皆様、良いお年を。
ディナーショーを終え、就寝時間を迎えて乗客達が眠る中でも、船員達はそうもいかない。
交代制でそれぞれの持ち場に着き、規則正しい航海の維持に努める。
しかし・・・
「ったく、見張りなんて暇なだけだろうが。
どーせ暗礁やら他の船が近付いたらレーダーやらソナーやらで探知するんだから。
酒飲みながらでも全然問題ねーよな!」
Mr.不真面目にして六つ子No.1の無職童貞クズ・松野おそ松は厨房からくすねて来た缶ビールとつまみ片手に見張り台の上で寝そべりながら今日もまた仕事をサボっていた。
他の兄弟達(同じく無職童貞)ですら与えられた仕事は(差はあるものの)ある程度真面目にこなしているというのに長男のこの男はこの体たらくである。
そもそもニートな彼らが働く事になったのもおそ松が3ヶ月程前に闇金(束の傘下)で50万円の借金を作ったのが原因であり、2ヶ月前に催促状が届いた事で両親にそれがバレて怒りを買い、金融業者の紹介で一定期間働く事となり、地下工事現場を経た後、ヘルプとしてこの船のスタッフとなったのだ。
しかも、借金の早期完済と当面の生活費と貯金確保のために他の兄弟も巻き添えなのだから、タチが悪い。
「あー、すっげぇ暇!パチンコ行きたい!競馬行きたい!
何か面白いイベントでもねーのかぁ!?」
「それじゃあ、私達が面白くしてやるよ」
「へ?・・・グボァ!?」
突如として上空から現れた人影に、おそ松は顔面を蹴飛ばされ、見張り台から甲板へ叩き落とされた。
・ ・ ・ ・ ・
「クソ!何が起きたってんだ一体!?」
日が登ると同時に鳴り響く警報音に、客室にいた一夏達は目を覚まし、何事かと甲板へと上がった。
「一夏、大変だぞ!この船、包囲されてる!!」
甲板に一足先に上がった箒が声をあげる。
視界に映ったのは小型艦や空母、果ては大型VTOLによって船が完全包囲された光景だった。
『フフフ・・・おはよう、IS学園の生徒さん及びその関係者の皆さん』
空母から立体モニターで映し出されたのは椅子に座って踏ん反り返る金髪の女性。
その両隣には黒髪の女性と顔を仮面で隠した少女が立っている。
しかも足元にはボコボコにされて縛られたおそ松の姿もあった。
『そして、初めまして。私の名はスコール・ミューゼル。
武装組織【亡国機業】の幹部よ』
「亡国機業だと!?国際指名手配されているテロ組織ではないか!?」
唐突に名乗り始めたスコールに、元軍人のラウラが驚愕する。
「そのテロ組織の幹部とやらが、何の用だってんだ?」
『フフッ・・・決まってるでしょう?私達の目的、それはこの船そのもの。
この潜水艦は私達が頂くわ!そして、私の部隊専用の移動基地として活用させて貰う!!』
何とも分かりやすい回答である。
『まさに降って沸いた幸運だわ。・・・こんな凄いハイスペックな船を手に入れて、基地に出来るなんて、この幸運を運んできたアナタ達に感謝するわ。
ありがとう。・・・ありがとう。
・・・・・・本当にありがとう!!!!』
何と、スコールは突然泣きながら土下座し始めた。
【・・・は?】
思わず声がハモる一夏達。
しかし、そんな事はお構い無しにスコールの感謝の言葉は続く。
『私、幹部なのに!幹部なのに!!私が末端の幹部だからって、幹部の中で私だけ基地持ってなくて・・・みんなから馬鹿にされて!私、悔しくて悔しくて・・・!!
