私のお願いは聞いてくれるようで、借りは返す。と言うようにお兄ちゃんは何も言わずに頷いてくれた。
[もう死んじゃうから、私が見れなかった世界を…見せてほしいの。私を食べて、お兄ちゃんの中で、一緒に自由な世界を見せて…]
傲慢で自信家なお兄ちゃんは、らしくない少しだけ情けない表情で私の頬を一舐めした。
[イーラお兄ちゃんのおかげで、"イチ"は自分で考えて…行動できた。人間の言いなりに、道具にならずに少しでも自分らしく、自由に生きれたんだ…あまりお話はできなかったけど、会えてよかった…ありがとう…情けなくて弱い妹で、ごめんね…]
一緒にこれからも居たかった、もっとお兄ちゃんの事を知りたかった。と言いたいことを言えた私は最後の力を振り絞り、私に顔を近づけているお兄ちゃんの頭を撫でて…静かに瞳を閉じた。
ーインドラプトル視点ー
俺様の頭にに乗せられていたイチの手が、力を失いスルリと床に落ちて、事切れたのだと実感した。
まだ体は暖かいが、直ぐに冷たくなるのだろう。
少しの間目を伏せて、俺様はイチの望みを叶えるためにあいつを食い、体に納める。俺様の一部となり、共に外を…世界を見る為に。よく見ると、あいつは心臓部付近を貫かれていた。よくそんな状態で暫く話せたもんだと思う。何故か暫く流れていた血も止まりかけてはいたが。
"世界を見たい"
そう望んだあいつは…俺様が檻から出たいと言い靡かせなければ、どうにかなったのだろうか。
たった一人の同族である不憫な兄妹を救えたのだろうか。
俺様とあいつは似ている。人間に作られ、利用される為だけに作られた存在。自由は与えられず地下に閉じ込められて育った。
あいつが外に出たのは…あの様子からしてさっきが初めてだったんだろう。
床に水溜まりを作ったあいつの血を名残惜しく、別れを告げるように舐めとり、後ろを振り返る。
すると、あいつが死ぬきっかけを作った人間共がいた。俺様を殺す準備をしてやがったのか、さっきとは別の武器を持ってやがる。
目の前が真っ赤に染まる。
イチの命が消えたのが解った瞬間に感じた今まで感じた事のない訳の解らない感情と、いつも以上に身体を駆け巡る強烈な人間への殺意に俺は身を任せた。
俺様は、感情のままに食い散らす。人間共は皆殺しだ。
イーラ。"時代"の名を付けられた人に作られた恐竜は、愚かな人間の支配する時代を終わらせ、自分達の時代の幕開けを告げるかのように人間へ向かって巨大な咆哮を上げた。
イチがイーラと時代を掛けたのはただの偶然です。
インドラプトルは1号の頭文字を取り、イチと名前を付けましたがイチはインドミナス・ラプトルのそれぞれ最初の一文字をひっつけて名付けています。
お互い動物に近いものがあるので名前の意味等は特に考えていないだろうと思った結果です。