都内某所のお好み焼き屋、その一角に集まった6人の女・・・織斑千冬、セシリア・オルコット、更識刀奈、更識簪、布仏虚、布仏本音。
「皆、よく集まってくれた」
操縦士科、整備科入り乱れた面子が皆真剣な表情でこの集まりの発案者である千冬を見つめる中、千冬はゆっくりと口を開いた。
「今日、お前達を集めたのは他でもない・・・『奴』が動き出した」
「奴、ですか?」
「そうだ。奴は私にとって仇敵とも言える存在だ。
今まで大した動きを見せなかったが・・・奴め、痺れを切らして行動を起こした。
だが、奴の思い通りにする訳にはいかん!
・・・決戦だ。奴が仕掛けてくるなら、それに乗じて奴を討ち取る!
学園や警察が何を言おうと邪魔はさせん!!
しかし、今回の件に限って言えば、一夏、鈴、シャル、子分メイドは全く当てにならん。
箒(マスクド)にも声をかけようとしたがバイトが忙しいと断られた。
今ココにいる面子だけが戦力として期待出来るメンバーなんだ」
忌々しげに目を細める千冬。
普段のおちゃらけた彼女からは想像もつかない雰囲気だ。
「生徒会のメンバーまで巻き込んで申し訳ないと思う。だが、今回の敵は強敵だ。どうしても戦力は多く欲しい。
この織斑千冬、一生の頼みだ。奴を討ち倒す為の戦い・・・手を貸して欲しい!」
普段一夏以外に滅多に下げない頭を下げる千冬。
その姿に5人の瞳に決意の炎が宿る。
「・・・仮にも初代ブリュンヒルデであるアナタが頭を下げるとは、余程の事ですわね?」
「まぁ、良いでしょう。暗部は三代前に廃業したとはいえ、日本政府に仕えた私達布仏と更識の力をお貸ししましょう」
「すまん、恩に着る!
では、三日後にこの地図の場所まで来てくれ!」
セシリアと虚の言葉に再び頭を下げ、千冬は席を立ち、支払いを済ませて店を出たのだった。
「ところで、虚さん」
「何です?」
「『奴』って誰でしょうか?」
「え!?セシリアさんが知ってるんじゃないんですか?」
「へ?私は虚さん達が知らされてるのかとばかり・・・」
・ ・ ・ ・ ・
三日後、都内の某遊園地の入り口には3人の少年が立っていた。
「あ、いたいた!おーい、弾!」
「一夏君、おまたせ!待った?」
「ゴメンね透。自宅に手間取っちゃって」
その3人・・・一夏、弾、透に駆け寄る3人の女。
一夏の婚約者・真凛
弾の彼女・鈴音
透の恋人・子分メイド
本作における全カップル組である。
「大丈夫大丈夫。俺達も5分前に着いた所だからな」
そう、今日はこの3組によるトリプルデートである。
「あの
私の最愛の弟の5分、貴様の命を以て償わせてや『
「テキサスコンドルキッーーク!!」
「ひでぶっ!?」
どこから持ってきたのか、日本刀とライフル銃を構えて飛び出そうとする千冬にセシリアの変形ラリアットと簪の両膝蹴りが炸裂した!
「な、何をするお前ら!?」
「こっちの台詞ですわ!奴ってアレですの?一夏さんの彼女!?」
「彼女じゃないもん!あんなパチンコ屋で『super lucky♪』とか言ってそうな女、お姉ちゃんは絶対認めません!」
「私だってアンタみたいな阿呆馬鹿が初代ブリュンヒルデなんて認めないよ!」
「かんちゃん、私も刀奈お嬢様が更識家次期当主なんて絶対認めないよ」
「それ関係無いでしょ!?・・・否定はしないけど」
「二人とも酷い・・・(泣)」
そう、千冬の目的・・・それは『一夏と真凛のデートの阻止(ついでに他の2組も巻き添え)』である!!
