少年Aは神殺しである。   作:千点数

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 神殺しにも、勝てないものは存在する。


3:あだ名と酒と子供達にはご注意あれ

 「あいつらは・・・・・・あいつらはまだ小学生なんだよ!!」

 「・・・・・・」

 「なのに、俺達ぁ何時も護られてばかりで・・・・・・!」

 「餅は餅屋っす。信じて待つ、というのも大切っすよ?」

 「分かってらぁ!でもよぉ・・・・・・!」

 

 (あー、何だろう。何なんだこの状況)

 

 少年A・・・・・・エースは困惑していた。

 目の前には、感情をさらけ出す酔っ払った爺さん集団。

 

 両隣には、すぴー。と、可愛い寝顔で寝る、エースがつい先日投げ飛ばした少女、白鳥歌野と、その歌野の友達の藤森水都。

 

 どちらも、小学生の幼い少女である。

 

 ぎゃあぎゃあと感情を吐露する男と、そんな中幸せそうな寝顔で涎を垂らしながらエースの腕に抱き着いて眠る歌野と、健やかな寝顔でエースの膝枕を堪能している水都。

 

 エース、この時、十六歳。

 神の祟りと呪いの影響により、歳を取らず、圧倒的な不死性を持った化け物となっても、このカオスな状況にどう対象すれば良いのか。

 神殺しを成したその身と、おバカな頭脳は、余りこの状況に役に立たないようだった。

 

 というかまず、この状況にどうやって到ったのか。

 時を少し、巻き戻す。

 

 *

 

 エースがここ、諏訪にやってきて、翌日。

 エースは歌野のはからいで、公民館のような場所で寝泊まりしたのだが、エースが起きて身体を起こせば、何故か公民館の引き戸から複数の視線を感じた。

 よく見れば、ちっちゃい子供や、エースと同じくらいの歳の少年少女がジー、と引き戸に隠れて布団にいるエースを覗いていたのである。

 

 じーーー・・・・・・・・・・・・

 

 (いや怖ぁ!)

 

 諏訪の人々が、外からやって来たエースを不思議がって、見に来たのだろうか。

 エースも、引き戸に隠れている子供達の方をじーっと見てみる。

 

 じーーー・・・・・・・・・・・・

 じーーー・・・・・・・・・・・・

 

 (あ、逃げた)

 

 こちらも見ている事に気がついたのか、子供達は一目散に逃げていった。

 

 「いったい何なんだか」

 

 彼は、枕元に置いてあったジャージとTシャツ、諏訪に来たときに来ていたボロボロに擦り切れ、ほつれているブカブカのパーカーを羽織り、地味な痛みを訴える祟られた左腕で、布に包んだ大太刀を持って外に出た。

 

 

 

 彼は知らない。

 

 まだ幼い少女、白鳥歌野を投げ飛ばした鬼畜男だとか、化け物スレイヤーだとか、妖怪蕎麦置いてけだとか。

 そんな、不名誉なあだ名を、白鳥歌野とその友達である藤森水都の手によって、子供達の間で流布されている事に。

 

 *

 

 「おお、そこの長物持ったニィちゃん、ちょいと来てくれや」

 「へ?ああ、はい」

 

 外に出れば、太陽はもう天高く昇っていた。

 エースは、街をふらふらと歩いていると、不意に日陰のベンチで休んでいた、歳を召した老年の男性陣に呼ばれた。

 

 「ニィちゃん、見ねぇ顔だな。諏訪の外からやって来たんか」

 「っす。まあ。昨日、西の方から来たっす。あ、昨晩公民館の一角をちょっと借りて寝たんですけど、良かったっすかね」

 「ええ、ええ。そんくらい。大変だったのう」

 「そとはバケモンがいっぱいだろう?どうやって生き延びたんじゃ?」

 

 そんな具合で、雑談に花を咲かせていると、

 

 「ん?昨日来たって事は、ニィちゃんがあの『妖怪蕎麦置いてけ』か?」

 

 エースは、崩れ落ちそうになった。

 

 「何すかそれ!?」

 「ん?歌野ちゃんと水都ちゃんが子供達にニヤニヤしながら言い触らしておったぞ?・・・・・・というか、歌野ちゃん達ともう知り合いなのか」

 「ええ、まあ・・・・・・マジかよ。昨日蕎麦をお代わりしまくっただけでどうしてそんなあだ名が・・・・・・」

 

 エースは、今度はその場に崩れ落ちた。

 

 そして、農業をやっているというおじいちゃん達と仲良くなれた。

 

 *

 

 その結果。

 「ニィちゃんの歓迎会をやるぞ!」という、エースが仲良くなったおじいちゃん達の内の一人の提案により、昨晩エースが寝泊まりした公民館にて酒盛りが始まった。

 そして冒頭に戻る訳なのだがーーーーーー

 

 「どーすんだよこの状況・・・・・・!」

 

 時刻はまだ七時半。

 酒盛りが始まって、まだ三十分しかたっておらず、それでこのカオスな状況だと言うのだから笑えない。

 

 まあ、酔っ払いは話に真摯に向き合ってやれば、たいてい満足して別の場所に行くため、エースにとっては問題無かった。

 むしろ問題だったのは・・・・・・。

 

 「すー、すー・・・・・・」

 「うーん・・・・・・むにゃむにゃ・・・・・・」

 

 エースの腕に抱き着いて涎を垂らしながら寝る歌野と、エースの膝枕を勝手に堪能している水都、そして・・・・・・

 

 「ねぇ蕎麦置いてけのおにーちゃん!お菓子貰っていーい?」

 「おう持ってけ持ってけ。でも俺は妖怪蕎麦置いてけじゃないからな?そこ勘違いするなよ?」

 

 「なーなーにーちゃん、あそべー!」

 「はいはい後で遊んでやっから!つーかこんな時間から何やんだよ?」

 

 「ぎゅー・・・・・・」

 「おいお前、抱き着いたまま寝てんじゃねぇ!?」

 「えー、でも歌野ちゃんと水都ちゃんも寝てるし・・・・・・ぽかぽかして・・・・・・なんか、良い具合・・・・・・」

 「おいおい俺は布団じゃねーぞ!うわやめろお前らも来るんじゃねぇ」

 

 エースに引っ付いたり絡んだりして来るロリっ娘共。

 ショタっ子共は少年と共に歯ぎしりし、少女達は苦笑い。

 ・・・・・・ロリに埋もれる少年A。何とも絵面的には可愛そうな事になってしまっている。

 

 「・・・・・・もうなるようになっちまえ」

 

 そしてエースは、あらがう事を止めた。

 そして、そんな状況(ロリに埋もれる状況)は日を跨ぎ、朝まで続いたのだった。

 

 *

 

 翌日。

 彼のあだ名に『妖怪ロリコンお化け』が追加された。




 例えば、子供の話の広がる早さとか。
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