天・地・冥を統べる主となれ   作:ネヘモス

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リクオ、堕天使の総督と会う

レイナーレにリクオの刃が振り下ろされそうになった、その時だった。

 

「リクオ、そこまでにしてくれねーか。コイツの処分は俺がするからよ」

 

唐突に空から男の声がした。見た目は鴉天狗…なのだが、それにそぐわない力、レイナーレと同じ力を発していた。

ただし、レイナーレとは比べ物にならないくらい濃密な力を。

 

「お前は、遠野の鴉天狗の麻葉(あさば)?」

 

「久しぶりだな、リクオ。それと、騙して悪かった」

 

その男が指を鳴らす。すると、背後に生えていた黒い翼が6対に増えていた。

 

「俺が、そいつらのまとめ役。『神の子を見張る者』の総督、アザゼルだ」

 

「ああ、お前が堕天使なら話は早い。レイナーレとか言ったか?コイツを…なんだっけ?コキュートス?とかいう氷結地獄に閉じ込めとけ」

 

『待ってください、話が分かりません。一つ一つ説明してください』

 

リクオが祢々切丸を収め、アザゼルが翼を引っ込める。ちなみに、レイナーレの配下の堕天使は全員リアスと朱乃に捕えられていた。

 

まず、リクオは二年前に三代目としてもっと力をつけるべく遠野で修行を開始した。その時に出会った遠野の新顔、それが鴉天狗の麻葉、ここにいるアザゼルである。

アザゼルは三年前、丁度リクオが鬼憑を習得している時に遠野を通りかかり、そこであるものの気配を感じ取った。

 

そう、純粋な妖怪しか居ないはずの遠野で神器の、それも神滅具に近しい力を。

 

「待て、じゃあこの場に神滅具が二つあるってことになるがどうなってる?」

 

レイナーレはリクオがアザゼルとタメ口をきいてるのが気に食わなさそうだが、リクオの曼荼羅が発動した時の力はアザゼルに匹敵、赤い竜を纏った時のはそれを軽々と超えていたので下手に口出しすることが出来なかった。

 

「いや、その説明はするが少しいいか?」

 

アザゼルはリクオに言うと、レイナーレとほか三人の堕天使を睨みつけた。

 

「お前ら、誰に手を出したと思ってる?ここにいるのは、奴良組三代目総大将の奴良リクオ。かの妖怪の総大将・ぬらりひょんの孫にして、言わば妖怪の最大権力者の一人だぞ!それを、何も知らない堕天使が殺そうとした?ふざけるな!!」

 

「「「「ひっ!?」」」」

 

アザゼルが先程までの飄々とした雰囲気を崩して堕天使を叱責する。

 

「ドーナシーク、カラワーナ、ミッテルト、お前らは『神の子を見張る者』の独房行きだ。死ぬまで出られると思うなよ?」

 

「そんな殺生な!」

 

「お許しください、何でもしますから!」

 

「レイナーレ様はどうする気ですか!?」

 

アザゼルはレイナーレをギロりと睨みつける。そして、

 

「お前は少しやり過ぎたな。俺はお前みたいに、他人から奪った力でに這い上がろうとしてる奴が一番嫌いだ。お前を『神の子を見張る者』から外す」

 

それはつまり、実質上「神の子を見張る者」のバックボーンが無くなるも同然。わかりやすく言えば、破門も同然の話だ。レイナーレが目に見えて絶望し、それと同時に緑の輝きがレイナーレから離れていった。

 

「イッセー、それをアーシアに戻してやれ」

 

まあ、結果は目に見えている。体内に宿る神器を無理矢理引き抜かれた者は例外なく死ぬ。てか、

 

「アザゼル、単刀直入に聞くけどよ。お前、ジジイの知り合いだろ?てか、二代目(オヤジ)が生きてた時に会ってたりしないか?」

 

「お?気がついたか?お前が小さい頃に会ってるのは間違いないぜ。でも、その頃はまだ神器の気配は無かったんだけどな…。とりあえず、後でお前の実家に行ってもいいか?コイツら独房送りにした後で」

 

「わかった。さて、レイナーレ、何逃げてる?」

 

「ひっ!?」

 

隙を見て逃げようとした今回の元凶(レイナーレ)。だが、リクオが明鏡止水でいつの間にかその前に詰め寄る。

 

「お前、もう堕天使の陣営から追放されてんだって?」

 

「や、やめて…。殺すのだけはー」

 

「遅い」

 

鵺切丸・心打が、レイナーレを貫いた。それと同時にレイナーレに生えていた黒い翼が光に包まれて消えていた。

 

「わ、私の、堕天使の力が…!?」

 

リクオは人間と同等の存在に成り下がったレイナーレを見下ろす。

 

「アザゼル、これでコイツは堕天使じゃねえ。オレが処罰を下しても構わねえな?」

 

「……お前なら、そうするだろうと思ったよ。鵺切丸・心打の能力を真に理解しているお前ならな」

 

そう、鵺切丸・心打の能力は持ち主が敵とみなしたものを斬る、というものだ。その能力の真価は敵とみなしたものを「斬る」、これは、それがいかに硬い岩塊だろうと「斬る」というレベルの力ではない。

それを簡単に言い表すなら「概念切断」。だから鵺切丸・心打に斬れないものは理論上絶対に存在しない。だからこそ、神滅具と同等の力を有していることになる。

 

