少年Aは神殺しである。   作:千点数

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 決着。


7:太陽VS馬鹿 後

 急に吹き荒れた超災害クラスの台風によって、神は吹き飛ばされる。

 通常の台風であればそんなことは無いのだが、この台風・・・・・・いや、嵐は少々訳が違った。

 

 「なるほど・・・・・・あの人間の戦意が高ぶれば高ぶる程威力の増す制御不能の嵐か・・・・・・厄介なものよのぉ!」

 

 少年A・・・・・・エースの心情に左右されるこの(のろい)は、諏訪において二度目の神殺しを成した際、代償として、『永遠の孤独』を味合わせる為のものだったのだが、今は、それが武具となって、今、エースの目の前にいる太陽神に牙を剥いた。

 

 「応用が効かねぇのがアレだが、それでもアンタを吹き飛ばすくらいは出来る。こんな嵐の中じゃ弓は使えねぇ。飛び道具が潰れちまったなぁ。ええ!?」

 

 エースは、地面に刺さっていた矢を持って神に襲いかかる。

 神は、舌打ちをしながら弓を捨てると腰に差していた太刀を抜き、それに迎え撃った。

 

 「調子に乗るなよ・・・・・・人間ッ!」

 「ワリィがそう言われると調子に乗っちゃう人間なんだよ!」

 

 何ともはた迷惑な話である。

 つまりそれは、彼はどんどん戦意を高ぶらせる訳で。

 

 最初は海岸線のみだったのだが、今は四国全体が強烈な嵐に飲み込まれていた。

 

 *

 

 猛烈な風と雨の影響で、いくらか外気温がマシになった頃。

 熱中症を免れた二人の勇者・・・・・・土居球子と、高嶋友奈は変身アプリのβ版を渡され勇者に変身し、外に立っていた。

 風と雨が酷く、先ほどまでの気温の影響で鬱陶しい程ムシムシとするが、そこは根性で押し通す。

 

 彼女らは突然吹き荒れ始めた嵐の調査及び、人民の避難誘導の為に外に出た。

 そこで、避難誘導をしている間に海岸線で、嵐の中で煌々と輝く太陽と、それに立ち向かうヒトガタの実体を目視で確認した。

 常人であれば何か光っているモノがあるという認識しか出来ないであろうが、そこは勇者の超身体能力。遠かろうと、確実にソレを捉えていた。

 

 「あの人、この間ぐんちゃんが面会で一緒にゲームしてた人、だよね」

 「ああ、タマと友奈の目ん玉とノウミソが暑さでやられてないのならそうじゃないか・・・・・・?」

 

 嵐を起こすという祟りは本当だったのか、と、二人は思った。

 

 「早く大社の地下施設に避難させよう! じゃないと・・・・・・」

 「おうッ! あの馬鹿にタマ達が巻き込まれるのはゴメンだ!」

 

 ・・・・・・怪獣大決戦とは、正にあの馬鹿と太陽神の戦いの事。

 勇者であっても、あの戦いには介入出来ないと、我らはただの、怪獣映画の、力のない民衆のような、淘汰される側の存在でしかないのだと。

 彼女らはヒシヒシとソレを感じつつ、避難誘導を再開した。

 

 *

 

 「ウオォォオオオオオオリャァア!」

 

 奇声を発しつつ、矢を振り上げて襲いかかるエース。

 神の腕の健を切り裂こうとして、ソレをかわされ、逆に太刀による一撃を胸に貰ってしまう。

 傷は浅いが、『ドジュゥゥゥウウウッ』と、音を立てて焦げ付く様を見て、エースは焦る。

 

 「テメェ・・・・・・その太刀細工でもしてんのか」

 「なに、少々体温で熱くなっているだけだ」

 

 どんな体温だよ!?と、心の中で突っ込むエース。

 だが、相手の神格からして当然か、と無理矢理納得し、臆さず攻撃を再開する。

 

 (ああもう畜生! 大太刀が()ぇからやりにくい! なんで忘れて来ちまったんだ俺の馬鹿! ・・・・・・あ、俺馬鹿だったわ)

 

 そんなセルフツッコミをする程度には余裕があるのか、それとも焦って余裕が無いのか。

 どちらとも取れるような事を考えつつ、エースは相手と対峙する。

 

 攻撃して、受けて、避けて。

 大太刀を忘れて来てしまったエースには決め手が無い。このままでは千日手となってしまう。エースは、神殺しとは言え、『神殺しである』という事実以外は、ただ祟られただけの一般人である。体力にはいずれ限界が来る。

 

 だが、相手は武神では無いが、それでも神。それ相応の、無限にほど近い気力と体力がある。

 今のエースには、この状況は辛いモノがあった。

 このままでは、いくら不死身に近い身体を祟りの影響で手に入れているとはいえ、存在ごと太陽のフレアもかくやという温度の、神が持つ太刀に斬られて焼かれて死んでしまう。

 

 だが。

 

 「だからこそ、殺し甲斐がある・・・・・・ッ!」

 

 エースは、そんな事で弱気になる普通の人間では無かった。

 馬鹿だからこそ、神殺しという馬鹿げた事を成し遂げられた。いや、成し遂げてしまった。

 

 必ず殺す。

 

 エースの目の前にいるのは、恐らくこのクソッタレな状況を作り出した天の神、それも主神である。

 エースは確実に、この目の前にいる太陽神を殺害するつもりでいた。

 

 「ブッ潰す・・・・・・絶対に、家族を殺した天の神々(おまえら)は確実に殺すッ!」

 

 殺意と害意、敵意、そして戦意をたぎらせ、エースは神の懐にまで潜り混む。

 その瞬間、更に嵐が酷くなり、神は一瞬、ほんの一瞬だけ体勢を崩した。

 

 その隙を逃さず、エースは逆手に握っていた矢を順手に持ち替え、神の心臓部分と思しい場所に矢を突き立てる。

 神も、灼熱の如く焼けるような熱さを持った太刀を振りかざし、自分の体ごと(・・・・・・)エースにその刃を突き立てた。

 

 「グ、ガァアアアアアア!?」

 「馬鹿が! こうなる事を予想していなかったのか!」

 「じ、自分の体ごととか、相当狂ってやがるッ」

 「自分の体? フン、何を馬鹿げた事を」

 

 エースが言った言葉に対し、馬鹿にするように帰す神。

 

 「この体は我らが先兵の肉体を改造して使っているモノだ。故に、肉体が死のうと霊格が砕けぬ限り死ぬことは無いッ!」

 

 神は更にそして、と、付け足し、

 

 「貴様が今持っている我の矢程度で砕けるような霊格では無い。砕きたければそれこそ貴様が刀剣の神から奪い去った大太刀を使うべきであったなぁ?」

 

 そう言ってから、神はエースを嘲笑うかのように自らの太刀を体から引き抜くと、エースの体に再度突き刺し、海の彼方に投げ捨てた。

 

 キッチリと、祟りをかける事も忘れずに。

 

 「高々人間如きにここまでコケにされたのは始めてなのでなぁ。今回はこの程度で済ませておいてやる。だがッ!」

 

 「次会った時こそ貴様の命、刈り取ってくれるッ」

 

 そう言って、神はその場所から消えた。

 

 エースの、敗北感を一番刺激する、『勝ち逃げ』という形で。

 

 「畜生・・・・・・ちくしょお・・・・・・」

 

 海に沈みながら、エースは空に手を伸ばす。

 エース、初めての敗北だった。




 次回。

 最終。
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