二曲目の英雄   作:不思議稲荷

8 / 12
気がつけば二カ月……はえー……はいなんで今日投稿されたか分かる人挙手!
デンドロイベがあったから──はい正解!
こっからは受験期入るので二カ月に一度の定期更新カタパルトを設置しておきましたのでそれでご容赦下さい。なお無事に受験が終われば書き足す可能性が非常に高いです、つまりは……すいません
ともかく更新再開です




第六声 試験

「嗚呼、長かった」

 

 荘重な建造物を仰ぎ、感嘆と密かな興奮を()()ぜにした溜め息を吐き出す。気が付けば早数年、この世界に生を授かったのが遠い昔のようだった。それでもつい昨日のことのように思い出せてしまうのだから、もしやここの時も三倍速で流れているのではあるまいな? そんな戯れ言を一笑に付して、今この場所に立つまでにどんなに苦労したことか顧みる。

 例の事件の直後など上へ下への大騒ぎだった。狙われた父母の注目度が元々高い上、どこが素っ破抜いたのか私の写真まで流出。連日マスコミ各社のバーゲンセールだ。半月も過ぎれば話題性も薄れて随分大人しくなったがね。

 逆にその後は何も無く、実に平凡の極みで大いに助かった。正しく禍福は(あざな)える縄の如し。ならば次は波乱が起こるのか否か。

 

「ここがスタートラインだ。鶏鳴で通してくれるくらいの関門なら助かるのだが」

 

 此方には雄鶏(ブレーメン)もいることだしな。

 既に試練への対策は済ませてある。大丈夫だとは思いつつも、やはり不安の種は肺腑にしっかりと根を張る。仕方ないだろう。今から挑むのは倍率300倍の超有名マンモス校、雄英高校なのだから。

 

 

 □■□■□■□■□■□■□■

 

 

『今日は俺のライブにようこそ!!エヴィバディセイヘイ!!』

 

 高校の入試は筆記と実技の二段階評価。先に筆記を終えた受験者は皆巨大な講堂に集められた。

 そこに来て、着席するやいきなりこれだ。当然誰も返答するまい。というより返せる精神状態ではないだろう。緊張を解したかった? ハハハ、さっさと終わらせてくれた方がありがたいというのが受験生一同の共通認識だ。ノリの良いリスナーを期待していた解説役には悪いがね。心中はお察ししよう。私も若輩の頃にはよく経験したものだ……今の私も若輩か。

 

『こいつはシヴィー!! 受験生のリスナー! 実技試験の概要をプレゼンするぜ!! アーユーレディ?!』

 

 氷点下を下回る聴衆にもめげない強靱なメンタルでプレゼンしてもらったところによれば、実技試験は架空敵として用意された1ポイントから3ポイントまでのロボットを破壊し、その合計によって判断するらしい。

 他にも妨害目的で用意された敵もいるらしいが、まあ捨て置いてよいだろう。

 

『最後にリスナーへ我が校の校訓をプレゼントしよう。かの英雄()()()()()()()()()()は言った! 「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と。“Plus (プルス) Ultra(ウルトラ)”!! それでは皆、良い受難を』

 

 ナポレオン・ボナパルトとは、()()ナポレオンか? 小学校に入学した辺りから奇異には思っていたが、可能性は無限。そう言うこともあると勝手に納得したが、やはり不思議な物は不思議だ。首を傾げるのは私くらいなものだがな。

 説明は以上で終了し、ぞろぞろと受験者が指定された区域に散っていく。中にはか弱そうな女生徒等もいるがよくよく考えればこの試験、私のような指揮者や後方支援型には不利じゃないか? いくら戦闘能力が求められる職業とはいえ、それ以外を(おろそ)かにするのはいかがなものか。しかしそれがルールと言われれば反逆できないのが悲しいかな、受けさせて貰う側の身分だ。推薦なら違うのかもしれないが、隣の芝を想像で青くしてもしょうがない。

 

 さて人の流れに従って試験の開始地点には到着したわけだが、合図があるまでこのラインを越えてはいかんのか。逆に言えば、越えなければ何をしてもいいな?

