魁!!インフィニット・ストラトス   作:神無鴇人

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お久しぶりです。
工場を退職してからひと段落ついて筆が乗ったので久々に更新しました。


地獄の老害市長選

「どいつもコイツも・・・腐ってやがる・・・!!」

 

市内の大通り。

多数の車で溢れかえるその道路で男は一人忌々しげに舌打ちし、周囲を見回す。

 

「若い奴らは俺達先達を敬わず、自分勝手に馬鹿騒ぎしやがって、いずれ自分達が我が栄光の南町を担う使命の自覚すらねぇ。文字通り自分の事しか考えてない馬鹿どもだ。

その上、北町の外道どもは繁栄していると来た・・・!

間違っている!こんな時代は間違いだ!!

だからこそ・・・この俺が変えねばならん!!」

 

その男・・・五反田厳は煙草片手に車から降り、決意を新たにそう宣言した。

 

 

 

 

 

「おいコラ!そこの爺さん!大通りのど真ん中で車停めて突っ立てんじゃねぇ!!周りの迷惑だろうが!!」

 

「うるせぇ!!俺が煙草吸いてえから吸ってんだ!!邪魔するならぶっ殺すぞクソガキィッ!!」

 

「な、なんてジジイだ・・・自分の事しか考えてない・・・これが老害ってヤツか」

 

この後、通報された厳が警察にしょっ引かれたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・また、この時期が来たか」

 

街中の掲示板の前に並ぶ一夏、千冬、鈴音、弾の四人。

四人は忌々しげに張り出された市長選立候補者のPRポスターの内の一枚を睨んでいる。

 

『市の未来、日本の未来は全て俺に任せとけ! 無所属・五反田厳』

 

そう、あろう事か厳は市長選に立候補していたのだ。

 

「毎年毎年、同じ事繰り返しやがって!あのボケ爺いが!あちこちにこんなポスター貼ってて目障りでしょうがねぇ!!」

 

「懲りないよな、あの爺さんも。どうせ今年も最下位で落選だろうに」

 

しかもこれは初めての事ではない。

厳は毎年市長選に出馬しては落選を繰り返しており、毎年恥を上塗りし続けているのだ。

 

「この件に関しては今じゃもう南町町内会の連中ですら諦めてるってのに・・・本当、理解力が無いと言うか往生際が悪いと言うか・・・」

 

「とりあえず、いつも通り落書きでもするか?」

 

そして、今となってはポスターが落書きされても誰も注意すらしない始末。

こうして、例年通り厳のポスターは町中の子供達や対立する者達の落書き帳と化すのである。

 

 

 

ところが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何ぃっ!?ほ、本当か大原!?」

 

「は、はい!今期選挙最有力の中川現市長が今朝、急病で入院しました。

命に別状は無いですが、今期市長選は辞退するそうです!!」

 

「こ、これは・・・遂に来たぞ!俺の時代がぁっ!!

南町の町内会・・・いや、ガキを含めた全員に知らせろぉっ!!

俺が市長に、市のトップに立つ日が来たんだぁーーーーっ!!!!」

 

こうして、事態は老害の馬鹿騒ぎから、町全体を巻き込んだ騒動へと発展していく事となる。

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

最有力候補が消えたという情報を掴んだ厳とその一派の動きは迅速だった。

この日からあらゆる手段を用いてPR活動が開始された。

 

【PR活動その1・演説】

 

「我が市に暮らす全ての皆さん!五反田厳に一票を!

偉大なる次期市長・五反田厳に清き一票を!!」

 

選挙カーに乗って市内を東へ西へと朝から晩まで演説しながら走り回る。

 

「おい!なにやってんだそこの馬鹿!!今夜中の3時だぞ!!」

 

「うるせぇ!!文句があるなら俺に投票しやがれぇ!!」

 

演説は早朝だろうが深夜だろうがお構いなしに数日間続いた。

 

 

 

【その2・媚売り】

 

南町・パチンコ屋

 

【GREAT LUCKY♪】

 

【超源BONUS!!】

 

【SPECIAL FEVER!!】

 

『本日は我が南町商店街会長・五反田厳氏の市長選出馬記念及び当選祈願として出血特別出玉大サービスとなっております!

皆様選挙の際は五反田厳会長に清き一票を!!』

 

この日、南町唯一のパチンコ屋は店中大当たりの雨霰となり、客達に媚を売りまくった。

 

「会長ぉ〜〜っ!本当に大丈夫なんですか!?

こんなに客に勝たせちゃ赤字が洒落にならなくなっちゃいますよ〜〜!!」

 

「ウルセェ!!赤字なんざ利子つけて補填してやる!!

当選すりゃそれぐらいの金は楽に入るんだ!!

