地を揺らすほどの轟音をたてて、雷が落ちる。
あまりの轟音に、師範代の孫娘が肩をビクリと震わせた。
「きゃあっ!」
「随分近くに落ちたのう。どこかの家に直撃しておらんだろうか」
「さぁ。無事を願うしか無いっすね」
師範代の家にて、少年A・・・・・・エースと、師範代の爺、そしてその孫娘は家の中で大人しく嵐が過ぎ去るのを待っていた。
「いやぁ、にしても唐突だの。昼迄は晴れとったのに」
「確かに、異常っちゃあ異常っすね」
「台風の季節はあと一ヶ月と何週間かあとだったハズなんだけどねー」
呑気に会話をしていると、雷鳴がまた、近くで鳴り響いた。
「きゃあっ!」
「また近くに落ちたなぁ」
「うむ」
唐突に表れた不思議な嵐は、今日は止みそうになかった。
季節外れの台風なのだろう、と、師範代の爺と孫娘は推測しているが、エースはそれでもこの規模は可笑しいだろ、と思い始めていた。
恐らく、近くに嵐でも呼び出す化け物の類いでも現れた、と言われた方が、彼にとっては季節外れの嵐というものよりも何千倍も納得出来た。
そうなれば嵐云々関係なく外に出てその元凶を倒さねばならないのだが。
歌野は・・・・・・吹き飛ばされそうだから、もしそうだったのであれば自分一人で潰そう、と、エースは考えた。
まあ、化け物襲来用のサイレンが鳴っていない為に、季節外れの大嵐という線が今のところ濃厚である。
(でも、この嵐・・・・・・何やら、『あの日』と同じような気配がするのは、俺の気のせいか・・・・・・?)
*
その時、圧倒的な威圧感が周囲五十キロメートル程の範囲に広がった。
(・・・・・・!!)
表情には出さず、壁の向こうの外を幻視する。
いる。間違いなく、あの日と同じ『ヒトデナシ』が。
エースの側にいた師範代と孫娘は気絶してしまっている。
恐らく、ここいら一帯にいる人間は全員こうなってしまっているのだろう。
「・・・・・・行くか」
エースは、剣神の大太刀を持ち、神の返り血によって真っ赤に染まったボロボロに擦り切れ、ほつれたパーカーを羽織り、外に出た。
打ち付ける雨が酷く、殆ど何も見えない。
それでも『それ』は、絶対的な存在感をもって、視界の端に、確かに存在した。
白い装束を纏い、少々長い
だが、風貌は人間の男性でも、纏う雰囲気から人間ではない事が直感的に理解出来た。
「やっと来たか、神殺し」
「黙れヒトデナシ。派手な登場しやがって・・・・・・一々大災害起こさねぇと登場も出来ねぇのか」
「フン、登場がてら貧相な町の掃除でも、と思ったまでよ。もしあの威圧でも貴様が出てこなければ本当にここいら一帯『お掃除』しておったかもなぁ?」
ニヤリと笑って言う『それ』に、エースは不快な表情を隠そうともせずに言う。
「やっぱり神は神って訳か」
「そういう事だ」
覇気は武人・・・・・・いや、武神のそれだが、やはり神は神。
周囲の被害に眼もくれず、やりたい放題に稲妻を落とし、ただ『エースに会う』という目的の為だけに町の人間全てを圧倒的な威圧と覇気で気絶させるという暴挙。
武にまつわるものだから、といって、人間の武人のような誠実さは全くもって持ち合わせてないらしかった。
「で?まさか俺に会う為だけにここに来たって訳じゃないだろう?」
「わざわざ答える必要もあるまい?」
「まあ、だいたい予想はついてるが・・・・・・」
ため息を吐きつつ、エースは大太刀を抜き放つ。
その様子に神は愉快そうに笑うと、腰に下げた
「・・・・・・行くぞ、神殺し」
「・・・・・・来いッ!!」
*
剣神を殺した少年と、武神にして雷霆神という複数の神格を持つ神。
双方のぶつかり合いは、天地を裂いた。
次回
決闘(その2)