二曲目の英雄 作:不思議稲荷
ステージには行けてないけどな!
まあクリアファイル貰えたから許す。
で、衝動で書き溜めを吐き出す稲荷()
なお前回より書き溜めの数は変動していない模様
今回ベルドルベルはお休みです
ある日ある時ある場所で。
猫の額、という程狭くもないが住人のキャリアを考慮すれば不相応に手狭な、よく言えば最小限に整理された部屋に二人の男がいた。
「それで? 僕に何か言うことはないのかな?」
「うーん、特には無いかなー」
「……僕としては空惚けるのもいい加減にして欲しいのだけれど」
二人の男の内、言葉遣いは丁重でもイライラした様子の縮れ髪の男が、今しがた配達されたばかりの朝刊をもう一人の男に投げ渡す。
新聞を受け止めた男は瀟洒な猫足のソファに深々と腰掛け一面を流し読み、呑気な声で朗読し始める。
「えーっと、何々ー? 『著名な音楽家として知られる天山夫妻の自宅にヴィランが押し入る』。うわーありふれたバッドニュースだねー。掃いて捨てるほどあるよー。これがどうかしたー?」
「非常に問題だよ。事件そのものではなく結末がね」
「待ってねー、今読むからー。『夫妻は重傷、しかし死亡者はおらず押し入ったヴィランも二人の実子の貢献により逮捕』。へー。不幸中の幸い、悲劇の中の英雄譚。こんな貴重なハッピーエンドを
ニヤニヤと意地悪げに唇を曲げ、遂には新聞を放り出しソファの上で寝転んだ男に対して、縮れ髪の方から苛立ちの気配が漏れ出る。ギシリとソファの背もたれに腰を預け、堕落しきった男を射るような視線で見下す。
「別に彼を嫉んでいる訳ではないさ。僕が恨んでいるのはキミだよ」
ご丁寧にも記事に彩りを飾る幼い
「えー、僕ー?」
「そうだ。まったく、何が
「大切な駒って言ったってー、精々ギザギザした十円玉と同じ程度、替えの効かない一生モノの記念コインなんて扱いじゃないだろう? っとー」
足を振り子にしてソファから跳ね起き、相方の話など聞く価値が無いとばかりについてもいない寝癖を入念に
「そもそも『テスト』の意味知ってるー? 不確定要素を埋める為に実験してるんだからー、予想外なのは必定じゃないかー。まさか猫も杓子も掌の上ー、なんて傲慢な考えはしてないよねー?」
「たとえ十円玉だとしても、キミに遣い潰されるのは猫に小判という物ではないかな?」
「おー、うまい事言うねー」
微妙に笑いのツボに嵌まったのか、猫背を丸めてクツクツと喉を鳴らす。とことんまで人を弄する態度を改めさせようと、正面に回った縮れ髪の男はいまだに揺れる肩を掴んで詰め寄った。小心者なら漏れ出る怒気に失禁もあり得る脅迫だ。
「いいかい? 今僕は疑っている。いくらなんでもヴィランが個性を発現したばかりの幼稚園児に斃されるのはできすぎだ」
「それくらい脆弱だったってことでしょー。えー、それとも僕が脚本を書いてるとでもー?」
「可能性はあると思っているよ」
「冗談キツイよー。傍からでも今回のプランが穴だらけなのは分かるよ? 肉体強度にはまだ伸びしろがあるしー、精神面も半端ー。あれなら完膚無きまでに自我を取り去った殺戮兵器の方が有能だよねー。それに、
鼻先にまで寄られて圧迫されても顔色一つ変えず、さらりとおぞましい発言を眠そうに呈する男。それを聞いて少しは信頼を取り戻したのか、疑わしい目はそのままに縮れ髪が離れていく。
「………一応は信じてあげよう」
「なんで一応なのかなー? 心配されなくても『アレ』の開発も手伝ってるのにー」
クイッと親指を向けたのは壁。否、壁に嵌め込まれた水槽に収容されたヴィランたち。彼らこそが複数ある内の拠点の一つであるこの部屋を手狭にしている原因。だが、いくら探せど水槽の内に生存の雰囲気は見つからない。ホルマリン漬けのようにされた彼らは、腕が胴よりも太かったり爬虫類の翼を背負ったり、また嫌悪感を抱く触手を生やしたりと……発現した個性は統一されていないが、例外なく彼らの個性は異常に発達していた。もしも彼らが生き残れていたなら、世間を震撼させる暴威を振るったに違いないと自然に思わせるほどに。
「彼らが壊れちゃったのはリソースの供給過剰、身の丈に合わない力を注いだ報いってトコかなー? いずれはその道の専門家はスカウトしたいよねー。まあ兎にも角にも」
「おっと」
座っていた男は立ち上がり、読み終えた新聞を持ち主の胸に押し返すと部屋のドアノブに手を載せる。
「君は
振り向いたその面には相も変わらぬ憎たらしい笑顔。
「それとも、不安ならここで僕を殺して曖昧な後顧の憂いを消しとくー?」
しかし眼だけは獣のように爛々と裂けていた。
『目は口ほどに物を言う』とはよく言うが、『ほど』ではなく眼の方が口よりも語るケースもザラにある。そう、殺意の行き交う一触即発の現状も含めて。
「………いや、それは止めておこう。今の僕の手札ではキミを殺しきれないからね」
「できたならやってたのかー。おー怖ー」
ケラケラと人を茶化しながら騒ぎ、纏った殺意を嘘のように霧散させる。殺伐とした雰囲気を入れ換えるようにガチャリとドアノブを押し下げて、新鮮な汚れたての空気を室内に招き入れた。
「じゃあまた今度ー。バイバイ、
「さようなら、
ぶにゃあ、と。
どこから這入りこんだのか、よく肥えた猫が返事を返すように鳴いていた。
(=?ω?=)<一体誰なんだこいつら!!
(=?ω?=)<なおマーダー・キャットの名付けに際してワイプシを頭からイレイサーしました
(=?ω?=)<あ、作者の遊び心に気づいた人いるー?
新学期始まるからちょっとスパン空くかも
デンドロのPV出たから見ようね!
それではまた次回