ゼロの使い魔~果て無き道しるべ~   作:カタクリ

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先に御詫びを申し上げます。
鈴木悟がルイズを呼ぶ名称が、地の文とで変わっております。これは、作者が完全に毎回長く、書くのが嫌なので地の文では、ルイズと呼んでおります。御理解いただけるとたすかります。


二話「異世界」

煙が晴れて中から現れたのは、30手前の男性だった。杖を持っておらず貴族の証しとも取れるマントも付けていない。けれど身に付けているローブや、指輪などの装飾類は、ここにいる貴族ですらお目にかかった事のない上質な素材で出来ている。この場にいた貴族達が初めに思ったことは、ゲルマニアの貴族か?である。トリステインという国が魔法が使える者を貴族。それ以外を平民と位置付けているが他国では、少し異なっていた。ゲルマニアという国は、その一つでお金があれば貴族になれるのだ。あれほどの装飾類を身に付けているなら平民な筈が無いと思っていた。

 

だがそれは、あくまでもゲルマニアという国に当てはめればである。ここは、トリステイン。つまり魔法が使えなければ、それは平民なのだ。

 

「ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!」

 

使い魔を召喚して緩んだ空気の中で響く声に周りも笑いが漏れる。ルイズも呆然としていたが『ゼロ』という単語に我に返る。ルイズは、願っていた筈だった。最強の存在を。

 

「み、ミスタ!お願いします!もう一度やらせてください!」

 

使い魔を召喚出来た事に対しての喜びは既に失われていた。今は、ただ焦りだけ。これを傲慢と取るかどうか人それぞれだが、貴族とは、大抵傲慢である。

 

「それはできません。使い魔が主人を選べないように、主人もまた、使い魔を選べないのです。さあ、コントラクトサーヴァントを行いなさい。でなければ、貴女は本当に退学になってしまいますよ?」

 

何も言えなくなってしまうルイズは、歯を噛み締めながら平民を使い魔にすることを決める。未だ鳴りやまない『ゼロ』という言葉を心底悔しそうに涙ぐませ詠唱を始める。

 

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

 

使い魔との契約の儀式が始まる中、モモンガは、困惑していた。『ユグドラシル』最後のイベントだと思って飛び込んだ光は、見覚えのない場所に繋がっていた。先程から何を喋っているのか分からないし体が重い。まるでリアルの体のように。骸骨である骨の手を見ると、そこには人間の手があった。普段ゲーム内では無い。リアルで見かける手。

 

鈴木悟の人間の手だった。

 

驚愕により目を見開いて固まっていると唇を何かが塞いだ事に気付き目の前を向いて更に驚愕することになる。

 

まだ学生だろうか。幼いながらも整った顔立ちをしている。そんな美少女に年齢=彼女歴無しの鈴木悟が出来る行動は一つだった。

 

離された唇を手で触り、未だに余韻が残るなか目の前の少女を見ると何やら中年の男性と話していた。直後右手の甲に激痛が走った。痛い、熱い、とゲーム内なら有り得ない感覚に戸惑いを覚える。

 

目も開けていられなくなるほどの激痛が走り最後に見たのは、『ユグドラシル』でもリアルの世界にも無かった。大きな月が2つ浮かび上がっていた。

 

 

 

 

 

「知らない天井だ」アニメでは、もはやデフォになりつつある言葉を口にする。柔らかい感触が背中に感じられる事から布団に寝かせて貰っていると理解する。安心したからか、女の子の良い匂いが鼻腔をくすぐる。起き上がると、少し倦怠感に襲われるが一人部屋にしては、広く保健室にしては狭い部屋を見渡す。クローゼットや化粧をする鏡。それに、窓から見える二つの月。

 

「夢じゃ無かったのか...」

 

最後に見た光景は、夢だったのでは?と思ったが外に見える二つの月が夢じゃないと物語っている。

 

記憶を整理するために、最後の記憶を思い出す。『ユグドラシル』で、確か...光に覆われて。そこから何故か見たこともない場所に現れた。有り得ない、が実際に起こっているので認めるしかない。それに、ゲーム内だという可能性もない。何故なら、今の俺はモモンガではなく”鈴木悟“なのだから。

