時系列に関してはあまり気にしないでください。
12月24日の早朝。
暗闇の中に一筋の光・・・スポットライトがある人物を照らす。
「どうも皆さん、まずはメリークリスマスと言っておきましょう」
その人物・・・椅子に腰掛けた布仏虚は表情を険しくしながら重々しく口を開いた。
「クリスマス、そうクリスマスです。
子供にとってはサンタクロースを語る親族からプレゼントを貰えるありがたい日。
大人の恋人持ちは彼氏彼女と聖なる夜を建前に甘ったるい夜を過ごす日。
そして、独り身の人間は惨めに寂しい思いを強いられる日・・・!
この際だから言います。
クリスマスだの聖夜だの騒いでる人達・・・
お 前 ら 全 員 死 刑 ! !
もううんざりなんですよ、テメェらのその恋人自慢は!
どうせクリスマスっぽい事は服装とプレゼント交換と晩飯だけで、後は結局ヤるだけ。
なーにが聖なる夜ですか!?性なる夜の間違いでしょう!?
それに比べて独り身の寂しさと惨めさと来たら・・・テメェらに解りますか!?
これはもう差別!天による差別に他ならない!!
だからこそ、私は浮かれたリア充共にロケットランチャーをぶっ放してぶっ殺してやりたい!!ファイナルアンサー!?」
「ファイナルアンサー!!」
「「・・・・・・」」
明かりが付いた生徒会室内に刀奈の返答だけが響き、簪と本音は冷めた目で虚を見つめていた。
「ファイナルアンサーじゃないわよ!!何で私にゃ彼氏が出来ないのよぉ〜〜っ!!
私はね、私はねぇ・・・彼氏が欲しいの!愛が欲しいのよぉ〜〜っ!!」
「私だって本当は彼氏欲しいもん!クリスマスの思い出作りたいもん!!」
先ほどの怒りとは打って変わって今度は膝をついて目から涙、鼻からは鼻水を垂れ流す二人。
そんな二人に妹コンビは揃って溜息を吐く。
「お姉ちゃん達・・・そういう所だよ、彼氏出来ない原因」
「がっつき過ぎ・・・肉食系過ぎて同性の私達も引く。
っていうか、こんなのが自分の姉かと思うと嫌になるんだけど?」
「何よぉ!簪ちゃんと本音ちゃんだって彼氏いないじゃない!!」
「私達だって彼氏欲しいけど、二人みたいにガツガツしてないだけだよ〜」
「本音みたいに男子との交友関係広げてLINE交換からじっくりやれば?
私も子分メイドと透君の友達紹介して貰って何人か仲良くなってるし」
非リア充街道爆進中な姉コンビに対し、手堅く男友達を増やす妹コンビ。
どちらがリア充に近いかは言うまでもないだろう。
ちなみに簪と本音は明日のクリスマス会(セシリア主催)に呼ばれていたりする。
「お姉ちゃん達も来る?同伴者歓迎って事になってるし」
「行く!絶対行く!」
「そして今年こそは彼氏を!!」
あからさま過ぎる肉食系女子な姉二人を見ながら簪達は思った。
今年も二人に彼氏は出来そうにないだろうなぁ、と・・・。
・ ・ ・ ・ ・
「それでは、クリスマスを祝して、そして今日という日に出会いを願って・・・」
『かんぱ〜い!』
私の名は篠ノ之箒。
アメリカ帰りの剣道少女にしてブロンコガールの異名を持つ女。
今日はセシリアの奴が合コンを兼ねたクリスマスパーティーを行う事になり、招待された私は合コンとパーティーに釣られてノコノコ来てしまった。
しかし、一つ問題なのは・・・
ここが船上パーティーだと言う事だ!
「ぐえぇぇぇ・・・!」
忘れられてるかもしれんが私は乗り物酔いが酷いんだ!
姉さんが造ったあの絶対酔わない潜水艦以外無理ぃ〜〜〜〜っ!!
「フライとカルパッチョお持ちしました!」
NO〜〜っ!!この状況で揚げ物と生魚とか絶対吐く〜〜〜〜っ!!
