ただそれだけの物語   作:もっち~!

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しばしの別れ

クルシュの元へはせ参じた僕。彼女は僕に甘えまくっている。男装の麗人として振る舞うには、無理が来ているのかも知れない。

 

「ねぇ…エミリアと行っちゃうの?」

 

僕の上から訊いてきた。

 

「彼女の騎士だからね。彼女を送り届けないと…」

 

「暫く逢えないの?」

 

僕の胸に頬を重ねている。僕の前だけでは、普通の女の子になろうとするクルシュ。

 

「いや、本当に困った時には戻って来るよ。ソレよりも、裏でエミリアが王になるように動いてくれないかな?」

 

目を見開いて驚いているクルシュ。

 

「だって、この世界が平和になったら、僕と僕の世界へ行くんだろ?君が王になったら、一緒に行けないよ♪」

 

「あっ!そうですよね…困った…」

 

本当に、一緒に来る気があるようだ。

 

「エミリアにクルシュの実現したことを頼むんだよ。エミリアのしたいことと、相反しないと思うからさぁ」

 

考え込むクルシュ。

 

「まぁ、この世界に居座るのも有りだよ。王を引退した頃に迎えに来るから」

 

「それだと…ヨボヨボになりそう…」

 

「なるだろうな。下手すると死ぬまで引退出来ないだろうし」

 

「たまに、遊びに来てくれる?」

 

「約束は出来ない。僕としては、あまり来たくない世界だから」

 

あのピエロのおっさんと、おかっぱの司祭は会いたくない。

 

「そんな…」

 

「時間はまだある。考えておいてくれ」

 

クルシュの額にキスをした。

 

「あの…口に…欲しいです」

 

「お預け…なんてね」

 

一瞬泣きそうな顔になったクルシュの唇に、僕の唇を重ねた。

 

「もう…いじわるですね♪」

 

クルシュの方からも、唇を重ね、舌を…

 

---------

 

翌日、クルシュが龍車をくれた。こういうのって高いんじゃないの?

 

「こんな高価の物は貰えないよ」

 

「いいのよ!持って行きなさい。後、龍を選びなさい」

 

男装の麗人のクルシュ。気前が良い。貰える龍の候補を見て廻ると、僕をガン見していっる龍を見つけた。コイツにするかな。

 

「この子にする」

 

「一番気性が荒いけどいいの?」

 

「あぁ、躾けるからいいよ。名前は?」

 

「パトラッシュ♪」

 

フランダースの龍か?クルシュが嬉しそうに名前を付けてくれた。では貰っておこうか。パトラッシュを龍車に装着して、エミリアを乗せて、僕は御者台に載り、クルシュのお屋敷を後にした。

 

 

 

---クルシュ---

 

行ってしまわれた…しばしのお別れ。たぶん、次に会う時には、お返事をしないとダメだろうな。

 

「どうされましたか?」

 

ヴィルヘルムに訊かれた。彼に言われたことを正直に話した。

 

「そうですか…そのようなことを…」

 

ヴィルヘルムが、彼なりの考えを纏めているようだ。

 

「そうですね。彼の言う通りですよ、クルシュ様」

 

言う通り?

 

「彼はクルシュ様の抱えている問題を見抜かれた。そして、提案をされたのです。クルシュ様にとっての幸せとはを、考えた方が良いかと思います」

 

私にとっての幸せかぁ…王になることで、私は幸せになるのだろうか?領地の民達、家臣達を良い方向へ連れて行けるはずではある。だけど…彼とは…

 

「クルシュ様、どうされましたか?」

 

フェリスに訊かれた。ヴィルヘルムに言われたことを話した。

 

「そうですね。民達、家臣達の幸せがクルシュ様の幸せなら良いじゃ無いですか。私は、クルシュ様が王になられたら、スバルきゅんに付いて行きます♪」

 

えっ!裏切りじゃないのか…主君を置いて、行っちゃうのか?

 

「私の幸せは、スバルきゅんと一緒にいることです」

 

私だって…

 

「そうですか…では、私はクルシュ様の分も、寵愛を受けようと思います」

 

とても嬉しそうなフェリス。

 

「ズルい…」

 

涙が目尻から溢れ出していく。そんなのズルいって…

 

「ふふふ♪本音が出ましたね。良いんじゃ無いですか?本音のままに生きるのも。領民、家臣の犠牲になることは無いですよ。同じ志を持ってくれる王がいるなら、彼女に丸投げも悪く無い選択ですよ」

 

なるほど…それでも良いのか…

 

 

 

---スバル----

 

宿屋を引き払い、レムを拾って、エミリアの後見人であるロズワール家へと向かった。

 

 

ロズワール・L・メイザース。ロズワール家の当主である。道化の化粧を施した腹黒い男である。こいつは苦手である。宮廷筆頭魔術師でマナの量は無尽蔵であり、接近戦もこなせるスーパー戦士である。