 

部屋にある鏡を見て確認したので間違いない。自分が写った鏡。なら現実か?だが方法が分からない。『ユグドラシル』にダイブしている時は、現実世界と意識は遮断されている。それに専用コンソールを使っているので動かそうと思ったら首に付けられたコンソールを抜くしかない。抜けば、現実世界に意識は戻るし、何より外部から触れられれば、強制的に落とされて意識が戻るようになっている。

 

 

-------------不可能だ。

 

百歩譲ってスタンガン等により、気絶させられた状態でここまで運んだのなら。それも無理だろう。そもそも日本じゃないし、なんなら月二つあるとか、世界中探してもないだろう。

 

辿り着いた回答は、異世界に飛ばされた。だが、信じたくないが一番可能性としては有り得るだろう。恐らく、あの光がここに呼び出す呪文か何かだったのだろう。

 

せめて『ユグドラシル』のように魔法が使えれば。現実の人間に魔法を使うことは、出来ない。それは、当たり前だ。だから惹かれた、というのもある。発動しないと、分かっていてもつい身ぶり手振りでやってしまう。

 

片手を前に出して『ユグドラシル』で発動するときと同じように言葉を紡ぐ。

 

「《ドラゴン・ライトニング/龍電》」

 

呟いた瞬間。体が奇妙な感覚に襲われ、前に出していた腕に白雷が生じ地鳴りをあげながら窓に向かって雷鳴が轟いた。

 

開いた口が塞がらない。先程まで綺麗に掃除された部屋は、見る影もなく半壊していた。壁には、大きく穴が空いている。

 

地響きがするほど巨大な音がしたのだ。一人だった部屋には、この部屋の主である女の子が扉を荒々しく開けて入ってきた。

 

 

「な、何!今の音は!?」

 

ベットから起き上がり手を前に出している俺。そして手の先には、壊された壁。もう、誤魔化す時間もないだろう。

 

「な、何やってんのよ!あんたぁあああ!!」

 

この部屋の主、ルイズの叫び声が穴を開けられたことにより、学園全体に響いたのだった。

 

 

 

 

 

鈴木悟は、説明していた。壁を壊した経緯ではなくどこから来たのか、どうやって来たのかを。

 

最初は、話そうにも言語が理解できなかったが、杖を向けられ、爆発させられ言葉が理解出来るようになった。上位魔法無効化があるが僅かにダメージを負った事に驚くがそこまでの威力ではないので、言語が伝わるようになって良かったと思うことにする。

 

 

それに、俺が『ユグドラシル』の魔法を使えるとしてアンデッドではない、俺のスキルはどうなっているんだろうか?クリティカルヒット無効、精神作用無効、飲食不要毒・病気・睡眠・麻痺・即死無効死霊魔法に耐性肉体ペナルティ耐性酸素不要能力値ダメージ無効エナジードレイン無効ネガティブエナジーでの回復ダークヴィジョン/闇視があるが、眠っていたので睡眠は、必要だろうし、お腹も空いている。それに性に対する気持ちも....うんあるな。そんな事もあり、説明が終わったわけだが。

 

「ふーん、そうなの」

 

「ん?嘘だと思わないんですか?」

 

年下の女の子だろうと敬語を使ってしまうのは、社畜が身に付いているせいなのか、少し悲しくなってくるが、それはいい。今の経緯を話されたとして、仮に俺が聞いたとしたら信じられる気がしない。

 

「嘘なんてついてもしょうがないでしょ?それに自分の使い魔を信じるのも主人の義務よ」

 

ルイズは、笑顔で言ってくる。その純粋な笑顔に少しくすぐったい気持ちになり視線を下げる。

 

「で、あれは貴方がやったの?」

 

「え?.....」

 

穴が空いた壁に指を向けて笑顔のまま聞いてくる。鈴木悟最大のピンチであった。鈴木悟は、例えば死にそうな人であれば簡単に治して見せるだろう。死人でも生き返らせる事は可能だ。だが壁の穴を元に戻す魔法なんて覚えていなかった。

 

「どうなの?」

 

「...はい」

 