「それにしても、お前少し強くなりすぎだろ!?確かに風の噂で鵺ー安倍晴明が蘇って日本を滅ぼそうとしてたって聞いてはいたけどよ…まさか、あの羽衣狐を鬼纏うまで強くなってたなんて聞いてねえぞ!?」

 

「そっちこそ、昼に夜の姿になる方法を教えたのは誰だ?お前だろうが、アザゼル。よく考えれば、夜の間に妖気を練り込んで身体にある程度溜め込んで昼に使えるようにするって俺の身体がもたねえよ!まあ、今回曼荼羅を使った時に全部吐き出したから溜め直しだけどよ」

 

アザゼルは驚愕した。確かに、鏡花水月・曼荼羅は相当な妖力を使う。しかも、最大人数の八人を出すには夜のリクオでも(遠野の様に妖力で満ちている訳では無いため)不可能なのではないかと思っていた。まさか、妖力のストレージを使ってたとは思いもしなかった。

 

「さて、レイナーレ。お前はたった今、『堕天使として』オレが殺した。さあ、人間と同じ程度で何の後ろ盾もない。どうする?」

 

「こ、殺せ!私は堕天使じゃない、堕天使じゃない私に存在価値などー」

 

「鴉天狗」

 

「お呼びですか、三代目?」

 

「毛倡妓が少しくらい家事を休ませろと言ってたのを覚えてるか?」

 

奴良組はかなりの大所帯だ。その家事を毛倡妓とカナ(後、足を引っ張っている様にしか見えないお袋)だけで回している。氷麗がいる時は何とか回ってるが、氷麗が本家にいない今はっきり言って本人達の負担が大きくなっている。

 

「なるほど、そういうことですか。そこの元堕天使とやらの意思次第では即手配致します」

 

鴉天狗とある程度話をした後、リクオがレイナーレの元に戻る。

 

「そこのカラスと何の話を…?」

 

「レイナーレ。お前のその名前は堕天使の時の物だ。だからお前はこれから『麗奈(れな)』と名乗れ。オレの組の手伝いの一人として」

 

『待ってください、総大将!?』

 

「その女はリクオ様を殺そうとしたのですよ!?」

 

氷麗が(恐らくこれ以上リクオの周りに女が増えるのが気に食わないのが半分近くあるかも知れないが)猛反論する。

 

「そのぐらい肝が据わってないと、うちじゃやっていけないだろ?カナですら慣れるのに一年近くかかったんだぞ?」

 

「確かにそうですが…!」

 

「それにリクオ様、本家には御隠居様、ぬらりひょん様がおられるのですよ?」

 

青と黒、首無も同意見のようだ。

 

「いや、人間と同等くらいのコイツなら、今のジジイでも軽くいなせると思うぞ?」

 

あ、でも確かに自分の監視下に置いておかないとヤバいかな。ならば、

 

「氷麗、お前がコイツ(麗奈)を監視しとけ」

 

「「嫌ですよ(よ)!!何で殺しあったヤツと一緒に暮らさないといけないんですか(ないのよ)!?」」

 

「麗奈、お前は氷麗を逆に監視してても構わない。コイツ、偶に夜這いを掛けにくる頻度が多くなってやがるから」

 

「え?」

 

氷麗、雪女なのに固まる。

 

「あのな氷麗?一応オレは婚約者がいるんだぞ?」

 

「リ、リクオ様だって、婚約者のカナとキスすらしてない癖に!」

 

『はいはい、痴話喧嘩は帰ってからやって下さい御二方!』

 

奴良リクオ率いる奴良組は(痴話喧嘩が長くなると面倒なので)グレモリー眷属と神の子を見張る者を置いて先に帰った。

 

それから程なくして、堕天使陣営は神の子を見張る者の本部に帰還、アーシアは悪魔の駒の僧侶(ビショップ)として転生することになる。

 

「婚約者、か。私は…」

 




・アザゼル
二年前に遠野でリクオが修行してる時に「鴉天狗の麻葉」として接触する。その時は堕天使の力を妖力として偽装していたため、リクオも気が付かなかった。ぬらりひょん、奴良鯉伴と知り合いで、幼少期のリクオとも面識がある。

・レイナーレと他3名の堕天使の処遇
レイナーレ以外は神の子を見張る者の独房で終身刑扱い。レイナーレは神の子を見張る者を追放、しかも、堕天使の力を奪われる。レイナーレは堕天使ではなくなっているため、リクオが組で家事手伝いとして雇うか、氷麗の監視下に置くか検討中。

・本作の氷麗
駒王町に来てから暴走気味。隙あらばリクオに夜這いをかけようとする(が、鏡花水月で躱される)。リクオの最近の頭痛の種。

・リクオの神器の補足
鵺切丸・心打の真の能力は「持ち主が『斬る』と認識したものを確実に斬り捨てる」というもので、それが身体に宿る神器であっても神器と魂の繋がりを断ち切る事で神器だけを切り取ることが出来る。今回の場合はレイナーレの堕天使の力の根源のみを貫いて、本体は生き残らせた。

・邪魅が何処にいるのか
リクオに言われてリクオが留守の間カナを影から守っている。リクオの出入りの時は基本いつの間にかいるのだが、今回はその前にリクオがカナの護衛を頼んでいた。(決して忘れてたとかではない、断じて)
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