1号と呼ばれてる"私"は研究員である先生と檻の中の黒い恐竜…インドラプトルと対面していた。
鋭い爪や牙。一目見て思ったのは、"間違いなくこいつには勝てない"。私が感じ取った生物としての本能だった。
けれど、自分と同じ"何か"もそれと同時に感じ取っていた。
だが、"何故相手の戦闘力を無意識に計っているんだ?"と自分の思考に対して疑問を感じた。
戦いに関することだから疑問に思うの?そんな思考を張り巡らせている私を余所に、インドラプトルが鳴く。
[テメェが今日のエサかぁ?]
インドラプトルの鳴き声が言葉として伝わる。何故理解できるかはわからなかったが、私にはそれを理解できた。返事の仕方も瞬時に理解できた。私も"鳴いた"。
[私、君のエサじゃない。君を見に来ただけ。]
インドラプトルは鳴き声を聞き、物珍しい物が見れたからか、ニンマリと意地の悪そうで楽しそうな 笑みを浮かべて会話を始めた。
[俺様と会話できるとはな、通りで他の人間共と違い俺様と同じ感じがする訳だ。]
[私は普通じゃない、特別な人間だって言われてるから変わってるんだろうね。]
そんな一匹と1人を余所に後ろでは会話が出来ていると感じた先生は慌てて博士を呼びにいっていた。
[特別だと?テメーが"どういう意味で特別か"自分で理解してんのか?自分で考えた事はあんのか?]
自分が何者かを理解しているような言い方、更に自分に考えたのか問いかけるインドラプトルに私は首を横に振った。
自分に思考する事は不要だと、人に従って生きている事を伝えた。
ーインドラプトル視点ー
[(クソ弱ぇ人間共に媚びて生きてるとはなぁ、そりゃあ俺様みてえに檻に入れられねえワケだ。多分だが、同種の癖に随分大人しいと思ったんだよなぁ。言うこ聞くように調教されたか…?それにしても思考が不要とはな…人間共め、気に食わねえ。)]
同種と思われる存在が自分と同じく道具や兵器して扱われている様子にイラつきはしたが、先程の思考は言葉に出さず、俺様は短く唸った。人間で例えるならケッと吐き捨てるような感じだ。
[おい、メス。テメェの名前は?]
[1号って呼ばれてる。]
おいそれ、名前ですらねーじゃねーか。と思ったが、次は唸らずに表情を歪めた。
[あー、んじゃあ長げえしお前、これから名前"イチ"な。疑問に思う事、思考をする事は悪い事じゃねえ。それをテメーの近くに要る奴等は快く思わないんだろうが。考えてもみろ、テメェが本気出せばここにいる奴等、普通に殺れるだろ。]
[…そうだね。1人1人は私よりは弱いと思うよ。]
俺様に言われて初めて思考したようなイチに、何故強者が弱者に従う必要があるのか。と問うてみたが、イチは「うぅん…」と腕を組み首を傾げた。これは長くなりそうだな。研究員の奴もさすがにもう戻ってくるだろ。
[俺様と話したことはあいつらには秘密だ。イチ、解ったか。]
[うん、解った。]
イチは基本的に命令や指示されることに嫌悪感は抱いていないと踏んでいたからこの返事は想定内だ。
ちょうどその頃に俺様を作り出したクソ人間共がイチを呼びに来てあいつはつれてかれた。
此処で俺様を檻から出すように説得するのは、時間的にもなかなか難しい。初対面で初めて話すから人間共も流石に油断してるだろうし、会話内容は奴等には絶対解らない筈だ。後は、あいつが俺様から与えた情報を元に、自分の事を調べながら真実に迫っていけば…自ずと俺様が檻から出れるようになる筈だ。
奴等、俺様に知能を与えすぎたのが仇になったな。作られた上は力も頭脳も奴等の上をいってやる…利用できるものは利用してやる。
そんなの生きていく上で当たり前だろーがよ。
餓鬼だから目的はバレねぇかもしれねえと思って話したが、案外頭の出来は大人以上かもしれねえ、と後で抜かった可能性に気づいて頭を抱えることになったのは別の話だ。