元無職、二度目の転生   作:メッサーシュミット

3 / 4
魔術教本

 足腰がしっかりしてきて、一人で歩けるようになり言葉も話せるようになった。

 いままでハイハイで家中を移動していたので歩けるようになったことは非常に大きい。

 

 

---

 

 

 本気で生きると決めたからには方向性を一つに定めなければいけない。

 父親は立派な剣士にさせると息巻いているのだが俺は剣士にはならない。

 前世の戦い方はブレードを使った近接戦闘を得意としているのだが、これはあまり使いたくない。

 俺の愛機を使うことによって、あの戦い方は真価を発揮する。

 少なくともあれはあまり生身では殆ど不可能な話で一応再現はできるがお粗末ま結果になるかもしれん。

 あまりこの世界の人間に知られたくないという意味もある。

 他にも理由はあるのだが、機会があれば話そう。

 

 魔術を覚えることよりも先にやななければならないことがある。

 それはこの世界の文字を覚えることだ。

 これを覚えなければ将来苦労することが多いだろう。

 

 一人で文字を覚えるのに必要なのは、もちろん本。

 だがこの家にあったのはたったの5冊のみ、この世界では本そのものが高価なのだろう。

 生前の日本では世界単位で印刷技術が優れていたので本はかなり安価でてにいれることができた。

 一度目の人生では自室に数千冊の蔵書を持っていたので驚いた。

 当然と言えば当然なのだろう、もっとも全てラノベなのだが。

 

 文字を覚えるのに5冊は十分な量だ、分からないことがあれば親に聞けば良い。

 

 この世界の言語は日本語に近いものがありすぐに覚えられた。

 文字は全然違うが、意味を覚えるだけで文法はすんなりと覚えることができた。

 文字より先に言葉を覚えたのも大きいだろう。

 父親が何度か本を読み聞かせてくれたおかげでスムーズに覚えられた。

 

 家にあった本は下記の5冊だ。

 

・世界を歩く

 世界各国の名前と特徴が載ったガイド本。

 

・フィットアの魔物の生態・弱点。

 フィットアという地域に出てくる魔物の生態と、その対処法。

 

・魔術教本

 初級から上級までの攻撃魔術が載った魔術師の教科書。

 

・ペルギウスの伝説

 ペルギウスという召喚魔術師が、仲間たちと一緒に魔神と戦い世界を救う勧善懲悪のお伽話。

 

・三剣士と迷宮

 流派の違う三人の天才剣士が出会い、深い迷宮へと潜っていく冒険活劇。

 

 下二つのバトル物の本はともかく上3つは非常に勉強に使えた。

 

 特に魔術教本で、文字の勉強をしながた魔術の勉強もできるため効率的にできた。

 

・攻撃魔術:相手を攻撃する

・治癒魔術:相手を癒す

・召喚魔術:何かを呼び出す

 

 この3つは魔術の種類で使うには勿論、魔力が必要らしい。

 体内の魔力を使い魔力を発動させるか、魔力が籠った物質を使うかのどちらかだ。

 太古の昔は体内の魔力だけで発動させていたらしいが、時代が進むにつれ研究が進み、難易度が高くなり必要な魔力量も多くなった。

 なので昔の魔術師は自分以外の魔力を使っていたとか。

 

 魔術の発動は2種類ある。

 

・詠唱

・魔法陣

 

 そこまで詳しい説明はいらないだろう。

 昔は詠唱を使っての魔術が非常に不便で、発動には簡単なもので数分必要だった。

 ある魔術師によって詠唱は簡略化され、簡単なもので5秒程で発動するようになった。

 それ以前は魔方陣が主流らしい。

 

 魔力量も生まれたときからほぼ変化が無いらしい。

 ゲームではレベルが上がるにつれMPが増えるのだが所詮はゲーム、

 気にすることは無いだろう。

 ほぼというには多少は変動するらしいがこれは個人の才能で決まるものだろうな。

 

 取り敢えず俺は簡単な魔術を試してみることにした。

 魔術教本によれば詠唱が主流らしいが熟練の魔術師は無詠唱でも魔術を発動させることが可能らしい。

 

 俺は魔術教本を片手に、右手を前へ突き出して文字を読み上げる。

 

「汝の求める所に大いなる水の加護あらん、

 清涼なるせせらぎの流れを今ここに、ウォーターボール」 

 

 詠唱が終わると右手に血液が集まって来るような感覚を感じた。

 そして血液が手のひらに押しだせれるようにして、右手の先にこぶし大の水弾が現れる。

 

「おぉ!」

 

 魔術は先日間近で見たのだが、自分の力で発動させられた感動は凄まじいものだ。

 

 ふと疑問に思ったことがある。

 魔術を発動させたときに血液が手のひらに集まっていき、体外に押しだせれるような感じがした。

 もしかするとこの一連の流れが魔力の流れだとしたら、これを再現することができるかも知れない。

 無詠唱魔術師がいるのだ、不可能ではないはず。

 ものは試しだ。

 