でも!そんな悔しい気持ちも今日まで♪素敵な基地、見つけたんだもーん♪」
今度は一転、歓喜しながら踊り始めた。
・・・喜怒哀楽の激しい女である。
『おい、落ち着けってスコール。
すまん、スコールの奴、喜びの余り昨日からずっとこんな感じで・・・』
『アハハ!もう、オータムったら。私ちくわじゃないって♪』
遂には訳の分からない台詞まで出始めた。浮かれすぎだろ・・・
『・・・チッ!おい、カメラ止めてくれ。マドカ』
『ああ・・・!』
オータムと呼ばれた黒髪の女とマドカと呼ばれた仮面の女は青筋を浮かべながらカメラを止め、そして・・・
『ブッ!?ちょ、待っ・・・ムギャッ!!ごめん、あガッ!?ごめんなさーい!!』
音声のみだが何が起きたか一夏達はすぐに理解出来た。
数分後、再びカメラに映し出された時、スコールの顔は若干腫れ上がり、紅葉型の痕が残っていた。
・ ・ ・ ・ ・
『お見苦しい所を見せて失礼。さて、私達の要求は聞いての通り、この船そのものよ。
大人しく渡すならそれで良し。帰りの手段ぐらい用意してあげるわ。
けど、渡さないなら・・・実力行使に出るしか無いけど?』
好戦的な笑みを浮かべるスコール。
顔が腫れてるからいまいち締まらないが・・・
「テロリストの言う事が信用出来るとでも?
それに、貴方達にとってこの船は出来る限り無傷で手に入れたい物の筈・・・。
つまり、下手にISや銃火器は使えない筈です。
ならば、我々にも対抗する手段はありますが?」
一夏達がスコールと画面越しに睨み合う中、船長代理のクロエが、クラリッサを始めとした船員複数人を引き連れて現れる。
『そうねぇ・・・出来れば、というか是が非でもその船は無傷で手に入れたいわ。
人質は一応一人捕まえたけど、コイツじゃ駄目そうね。さっきからアナタ達誰もコイツの事に触れてくれないもの』
「あ、その馬鹿はお好きにどうぞ。サボってばっかりのダメスタッフなので」
【意義なーし!!】
哀れにもおそ松はクロエにも弟達にも簡単に見捨てられてしまった。
『いらないから返すわ』
「グエッ!あぁーーーーっ!?」
更にはスコールからも用済みとされ、おそ松は甲板に叩き落とされたのだった・・・。
『さて、話が少し脱線したけど。一つ提案があるわ。
私の部隊はなかなか精鋭揃いでね。特に強い部下がオータムとマドカ以外にも5人はいるのよ。
そこで!私達精鋭部隊とアナタ達の中から最も強い者達・・・それぞれ選抜して全7試合の団体戦を提案するわ!!』
「団体戦だと!?」
『勝負は先に4勝した側の勝利。私達が勝てばこの船は無傷で頂き、アナタ達は船を降りる。
アナタ達が勝てば私達は大人しく退却するわ。どうかしら?」
「正直、面倒臭ぇし、受けるメリットは少ないが・・・」
「受けないで強行手段を取られても困りますし・・・」
「それに私にとって、この船以外で帰るのは自殺行為だ」
「良いだろう!その勝負受けた!!」
比較的冷静な一夏、クロエ、箒が思案し、それに呼応する様に千冬は勝負を承諾。
今ここに、IS学園チームと亡国機業チームの団体戦が決定した!
「リングはこちらで用意しましょう。皆様、少しお下がりください」
徐にクロエは懐からリモコンを取り出し、それを使用して甲板を操作する。
すると・・・
「わわっ!?り、リングが!?」
何と、甲板の一部が開き、プロレスなどで使用されるリングが迫り上がってきた!!
「フフフ・・・いつか船上格闘技イベントの為にと用意していたリングがこんな形で役に立つとは・・・」
「最早何でもありですわね・・・」
不敵に笑うクロエにセシリアは若干呆れながら突っ込む。
『それじゃあ、早速第一試合と行きましょうか?』
「こっちの一番手は、このオータム様がお前らを可愛がってやるぜ!」
亡国機業チーム一番手は先程スコールにお仕置きを加えた黒髪の女、オータムが空母から架けられた橋を渡り、姿を見せた。
そして、対するIS学園チームは・・・
「私に任せろ。テキサスの荒野で鍛えた力、見せてやる!!」
テンガロンハットを脱ぎ捨て、リングに上がったのは篠ノ之箒!
潜水艦争奪戦・第一試合
箒 VS オータム
海上の激闘・・・そのゴングが今鳴り響く!!
次回予告
いよいよ幕を開けた亡国機業との戦い。
箒のテキサスファイトがオータムに炸裂する!!
次回『荒馬少女・篠ノ之箒!!』
オータム「喰らいやがれ!ダイナマイトキィィック!!」
箒「受けてみろ!これが私の
※挿絵絶賛募集中です(特にアメリカンスタイルの箒)