「馬鹿らしい、わざわざ休日に出向いたと思ったら弟のデート邪魔しろなんて」
「同感。虚さん、このブラコンに何とか言ってやってよ」
余りに馬鹿馬鹿しい展開にセシリアと簪の二人は呆れ返り、生徒会長である虚にも同意を求める。
だが・・・。
「誰が虚ですか?」
「へ?」
「殺し屋、ウツホ
サングラスをかけ、ライフルを構える虚。
まさかの
「千冬さん、今回ばかりは全力で協力します!あの3人・・・1年坊主の分際で相手作るなんて・・・何てはしたな、ではなくて羨ましい・・・!!」
言い直せてない上、嫉妬丸出しである。
布仏虚・・・普段はまともな彼女だが、他人の恋愛が絡むと途端に嫉妬剥き出しの爆弾女と化すのだ。
「同感ね。千冬ちゃん、虚ちゃん、私も協力するわ!」
「ちょっ!?虚さんにお姉ちゃんまで・・・」
「私の事はカタナ13と呼びなさい!」
「何便乗してますの!?大体13って何ですの!?」
「不吉の象徴・・・そして生まれてこの方13回に渡り狙ってた男を他の女に取られた私の悲しみと怒り」
虚の口から語られる理由とも言えない理由。
・・・完全に逆恨みと八つ当たりも良い所である。
「私にとっては今年に入って13回、簪ちゃんに無視された。
それに、あんなポッと出のオリキャラ二人と中堅ポジの鈴ちゃんが、真のヒロインである私を差し置いて彼氏作るなんて・・・許せないわ!」
刀奈の場合、恋愛など関係無い上ただの自業自得。
しかも何しれっと厚かましい事言ってんだコイツは?
「よし、行くぞお前ら!」
セシリアと簪のツッコミも虚しく、3人のモテない女共は一夏達を追って遊園地に突入してしまった。
「あっ!ちょっ・・・行ってしまいましたわ」
「こんな所で暴れられたら大変な事になる・・・止めに行くよ!
本音、手伝っ『誰が本音よ。私は殺し屋、ホンネ13』・・・アンタまで何やってんの!?」
「面白そうだから行ってきまーす!」
本音に至っては完全に好奇心だけで動いてるからタチが悪い。
・ ・ ・ ・ ・
早速尾行を開始したヤバイ女4人とそれを止めようとする2人。
最初に訪れたのはメリーゴーランド。
このメリーゴーランドはカップル向けの仕様で、馬一つに二人で相乗りできる設計になっており、一夏達はそれぞれ仲睦まじく相乗りし、その少し後ろには千冬達がそれぞれ馬に乗ってライフルを構えているが・・・
「クッ・・・あの女、なかなかやるな。まさかこれを選ぶとは・・・」
「狙いが定まりません」
「距離が全然縮まらないわ。何か気持ち悪くなってきたわ」
「うぇっぷ・・・」
「縮まるわけないでしょうが!これメリーゴーランドですよ!?
土台ごと一緒に回ってるんですわ!永久に回り続けてなさい!!」
バカ4人の奇行にセシリアの痛烈なツッコミが入る。
というか、コイツらはメリーゴーランドの仕組みも知らないのだろうか?
「遊園地なんて幼稚園の頃以来なので分かりません。
次に来る時は彼氏を作ってからと決めてたので」
「私も無いな。ホストクラブなら一回行った事があるが、アレは私には合わん」
随分と寂しい青春である。
「あのさぁ、カップルに嫉妬するのは勝手だけど、やり方ぐらい弁えようよ。
このままじゃ最悪一夏君達にバレて半殺しだよ?」
「えぇい!喧しい!バレるのが怖くて逆キューピッド作戦が出来るか!
