前回までのあらすじ
学園に転校してきたイギリスの名門貴族のお嬢様、セシリア・オルコット(+子分メイド)。
IS学園支配を目論む彼女は、未だ教室に入ることさえままならない状況にあった。
「留年8回の初代ブリュンヒルデ・織斑千冬。
入学試験次席の成績を誇る剣道部エース・篠ノ之箒。
謎のマッチョおじさん・アームストロング。
例のゴリラ。
まだ確認の取れてない5組の男性操縦者。
この5名が1年の要注意人物達です」
「なるほど。つまりその連中さえ抑えればこの学園の支配も容易という事ですわね」
先程のパニックからようやく立ち直ったセシリアは懲りずに学園支配の算段を進めていた。
「いえ、実はその上に更にとんでもない要注意人物がいるのです。
織斑千冬でさえ手に負えない程の男が……」
「何ですって!?その男とは一体……?」
「その男とは………………コイツです」
「ん?」
子分メイドの指差した、その先にいた男、それは…………織斑一夏だった。(←ある意味当然)
「フッ……誰かと思えば、先程のプッツン男ではありませんか。
この程度の者、私の相手ではありませんわ」
「いきなり出てきて何を訳の分からん事を言ってんだ?このクロワッサン頭は……」
「く、クロ…………えぇい!よく聞きなさい愚民共!
私の名はセシリア・オルコット!!
イギリス名門貴族、オルコット家の令嬢にして、この学園の理事長の娘!!
アナタ達全員を退学に処すなど容易な事。
まずは手始めにこの無礼者を退学に……」
「ちょっと待ちなさいよ」
不意に鈴音がセシリアを呼び止めた。
「何ですのおチビさん?」
「この学校、国立よ。理事長なんかいないわよ」
「え?国立……」
「大体さ、外人が日本の学校の理事長っておかしいでしょ。
外国人学校ならともかく」
「…………」
鈴音の指摘に、セシリアはしばし沈黙し、やがて……。
(が、学校間違えた……)
今更になって己のバカでアホで間抜けな間違いに気付いたのだった。
(ど、どうしましょう?この学校じゃお母様の権力は使えないし、
かと言って『学校間違えました』なんて言ったら赤っ恥も良い所……)
一瞬にして追い詰められたセシリア。
この大チョンボを隠すべく彼女は(無い)知恵を必死に振り絞る。
そして……
「えぇい!良く聞きなさい!!
私のお母様はこの学園の理事長ではありませんわ!!」
「は?じゃあ何なんだよ?
お前が理事長って今さっき言ったんだろ?」
「え、えーと……私のお母様は世界政府を牛耳る悪の黒幕!影の大統領ですわ!!
この学園もお母様がISの力に目を付け、狙っているのですわ!!
私はその悪事を止めるべく、お母様に反旗を翻し、計画阻止の為にこの学園に来たのですわ!!」
だが、無いものはどう足掻いても無い。
0に何を掛けても0にしかならないように、無い知恵を振り絞って出した答えは当然バカ丸出しの嘘だった。
(うわぁ〜〜!何て嘘吐いてんのよ!?この馬鹿お嬢は!!
そんなデタラメ小学生どころか幼稚園児だって信じないわよ!!)
子分メイドは心の中で悲痛な叫び声を上げる。
終わった……セシリアのみならず、その手下である自分も色んな意味で終わってしまった。
子分メイドは心の底からそう思った。が……
「えー!?それ本当!?」
「こ、この学園に悪の魔の手が迫ってたなんて!?」
(信じちゃった!?とんでもないバカだわコイツら!!)
一夏と鈴音を除くクラスの生徒達はセシリアの言葉を鵜呑みにしてしまった。
「ちょっと良いか?」
「は、はい!何でございましょう?」
騒ぎの中、千冬が前に出てセシリアの眼前に立った。
やはり腐っても大人。流石に騙せないかとセシリアは思ったが……。
「手伝わせてくれ!正義の為に!!
今こそ私達は学園と正義を守る地球防衛軍を立ち上げるべきだ!!」
(もっとバカなのがここに居たーーーーっ!!流石留年8回……)
やはり千冬は千冬でした……。
「そうだよ皆!一緒に悪と戦おうよ!」
「私達ならきっと勝てるよ!」
「わ、分かりましたわ。今日から私達1年1組の皆さんは正義の仲間ですわ!!」
『おー!!』
ここまで来たらセシリアももう後には引き返せなくなり、最早ヤケクソになって地球防衛軍設立を宣言したのだった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「とんでもない事になっちゃった……」
「自業自得ですけどね……」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「ねぇ、一夏。さっきから何撮影してるの?」
「いや、あの金髪クロワッサンとこの馬鹿姉達が泥沼に嵌っていくのが面白くてな。
動画撮ってサイトにアップしようと思ってな。
大丈夫、顔は加工して隠しとくから」
邪悪な笑みを浮かべて答える幼馴染の姿に、鈴音はこう思った。
(やっぱコイツ、ドス黒いわ……。
吐き気を催す邪悪ってレベルよ、これは……)
余談だが、セシリアはこの後、何とか転校しようと試みるものの、母親から『良い加減、手に職を付けてきなさい』と言われ、そのまま学園に在籍する羽目になってしまい、泥沼から抜け出せなくなってしまうのは、また別の話である。