元無職、二度目の転生   作:メッサーシュミット
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家庭教師

 魔術の練習行いながら3歳になった。

 ここにきてようやく水弾を飛ばせるようになった。

 簡単に言うと生成→サイズ設定→水弾の射出速度の設定→発動のプロセスを辿っているわけだ。

 

 詠唱すると使いたい魔術が自動で全ての手順を行ってくれるため自分でやる必要はない。

 無詠唱では一人で行う必要があるが詠唱より自由が効く、さらに水弾を氷弾へと変化ができるようになる。

 己の発想次第では戦術の幅が大きく広がるのだ。

 

 

---

 

 

 さて、3歳になってようやく両親の名前が分かった。

 父親はパウロ・グレイラット。

 母親はゼニス・グレイラットだ。

 父親も母親も名前で呼び合わないので名前を覚えるのに苦労した。

 

 そして初級魔術も一部を除けば大方覚えた。

 初級魔術というからにはランクがある。

 

 魔術の難易度は七つある。

 初級、中級、上級、聖級、王級、帝級、神級。

 

 一般的に一人前の魔術師だと得意な系統だと上級まで使えるようになるが、

 他の魔術だと初級、もしくは中級までしか使えなくなるらしい。

 

 上級よりさらに上のランクになると系統に応じて火聖級や水聖級とか呼ばれ、一目置かれるとか。

 

 今のところ聖級が目標ではあるものの、

 家にある魔術教本は上級までしか載っていなかった。

 聖級以上はどこで覚えれば良いのだか…。

 

 

---

 

 

 日頃から本を常に持ち歩いていたのでゼニスは、俺が本好きだと思ったらしい。

 戦争み明け暮れていたときも本を読んでいた、数少ない娯楽の中で最も価値があるだろう。

 

 食事中は勿論、家族の前では極力魔術教本は読まないようにしている。

 この世界での魔術の立ち位置が分からないためだ。

 下手にバレて魔女裁判にかけられてしまってはごめんである。

 家の書斎に魔術教本が置かれていたからそこら辺の心配は必要無いだろうが、念のためだ。

 

 パウロとゼニスはのほほんとしているが、二人は息子が魔術の練習をしているとは知られてないからだが、

 メイドのリーリャからは、たまに険しい顔で見られるが、

 両親の様子を見るに、この事は報告してないかもしれない。

 彼女は赤ん坊の頃から子供嫌いだと思っていたが案外違うかもしれん。

 

 

---

 

 

 そんな秘密の特訓(笑)に終止符が打たれた。

 

 ある日の午後だった。

 

 魔術教本に書かれていた初級魔術を一通り覚え、魔術もそれなりに増えたとこだし、そろそろ中級を試そうと軽い気持ちで水砲の術を詠唱した。

 

 大きさは1、速度は0。

 

 いつも通り、樽に水が貯まるだけと思っていた。

 

 ちょっと溢れるぐらいだよね、考えていた俺が馬鹿だった。

 

 結果は凄まじい量の水が放出され、壁に大穴が開いたのだ。

 

 穴の縁からポタポタと水滴が垂れ、俺は呆然と立ち尽くしていた。

 己の油断に僅かな怒りを覚えたが、初級と中級の圧倒的格差に畏怖の念を抱いた。

 魔力を注ぐ量を間違えたかも知れない。

 そして確実に魔術を使った事が確実にバレるのは明白だ。

 

「何事だ! うおあっ……」

 

 最初に飛び込んで来たのはパウロだった。

 そして壁にできた大穴を目の当たりにして、口をあんぐりと開く。

 

「ちょっ、おい……、大丈夫なのかこりゃ……ルディ、大丈夫なのか?」

 

 パウロは家族思いの良い奴だ。

 明らかに俺が魔術を使ったとしか見えないというのに真っ先に駆け付け、俺の身を案じているのだ。

 今も「魔物か…?いや、この辺には……」などと呟いて、周囲を注意深く警戒している。

 

「あらあら…」

 

 次に部屋に入ってきたのはゼニスだ。

 彼女はパウロとは反対に冷静だった。

 壊れた壁と、床の水溜まりを順に見ていき…、

 

「あら…?」

 

 そして俺が開いていた魔術教本のページに目を止めた。

 そして俺と魔術教本を見比べ、俺の目の前にしゃがみこみ、優しげな顔で目を合わせた。

 顔は優しいが目は笑っておらず、はっきり言って怖い。

 泳ぎそうになる目線を必死にゼニスに合わせる。

 

 戦争前、目上の人間に対し目を決して反らさないよう訓練され、努力した。

 もし反らしてしまうと指導と言う名の暴力を食らってしまうためである。

 

「ルディ、もしかして、この本に書いてあるのを声に出して読んじゃった?」

 

「ごめんなさい」

 