 

「クラヴィール」

 

 キーボードを首から提げたハーピィが重力の楔を振り切って飛び立つ。生憎と試験では役に立たないパートだが、無能でもない。(あらかじ)めの戦場把握。試験に予習・対策は必須だろう?

 

『サンジホウコウハチタイ、シチジホウコウジュウイチタイ、クジホウコウキュウタイ、カクニンシマシタ』

「ご苦労」

 

 しばらく上空をたっぷり旋回したハーピィは、降下すると器用にも鍵盤を叩いて報告を行う。これで粗方の目処は付き、情報の無い状況で始めるよりはアドバンテージを得られた。そういえば試験の開始時間を教えられていないが、いつまで待たせら──

 

『ハイスタートォ!!』

 

 ──れなかったな。

 

『どうしたどうしたァ! 賽は投げられてんぞ!?』

 

 煽るマイクが会場中に響き渡る。悪意を感じるこの開幕、対応が冷たかった腹いせか? いやまさかな。仮にもトップ校の教師だ。人格に問題があるようならば採用はされないだろう。

 

「我々も行くとするか」

『ブッコロス!』

 

 訂正、試験目的とは言えロボットに『ブッコロス』を連呼させるのは少し危ないかもしれない。開始早々、事前にハーピィが指定した物陰から物騒なロボットが現れる。明らかに銃座らしきものを搭載しているが、まさか6発に1発実弾が出るロシアンルーレット方式は採用してないよな? 全部ゴム弾だよな? 油断したところをズドンなんてお断りだ。実はただでさえこの試験、私と(すこぶ)る相性が悪いというのに。いや支援職のそのまた支援職なのだから、それは説明されたときから知っている。だが、何しろブレーメンは本来人間に聴かせるべき個性。故に対人戦闘では強くとも今回のような対物相手で通用するのは4パート中2パートしかない。

 

 まあ、

 

「“ストリングス”」

 

 だからどうしたという話に帰結するが。

 弦楽器の音に、ロボットの上下が切り切り舞う。

 

 そもそも私を誰だと思っている?

 私はロボットクリエイトの最先端、元〈叡知の三角〉所属の戦闘員。【マジンギア(ロボット)】の試運転に付き合わされた回数は両の指では足りない。それだけ回数を重ねれば嫌でも壊し方は覚えよう。ましてや【マジンギア】ほど高性能でもなければ腕の良い【操縦士】が搭乗しているわけでもない。それに、私相手に負けが込んできた事で自棄になったのか、「音より光の方が速いだろォ!!」とか叫んで光学兵器満載にしてくる性格の悪い【技師】や【操縦士】もいないしな。なお後で聴取をしたところ、アイデアを提供した教唆犯はオーナーだった。

 

「……改めて考えると、クラン脱退の際に置き土産をする義理は無かったかもしれん」

 

 オーナーへの恨みとオーナー以外のメンバーへの感謝の間で揺れ動きながらも、タクトを振る腕は止めない。おっと危ない、物陰から急に飛び出すな。誤射されても文句は受け付けんぞ。

 

 攻撃の手を止めてやったのに舌打ちするような愛想の悪い他の受験者は気にせず、単純作業に従事しよう。次々とポップするロボットがパーカッションの振動結界に踏み込めば崩れ去り、振動結界には立ち入らずともより射程の長いストリングスの超音波メスに切り刻まれる。数は20を越えてから数えるのをやめた。

 

「しかしこうも単純作業が続くと飽きがくる。バリエーションを増やすか、せめて聴衆でもいればまだやる気も起ころうに……」

 

 残念ながら、私は退屈なルーティンを際限なく繰り返せるほど強靭な精神を持ち合わせていないのでな。その点においてクランの作業員たちは尊敬に値する。私だったら精神が崩壊するだろうさ。

 などと懐かしい同僚(しゃちく)の生き様を懐古していると。

 

 ガゴンッッッッ

 

 今までの戦闘音とは明らかに異質な、もっと巨大な物の駆動音が轟く。ああ、かれこれ数分間も人知れず演奏を続けた寂しい私のリクエストに報いたつもりか、急遽遠くの巨大な0ポイント敵(じゃまもの)がスタンディングオベーションで応えてくれたのか。まったく、ありがたい話だな。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。