信じてると言われて嘘をつける筈もない。

 

「そう、ねえ。どうやってやったの?」

 

「え?」

 

急に雰囲気が変わって聞いてくる。だがどう答えたものか、正直答えてよいものか分からなかった。杖を持っており爆発したことから、魔法が使えることは分かったが、それでも俺はこの世界の事を何も知らない。知らなさすぎるのだ。

 

だから先に、保険ではないがこの世界の事を知ってからでも遅くはないだろうと思った。

 

「その質問に答える前に、幾つか質問をいいですか?」

 

「良いわよ、その代わりしっかり答えてもらうんだからね?」

 

少し疑いながら聞いてくる少女に勿論です。と答えながら幾つか聞いておきたいことを質問する。

 

「『ユグドラシル』や『日本』という名を聞いたことはありますか?」

 

もし仮に異世界だとして、俺以外に『ユグドラシル』から来たプレイヤーがいるかもしれない。もしかしたらかつての仲間も...。それに目の前の少女は、ゲームをやりそうには見えないので『日本』を知っているか聞いてみることにする。正直知っていると思っていないが確認のためである。

 

「『ユグドラシル』に『ニッポン?』何それ?」

 

「そうですか...」

 

予想通りではあるが、少しへこんでしまう。元いた世界に未練はないが、唯一『ユグドラシル』で、また仲間達と一緒にプレイしたらチャットで会話したいとは思う。この願いも帰ったところで叶う筈もない願いだし、異世界で暮らすのも悪くはないか。

 

「黙りこんじゃってどうしたのよ?質問はそれだけ?」

 

予想より長い間考え込んでいてしまったらしい。

 

「ああ、いえすいません。少し考え事をしてまして、次の質問ですが。先程聞いた使い魔とは何ですか?」

 

帰れない以上、一番聞いておかなければいけないのは、自分の現状だろう。この世界で暮らすにしても気になるワードである。

 

「使い魔って言うのは、そうねー。主人を護ったり、レアな秘薬を見付けてきたり、後は...日常的なサポートかしら?あなた、弱そうだから護ってもらうのは、無理だと思ってたんだけど...」

 

そう言いながら壊された壁を睨む少女に苦笑いしか返すことはできない。

 

「聞いている感じでは、貴女の使い魔になったと言うことですか?」

 

「そうよ。それと使い魔なんだから名前で呼びなさい。私の名前は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」

 

「る、ルイズ・フランス?」

 

長い...どれだけ長い名前なんだ。この世界の人の名前は、皆こんな感じなのか?それだと覚えるのめっちゃ大変じゃないか。ていうか、何処が家名で何処が名前なのかすら分からん。

 

「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!何よ、フランスって。もう、好きに呼んで良いわよ。友達は、ルイズって呼ぶし、先生なんかは、ミス、ヴァリエールって呼ぶわ」

 

「えーと、それじゃ....ミス、ヴァリエールさんで」

 

「それで良いわ」

 

納得した、という感じで無い胸をはるルイズに、苦笑いを返すしかなくなる。

 

「次の質問ですが」

 

「まだあるの?」

 

めんどくさそうな顔をしている、ルイズに最後の質問だからと、聞いてもらう。

 

「この世界の事を詳しく教えてください」

 

「まあ、そうね。何も分からないんじゃ、私としても困るわけだし良いわよ」

 

 

時間としては、1時間ほどかけて教えてもらった。今現在いるのは、トリステインという国だと言うこと。その他にも国が存在することをゲルマニアの話になると、急に不機嫌になったりもしたが。それにこの世界では、共通して始祖ブリミルという神が崇拝されている。現在では、失われた魔法『虚無の魔法』を扱い4人の使い魔を従えていた。自分は貴族であるということ。そして貴族は、魔法を使えるということ。等色々教えてもらった。

 

