少年Aは神殺しである。   作:千点数

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 勇者であるシリーズの要素がカケラも無いのは気のせいだろうか。


6:鋼の闘い(中)

 初撃。

 轟々と降る雷雨と嵐の中、稲妻が如く駆けて突撃してきた神を、少年A・・・・・・エースは咄嗟に手に持った大太刀で受け止める。

 

 ただ、ただそれだけで、大地が蜘蛛の巣状にひび割れ、砕け、そして陥没する。

 

 エースは受け止めた衝撃と、神のパワーに押し負けて吹き飛ばされてしまう。

 

 「どうした。剣神を殺したというから期待していたのだが・・・・・・期待ハズレだったか?」

 「馬鹿力かよッ・・・・・・!」

 

 陥没した地面の上で、神は残念そうな仕種をする。

 エースは起き上がると、血の混じった啖を吐き、大太刀を構え直す。

 

 通常の人間ならば、重傷でもおかしくないのだが、ここは殺した剣神の、不老不死の呪いが組合わさった祟りが幸いした。

 不老不死になった事で、通常の人間では持ち得ない再生力と耐久力で吹き飛ばされた衝撃に耐えたのだ。

 

 「ふむ、まあ先ほどの一撃に耐えるのであれば、ただの人間では無いことは確か。その左腕の祟りと、その身体かかっている呪いを見る限り、神を殺した、というのも間違いではなさそうだ」

 

 神はそう独り言を言うと、先ほどよりは遅いが、それでも眼にギリギリ映るくらいの速度でエースに接近する。

 

 「ちぃッ」

 「どうした!反応が遅いぞ!」

 

 片腕で振るわれた(つるぎ)の一撃をエースはギリギリ防ぐ。

 続く二撃、三撃を捌き、四撃目を受け流す。

 

 が、それでも威力を完全には逃がしきれず、エースの腕には相当な負担がかかっていた。

 

 「こんの・・・・・・馬鹿力野郎・・・・・・ッッ!どんな腕してやがるッ」

 「当たり前だ。オレは武神。そんじょそこらのもの共の腕と同じにするな!!」

 

 神がそう力強く言った瞬間、神を中心にして微弱な稲妻を伴った衝撃波が辺り一帯に広がり、エースはまた、吹き飛ばされてしまう。

 頭から生えていた木にぶつかり、一瞬意識が途切れる。

 

 「立て。まだ終わらんぞ」

 「当たり前だ。テメェはここでブッ潰す!」

 

 エースは、大太刀をより強く握って神に突撃した。

 

 「愚直だな。まさか真っ正面から来るとは」

 「俺自身、馬鹿なもんでね!」

 

 エースは最近覚えた力任せではない太刀の振り方で、神に連撃を仕掛ける。

 上段、下段切り払い、下段から上段への切り上げその他諸々エトセトラ。

 それらは全て一般人には致死の威力を持っていたが、神はそれら全てをかわし、反らし、そして受け止めた。

 だが、エースはそんなこと気にせず、『反撃の隙を与えない』という事を念頭に置いて、とにかく攻撃を繰り返した。

 

 轟々と降り続く雷雨と嵐の中、よくもまあ体力が持つものである。

 通常の人間であれば、体温を奪われて、動きが鈍くなっても仕方ないが、エースには、そんな気配がなかった。

 まあ、もともとこの馬鹿には常識は通用しない。

 常識が通用するのであれば、神なんて殺してはいないのだから。

 

 *

 

 「ふむ、まあ、良く持った方か」

 「はーッ、はーッ・・・・・・」

 

 肩で息をしながら神の攻撃を受け止めるエースに、神は冷ややかに告げる。

 

 エースは今、血まみれであった。

 全ての攻撃を捌かれ、弾かれた隙に、一気に神が攻勢へと盛り返したのである。

 そこからはエースは防戦一方。体中裂傷だらけで、雨の中、彼の足元は紅い水溜まりが出来ていた。

 

 「人間にしては、なかなか見所があったな」

 「そうかよ。まあ見てろ。もっと見所を見せてやるよ」

 「残念だが、それは無理だな」

 

 神は残念そうに、本当に残念そうにそう言うと、無造作にエースを蹴り飛ばす。

 そして、一度間合いを取ると、稲妻を右腕に発生させる。

 

 真っ黒い雨と稲妻を降らせる空の下、神は光り輝くその右腕を、天高く振り上げてーーー

 

 「貴様にもう用は無い。この地とともに、消え去れ、神殺しーーー!」

 

 そして、その言葉と共に打ち下ろした。

 

 直後。

 

 ここ、諏訪の地を守護する神の結界を突き破り、大地の尽くを消し飛ばす程の雷がエースに直撃した。

 

 *

 

 さて。

 エースは、先ほど語った通り、『普通ではない』。自他共に認める馬鹿であり、常識の通用しない頭可笑しい人間である。

 そんな人間でなければ、『神殺し』などという芸当は成せない。

 

 故に、そんな人間だからこそ、『神の怒り』とも言われ、それに相応しい威力を持つであろう雷をその目にして尚、絶望はしなかった。

 

 むしろ、エースはそれに立ち向かった。

 

 一瞬の内に大太刀を構え、自分に向かって降って来る雷を見据えて・・・・・・

 

 そして、大太刀でその大地を切り裂く程の威力を持った雷を、切り上げによる斬撃で文字通りたたっ斬ったのだ。

 

 

 

 まあ勿論、そんな事をやって無事で済む訳がなく。

 

 「痛ってェ~・・・・・・」

 

 エースの右腕は、黒焦げになっていた。

 

 「どこかの侍が雷を斬ったというが・・・・・・まさか本当に実践する者がいたとは・・・・・・もしや、馬鹿か?貴様」

 「自他共に認める馬鹿ですが何か?」

 

 本当に馬鹿である。

 雷を大太刀で斬るという馬鹿たれ(エース)は、真っ黒焦げになった右腕で大太刀を握り直すと、軽く振り回す。

 少々焦げた体細胞がパラパラと崩れ落ちるが、得に問題なく振れる為問題無い、といった感じで、エースは神に不敵に笑って言う。

 

 「・・・・・・さぁ、第二ラウンドといこうぜ?」

 「・・・・・・貴様、根っからの気狂いか・・・・・・ッ!」

 

 神が少し、顔を引き攣らせた気がしたのは、エースの気のせいだろう。




 うわぁこの少年やべぇ、と、書いてて思いました。

 右腕ケシズミになって問題ねぇってどんだけだよ・・・・・・。
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