 俺はまず身体中に流れる魔力をイメージした。

 そしてその魔力の流れから一部右手に集中させる。

 そう、そんな感じだ……うん。

 俺の魔力量は分からないが全て成功させる気持ちでいく。

 

 二度目の人生のとき敵を両断し銃撃を加え更に斬りつけるということを何度も繰り返してきた。

 格ゲーで言うところのコンボ技だろう。

 こういうのは得意分野だ、失敗は絶対にさせない。

 

「すぅ……ふぅ……」

 

 気持ちを落ち着かせる為に深呼吸を一つ。

 右手に集めた魔力を押し出すような感じだ…。

 慎重に、心臓の鼓動に合わせて少しずつ、

 少しずつだ。

 

 水弾、水弾、水弾……。

 

「ハァッ!」

 

 思わず声をあげたが何て言うことはない、前世ではよくあることだ。

 

 そして、水弾ができた。

 

 ばちゃ。

 

「思った通りだ、無詠唱は成功だ」

 

 俺はそう言いながら水浸しとなった床を見下した。

 

 なぜこの世に熟練の魔術師が無詠唱魔術を使えるのか分かったような気がする。

 この世界は詠唱が主流だ。

 おそらく詠唱は無詠唱の手順を自動で行ってくれるのだろう。

 確かに戦闘の際にいちいちイメージして発動させるより言葉で発動させた方が楽だろう。

 そのため魔術を教えるときに詠唱を何度も唱えさせ覚えさせる。

 そして何千、何万回と繰り返すとそれに慣れきってしまい無詠唱が難しくなってしまう。

 熟練の魔術師は無詠唱ができるらしいが、それは体が魔力の流れを覚え自然と無詠唱ができるようになる。

 

 我ながら辻褄が合う考えをしたものだ。

 この調子で魔術を使おう。

 

 右手を前へ出して見ると妙なだるさを感じた。

 分かりやすく言うと肩にずっしりと重りが乗ったような感じがする。

 

 疲労感だ。

 始めての魔術に神経を使いすぎたせいか?

 

 いや、前世の俺は数日のあいだ一睡もせず戦っていたことがある。

 もともとゲーマーだった俺からするとこれはMPが尽きかけているのかも知れない。

 

 マジかよ、俺ってそんなに魔力量が少ないのか。

 いや、まだ子供だ、魔術教本によれば多少変化するらしいが、それに賭けるしかない。

 体力と同様、魔力量が劇的に増えるかもしれん。

 

「あと一回魔術を発動させたら今日は終わりにするか」

 

 俺からしたらかなり物足りないところだが、初めてとしては上出来だろう。

 これからも頑張らなければ。

 

 今日最後の魔術を発動させた瞬間、俺は気絶した。

 

 

---

 

 

「もう、ルディったら、眠くなったらちゃんとトイレにいってベッドに入らなきゃダメでしょ」

 

 どうやら俺は母親に読書中に寝落ちし、おねしょをしたと思われたらしい。

 

 クッ、なんたる不覚!

 まさか母親にこの歳で寝小便と思われるだなんて!

 確かに戦場で伏せたまま用を足していたけれども

 いや、まだ二歳だから許される歳だから良かったが。

 とにかくちくしょう!

 

 いや、まぁ、まさか俺の魔力量が水弾二発分だとは…。

 結構凹むなこれ、もしかすると剣士路線まっしぐらだぞ。

 

 だが二発と言っても使い方次第だろうな。

 二発使えるだけマシだと考えよう。

 

 

---

 

 

 次の日は驚くべき事に4つ作れた。

 5つ目で疲労感が出た。

 

「あ、あるえぇ?」

 

 魔術教本だと変化は殆ど無いと書かれていたはずだぞ?

 だけど俺が発動できた魔術は先日の倍、倍だぞ!

 最大で6回、前回より成長したのだろう。

 もしかして初めて無詠唱だから消費MPが多かったから?

 いや、感覚的に同じだったからそこまで変わらないか。

 前回の経験で疲労感が出た辺りで止めておいた良いと分かった。

 もしかしてすると明日また倍に増えているかもしれん。

 

 

---

 

 

 さらに翌日。更に作れる水弾の量が増えた。

 

 11個だ。

 なんだか使った回数分増えている気がする。

 一昨日の俺が建てた仮説はある程度正しいのだろう。

 後は俺の努力次第で魔力量がふ最終的な魔力量が決まるはずだ。

 これからは今までと同じように疲労感を感じるまで練習をしよう。

 

(嘘こきやがって、何が魔力量は決まっているだ!)

 

 才能なんて目に見えない物を決めるだなんておかしいだろ、なぜもう少し調べなかったんだ。

 もしかすると俺の体が少し特殊だけというのも捨てられん。

 いや、この考えは止めておこう。なんだか俺の成長の邪魔をしそうで怖い。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。