ヴァンガード 歌イメージ小説 総集編   作:辻井真夏

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車輪の唄

「クロノごめん今日一日泊めて」

 トコハの最後の日、カードキャピタルで大会とお別れ会を催した夜、トコハがいきなり俺の家に来た。

 

 明日はとうとうトコハの出発の日だ。

 最後の夜だが、親と一緒では無くチームメイトと過ごしなさいと親に言われたらしい。

ミクルさんも今日はいないしある程度なら騒げるだろうとシオンたちに連絡を取ろうとしたら慌てて止められた。

「私はあんたと居たいの」

 そんな風に言われたら何も言えずに黙って入れるしか無いだろう。

 俺自身、トコハの事は嫌いじゃ無いし、むしろ好きだ、最初の出会いは最悪だったけど同じチームで様々な難関を越えてきて、正直ずっと側に居て欲しいとすら思う。

 けど、その気持ちを伝えるつもりは無い。

 海外でやりたいことがあるそう聞いてから俺はこの気持ちを隠すと誓ったから。

 

「ねぇ、クロノ、ファイトしよっ

で、負けたら罰ゲーム」

 部屋に入れてからずっと無言だった俺に気を遣うように話しかけてきたトコハにふと我に返る。

「いいぜ、負けても泣くなよ」

 

 

 

 

 結果として俺の5勝4敗で勝ち越しだった。

「まだやるか?」

「やめとく、疲れてきちゃったしシャワー浴びていい?」

そう言い時計をみれば既にかなりの時間が経っていた。

なにせ、3時間近くもファイトしていたのだから汗もかくだろう。

「クロノ、覗かないでよね」

「誰が覗くか」

「ふぅん、ど~だか」

 そう言われて改めてトコハが家に泊まると言うことを再確認する。

「寝るとこ、どうすっかな」

 ふと、同じベットをイメージしたがそれにはまだ早いだろう。

「まだって何だよ……」

 

そんなことを考えながら来客用の布団はどこにあったかと思い出す……。

「しまった、クリーニング出したんだっけ

仕方ない、ソファで寝るか」

「誰が?」

「俺が」

「何で?」

「来客用の布団は今クリーニングに出してるしミクルさんのベッドを勝手に使うわけにも行かないだろ」

「じゃあ、一緒に寝る?」

「一緒にって……

 

ってうわぁ」

会話が成り立っていた不自然さに気付けばトコハは隣にいた。

「私はいいよ、クロノと一緒でも」

若干顔を赤くしながらそう提案するトコハに俺は……

 

 

 

 

 

 

「……あははは

本当、クロノって楽しいよね」

 翌日の早朝騙された俺を笑いながら後ろで俺のこぐ自転車の後ろで話しかける。

「ほらほら、もうちょっと

あと少しだよ」

 駅までの長い坂道を笑いながら急かしていく

「あ~あ、当分こうやってクロノをからかったりファイト出来ないのかぁ」

 そんな風に寂しそうに話しかける彼女に俺は何も言えなかった。

 

 

「何が?」

「当分、親父さんとかには会えなくなるんだろ

なら……」

「良いのよ

クロノと過ごしたかったの

でなきゃ、始発電車でしか空港に間に合わないクロノの家には泊まらないわよ」

 

「へいへい」

 まだ、始発電車も走らない町はとても静かすぎて

「世界中に二人だけみたいだな」

「え?」 

「何でもねぇよ」

 

そう言いながら坂の上につけば俺たちを包む朝日に言葉を無くす。

 

 

 

「あーもう……」

 海外に行くからと買った大きなカバンを改札に引っかけて通れずにトコハの視線に苦笑いで頷けば目を合わせずかたくなに引っかかるカバンのヒモを外していく。

 そうして、気の利いた言葉もいえないまま俺は先ほど買った入場券で駅のホームに行く

 

 そこにはシオンや岡崎、ツネトたちが待っていた。

 どうやら俺たちに気を遣っていたみたいだ、それでも別れる前に挨拶や言葉をかわしてそうして皆、泣いていた。

 響くベルが最後を告げてトコハのためのドアが開く、何万歩よりも距離のある一歩を踏み出して何も言えずに居た俺にトコハは震えた声で言ったんだ。

「約束よ、必ずいつかまた会いましょう

その時は私が勝ち越すんだからね」

 その言葉に俺は何も言えずうつむいたまま手を振るしか出来なかった。

 

 けれど、電車が走り出した瞬間、俺は皆と一緒ではなく駐輪場に向かって走りだした。

 鍵を開ける作業すら面倒に思いながらも急いで乗り込み走り出す

 線路沿いの下り坂を風よりも早く飛ばしてトコハに追いつけと飛ばしていく、精いっぱい電車と並ぶけどゆっくりと離されていく

「約束だ、必ずまた会おう

その時も俺が勝つ」

そう叫んで離れていくトコハに見えるよう大きく手を振った。

 

それを見てたツネトや岡崎に茶化されるけどそれでも何故か世界中に一人だけみたいに感じた。

 

 

 

そんな俺たちが再会するのは近い未来の話。

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