バレなきゃ良いんだ!バレなきゃ!!」
「もしあの娘(子分メイド)と透に何かあったら私がチクりますわよ?」
「ぐっ・・・!い、良いだろう。あの二人、ついでに鈴と弾には手出ししないでおこう。
私の目的はあくまで一夏とあの女の仲を引き裂く事だからな」
「・・・仕方ありません。狙いは一組に絞りましょう」
「いっちーのパンチ、すっごく痛そうだしね・・・」
口では強がりながらも内心バレるのは怖いらしい。
次に訪れたのはお化け屋敷。
メンバーそれぞれがカップル毎にペアで入る所を狙って仕掛けようと、千冬達は先回りして待ち伏せ作戦を取っていた。
「ククク・・・闇に乗じて驚かして小便ちびらせてくれる!」
そう息巻いてお化け屋敷に突入した千冬、虚、刀奈、本音(しかもどこから調達したのかゾンビのマスク装備)。
セシリアと簪は付き合いきれずに外でソフトクリームを食べながら待っていた。
「ねぇ、思ったんだけどさ、顔隠して襲うのは良いけど、逆に返り討ちに遭う危険があるんじゃないの?」
「有り得ますわね。下手に彼女さんに手を出すと一夏さんのパンチが『テメェ!何真凛にセクハラしてんだコラァ!!』・・・」
『ギャアアアァァァァッッ!!』
『ごめんなさーーい!胸触った方が怖がると思ったんです〜〜っ!!』
『テメェらぶっ殺す!!』
『『『『たじげて〜〜〜っ!!』』』』
『い、一夏君落ち着いて!私もう大丈夫だから!』
アトラクションの外にまで聞こえてくる憤怒の声と断末魔の叫び・・・これだけでもう中で何が起きたか理解できてしまった。
「「・・・・・・はぁ〜〜」」
大きくため息を吐き、セシリアと簪は中でボッコボコにされてるであろう4人を思い浮かべて静かに合掌した。
数分後、4人は命からがらお化け屋敷から脱出してきた。
「ほ、本当に死ぬかと思った・・・」
「お化けより怖かったよ・・・」
「か、顔を隠したのが逆に仇でした。ガチで殴りかかってくるんですから・・・」
「自業自得ですわ」
「・・・・・・」
「ん?お姉ちゃん、何で黙ってるの?それに、何か姿勢に違和感が・・・。
何か内股気味な感じ・・・ん!?」
刀奈の不自然な態度と姿勢に違和感を覚える簪。
そして、直後に気付いた。違和感の正体・・・そこから来る異臭と液体によって。
「簪ちゃん、あと皆・・・誰にも言わないででござりまする・・・」
「「「「「えぇ〜〜〜〜っ!!??」」」」」
目から一筋の涙を流す刀奈に、5人はドン引きしたのだった。
数分後、刀奈の売店で買った下着と服で着替えを済ませ、5人はベンチで小休止に入った。
「くそぉ・・・まさかここまでガードが固いとは・・・」
「もう諦めなさいな。アナタ達の下らないセクハラ攻撃であそこまで怒り心頭だったのですわ。
それだけ、一夏さんは彼女の事を本気で愛しているのですわ。
仮に本当に真凛さんが失禁してしまったとしても、一夏さんの想いが変わるとは思えませんし」
「ぬぐっ・・・!」
「セシリアちゃん、それはアレ?一夏君は彼女さんの事が汚い部分も受け入れてしまう程好きって事?
アナタは私が漏らしたのをドン引きしてたのに」
「お姉ちゃん、私も引いてるよ。しばらく話し掛けないで」
セシリアに諭され、言葉に詰まる千冬。
そして、刀奈は簪に突き放され、再び泣く。
そんな中、5人の背後からある人影が近付きつつあった。
「あのー、ちょっと良いですか?」
「ん?何か用・・・か・・・っ!?」
振り返ってその人物を見た時、千冬は凍りついた様に硬直した。
「ずいぶんボロボロですけど、大丈夫ですか?」
そこにいた女性・・・一夏の恋人、海野真凛は心配そうに千冬達の顔を覗き込んでいた。
・ ・ ・ ・ ・
一方その頃・・・
「うふふ・・・お兄を奪う泥棒パンダ・・・北町の遊園地諸共みーんな纏めて吹っ飛ばしてやるんだから・・・!!」
不穏な影がもう一つ、近付きつつあった・・・。
登場人物(?)紹介
御手洗数馬(ゴリラ)
ゴリラ改め御手洗数馬。年齢は人間換算で16歳程。
実はゴリラとしては非常に高い知能の持ち主で、人語は完全に理解しており、その気になれば筆談で会話も可能だったりする。
父は寿司職人のゴリラで、料理の腕は父譲りで非常に高い。
夢は一流の蕎麦職人で、現在は蕎麦屋でのバイトを通じて修行中。
仁人
筆者の実家で飼ってるトイプードルの一匹。雄・2013年生まれ。
筆者の本編登場時は彼が代筆している(という設定)。
性格は甘えん坊で人懐っこい。
ちなみに、筆者の実家には他にもペットの犬が3匹いる。