武偵高の目前にある食堂「Lupins Speisesaal」和訳するとルパンの食堂。少し前の在校生なら意味がわかる人もしばしば、あと安くて上手くて量が多いのイイコトづくしの食堂で、危険な香りがちょっぴりする話題の食堂。
店主はルパンの声真似が得意。
「武偵?ええ元ですけどね。去年からここで食堂やらせて貰ってます、育ち盛りの高校生ばかりですからねぇ。
え?ああ、いろいろあるんですよ。あ、ただ単に食堂やってみたかっただけですよ。えへへへ」
「そういえば、明日って定食300円引きの日ですよね?」
彼女は武偵高の1年生、名前は知らない。まだ2回目の来店だ。だが来たときは今のところガトーショコラと牛乳を食べる。
女性の容姿に口を出すわけではないが、彼女は胸が小さめだ、神崎・H・アリアとタメはるぐらいには小さい、それを気にして牛乳を飲むのだろうか、それとも純粋にチョコレートと牛乳が合うから飲んでいるのだろうか。ああ、彼女の尊厳の為だ俺は何も言わないでおこう。
「この時間帯って女子のお客さん少ないんですね?」
そう、今は14:00前ぐらいだ、武偵の皆は普通クエストしてたり鍛えてたりする時間だな。それに客が少ない理由は今日がスイーツホールの日だからだ。
「うーん、毎月1日は1ホールの日って言っていつもの値段に500円プラスで1ホール食べれるっていう女の子にとっては神ってる日だと思うんだがなんか少ないんだよねー」
少ないと言ってもちょいちょい居るし、男子生徒は結構居る。
ちなみにケーキのサイズは全て6号だ。
「勿体ないですよねー」
そんな彼女、この1ホールの日にしかやってこない、そして1250円を払ってガトーショコラとセットの牛乳を頼む。そして30分かけて食べきるのだ。
俺はまだこの時点で何も知らなかった。
「悪魔の1日」
と武偵高の女子生徒から言われていようとは。
カランカラン
入り口が開いた音だ。定番っぽいからついつい選んでしまったのだ...
「今日こそ逮捕だぁーまてぇールーパーン!」
「やめてくれよーとっつぁーん。うちは飯屋だぜ?」
店内がシーンとなった。
誰だったか、クスっと笑いを漏らすと店内が笑いの渦に包まれた。
「いらっしゃい、平くん。今日はいつもの?」
彼は
武偵高の2年生でウチでもバイトしてくれてる生徒さんだ。銭形警部の真似が得意で、仲のいい友達で声真似の事を知ってる人は彼を警部と呼ぶらしい。ちなみに俺はオーナーとか店長って呼ばれてる。
俺が武偵高の生徒だったと言うこともあって1ヶ月いくら働いても0.5単位と時給900円。そして閉店時間には賄いという名目の晩御飯あり。という事でクエストを出させて貰っている。
彼は無類のカツカレー好きだ。ごはんとトンカツでも良いらしいのだが、クエスト後にはカツカレーらしい。うーんこんな時間に食べて晩御飯大丈夫なのだろうか?
「1年生?よく食べるね...」
平くんが尋ねる。
「は、はい!スナイプの
ふむ、園村さんね。しかもスナイプか、レキが居たところか。
「俺はインケスタの平、よろしくね」
彼らが話している間に大きめのお皿に炊きたてのごはんと熟成させたカレーを入れ、揚げたてのカツを乗せる。いつも思うが我ながら旨そうだと思う。つまんでしまいそうだ...
あと野菜とお冷やを乗せて完了。
「はい平くん。おまちどうさま」
いただきます。そう言って彼はカツを半分に切ってカレーとカツとごはんを一緒に食べる。
思いっきり目尻が下がった、いつもカツカレーを食べるとこうなってしまうのだ。
「平先輩美味しそうに食べますね~」
「俺から見ると二人とも美味しそうに食べてるよ、園村さんも平くんも。作った甲斐があるってもんだ。」
だが彼ひとつ弱点があるのだ、それは...
