これ以上何を失えば心は許されるの どれほどの痛みならばもう一度君に会える
偶然ラジオで流れていた曲を聴きながら彼女のことを思い出す。
トコハが海外に行ってから数年が経った、盆や正月は帰ってくるし携帯電話でいつでも連絡は取れるけれど、どこか満たされない。
「行ってこい」と見送ったのは俺だけど、本当はあの時引き留めたかったのかも知れない。
俺はトコハが好きだったんだ、いつの頃からかは分からないけど確かに好きだった。
食い違う時はいつも僕が先に折れたね
わがままな性格がなおさら愛しくさせる
コロッケパンを巡ってファイトした時はいきなり泣き出されて俺がトコハに譲った。
後で謝罪されたけど、そんなことはもうどうでも良くて……。
トコハ……お前今、笑っているか?
笑ってないトコハなんてほとんど見ていないけれど。
大会が終わり、帰り道の商店街でニシベーカリーの前を通り過ぎてまたトコハを思い出す。
いつでも探しているのかもしれない大会で流れたあの曲のように
「おばさん、コロッケパン二つ」
昔と同じようにコロッケパンを購入する、あの頃と違うのは買う個数が一つ減っただけ。
「シオン、悪い待たせたな」
「気にしなくて良いよ、約束の時間にはまだ早いし
それに今日は君のお祝いだからね
おめでとう、まさか本当に宇宙飛行士になれるとはね」
「っても、まだ訓練生だから本当に宇宙飛行士になれるのはまだ先の話だけどな」
「そうだね
ところでそれは?」
「あぁ、たまたま帰りに寄ってさ
あいつ、好きだったろ」
そう言いながらコロッケパンを見せるとシオンは意味深に笑って
「そうだね、じゃあ行こうか」
そう言いながら歩いていく
「そう言えば、今日はどこに行くつもりだよ
大会の後に電話で時間と場所しか言わなかったし
高級ホテルとか行ける服装じゃ無いぞ」
そう言いながらシオンについていくがシオンは笑顔のまま
「着いてからのお楽しみさ」
とはぐらかしてばかり
気付いたら場所はカードキャピタル二号店
「じゃあ、僕は予定があるから」
そう言いながら店の前まで来て踵を返す
「後は店のみんなによろしく」
そう言いながらシオンは帰っていく
「どういうことだ?」
そう言いながら店の扉を開けると不意に鳴り響くクラッカー
そしてその向こうに居たのはずっと会いかった人だった……。
「どう……して?」
驚きながらも問いかける、すると答えよりも先に抱きしめられた。
出来ないことはもうなにもない
すべてかけて抱きしめてみせるよ