高いらしい。
青白の学生服を着た少女の名は糸見沙耶香。
伍箇伝の一つである鎌府女学院の中等部一年生で、御刀の妙法村正に選ばれた小野派一刀流を使う刀使。
大人しい感じで任務に忠実であるものの、他者とのコミュニケーションが苦手であったが、可奈美達の出会いで自我が芽生える。
そのせいか、最近では旦那と良い感じになっている鎌府女学院の学長に対し、殺意を抱いている。
二人は、守護聖地の事とイグナイト達が荒魂である事を知っている。
「こんな所で何してるの? というか……」
「木の近くにある物、殆ど赤……」
イグナイトのジャケットから出た多くの落とし物を見て少し引き攣っている可奈美と無表情の沙耶香。
雑木林でこれだけの落とし物が多く出れば引いてしまうだろう。
「探し物をしているんだ。殆どこれ、ハズレだ」
「豪炎寺君達は何を探してるの?」
「大したものじゃないぜ。でも、ソイツにとって物凄く大事な宝物だ」
「宝物……」
ジェットは後ろを振り向くと、落とし物の中から出たと思われる赤のパンティを持っている沙耶香に驚く。
布地が狭い感じから勝負下着と思われる。
「そういや、布切れかと思って拾ったんだった」
「形からしてこれが何なのか解るだろうが!」
ジェットはイグナイトにツッコミを入れ、可奈美は遠い目で赤のパンティを見る。
「いや、ホントに布切れに見えたんだって。まさかパンツだとは思わなかったぜ。また間違えるかと思って回収した」
「お前、あらぬ誤解を生むぞ」
そう言ってイグナイトにジト目で見る。
間違えてしまうとはいえ、これを拾って歩けば他の者から盗んだと勘違いされてしまうだろう。
「これ……股の部分が濡れてるような痕が……」
「えっ!?」
「何ぃ!?」
イグナイトとジェットは驚愕しながら沙耶香の方に向く。
「沙耶香ちゃん、そこに気付いたんだ……」
「可奈美、どうして?」
「えっとぉ……」
沙耶香に尋ねられ、可奈美は顔を赤くなる。
純粋で無垢な彼女にこんな事を聞かれたらどう答えれば良いか解らないからだ。しかも可奈美は、そういう面で敏感なお年頃である。
「女の子が一人で慰めていたか、カップルがここで盛ってたんじゃないの?」
「ご、豪炎寺君!?」
「盛ってる? 何が?」
イグナイトの言葉で沙耶香は首を傾げ、可奈美は驚く。
「要するに、ここでカップルが
ジェットは背後から彼の脳天に踵落としを叩き込む。喰らったイグナイトは、そのまま白目向いて気絶する。
そういった話題に無縁な沙耶香にとんでもない事を言ったのだから。
「可奈美、盛ってるって何?」
「こ、今度教えるね!」
沙耶香は疑問を抱きながらもパンティを置き、今度は赤い槍を拾う。
どう見ても必ず心臓を穿つ事が出来たり、投擲武器として物凄い威力を持ってそうな形である。
「これ……」
「使いこなせば強力な武器になるんだよな~。何でこんな所にあるか謎だが……」
懐疑的な目で赤い槍を見るジェット。
とんでもない位の得物を何で雑木林にあるのかと疑問に思ってるからだ。
すると沙耶香は、ジェットの言葉に何か思い出す。
「さっき……青い服を着た男の人が、赤い槍を知らないかって……」
「ソイツが持ち主だな。この槍はここに放置した方が良いぞ」
「でも下手したら……その人……死ぬ」
「……何らかの方法で自害させられそうだな。コイツは交番に届けるとしよう」
沙耶香は頷き、赤い槍を置く。
すると……
「ところで、何で可奈美達はここにいるんだっけ?」
ジェットの踵落としを喰らって気絶してる筈がいつの間にか起き上がったイグナイトが可奈美と沙耶香に尋ねる。
「ここで荒魂が目撃されたという通報があって、その調査の任務なんだ」
「んで、肝心の荒魂は見つかっていないって事か」
「そうだよ。この雑木林を歩いているけど、それらしき手掛かりが無くて~」
「途中……赤い何かが木に引っ掛かってた……」
「そうか。まぁ大変だけど、頑張ろうぜ……って、今なんて言った!?」
ここから去ろうとするイグナイトは沙耶香の言葉に気付き、思わず振り向く。
「途中……赤い何かが木に引っ掛かってたって言った……」
イグナイトは可奈美と沙耶香から少し距離を取り、背を向けて肩を組む。
「ジェット、もしかしたら……」
「かもしれないな。だが、探している物だと保証できないが……」
「行ってみなきゃ解らねぇぞ! もし違ってたとしても、ソイツを持ち主の為に回収しようぜ!」
「そうだな。交番の前に置いた方が手っ取り早いな」