「お、降ろしてくれぇ〜〜!!」
「もう出航してますわよ?」
「泳いで帰るから降ろせぇ〜〜〜〜っ!!」
・ ・ ・ ・ ・
都内某所に設置されたイルミネーションが施された大型クリスマスツリー。
恋人達で賑わうこの観光スポットに、一夏と真凜の姿はあった。
「今年もまたココに来ちまったな」
「そうだね。だって私達の思い出の場所だもん」
懐かしむようにツリーを見上げる二人。
4年前、二人はココでお互いに想いを告白し、晴れて恋人同士になったのだ。
「あ、そうだ!真凛、これ忘れない内に・・・」
懐から包装された小箱を取り出し、一夏はその蓋をゆっくりと開ける。
「え!?これって・・・」
それはネオンの光を美しく反射パパラチアサファイアが装飾された小さなリング・・・そう、指輪である。
「結婚出来るようになるまで、もう2年切ったから、丁度いい頃合いかなって思って・・・」
「嬉しい!嬉しいよぉ、一夏君・・・!」
渡された婚約指輪を受け取り、歓喜の涙を浮かべながら真凛は一夏に抱きつく。
「真凛、改めて言うよ。2年後に俺が18歳になったら、俺と結婚してくれ」
「はい!私を、一夏君のお嫁さんにして・・・!!」
・ ・ ・ ・ ・
一夏のプロポーズを真凛が受け入れた頃、その様子は束の作った衛星に映されており・・・
「ううぅぅぅぅ・・・一夏ぁ〜〜、良かった!本当に良かったよぉ〜〜〜〜っ!!」
束の潜水艦でその様子をモニター越しに見ていた千冬は目から滝のような涙、鼻から蛇口の水の如く鼻水を垂らして流して喜んでいた。
その泣きっ面は、さながら範馬刃牙に負けたマホメド・アライJr.の様な顔面崩壊っぷりだった。
「ちーちゃん泣きすぎだよ、まったく。
泣くのは良いけど、ちゃーんと自分も進級・卒業出来るようにならないとね」
「取り敢えず、掛け算の7の段と8の段がまだ完璧じゃないから、まずはそれの克服ですね。
それさえ片付けば、今期の進級はどうにかなりそうですし」
ちなみに、真耶も家庭教師役として同行していたりする。
・ ・ ・ ・ ・
一方、飛騨山中の山小屋では・・・
「ヴ・・・熊鍋出来た。食え」
「ウゴ、ウゴンゴ(おお、すまねぇ)」
前話よりレギュラーに昇格した強蔵が
「ウゴ、ウゴゴンゴウゴ(何から何まですまねぇな。匿って貰った上に飯まで)」
「ヴ・・・気にするな。アイツの暴走の厄介さ、同僚の俺よく分かる。
それに、困った時はお互い様・・・」
申し訳なさそうにする数馬に、強蔵は笑って返す。
数馬はある人物に追われてこの山小屋に逃げ込んできたのだ。
そして、その人物は今・・・。
「数馬!数馬はどこだ!?このマドカサンタがクリスマスプレゼントに私自身を用意してお前に会いに来たぞーーーーっ!!」
その人物、ミニスカサンタのコスプレをしたマドカは、小屋から数キロ離れた樹海を走り回っていた・・・。
数時間後、吹雪いてきた雪によって全身氷漬けになりかけた所を強蔵に発見され、数馬を襲わぬ事を条件に救助されるのは、また別の話である・・・・・・。
・ ・ ・ ・ ・
翌日、更識・布仏の屋敷にて、
「メぇぇぇ~~リぃぃぃぃぃクリっスマぁぁぁ〜〜スぅ!!アーヒャッヒャッヒャッヒャッ!!」
サンタ帽子と丑の刻参りという服装で、布仏虚は狂乱の形相を浮かべて自宅の庭の木に藁人形を五寸釘で打ち付け続けていた。
「・・・何があったの?」
「昨日のクリスマス合コン、全戦全敗だったのよ。
それに加えて、一夏君と真凛さんから正式に婚約しましたとの報告LINEが来たから・・・」
「それはまた、何て間の悪い・・・。
お姉ちゃんはアレやらないの?お姉ちゃんも合コン駄目だったんでしょ?」
「そうだけど・・・流石にあそこまではする気にはなれないって言うか・・・」
虚の凶行に、流石の刀奈もドン引きしていた。
こんな感じで、今年もまた碌でもない思い出が増えた更識・布仏なのであった・・・。
この負の連鎖を断ち切るのは、虚に彼氏が出来るのは、果たしていつなのか?
それは誰にも、作者にも分からない。
だって未定なのだから。