少年Aは神殺しである。   作:千点数

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4:雷霆来たる

 ーーー少年A・・・・・・エースが、諏訪にやって来て一週間が経った。

 

 その一週間、エースは、おじいちゃん連中に「農業には圧倒的な迄に不向き」という評価を下され精神的に崩れ落ちたり、何故か圧倒的な迄に向いていた子供のお守りでは「にーちゃん、あそべー!」と、子供達からの無邪気な物理攻撃(抱き着き)をくらい、物理的に崩れ落ちたり。

 

 ・・・・・・とまあ、比較的騒がしくも平和で平穏な暮らしをエースは過ごしていた。

 

 *

 

 エースは今、公民館が住家になってしまっている。

 ここには下宿というものが殆ど存在せず、一つ、二つあるそれも『あの日』の化け物襲来による外からの避難民で一杯だった。

 故に、公民館の一角にて、布団を借りて寝泊まりしている。

 故に大抵、朝はこうなる。

 

 「おきてー。ハリー!」

 

 ぺちぺち。

 

 「うーん、なかなかゲットアップしてくれないわね・・・・・・ゲットアップ、ハリー!」

 

 ゆさゆさ、ゆさゆさ。

 

 「うたのん、まだエースさん寝てるの?」

 「イエスよ。まーだスリープして夢の中。一体どうしようかしら・・・・・・あ!」

 

 ごそごそ。

 

 「な、なにしてるの!?うたのん!?」

 「ほらー、早くゲットアップしなさい!もう七時よ!」

 「う、ん・・・・・・?」

 

 漸く目覚めたエースは、目を細く開けて身体を起こそうとするが、腹の上に何かのっているのか身体を起こす事が出来ない。

 見れば、胸板の辺りには歌野の顔が。腕はしっかりと背中の方に回され、ぎゅー、と抱き着かれていた。

 

 「なーにやってんだ、歌野」

 「ユーを起こしてるのよ」

 「じゃあ、もう起きた。離れろ」

 

 エースはそう言うと、右手で歌野の背中を摘むとぺいっと、座布団が積み重なっている場所へ放り投げた。

 歌野はまだ小学生。

 ちっちゃくて軽い為、こんな芸当も可能なのだ。

 

 「エースさん・・・・・・うたのんに対する扱いが完全に猫ですね」

 「猫にしてはかまちょ過ぎねぇか?猫ってのはもっと自分勝手だろ」

 

 まあ、エースは公民館で寝泊まりしている為に大抵こうして誰か、起きるのが早い子供なんかが起こしに来るのである。

 

 ・・・・・・主に暇潰しに。

 憐れなり、彼の睡眠は子供達がいる限り脅かされるだろう。

 

 「もー、ミーに対する扱いが雑ー!」

 「構ってやるだけマシだ」

 

 布団を畳み、朝の体操を行い、そして布に包んだ大太刀を持って、エースは公民館を出た。

 

 行き先は、超強い師範代がいる剣術道場である。

 

 *

 

 「()っ!」

 

 カン!カカカン!

 

 「まだ甘いのぉ!」

 

 ガガガガガン!!

 

 どうやったら木刀でそんな音が出るんだ、と不思議に思いつつ、エースは大太刀と同じサイズの木刀を振るう。

 神を殺した時に、返り血で真っ赤に染まったボロボロに擦り切れて所々ほつれているブカブカのパーカーを翻し、それで相手の目を時々くらましながら打ち込む。

 

 エースの振るう木刀は、常人が受ければただでは済まない威力を持っていたが、相対する爺はそれを軽く逸らすようにしていなし、一瞬でエースの懐に潜り込む。

 

 「()った・・・・・・!」

 「そいつぁどうかな、爺さん!」

 

 ガガキン!!

