二曲目の英雄 作:不思議稲荷
ちょっとお休みのシーズンが来たのでお久しぶりの更新です。あ、引くくらい更新間隔が長いので罪滅ぼしにオススメ紹介させてもらっていいですか?
「なろう」で連載中の略称シャンフロって作品が個人的推奨です。VRMMO覇権争い(個人調べ)に参入してます。設定厨には堪らない。最近作者さんがTwitter始めて
さながら本物そっくりのビルが建ち並ぶ街並みをガリガリと削り、瓦礫を撒き散らしながら迫り来る巨大なロボット。そのサイズは他の仮想敵が雑魚に霞むほど。天を衝く威容は、弱い心音ならそっと止めそうだ。
「ほう」
まだこんな隠し球を潜めていたのか。だが、
「確かに強大。しかしオーナーのパンデモニウムや【破壊王】の戦艦に較べれば、余程
凶悪なモンスター軍団を製造する竜頭の要塞工場や、その軍団を纏めて“破壊”してのける弩級戦艦と比較するのは酷だが、〈超級〉連中と相見える機会が幾度となくあったせいか危機管理のハードルが跳ね上がっているらしくてな。正直これを見ても「このくらいなら」と楽観視する私がいる。
しかし依然脅威であることに変わりはない。純粋な質量もそうだが、コンクリートのビルと衝突してなお歪みない装甲を張りぼてとは
「逃げつつポイントを稼げ!」
「あれがお邪魔虫?! 勝てる訳ないだろ!」
「あんなの相手するだけ無駄だ!」
私が肩で風を切って赴く前方から、蜘蛛の子を散らすように危険を察知した受験者が0ポイント敵から逃亡し、人波として流れていく。
「……ぅう、足が……」
偶然削ぎ落とされた瓦礫に足を挟まれて、身動きできない女生徒を置き去りにしたままでな。
これは試験。効率的に合格を狙うなら、ライバルも蹴落とせる一石二鳥の最適解だ。その判断を下せる彼らはさぞ優秀に違いない。
「………………………
ああ、そうだとも。どう論じたってこれは試験だ。敵前逃亡して、他者を見捨てたところで人も死なないと誰だって考える。
だがな。
101人目の
彼らが踏みにじったのは助けを求める彼女の手か、私の期待か、それともはたまた両方か。頭の中で生まれ、胸の奥に
「逃げろ? 勝てる訳無い? 無駄? ハッ、上等だ。あらゆる絶望をひっくり返して人々に希望を魅せるのが英雄だろうが。みすみす成り上がる
激情に駆られる私と連なって、ブレーメンが発狂したような『
名付けるなら“音災”とでも命名しようか。自慢のオーケストラは一流の自負がある。
しかしパーカッションでは面で制圧する都合上、女生徒にも
此方に接近する反応をソナーが捉えた。滑らかな生物的な動きからして仮想敵ではない。となれば他の受験者に違いない。如何に仕事がパーカッションとストリングスに多く割り振られるとはいえ、残りを腐らせておくのも勿体なかった為、ホーンとクラヴィールは音響探査に充てていたのが功を奏したな。
「《ハートビートパルパライゼーション》解除」
今の《ハートビートパルパライゼーション》は対ロボット用の出力、もし人が巻き込まれれば大怪我だ。電脳世界ならばありふれたフレンドリーファイヤーで済むが、ここはリアル。三日間のログイン制限ではい終わり、とはならない。運が悪ければ一生残る傷になる。覇道に怪我人を横たえるわけにもいかないからな。だからこそ、わざわざ振動結界の倍近い範囲を常にエコーロケーションの要領で精査している。
「うわああああああああ!」
善性の予防策に引っ掛かった誰かの為に振動結界を解除すれば、私のすぐ隣を緑髪の少年が我武者羅に疾走する。その足取りは不格好で、雄叫びも情けない。憐憫の情こそ抱けど憧憬には値しない。数々の戦場で眺めた猛者と見比べた上での妥当な評価。
なのに何故、私の口角は見えない指に押し上げられているのだろうか?
「……成る程。私は嬉しいのか。まだ一握りでも
たとえ今が不甲斐なくたっていい。私だって未だ理想の境地には辿り着いていない。だから同類だ。英雄として憧憬はせずとも、叶うならば同じ目標へ切磋琢磨する仲にはなりたい。不甲斐ない奴らを見た直後だけに感動は
緑髪の少年は異常な脚力で0ポイント敵を目指して跳躍し、その比較的小柄な体躯は瞬く間に敵の頭に到達する。倒せるか倒せないかは知らん。だが、別にそのくらい些細な事。後始末くらいは私がやってやる。立ち向かった事実だけが最重要項目だ。
「おめでとう少年。貴様は蛮勇という形で英雄への第一歩を踏み出した。ならば私はそれを歓迎しよう」
「SMAAAAASH!!!」
籠められたエネルギーにバチバチと火花散る右腕。繰り出されたのは武芸を嗜んでいるとは到底思えない乱雑な拳。それでも立ち塞がる敵を殴るには、十分だった。
鋼鉄の体と地面を揺らして、コンマ数秒前まで無双していた0ポイント敵が頭から倒れる。
「……お見事。良い物を見せて貰った」
嗚呼、臓腑に溜まったモヤが僅かに解消された気分だ。単純なプラスではなく、腹立たしいマイナスを食らった後のプラスは格別だな。
肝心の彼はというと……どうやら跳んだはいいが、降りる手段が無いらしい。高木に登って怯える仔猫か。動かずにいれば無事なあれとは異なり、放置すれば大事故を招くが、まあどうにかするのは私の役ではない。
瓦礫に潰されていた少女が瓦礫の上に乗る。するとどういう理屈か鉄塊が空気でも詰めたようにふわりふわりと絶賛落下中の少年の下まで浮かび、少女が恩人を迎えに行くまでの足となる。
ここまで見届ければ大丈夫だろう。
「それで? 今は彼の武功は称える余韻の時間だ。横槍を入れるのはあまりに不粋という物ではないかね?」
余韻を愉しむ事を知らないガシャガシャと騒がしい聴衆、否、群れてきたポイント敵を振り返る。しかし『悪意』が足りないとは言ったがまさか礼節すら足りないとは。
『標的発見ブッコロス!』
「単純な機械は融通が利かなくて困る。もう少し高度な
ちょうど良い。これを彼に捧げる凱歌としよう。
「《
鉄屑の分際でこの曲を聴ける歓喜に、その堅苦しい身を震わせろ。
「───“パーカッション”」
振られた指揮棒に従って、コボルトが一際力強く小太鼓を
「それでは少年。また君と会える事を願っているよ」
『終了ォォーーー!!』
最後に、片手を
これで落ちていたらどうしたものか……。
やはり不安の種は綺麗な花を咲かせるから嫌いだ。
本ッ当に今さらなんですが、この作品はIfであることをご了承下さい。最後考えてたらちょっと……
次回の更新は新刊発売の10月1日です。しかし冬アニメだった場合は分かりません