お前はとにかく客どもに媚び売って票数稼いでりゃ良いんだよ!!」

 

当然、こんな営業に店員は悲鳴を上げていたが・・・。

 

 

 

 

 

ちなみに・・・

 

「うひゃひゃひゃ!これで3万発だぜ、堪んねーな!!」

 

「普段釘はガチガチで連チャンもしないクソ店だが、あの老害が馬鹿なお陰で俺達は大儲けだな!!」

 

「どうせこんな事したって当選なんかしないのに、馬鹿ですよねーw」

 

「一夏、明日は真凛や箒達も誘ってスコールの屋形船で宴会だな!!」

 

「フッ・・・無能な敵は有能な味方よりありがたい存在とはこの事か」

 

「いやぁ、アイドルのグッズ買い漁って金欠だったから助かったよ」

 

「これで当分ニート生活してても文句言われずに済むな。・・・猫達の餌代にも困らないし」

 

「アハハ!野球の道具いっぱい買えるね!」

 

「おそ松兄さんも運が無いよねー。今頃地下で作業しながら悔しがってるんじゃないのw」

 

鴇人、一夏、真耶、千冬、六つ子(おそ松除く)はちゃっかりとこの状況を利用して大金をせしめていた。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

【その3・プロモーションビデオ】

 

ビルの屋上・・・そこに厳の姿はあった。

 

「この街ももうすぐ変わる。

この俺の手で、自由で不平等の無い街へと・・・!」

 

決意を新たにそう語る厳、しかしその時!

 

「五反田ぁっ!!死ねぇっ!!」

 

突如現れた北町の刺客がナイフで厳の腹を突き刺した!!

 

「か、会長ぉーーっ!!」

 

側近が叫ぶ中、厳は最後の力を振り絞り口を開く。

 

「ご、五反田厳死すとも、自由は死せず!!」

 

 

 

と、こんな三文芝居以下なプロモーションビデオが動画サイトに配信されたのだった。

 

 

 

 

 

「本当に刺されて死ねば良いのに・・・!」

 

「ついでにビルから落っこちて全身バラバラにならねーかな?このゴミ野郎・・・!!」

 

その動画を見て鈴と弾がそう吐き捨てたのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

【その4・組織票確保】

 

「会長!家の親戚及び南町住民の親族、集められるだけ集めてこっちの住所に引っ越させました!!」

 

「良し!票数は大幅に稼げたな!これで俺の当選は確実だ!!

待ってろよ蘭!俺が市長になったらすぐにお前を少年院から出してやるからな!!

そして北町のクズ共!!この街からお前らの居場所は全て消し尽くしてやる!!ギャハハハハハ!!!!」

 

下品に笑いながら当選を確信する厳。

果たして本当に当選してしまうのか?

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

『今期市長選は秋本候補・当選確実。

五反田候補・最下位で落選となります』

 

当選などする筈も無かった。

そもそも厳に票を入れる者など南町の者以外おらず、ついでに集めた人員も住民票を移したばかりでは投票権など無いから無意味だった。

(※投票権を得るには移住から一定の期間が必要)

 

『五反田厳?入れませんよ、あんなのに』

 

『冗談でも投票しません』

 

『あんなのが市長になったら街どころか日本の終わりだよ』

 

『っていうか、あの老害選挙出禁にしろよ』

 

「ウガアァァァァーーーーッ!!!!!!!!!」

 

インタビューでの投票者からの散々な評価に厳はブチ切れて周囲の椅子やテーブルに当たり散らす事しか出来なかった。

 

「ふざけやがってぇっ!!どいつもこいつも!!俺に投票しねぇ馬鹿共が!!全員ぶっ殺してやるぅーーーーっ!!!!」

 

「おい・・・!その前にやる事があるんじゃねぇのか?会長さんよぉ?」

 

ドスの効いた声で厳を睨みつけるのは今回選挙活動の為に大損こかされたパチンコ屋の店長と店員達だ。

 

「な、何だお前ら!?会長の俺にその口の聞き方は!?

大体テメェらがもっと上手くやってれは俺が市長に・・・」

 

「やかましい!!テメェの下らねぇ道楽のせいで大損してんだよ!!俺のパチンコ屋はなぁ!!

約束通り損失補填して貰おうぜ?オイ!やっちまえ!!」

 

若手の店員達と黒服の男達は厳を押さえつけ、五反田食堂に上がり込んで次々に家具などに差し押さえの札を貼り付けて回収して行った。

 

「や、やめろぉーーーーっ!!俺の店がぁーーーーっ!!!!」

 

「フン!自業自得だボケが!!

俺達はもう南町から抜けさせてもらうぞ。北町の方で開店した新しいパチンコ屋に雇って貰う事にしたんでな!!」

 

「俺の店がぁ〜〜〜〜っ!!五反田食堂がぁ〜〜〜〜っ!!!!」

 

こうして、五反田食堂は遂にその姿を消したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところが・・・

 

「クソが!!あの裏切りパチンコ野郎!!

今度会ったら八つ裂きにしてやるからなぁっ!!!!」

 

五反田食堂跡地にて、厳は僅かに残った調理器具で小規模な屋台で食い繋いでいた。

 

 

 

「何てしぶとい・・・」

 

「あのしぶとさを良い事に活かせないのか?あの爺さん・・・」

 

遠目に落ちぶれた厳の姿を眺めて、一夏と千冬は呆れ混じりにため息を吐いたのだった。

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