二曲目の英雄 作:不思議稲荷
なんて場合じゃない。只今新作到着しましたァ!
それにしても前回から評価が来るわ、感想は来るわでありがたい限りですホント。バーにオレンジ色まで付いちゃってまあ
感謝を込めて今回はちょっと長め
───────逃げて
その声が届いた瞬間、私と声次は駆けだした。靴を脱ぐ間も惜しい。土足で家に踏み入って探し回れば、リビングに母親
一言で形容するなら『美女と野獣』。しかし残念ながらリアルにあんなロマンチックなストーリーは成立せず、自然の摂理に素直だった。
すなわち。
襲われていた。
「ブルッフフゥゥゥ……! やっぱりこの『赤』だ! 作り物とは違って最ッ高にキマるぞォォォォ!!」
黒々とした剛毛に筋肉で異常なほど肥大化した上半身。捻れ尖った血塗れの双角が天を衝く、二足歩行の牛。どうしようもない
「輝笛!」
ドクドクと命を垂れ流す母親の姿。
痛々しすぎるその様に、二人とも絶句する。
「お前はッ、なんで輝笛をッ!」
「ここの
ずかずかと、他人の家にも関わらず踏み荒らすヴィランが迫ってきてその巨腕を振り上げても、精巧な3D映画でも鑑賞しているように特に何も感じなかった。ただひたすらに、母親のインパクトに呆然としていた。
過去にフランクリン主催のテロの片棒を担ぎ、ゲーム上とはいえ数多の人間を屠った私が唖然とするほどに、肉親の凄惨な姿は衝撃的だった。
そう、私は動かなかった。
「危ない!」
だから代わりに私を庇った父親が殴られた。
「父、さん?」
返事は、ない。
壁が
なんで。なんでこんな理不尽な暴力に合わなくちゃいけない?! 私も、両親も、ありきたりに幸せに暮らしていただけなのに。
「ブルゥゥ? ムサ苦しい男の、汚い『赤』には興味ねえんだよォォ!」
元凶は決まっている。コイツだ。コイツは許さない、許すわけにはいかない。だけど今の私には何も………。
「可能性を、寄こせ」
脳の奥から、ナニカが沸々と熱く湧き上がる。
「俺に、ハッピーエンドの可能性を、この子を救える可能性を、寄こせ」
嗚呼。これは、感銘の記憶。
オーナーから面白半分で見せられた動画のワンシーン。無力な
何故忘れていたのだろう。なにも救える力があるから英雄なのではない。救いたいと思えるかどうかだ。独力で助ける必要はない。泣き喚いても、醜く足掻いても、最後に助けられればそれで勝利だ。
けれど自分の肉親すら助けようとしないならば、私に英雄を名乗る資格などない!!
戦う力がない? ほざくなよ痴れ者が。何もせずに
それに、力ならあるじゃないか。まだ呑気に手の中で昏々と眠り続ける『
「頼む」
喉が張り裂けんばかりの祈りで
頬を伝う一滴がきっと救いをもたらすと信じて。
「とっとと目を覚まして、
懇願に呼応するように、突如右手の甲に眩い光が宿される。
光の後に刻まれたのは硬い蹄と鋭い爪、獰猛な牙に力強い双翼を併せ持つ、不可解で未知なる異形の紋様。
しかして未知とは既知の新たなる組み合わせである。どんなに斬新な曲だろうと解体すれば五線譜や四分音符、休符などの集合体だ。
つまり。
例え異形だとしても、ネタを見れば笑える話かもしれない。
「おはよう、いや久しぶりと言うべきかね?」
さあ大望は成り、絶望の霧は晴れた。待望の
「遅いぞ、【ブレーメン】ッッ!」
虚空から機械仕掛けの
【四獣奏 ブレーメン】。私から生まれた、私の愛すべき相棒。その体躯が頼もしく見えるのは単純に私が縮んだだけだからだろうか。
「ブルゥゥゥン? そんなオモチャでどうするんだァ?もしかして『音楽は世界を救う』なんて腑抜けた事言わないよなァ?」
「世界は救えずとも、貴様を斃すくらいならできるさ」
「ナマ言ってんじゃねえぞガキがァ!!」
私は生前、
音楽家になるという夢を諦め、投げ出し、『家』という安寧の地に妥協した惰弱な奴らだと嘲った。所詮は獣だと軽蔑した。
だが今は違う。今なら理解できる。彼らは夢を捨てたわけでも、挫折したわけでもなかった。
「『家』を、家族を守りたいと別の夢を選んだのだな」
だからどうか私にも守らせてくれ。
私の夢を、叶えてくれ。
