元無職、二度目の転生   作:メッサーシュミット

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プロローグ

「本日は晴天なり、本日は晴天なり………。」

 

現実から目を背けようと呟いてみたものの現実から目を背けるなと俺の理性がそう叫ぶ。現実逃避は"前世"からの十八番、だが今回ばかりは現実を直視する必要がある。

前世の俺は糞みたいな人生を送った。引きこもりでニート、前世の両親に寄生し自堕落な生活を送り、両親が死んだと数日後に俺は家を追い出され、轢かれそうになった学生達を助けようとトラックに轢かれて死んだ。

 

そして二度目の生を受けることになったが、それは神様が俺に与えた罰なのであろう。俺が生まれたのは1916年の日本、つまり俺は第二次大戦以前の日本に生まれたのだ。だが歴史は繰り返さなかった、別に戦争が回避された訳ではない、第二次大戦がマシと思える戦争が起きてしまった。相手は米国でもソ連でも欧州列強でもない……、地球外文明との戦争が起きてしまった。

 

俺は戦争に参加し戦った。詳しい事は省くが一時期人類の生存圏が欧州だけのなった時もあった。そして今は宇宙人相手にまさかの奇跡の大逆転、北アメリカ大陸を除く全ての大陸は奪還した。俺は二足歩行兵器A.B.L.A.Sに乗り込み、寄せ集めではあるが師団長まで上り詰めた。優秀な部下に恵まれ、精神的にも戦闘能力も俺は強くなった。

 

前世では考えられない人生を歩んだ。失った物も多い、だが失うのはもうこれで最後だろう。

 

俺が率いた師団は俺を除く全員が戦死し、下半身を失った。ビー、ビーと操縦席中警報音が流れるものだから鬱陶しい。

 

二度目の人生でも童貞卒業できなかったのは唯一の心残りではあるが戦争が始まった次点で諦めていたのだから気にする必要は無いが。

 

今思えばそこまで悪い人生でもなかった。両親の期待に応えられるように努力した、妹も兄様、兄様と慕ってくれた。前世とは大間違いだ、俺が戦地に行くときに手作りの御守りをくれたっけ…、奴等の浄化政策により妹は食料として殺されたが必ず帰るという約束も果たした。

 

徐々に意識が薄れていくのが分かる。これが死なのか、前世は即死だから楽だったから死に対してそこまで恐怖は無い、まぁ他にも理由があるからだとは思うが。

 

「あぁ…、畜生……」

 

薄れ行く意識の中、俺は腕を青い空へ腕を上げる。A.B.L.A.Sもそれに釣られて腕を上げる。目の焦点は合わず死が直前まで来ているのが実感できる。

 

俺は最後の力を振り絞り、こう言った。

 

「なんで空はあんなに青いんだよ…。きょ、今日も…き……れい…だ…なぁ」

 

なぜこう言ったのか分からない、俺は腕が力なく倒れるのを見ながら死んだ。


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