 

 爺はエースの懐に潜ると同時に、全く同時に見える(・・・・・・・・)、身体の中心と(へそ)の下を狙った突きの二連撃を食らわせるが、人外じみた反応速度をもってして、エースに二つとも阻まれてしまう。

 

 「今のを捌くとはな・・・・・・」

 「油断大敵って奴だぜ、爺さん!」

 「じゃなぁ!」

 

 風を切る音と共に、必殺の一撃が宙を舞う。

 二人が繰り出す木刀による攻撃は、そのどれもが息の根を止めるには十分過ぎる程の威力が込められていた。

 時折掠った頬や手の甲が切れ、血が散る。

 

 「「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」」

 

 狂ったように、笑いながら技を打ち込み続ける二人の姿は、正に鬼。

 最早傍から見れば、可笑しくなってしまって暴れているようにしか見えなかった。

 

 

 

 この剣術道場における、師範代とエースの人外じみた闘いは、この後師範代の孫娘が来るまでずっと続いた。

 

 *

 

 お昼時。

 

 「だぁー、畜生あんの爺クッソつえぇ・・・・・・」

 「おじいちゃんと組み手がマトモにできる貴方も大概だけどね」

 

 最後の最後に首筋になぎ払いを食らい、すっ飛んだエースは首をさすりながら、ここの剣術道場師範代の孫娘から氷嚢を受け取って首筋に当てる。

 

 「あーててててて、ったくよー、実戦ならまだしも孫娘が帰って来るまでの暇潰しで人の首にフツー木刀叩き込むか・・・・・・?」

 「・・・・・・それ、フツーの人間は大概死ぬんだけど・・・・・・」

 

 エースの発言に、師範代の孫娘は苦笑いしながら答える。

 エースは、神殺しを成した時に、不老不死を得る呪い入りの祟りを左腕に受けてしまっている為、それこそ存在が世界線から消え去るような事でもないかぎり、身体が太陽に焼かれても生き残るのだが・・・・・・それはまだ、本人が知った事ではない。

 

 さて。

 エースが、この剣術道場に通っているのは訳がある。

 彼の武具が大太刀だからである。

 最初は、「なんか練習場欲しいな」程度で通ったのだが、初日から師範代とマトモに打ち合うという偉業を達成。

 更に、常人ならば死ぬような一撃を受けても死なない、という事が発覚し、エースは毎回ここに来ては死にそうな攻撃を食らっているのだった。

 

 ぴーんぽーんぱーんぽーん!

 

 エースが首筋を冷やしていると、町内放送のチャイムが鳴った。

 

 『今、物凄い嵐が起きてます!外には絶対に出ないで下さい!』

 

 ぴーんぽーんぱーんぽーん!

 

 外を見れば確かに、空は真っ暗、時々稲妻が走り、風が物凄い事になっている。

 

 「ほう、これは今日はエース君は帰れそうにないの。泊まっていきなさい」

 「え、いやでもここから一キロくらいっすよ俺の住んでる場所(公民館)だから別にーーー」

 「馬鹿、いくら貴方が強くても吹き飛ばされるわよこんな嵐が起きてたら!ほら、あそこ見なさい!木の枝が舞い上がるぐらいの風が吹いているのよ!?馬鹿なの!?」

 

 結局、エースはこの日剣術道場の師範代の家に泊まる事になるのだった。

 

 *

 

 ちょうどその頃。

 

 『・・・・・・』

 

 『・・・・・・ここか、あいつ(剣神)の雰囲気を感じるのは』

 

 『国譲りの時に逃げたあやつを追いかけた時以来だな、ここに来るのは』

 

 稲妻が走る雲の中には、圧倒的なプレッシャーを放つ存在が、諏訪の街を見下ろしていた。

 

 そして、その一瞬後・・・・・・

 

 諏訪を守る結界に特大の稲妻が直撃し、風穴を空けた。

 

 『来るが良い、そして神を殺したその力、このオレにとくと示すが良い!神殺し(・・・)!』




 次回

 決闘(その一)
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