「オラ死ねエェェ!!」
黒山の如き巨体で狭い室内を走られたらすぐに接近される。想像通り瞬きの間に距離を詰められ、岩のような拳が握られる。1秒あれば当たるだろう。
なので1秒の間に対処する。
「《ハートビートパルパライゼーション》」
コボルトが持ち込んだパーカッションを滑らかに連打する。流れるは『くるみ割り人形』。汚れた怪物を倒さんとする
「ぬオォォォォオ?! 俺の手がァ?!」
私に達するはるか手前で、殺意を込めて突き出した拳は泥団子のような脆さで粉砕される。
《ハートビートパルパライゼーション》。
ブレーメンが一体、コボルトの能力。パーカッションから放たれた音波の届く範囲内を、衝撃波によって
『言っただろう? 貴様を斃せると』
「ブロォオオオオオオッッ!!」
ブレーメンを指揮する手は止めずに声、ではなく声のように聞こえる音楽を奏でさせる。
紛れもない挑発。あの存在に着想が至らなければ良いのだが。
「ナメ腐りやがってガキが……ブルゥゥン? イイ所に使えそうなモンがあるじゃねえか」
彼が目聡く見つけたのは、足元に伏している私の母親。巻き込むわけにもいかない私としては、肉壁に構えられては打つ手がない。だから挑発してまで耳目を私に惹きつけたかったのだがな。
コボルトに砕かれた右手とは逆の、厚い筋肉で覆われた左手で母の首根を掴もうとする。
ああ、
『“ストリングス”』
「……ォァアアアアアアアッッ!!」
本当に残念だ。私も外道ではない。これ以上の無意味な流血は避けたかったというのに。
ケンタウロスが
そしてなにより彼にとって残念だったのは、私が既に一度同じ失態を経験していたことだ。
炎に燃えるカルチェラタン伯爵領。悪魔の軍勢と対峙したあの時に、守るべき人質を利用されるという苦汁は飲み干していたのだよ。
「こんのクソガキァ……」
『選べよ牛畜生。大人しく自分から囲いに入るか、首輪を付けて私に連れて行かれるかを』
「絶対に殺す殺す殺すゥゥ! ヴオオオオオッッ!」
異形型だけあって再生能力も高いのか、止血された両手の切断面を地につけ、不格好なクラウチングスタートの姿勢をとる。広背筋を始めとした全身が更に膨張する。おそらく牛の癖に猪突猛進と角で突き殺す算段なのだろう。
『ようやく
「VUMOOOOOOOOOOO!!」
『《
必殺スキルと呼ばれたゲームシステム的アシストもなく、ただ名前を呼んだだけなのに私の意図を察してブレーメンは動き出す。メカニカルな配線を組み換え、他の3体が
存分に堪能しろ。これが私の指揮する至上の調べだ。
『──“ホーン”ッ!!』
ケットシーの能力は催眠音楽。しばらくの間聴かせ続けることで、徐々に洗脳していくというもの。
だが、他の3体と接続したことで出力を大幅に上げたホーンはその域に留まらない。
相手が自ら世を絶つ事を厭わないほどの、まさしく絶世の旋律。私が“音楽として”最も完成していると判断したホーン。まあ、かつては慇懃無礼な記者に聞き逃されてしまったこともあるがな。
そんな神域に達しているといっても過言ではない旋律を、精神の昂ぶった相手に聴かせればどうなるか。
「……rooo…ォォォ…ォォ……」
答えは、醜悪な肉塊が墜ちた音だった。
戦闘描写が音速で終わる恐怖()
TUEEEEやってるように見えるけど、作者が過度なTUEEEEは嫌いなので欠点はちゃんと用意してます。というかヒロアカに俺TUEEEEE多すぎる……。ネタに振ってる奴は好きだけど。もっとストーリー的な深さが個人的に好みなんだよなあ……。
神様ミスで大量殺人しすぎじゃない?
(=?ω?=)<あくまで作者の所感なのであしからず
(=?ω?=)<感性は人それぞれだからねー
と、まあこの話は置いといて。
私は感想くれ評価くれは煩く言いません。代わりに
デ ン ド ロ を 読 ん で く れ
それじゃあまた次回で
〈こぼれ話〉
最初はヴィランじゃなくて脳無使う予定だったけど、「時系列的におかしくね?」ってなったので没に。
じゃあなんでミノタウロスって聞かれたらダンまち見ちゃったからとしか……