その異様な気配がやって来たのは、お兄ちゃんと一緒に食事をしている時だった。
微かに…だが、此方に近づいてくるような足音のようなものが聞こえる。何かは解らないが、何かが…感じたことのない異様な気配が近付いてくる。
お兄ちゃんの方を見れば、お兄ちゃんも何かを感じたらしく、下を向いて食事をしていた顔を上げ、険しい表情をして私の方を向いた。
[ヤベエのが近付いてくる。イチに会ったときに似てる感じがする。…比にならねえくらいにヤベエ感じだが。俺様達に似た感じの…このヤバさは絶対に人間じゃねえ、まさか人間共、また何か造りやがったか!?]
[うん…人間じゃなさそうで、なんかヤバそうなのはわかる。正直、お兄ちゃんよりヤバそう…。ちょっと確認しに行く…?]
確認する事に同意を示し、頷いたお兄ちゃんと一緒に静かにその場を離れ、近づいてくる気配が何かを確認する為にお兄ちゃんと一緒にこっそりと外を確認する。
お兄ちゃんはスンスンと外の匂いを嗅ぐ。
…おかしい。外には"何もいない"。お兄ちゃんに話しかけようと、そう思った瞬間だった。お兄ちゃんが叫ぶように吠える。
[…イチッ!! "目の前に居る"!!今直ぐにそこから離れろッ!!]
[…え??]
"何もいない"のではなく、正しくは"何も見えなかった"ようだ。
何もなかった目の前の空間が、白く歪む。
私は咄嗟に後ろに後ずさった。
その生き物は、紛れもなく…
[あぁ、嘘……だ。]
白い歪みは、姿をくっきり現した。
白く、巨大な…T-レックスにも似た姿。それでいて、T-レックスとは違い瞳の色は黒ずんだ琥珀の瞳、蛇を思わせる細長い瞳孔。がたついた歯。お母さんの事を調べていて、見つけた写真とそっくり、瓜二つの…それは、もうこの世界に存在しない筈の生き物だった。
[インドミナス・レックス…!!私と、お兄ちゃんのお母さん…。死んだ、筈じゃ…]
[インドミナス・レックスだと!?何の用だ!!]
目を丸くして、動揺を隠せない私とは違い、冷静にお兄ちゃんは私の前に立ちはだかり、唸りながら四つん這いになり、戦闘体制を取った。
[そう警戒すんなよ、オマエラがインドミナスの名を持つオレの後釜で合ってる?戦う気はないよ、オレはオマエラと話に来ただけだからな。]
オレもただじゃ済まないだろうし、穏便にいこうぜ?と緊張感もなくへらっと笑うインドミナス・レックスにお兄ちゃんと顔をあわせ、とりあえず話を聞くことにした。