「かっ辛いっ!」
そう言って彼は水を飲み干す。
彼の弱点とは「辛いもの」だ。キムチから唐辛子から何から何まで辛いものは苦手らしい。けど食べる旨そうに食べる、辛い辛い言いながら食べるのだ。
「オーナーのカレーって辛いけど旨い!」
「か、辛いんですか?」
「ち、中辛なんだがな?平くんが辛い物ダメなんだ」
ああ、園村さんもそんな顔をするんだね?かわいい顔が台無しだよ...
「そ、そういえば店長さん!指輪してますけど奥さん見ませんね!」
「ああ、嫁さんは今育児休暇だ。ちなみにインケスタの卒業生だ。写真みる?」
「はい是非!」
「すっごい食いつくなぁ園村さん。ちなみにオーナーの奥さんメチャメチャかわいいから覚悟しといた方がいいよ」
そ、そんなにハードル上げられてもなー...まあ確かにウチの看板娘でもある人だが...
「か、かわいい!」
「ちょうど入学したときに卒業したんだよねーその先輩。3年生の人達もあんまり教えてくれなかったけどどんな事してたんだろ」
バッチリ色んな事やらかしました。はい、 そりゃ言いたくないよねなんか凄いことになってた首謀者が理子だとは思うまい...
「知らなくて良いこともあるんだよ平くん。荒事はアサルトに任せとけば良いんだから、な?」
「なんか隠してますねオーナー」
「店長さん?」
むむ、二人の目がヤバイ!とにかくヤバイ!こ、これは待避かな!
「ちょーっとお手洗いに行ってくるにょろー」
従業員のトイレに駆け込んだ。ついつい要らないことを喋ってしまう...にょろ
そんなこんなで落ち着いてそうな頃を見計らってトイレから出て表を見渡す。
よし!あの二人はいない!今だ!2階に駆け込んで理子成分をほきゅ......う?
「どこに行くんですか店長さん?お客さん...来てますよ?」
いつの間に背後に!?
は、はい!ただいま注文取って参ります!
ふう、あの子がここまで凶悪な目をするとは思わなかったぞ...
園村さん、エモノを狩る目だった。レキさん、助けてください...
「呼ばれた気がしました」
お、おう。レキさんや、背後からにゅっと出てくるでない!びっくりしちゃうだろぅ!
「カウンターに掛けてて、すぐいく」
ささっと注文取ってお出しして、レキが待つカウンターに直行!あの二人も居るけど...
「久しぶりだなって言っても半年振りか」
「店長さんこの方は?」
「ああ、スナイプ伝説の生徒、その名もレキだ」
「俺知ってる、オーナーの元カノらし...」
ごめんね平くん。あんまり喋っちゃわないようにね?
「へー、店長さんの元カノですかー。わかる気がしますー」
何がわかる気がするんだ?
「んで、今日はどうした?理子か?」
「はい、久し振りに会おうかと思いまして。あと私にはくれなかったお子さんも見たかったので」
ぐ、まだ引きずってやがる。しつこい、しつこすぎるぞレキ。告ったのは俺だけど!振ったのレキじゃん!俺悪くないよね!
「俺悪くないよね!」
「冗談です」
真顔で言われても...
「理子居るだろうから行ってやれ」
スタタタタっとレキがカウンター横から厨房横を通り、2階に上がっていった。
平くんが口を開こうとするとまたカランカランとドアが開く。
「久しぶりね、海」
神崎・H・アリア。日本に帰ってきてるとは思わなかったな。てことはキンジも一緒だな。
「いらっしゃい、ここどうぞ」
そう促したからか園村さんと平くんはカウンターの端に座り直した。
「久しぶりだな、白雪とキンジとジャンヌはどうした?」
「もうすぐ来るわ。今頃あなたの買ったベンツで学園島に向かってるわ」
とりあえず四人分のアイスコーヒーと二人分の紅茶、俺の分のオレンジジュースを用意して冷蔵庫に入れておく。
「用意するのが1つ多くない?」
「レキが来てるんだよ」
端の方の二人がコソコソ話しながらこっちをチラチラ見ている。
カランカラン
3人が入ってくる。
「久し振りだな海」
「お久し振りです、海さん」
「元気か?海」
ちょうど2人が2階から降りてきた。
「メンバー大集合ってか?誰が企んだんだよ」
それは俺の台詞だ、キンジよ
「...理子、ヒロトは?」
「おやすみ中だよ海」
どうするんだよ。こんなキレイどころがこんなに集まったらまた店が大変なことになるじゃん...
