「と言うわけでお兄ちゃん。あまり身内に当たる生き物は人間とて殺したくはないんだけど…。ヴェロキラプトルも悪い人間じゃないからなついている訳だろうし、お願い、見逃してあげてくれない?」
お兄ちゃんには、何の関係もない人間。
お兄ちゃんは人間種全てを憎んでいるのに、私の我が儘なお願いなのは解ってる。
私も例え身内に当たるとて、お兄ちゃんを撃ち殺されていたなら迷わずこの人間を殺していただろう。他種の生き物に酷い扱いをする奴でも殺していたけれど。
オーウェンさんは、流石に弾丸を打ち込んでもケロッとしている様子のお兄ちゃんと戦うのは無謀だと思ったのか、静かに銃を下ろして返答を待っており、ヴェロキラプトルのブルーと呼ばれた彼女に襲いかかることに制止をかけている。
[…貸しだ、イチ。この人間共の身の回りには手を出さないでおいてやる。後で言うこと聞けよ。]
ため息をつくように唸りながら、お兄ちゃんは少し考えた様子で、譲歩として条件を出しながら渋々承諾した。
「ありがとう、お兄ちゃん。勿論私に出来ることなら何でもお願い聞くから。…オーウェンさん、お兄ちゃんに襲わないように頼んだからもう大丈夫だよ。そっちのベッドにいる金髪のお姉さんと…」[ブルーお姉ちゃんもね。]
お兄ちゃんが戦闘体制を崩して私の隣まで来れば、ようやく安心したように人間二人はほっと一息ついたようだ。
[あら、貴方アタシの言葉がわかるのね。オーウェンママに危害を加えないなら、争う気はないわ。]
クルルと頷きながらブルーお姉ちゃんが鳴く。アタシはブルーよ。と自己紹介してくれた。
[それなら良かった、私はイチ。こっちはお兄ちゃんのイーラだよ。]
勝手にお兄ちゃんも紹介したら、馴れ合うつもりはねーよ。と言うようにフンと鼻を鳴らされた。ブルーお姉ちゃんは無愛想なお兄さんね。と漏らしてちょっと険悪ムードになった、お願いだから恐竜同士で争うのは止めてほしい…
その後、オーウェンさんの知りあい?の人間の女の人が二人と男の人が1人合流した。
かいつまんでオーウェンさんが説明してくれたけど、終始フランクリンという男の人はブルーお姉ちゃんとお兄ちゃんにビビっていて少し面白かった。
けれど、合流した女の人…ジアさんが言うには水素ガスの流出で換気設備も動かない状態で屋敷の地下にが危ないらしく、更には競売にかけようとしていた恐竜が閉じ込められているらしい。
お兄ちゃんとブルーお姉ちゃんには危ないから外にいるようにお願いして、私達は慌ててシステムルームに向かった。
既に地下室にはガスが充満しつつあった。
後程合流した女の人の1人、クレアさんは恐竜達を閉じ込めていた檻を解放していく。
けれど、緊急時以外解放厳禁と書かれた檻ではなく外に繋がるドアを解放するとなると、オーウェンさんに「街中に恐竜を放つつもりか?それをするとなると後戻りはできないぞ。」というように言われ、流石に解放は躊躇われたようだ。
此処には人間の暮らしがある。それも、今まで全く恐竜と共存をしてきた訳でもない人間の暮らしが。
[[苦しい、助けて]]
私は直ぐ様、クレアさんが押さなかった解放ボタンを押した。
他の皆はぎょっとしたような顔をしていたが、どこか恐竜が助かった事にほっとしたような複雑な様子でもあった。ちょっと違う表情をしたのはフランクリンさんは本当にあり得ない!!みたいな表情をしていたが。
恐竜達の助けを求める鳴き声が、私には声となって聞こえる。助けないなんて選択肢は…私にはなかったんだ。
「人間に作られて、人間の身勝手で殺される。そんなの…私は認めない。」
それが間違えた考えだって言わせない、全て人間が勝手に仕組んだことた。連帯責任だよ。
恐竜達は解放され、皆街中に解き放たれていく姿を見送った。
どうか、人間に縛られず自由に生きてほしい。
次回、完結です