二人の会話が聞こえている可奈美は、イグナイトがジャケットから取り出した殆ど赤を基調とした道具や布等の落とし物を見て、これ全部交番に持っていくのかと苦笑いを浮かべる。
イグナイトは再び振り向いて沙耶香にこう尋ねた。
「その赤い何かが引っ掛かってる木って何処で見た?」
沙耶香は質問に答えるように東の方へ指す。これにイグナイトとジェットは顔を合わせ、頷く。
「ありがとな! 後でちゃんとお礼はしとく!」
「大好きなスイーツをサービスするから、守護聖地に寄っとけよ!」
そう言って二人は、可奈美と沙耶香の前から走り去って行った。
そんな彼らの背中姿を見送る彼女達。
「豪炎寺君達が探している宝物ってもしかして……」
「うん、多分そうかもしれない」
彼らが言っていた『宝物』が何なのかに気付いた。
沙耶香が示した方角へ進んだイグナイトとジェットは、その先で歩きながら赤い何かが引っ掛かかってる木を探している。
「沙耶香達が見た木って中々見つからないな」
「見つけたとしても、赤い何かが別物だったら、何て言えば良いか解らねぇな」
「そうだな……あぁ!」
突然、イグナイトが声を上げてしまい、どうしたのかとジェットは彼を見る。
「今日、アメ車マガジンの発売日だ」
彼の言葉に呆れるような表情になるジェット。
ラジコンヘリを探しているのにも関わらず、アメ車マガジンの発売日だと言ったからだ。
「こんな時に何言ってんだよ」
「今思い出したんだよ。それで……」
「あのなぁ、俺達はラジコンヘリを探してるんだぞ」
「解ってるぜ。ツトム君にして欲しい『約束』の事を言うのは忘れてないよ」
アメ車マガジンの発売日を思い出してもラジコンヘリを探し終えた後の事を忘れないイグナイト。
そんな彼を見て、それなら良いんだがと辺りを見渡す。
すると……
「ん? アレはもしかして……」
ジェットは足を止めると、イグナイトも止まる。そして彼らが見た先にあるのは、沙耶香が言ってた赤い何かが引っ掛かってる木である。
「おいおい、沙耶香が言ってた木じゃねぇか!? それっぽいし!」
「待て、肝心の赤い何かが俺達が探している物なのかどうかだ。確かめないと……」
ジェットはそのまま木に引っ掛かっている赤い何かに注視する。
別物であるかもしれないと思ったからだ。
「どうだった?」
「……間違いない。俺達が探していたラジコンヘリだ」
「じゃあ……」
ジェットが頷くと、イグナイトは彼と共に赤い何かの正体であるツトムのラジコンヘリが引っ掛かっている木へ向かう。
その後、彼らは無事、ラジコンヘリを壊さず回収した。
「後はエイティに知らせてから、この雑木林を出て、ツトム君に渡して完了だ!」
「途中で可奈美達にばったり会ったが、お陰で見つかったしな」
「そうだな~」
イグナイトはトランシーバーを取り出し、スイッチを入れる。
「エイティ。こっちでラジコンヘリを見つけた」
『ホントに!?』
「あぁ。今からジェットと一緒に合流地点に行くぜ」
『それじゃあ、この雑木林にある落とし物も持ってくるんだよ~』
「はっはっはっは、そうだな。落とし物の持ち主が困っているようだし、そうするぜ」
イグナイトはトランシーバーのスイッチを切り、懐に入れる。
「という訳で、俺が見つけた落とし物が置き去りになってる場所に戻るぜ」
「そうだと思ったよ。だが、あれだけの落とし物、どうやって持ち帰るんだ?」
「あぁ、確かに……」
ジェットに尋ねられた彼は言葉を詰まらせる。
確かに、可奈美達と会った場所にはイグナイトが見つけた大量の落とし物が置いてある。拾ってきたは良いが、問題はどう持ち帰るかだ。
「じゃあ、また俺のジャケットで……」
「やめろ」
「リアカーで運ぶってのは……」
「どこにそんな物がある?」
「えぇ~……」
大量の落とし物をどう運ぶかを話し合っていると、何かがこちらへ近づく音が彼の耳に入る。
二人はすぐさま真剣な顔になり、周囲を見渡す。
その時、視界に映ったのは……
「おぉう……これはこれは」
「まさか、可奈美達が探しているヤツか」
二人を見て雄たけびを上げるウシガエル型の荒魂。
そう、この雑木林で目撃された個体で、ベノムやスラッシュシザーズのような二足歩行ではなく、ウシガエルそのものを大きくしたような感じだ。
イグナイトはジェットにラジコンヘリを渡し、ナックルダスターを取り出し、荒魂を睨むのであった。
タギツヒメ「お兄ちゃん達~?タギツヒメの可愛さにメロメロになっちゃえ~♥️」
ベノム「流石タギツヒメ様だぶ~ん!タギツヒメ様の可愛さに敵うヤツなどいないぶ~ん!」
紫「……」←イライラしてます。