 

「レム!手綱を頼めるか?」

 

「どうしました?」

 

「追っ手がいる。いいか?僕が戻るまで、止めずに走らせろよ」

 

「わかりました」

 

エミリアをレムに託し、僕は追っ手のお掃除をする。

 

「おい、貴様!魔女に心を売った騎士だな?」

 

「魔女教の信者さんに言われるのは心外ですけど」

 

『強奪』を発動して、追っ手の者達の持っている魔女の福音書を奪い、目の前で灰にして上げた。この福音書は、TODOノードみたいな物で、何をすべきかが書かれているのだ。

 

「何をするのだ?このバチ当たり目!」

 

まぁ、バチ当たりなのは、間違いない。チートではあるが、福音書がなくても、だいたい何が起きるかを知っているし。福音書の無い信者は、一般人と同じになるので、放置した。

 

--------

 

レムの隣に転移した。

 

「ただいま♪」

 

「お怪我は無いですか?」

 

「レムの笑顔を見れば、大丈夫♪」

 

「はい」

 

笑顔を見せてくれたレム。

 

夜間はレムをエミリアの隣に寝かし付け、僕だけ御者台に残った。レムには睡眠が必要だから。

 

そして、漸くロズワール家の屋敷に着いた、

 

「君がナツキ・ス~バル君ですか~?」

 

コイツの話し方はふざけている。道化師を演じているだけで、実は冷徹な男である。並行世界で、コイツと対峙したことあるし。たぶん、この世界でも、そうなるんだろうな。コイツ、基本的に嫌いだし。

 

「エミリア様の騎士で、ナツキ・スバルと申します」

 

『強奪』で、コイツの福音書を奪い、こっそりと灰にした。

 

「お話は、夕食を食べながらし~ませんか~」

 

「そうしましょう」

 

「レム!どうして、そんなヤツと、馴れ馴れしくしているの?」

 

レムのお姉様が登場した。ピンク色の髪で、レムより巨乳である。で、頭を撫でて上げる♪

 

「何しているの?止めて!勝手に触らないで…えっ!」

 

変化に気づいたようだ。レムの姉は鬼の角を折られている為、マナを自分で回復出来ず、あのピエロ野郎と身体を合わせることで、回復していたはず。

 

なので、角を治して上げました♪

 

「どうやって…ねぇ…どうやって…」

 

「僕にも鬼の血は流れている。ただそれだけだよ」

 

「うっ…ありがとう…バルス…」

 

スバルなのだが、コイツは素直で無い為、バルスと呼ぶのであった。

 

「いいよ。同じ種族だろ?」

 

レムの姉の頬がうっすらと赤みを帯びていた。

 

---------

 

夕食…旦那様が現れない。当主が現れないと、食事が出来ない。どうしたものか?

 

「ラムが見て来ます」

 

レムの姉のラムが当主の部屋へ見に行った。

 

「やめてください!」

 

暫くするとラムの泣き叫ぶ声。みんなで、ラムの元へと行くと…せっかく治したラムの角が折られていた。見るからに痛そうな、折られた痕跡。

 

「お姉様、大丈夫ですか?」

 

「角が…角が…」

 

頭を押さえて泣きじゃくるラム。鬼は角が命に近いんだが…沸々と湧き上がる怒りのマグマ。

 

「おい!クソ当主よ!なんで、ラムの角を折ったんだ?」

 

「その女に角は不要だ」

 

当主の口調には、おちゃらけさを感じ無い。コイツ、怒ると、素に戻るんだよな。

 

「それはラムの身体を自由に出来なくなるからか?」

 

はっとした表情のロズワール卿。

 

「ラム、おいで♪治してあげるから」

 

僕の元へ走り寄ったラム。彼女の頭を撫でて、角を治して上げた。

 

「貴様が、治したのか?なぜ、そんな無駄なことをする!」

 

またへし折ろうとするロズワール卿の前に出て、魔の手からラムを救う。

 

「無駄?鬼の角のだぞ?無駄な訳あるか!まぁ、鬼を奴隷にする輩には、無駄な行為か?」

 

角の無い鬼は、本来の力を出せぬ。図星に近い僕の言葉で、怒りを露わにしているロズワール卿。

 

「で、飯はまだか?」

 

「飯?そんな物より大事な事をしている」

 

本棚を探しているロズワール卿。そんな処に無いよ♪肥だめに灰を捨てたし♪

 

「無い…なんで無いのだ…まさか…貴様か!」

 

僕の方を振り向いたので、『マホトーン』を掛けておく。魔法を撃たれると厄介だから。この呪文は、相手に呪文を唱えることを出来なくする呪文である。なので、無詠唱系には効果は無い。

 

