恐竜達を解放し終わった後、私はお兄ちゃんのいる外へ戻ってきた。
道中、その辺に転がっていた"やたら大きい牙の入った容器"が邪魔だったので、勢いよく蹴飛ばしたら中身も粉々になったけど、まあいだろう。
[お待たせ、お兄ちゃん。]
[あぁ…あのヴェロキラプトルも食ってないぞ。]
暇だったと愚痴を漏らすお兄ちゃん。大丈夫、心配してないよ。ごめんね?と苦笑しながら私が言う隣では、ブルーお姉ちゃんが今後どうするか話をしていた。
「ブルー、俺が安全な所へ連れていってやる。一緒に行こう。」
ブルーお姉ちゃんは檻をチラッと見た。
[アタシ、もう檻には入りたくないわ。自由でいたいもの。アタシの事を気遣ってくれるのは嬉しいんだけど…ごめんね、ママ。]
そう言ってブルーお姉ちゃんはオーウェンさん達に背を向けて走り出した。ちょっと名残惜しそうに振り返ったりしていたけど。
そんなブルーお姉ちゃんを見送り、オーウェンさんは私達に話しかけてきた。
「イチ達はどうするんだ?」
[俺様も檻に入る気はねえ、自由にさせてもらうぜ。人間も食い殺したいしな。]
「お兄ちゃんもブルーお姉ちゃんと同じ意見らしいから、私もお兄ちゃんについていくよ。お兄ちゃん、ついてっていいかな?」
一応、人間を食い殺すとの発言は人間種のオーウェンさんにはとても言えないので説明は省く。
[言われるまでもねぇ、お前は俺様についてくりゃいいんだよ。]
ぶっきらぼうながら、OKの返事をもらえた。
言われるまでもなく、なんて当たり前のように言ってくれるお兄ちゃんに顔が綻ぶ。
「私もお兄ちゃんについてくから、オーウェンさん達とは此処でお別れ。オーウェンさん達を襲うつもりはないけど、私達が人間種の味方だとは思わないで。」
そう、あくまでも父親に当たるオーウェンさんとその周囲を襲わないだけだ。一応父親に当たる人だから目の前で死なれると目覚めが悪いから殺さないではおいたけど、他の恐竜に襲われたならそれはそれで私の知ったことではない。
そう言った私は[上、乗れ。]と言ってくれたので、有り難く上に乗らしてもらってロックウッド邸から離れた。
ーーー
私達はあれから森のな中の落ち着ける洞窟で居座る事にした。
[地下にいたからこんな気持ちのいい風初めて。]
[…俺様もだ。]
二人で空を見上げながら、今は森の中で風を感じながら何気無い時間を過ごしている。
ずっと地下室で閉じ込められて暮らしてきた私をお兄ちゃん。こんな自然の中で居座るのもお互いに初めての事だ。
[星が綺麗だなぁ…本で見て想像していたよりずっと綺麗だよ。]
手を伸ばして掴もうとするけど、掴めない。
地下に囚われ、軍事に携わる知識のみ培ってきたから、この世界はまだまだ私の知らない事はいっぱいだ。
[俺様にはそんなのわかんねえけど、お前と過ごすこんな時間も悪くはねえ。…イチ、お前はこれからどうするつもりだ。自由になって、やりたいことも多いんだろ。]
確かにその通りだ。
私はやりたいことがある。
そのまま、お兄ちゃんは言葉を続ける。
[お前と関わりのあったオーウェンって奴等は殺さなかったが、俺様は人間への殺意を我慢する気はねえ。出会った人間がいれば殺す。人間は嫌いだ。お前は俺様に付いてくると言った。それでも、お前は俺様と居たいか?]
そう言って、真剣な眼差しで言ってくるお兄ちゃん。
本人は自覚してるかわからないけど…お兄ちゃんは、優しい。
妹である私だから、同族だからか解らないけど。
家族として愛してくれる、気にかけてくれているような様子が…私には堪らなく嬉しいんだ。
[お兄ちゃん、勘違いしてるよ。私も人間が嫌い。人間に作られて、道具にされて、いたぶられたんだから。 憎くて、嫌いで、恨めしいよ。 人間が居たら殺したっていい。私はお兄ちゃんと、家族と一緒にいたい。一緒に色んな事したい。…一緒に世界を回れたら嬉しい、色々な物を目に写して感じたい。その過程でもし、私達みたいに人間に傷付けられたり、困っている恐竜達がいたら助けてあげたい。]
[…解った。イチ、さっき、俺様が言ってた命令に従えってやつ。あれは、お前が"俺様に一生付いてくる事"だ。一緒に世界を見せてやる、一生ついてこい。]
[…うん!!ありがとう、これからはずっと一緒だよ、お兄ちゃん。だーいすき!!]
きっと、今までは人間にレールを敷かれて利用された最低な人生。
けれど、これからはお兄ちゃんと一緒だ。
困難があっても、これからは1人じゃない。お兄ちゃんとなら、一緒に力を合わせて乗りきれる。
きっと、これからは最高の未来が待っている。
私はぎゅうっと満面の笑みでイーラお兄ちゃんに抱きついた。お兄ちゃんも私を振り払う事はなく、俺様もだと言ってくれているように初めてベロリと頬を舐めてくれた。
私は地下から解放された、今日この日から、世界一幸せな妹になった。
それはきっと、死ぬまで変わることはないーーー
ーーー
一人と一匹の人間に作られた生物は世界を渡り歩く。
傷付いた恐竜を助け、恐竜を捕まえて我が物にしようとする人間を殺し、自分達を捕まえようとしたり殺そうとしたりと襲い来る人間を返り討ちにして殲滅し、襲ってこようとする気を無くすくらいに惨い死体にしては世界を震撼させた。
それは、人間が支配していた時代の崩壊の物語の序章に過ぎない。
世界は恐竜が蔓延り、人間が愚かな選択を続けてきたことに悔い改める時代はそう遠くはないだろう。
世界は"ジュラシック・ワールド"へと変わった。人間は世界に散らばった恐竜達に怯え、暮らすことになる。
新時代の、幕開けだ。
完結です。
映画を見てから5日くらいで書き上げたものを投稿していましたが、思ったよりお気に入り登録してくださる方がいて投稿した甲斐がありました。
DNAの詳細変更により矛盾していた箇所は修正しています。
完結にあたり、説明不足がある箇所等ございましたらコメントお待ちしております。感想等も大歓迎です。
一応番外編も一話書き上げていますが、見直し等もしますので投稿暫くはお休みします。