少年Aは神殺しである。   作:千点数

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 一応ラストです。


最終:ある馬鹿の物語

 バーテックスと呼ばれる天の神の先兵が表れて、三年近く経った頃。

 

 諏訪は、危機的状況にあった。

 

 少なくとも、十四の見た目麗しい少女が遺書のようなものを書かなければいけない位には。

 

 最早、長く持たない。最長で・・・・・・三時間程だろうか。

 

 だが。

 

 「それでも」、と。立ち上がるのが勇者だ。

 

 諏訪の勇者、白鳥歌野は、武具の鞭を振るい、敵であるバーテックスを倒していく。

 少しでも長く、この諏訪を守る為に。

 

 ここを鎮護する神の力は最早ミソッカス。武具や、勇者の装束に宿る力はそれ相応に下がってしまっている。

 とうとう、使っていた鞭がちぎれ飛んだ。

 

 「ピーンチ。でも・・・・・・」

 

 あの時。

 神殺しの馬鹿が残した剣。

 「俺にはコイツがあるから良い」と、放って行った両刃の細身の剣。

 

 「まだ、やれるわ・・・・・・このソードで、あなた達をスライスしてあげる!」

 

 歌野は、腰に差していたソレを抜くと、覚悟を決めて突貫ーーーー

 

 「うわぁああああああッ!?!?」

 

 ーーーーしようとしたところで、バーテックスの大群の中心に少女が着弾するのを見た。

 誤字ではない。本当に、『着弾』したのである。

 

 「・・・・・・何故か、デジャヴュ、というモノを感じるわね」

 

 唐突に去っていくシリアスムーブ。彼は、あの『馬鹿』は、ゴッドキラーだけでなくシリアスキラーも持っているのではなかろうか。

 

 「オラオラァ!! 若葉ァ! ちゃんと着弾しやがれェ!」

 「いきなり投げ飛ばされてちゃんとも何もあるかッ!」

 

 そして、バーテックスの群れの中心から聞こえるのは、二つの聞き覚えのある声。

 一方は、うどんと蕎麦に関して論戦を繰り広げる仲のライバルとも、戦友とも言えるような間柄の少女のもので。

 

 もう一方は、

 

 「よぉ、歌野。助っ人に来たぜ」

 

 首から下の全身に祟りを受けてまがまがしい模様だらけになった体を引きずりながら、それでなお無類の強さを誇る、神殺しの少年の声であった。

 

 「遅すぎるわよ、馬鹿」

 「馬鹿ってのは自覚してる。遅くなったのはスマンかった。文句は俺を意味()ぇ牢獄に閉じ込め続けた大社に言ってくれ。

 さぁ、クソッタレ共を潰して、サッサと四国行くぞ。ここに残した剣がありゃ、お前も戦えるだろ?」

 「ええ! サッサとバーテックスをデストロイしてみーちゃんと諏訪にゴールするわ!」

 「その意気だ」

 

 さぁ、反撃だ。

 

 *

 

 これは、神殺しを成し遂げてしまった、とある馬鹿の物語。

 少し歳をとり、馬鹿さ加減がマイルドになったとは言え、そこは馬鹿。

 本日も、奇想天外な行動で、馬鹿騒ぎを起こしている。

 

 「対象、神殺しが脱走した! 捕縛しろ!」

 「お見合いなんか御免なんだよ畜生!!」

 「うるせぇ! サッサと人生の墓場に足突っ込めや! スカートの中身覗いちまった責任取るんだろ!!」

 「それがどうしてお見合いになるんだよッ!?」

 「知るか! サッサとお縄につきやがれッ」

 「というかあの野郎、全身縛って蓑虫状態にして、擬装した囚人護送車で運搬してたのにどうやって逃げやがったんだよ畜生がッ!?」




 多分これ以上は続きません。

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