 俺はこくりと頷き、謝罪する。

 悪いことをしたときは、きちんと謝った方が良い。

 二人が来る前は俺一人だった。

 すぐバレる嘘は信用を落とす。

 一度目の人生は軽い嘘を積み重ねて、家族からの信用を落としていったものだ。

 

「いや、だっておまえ、これは中級の……」

 

「きゃー! あなた聞いた? やっぱりウチの子は天才だったんだわ!」

 

 パウロの言葉を、ゼニスが悲鳴で遮った。

 両手を握ってピョンピョンと跳ねた。

 元気だね。

 

 気持ちは分からんでもない、俺の子が天才なら確実に喜んでいるはずだ。

 まぁ、これまでの人生において結婚はおろか彼女ができた経験は一度もないのだが。

 

「いや、おまえ、あのな、ルディにまだ文字を教えてな……」

 

「今すぐ家庭教師を雇いましょう! 将来はきっとすごい魔術師になるわよ!」

 

 パウロは戸惑い、ゼニスは歓喜している。

 どうやらゼニスは俺が魔術を使えたのから嬉しくてしょうがないらしい。

 リーリャは平然と無言で片付けを始めている。

 恐らく彼女は、俺が魔術の練習をしていることに薄々気付いていたのだろう。

 ゼニスが家庭教師を雇うと言うと、パウロがこれに反対した。

 

「いや、男の子が生まれたら剣士にするという約束をしただろう」

 

「なによ約束って! あなたいつも約束破るじゃない!」

 

「俺の事は今は関係ないだろうが!」

 

 その場で夫婦喧嘩を始めた二人、そしてそれと気にせず平然と掃除を淡々とこなすメイド。

 

「午前中に魔術を学んで、午後から剣を学べば良いのでは?」

 

 口論は30分程続いたが、

 掃除を終わらせたリーリャの一声でピタリと止んだ。

 息子の都合は無視ですかいと思ったが、戦争中似たようなことがしょっちゅうあったので気にはしない。

 

 

---

 

 

 そんなわけで、ウチは一人家庭教師を雇うことになった。

 

 貴族の子弟の家庭教師という仕事だと、それなりに実入りが良いらしい。

 パウロはこのへんだと数少ない騎士で、立ち位置は下級貴族とされており、

 一応は給金も相場と同じようなものを出せるのだとか。

 

 しかし、ここは国の中でもかなり端のほうの田舎、

 つまり辺境らしく優秀なものはもちろん、魔術師はほとんどいない。

 魔術ギルドや冒険者ギルドに依頼を出したところでこれに応じてくれる人間はほとんどいない。

 

 両親の予想によると依頼を受けてくれるのは引退した冒険者だ。

 そして長年の研鑽を積んだ中年か老人で、

 ひげをたくわえまさしく魔術師って感じののが来るのだと思っていた。

 

「ロキシーです。よろしくお願いします」

 

 だが実際は俺の予想は良い方向で外れ、年若い女の子がやってきた。

 容姿は中学生くらいだろうか。

 魔術師っぽい水色のローブを身に包み水色の髪を三つ編みにして、ちんまりとした佇まい。

 持ち物は鞄一つといかにも魔術師らしい長い杖を持っていた。

 

 彼女の姿をみた両親はびっくりとして声をだせない。

 そりゃぁそうだろう。

 予想を大きく外れた上に、ちんまりとしている。

 

 もっとも、数多くのゲームをこなしてきた俺からすればそこまで珍しくもない。

 ロリっ子でジト目、無愛想の三点セットだ。

 まさに理想の家庭教師だ。

 むしろ俺の嫁にしたいくらいでもある。

 

「あ、あ、君が、その、家庭教師の?」

 

「あのー、ず、随分とそのー」

 

 両親の言いたい事を当ててみる事にした。

 

「小さいんですね」

 

「貴方には言われたくありません」

 

 あっけなくピシャリと返された。

 背の低さは彼女のコンプレックスなのであろうか。

 

「はぁ、それで、わたしがおしえる生徒はどちらに?」

 

 ロキシーはため息つき、周囲を見渡す。

 

「あ、それはこの子です」

 

 ゼニスの腕の中にいる俺が紹介される。

 俺は景気付けにキャピっとウインク。

 それを見たロキシーは目を見開いたのち、さらにもう一つため息を付いた。

 

「はぁ、たまにいるんですよねぇ、

 ちょっと成長が早いだけで自分の子供に才能があると思い込んじゃうバカ親……。

 まぁやれることはやっておきますが」

 

 確かに親馬鹿ではあるが聞こえてますよロキシーさん!

 

 まあロキシーもこうなっては言っても無駄だと判断したらしい。

 こうして午前はロキシーの授業を、午後にはパウロの剣術を習うことになった。

 







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