魔法が使えれば貴族なら俺も使えるが?と思ったがその場で言うのは、止めることにした。どうせ後で言わなければいけないことだ。それに、先住魔法と呼ばれる魔法があるらしい。この世界では、四系統の魔法に分けられており土・水・火・風に分けられている。それ以外の系統の魔法を先住魔法と呼ぶらしい。それなら虚無の魔法も先住魔法のようなものだと思うがと思ったが崇拝している神に対して文句を言ったところで意味がないので止めておく。更に、これは、聞いておいて良かったが、この世界の人間とエルフの仲は悪いらしい。エルフは、先住魔法を使う。そして、先住魔法とは、杖を必要としない。ルイズや他の貴族は、共通的に、杖が無ければ魔法を使うことは出来ない。

 

勿論魔法を試した時、杖なんて出していなかったし、出している必要も無い。変に波風立てるよりは、こちらの世界の法則に乗っ取ってレールに乗った方が良いだろう。

 

「ありがとうございました。これである程度分かりました」

 

『ユグドラシル』の世界と異なる世界。魔法だけ共通しているが、後は何もかもが違っていそうな世界だ。

 

「それじゃ、説明してくれるかしら?この穴の事を」

 

待ってましたと言わないばかりに聞いてくる。今の話を聞いて、ルイズの使い魔になった事は理解した。それなら衣食住は、ルイズにかかっていると言っても良いだろう。鈴木悟は、野宿の経験もなければ、アウトドア派でもなく、インドア派である。そんな男が一人路頭に迷う。笑える筈がない。

 

「それはですね。私の魔法で壊しました」

 

「.....魔法、ね。嘘じゃないのかしら?貴方、杖を持っている様子は見えないけど」

 

流石に鋭いが、考えてある。ゲームの時のように魔法が撃てたのだから、と何もない空間に手を入れるように動かすと黒い穴が現れる。心の中で現れてくれた事に感謝しながら目当ての物を取り出す。

 

「な、何よ!その穴は!」

 

「マジックアイテムですよ。知りませんか?」

 

今までの話を聞いた限りでは、見たことがない現象を起こす物は、マジックアイテムと言えば解決するらしい。それに、こう言えばプライドの高い貴族なら言い返してこない筈。

 

「そ、そう...マジックアイテムね。それなら納得だわ」

 

ルイズがチョロいだけなのか、皆こうなのか分からないが、目当ての物が見付かったので掴み穴から出す。

 

「これが私の杖です」

 

『ユグドラシル』内で、手に入れた初期武器であり。ユニコーンの角を材料にして作っている。正直杖を使うと、ステータスが上がってしまうので、あまり持ちたくないが低ステータス補助の杖なら問題ないだろう。外装だけは、拘ったのかまるで宝石のように輝いている杖である。レベル70越えてるモンスターに一度ブレスで杖溶かされてから使うの止めたんだよなぁ。ユニコーンって何故かあんまり倒したくないし。

 

「あんた...貴族だったの?」

 

「いえ、貴族ではありませんよ?ただの“平民“です」

 

この国では、魔法が使える者が貴族。だが俺は貴族じゃない。あくまでも俺は平民なのだから。

 

「そう...ねえ。魔法見せてくれないかしら?」

 

「?構いませんが....」

 

「別に気にしなくていいわ。さっきと同じ魔法で良いわ。もう穴は、空いているし問題ないわよ」 

 

それがそうでもないのである。先程は杖なしで、補正なしでやった結果なのだ。今度は低補正とは言え、補正が付くのだ。正直加減しても部屋が持つ気がしない。

 

「何してるのよ?」

 

「...今日は、もう疲れてしまったので明日では駄目ですか?」

 

困ったときは、明日の俺に任せる。である。攻撃特化に作ってしまったモモンガの性能では、何処に魔法を撃っても災害になるだろう。

 

「そうね、分かったわ。あ、お腹空いてると思ってご飯持ってこさせてるからあと少し待ちなさい」

 

「それは助かりました。お腹空いていたのでありがとうございます」

 

「お礼は良いわ。使い魔の体調管理も主人の役目ですもの」

 

アンデッドじゃなくなった事で食事が必要になっているが、これなら心配ない、と少し安心しながら食事が来るのを待つことにした。

 

「それにしても....この壁どうしようかしら」

 

「本当にすいません」

 

虫の音が聞こえる中、静かに落ちていく夕陽に別れを告げながら明日になったら、しっかり直そうと心に決めるのだった。

 

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