案の定、何かの魔法を撃とうとしているロズワール卿。しかし、魔法が出せずに、あたふたしている。

 

「何をしているんだ?道化芝居か?」

 

「貴様…何者だ?!」

 

「ナツキ・スバル…エミリア様の騎士だ。それ以上でも、それ以下でも無い」

 

「いや、ナツキ・スバルには、そのような能力は無いはずだ!」

 

「なんで?無いって言い切れるんだ?初対面なのにさぁ」

 

エミリア、ラム、レムが怪訝な表情で、ロズワール卿を見つめていた。

 

「書いてあったのだよ。エキドナ様から頂いた福音書にな!」

 

って、言って、口を押さえたロズワール卿。自白取れました♪

 

「なんで、魔女の福音書を持っているんだ?お前、魔女教の司祭か?」

 

「はぁ?司祭と一緒にするな。私はエキドナ様の弟子だ!」

 

弟子って言い切っちゃったよ。エミリア達の表情から血の気が失せている。

 

「パック、エミリアを頼むぞ♪」

 

「まかせろ♪」

 

モフモフ精霊様が現れた。

 

「ラム、レムは僕の後にいろ!」

 

「「はい♪」」

 

「貴様!何者だ?どうして、パックすら味方にしているのだ!」

 

「その福音書には、書かれていないんですか?万能では無いんですね♪」

 

「侮辱するな!」

 

瞬動術で僕の懐に入ろうとしたロズワール卿。だけど…

 

「うごっ!」

 

ロズワール卿の右手が切り落とされた。僕の隣に、聖剣を手にした仲間が転移していた。

 

「悪いけど、兄さんに危害は与えさせないよ♪」

 

「おい!僕は、お前の兄だと、認めていないぞ、ヤマト!」

 

仲間に怒りの声を浴びせた。僕の弟と名乗る仲間。心外です。

 

「兄さん、照れないでも良いんですよ~♪」

 

「弟だと?」

 

「ナツキ・ヤマトとでも言っておきましょうか。ねぇ、兄さん♪」

 

「だから、兄じゃないって。お前、誤解をしているぞ!」

 

「誤解?そんなことは無いですよ。だって、兄さんの母さんから、証言は取れていますし♪」

 

「この野郎!二人共消えろ!」

 

ロズワール卿が、剣を手に斬り掛かってきた。

 

シュッパ!ゴトン!

 

僕の持つ魔剣で、ロズワール卿の左腕を切り落とした。

 

「何…お前達…なんでそれを持っているんだ…」

 

両腕を無くしたロズワール卿が訊いてきた。

 

「それって?」

 

「あぁ、僕のエクスカリバーと、兄さんのダークエクスカリバーのことでは無いですか?」

 

ヤマトの言葉に頷くロズワール卿。

 

「どうして持っているんだ?はて?」

 

いつ、どうやって手に入れたかを覚えていない僕。

 

「そんな昔の事は覚えてないですよ」

 

って、ヤマトも覚えていないようだ。

 

「お前ら…まさか…」

 

何かに気づいたロズワール卿は、ヤマトの能力で、闇の世界へと引き込まれて行く。

 

「お前達…闇属性か…」

 

スルーすると、ロズワール卿の斬り落とした腕だけが残った。

 

-------

 

ロズワール卿がいなくなり、今後の後盾と財政をどうするかを話し合った。

 

「財政は僕のチームで利殖させていきますので、心配はないです」

 

って、ヤマト。コイツのチームにはスーパーコンピュータが2台いるからな。

 

「問題は後盾ですね」

 

どうするかな…ロズワール卿が意外に早く退場してしまったし。

 

「僕達の所属している騎士団の団長に、後盾になってもらいましょうか」

 

って、ヤマト…それって…ダメだろう…

 

「あの鬼畜か?」

 

って、パック。頷くヤマト。

 

「まぁ、良いんじゃないか?あそこにケンカ売る勢力は無いだろうし」

 

って、パック。おい、断れ!断固拒否しろ!

 

「じゃ、兄さん、そういうことです♪エミリアさん、今後、僕達の騎士団の団長が後盾になります。だから、安心してください」

 

って、ヤマト…ダメだって、鬼畜だぞ!女体大好きだぞ!

 

「その方は、すごいのですか?」

 

って、エミリア。

 

「人間では無いので、人間的に出来ているとは言えませんが、まぁ、概ね、エミリア様なら、被害が少ないと思いますよ♪」

 

それは苦手の上、対象外ってことだな。

 

「その方も、女体好きなんですか?」

 

「はい♪大好きですよ♪」

 

って、ヤマト…てめぇ~!

 

 

 

翌日から、屋敷周辺の魔女教徒狩りを、僕達の騎士団主導で行った。まぁ、村が平和になるのは良いことではあるが、僕がエミリアの騎士である必要はあるのだろうか?

 

 

 

 

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