昨年、元チームメンバーが勢揃いしたときにこの店に入りきらない位の武偵校の生徒が押し掛けた。そのときに丁度俺達を知ってる生徒が居てそれが拡散されて生徒大集合。
って思ってれば早速ぞろぞろ店に入り出したし...
実はその元凶が平くんなのである。
「んで、マイバッハの乗り心地はどうよ、ジャンヌ」
「言うことは無いぞ、敢えて言うならば、目立つと言うのが本音だな。マフラーを変えてくれないか?」
「無理だ」
「即答!?」
「んで、白雪はどうなんだ?キンジとは」
「ああ、そう言うことは聞くな白雪が溶けるから。そっちはどうなんだ、理子との毎日は」
よっぽど恥ずかしいのだろう。顔を少し赤くしながら俺に話を振ってきた。
「やっぱり理子といると幸せだよ、子供もいるし、好きなこと出来るしね」
「堂々と言うのか...それで?今年も戻らないのか?」
「まだ子供の事もあるし、理子も万全じゃないだろうし?俺にはのんびり飯屋してる方が性に合ってるよ」
「の癖に武偵校の前に陣取ってるし、未練があるんじゃないのか?まあ海がそう言ってるならいいけどよ?」
確かに未練はある。あんだけ若さに任せて(まだ20代前半だけども)無茶してたから楽しくて仕方がなかった。ちょいちょい死にかけた事もあったけどみんなで乗り越えたし、理子も助け出したし、理子は俺の嫁さんだし?ぐふふ
まあいいとして、あの3年間もっと無茶して銃ぶっ放しとけばよかったなーなんて思ってる。
「やるか?俺たちの最後の仕事」
「キンジ!」
アリアが叫ぶ。
「内容は?」
「武偵校での非常勤講師。やるなら即金で4000万」
店中からゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえたぞ。どんだけだよ...
それに悪くはない。けど...
「理子さんとお子さんが心配ですか?ちなみにあなたと理子さん以外はもう決めています」
「いや店が心配。」
レキと理子からぶっ叩かれる。
「早く決めなさい、私達だって暇じゃないのよ?これから用があるのよ?」
店の中が静まり返る。てか武偵校の生徒共、店に入るだけ入って注文も無しで居座ってやがる...まあいいか
「やるよ、理子はどうする?やれば子供の面倒みるのも大変になるし、ご所望の2人目も当分先になるかもしれないぞ?」
ふっふた!?
アリアが動揺してる。
白雪はポッと頬を染めキンジを見上げる。キンジは白雪から目を逸らす。
ジャンヌとレキは俺の腕を抓る。
「良いよ、それでも。海がやりたいならやろうよ、非常勤ならお店も見れるし?子供は後からでも大丈夫だよ?」
キンジは突然席を立つ。
「よし、じゃあ行くぞ武偵校」
俺と理子は、は?ってなってるが俺と理子以外は席を立ち店を出て行った。
「オーナー?どうします?店仕舞いしときましょうかー?」
ポカンとなったまま平くんに返事をする
「あ、ああ頼んだ」
俺は理子に子供と印鑑等々持ってくるように指示して、理子が降りてきたら2階に上がる階段の扉を施錠し平くんに任せて店を出た。
店の前にはジャンヌのマイバッハ。アリアのポルシェ911。レキのダッヂチャレンジャー。
なんか店の前が賑やかな事になっていた。
「海、こっちだ」
呆けているとジャンヌに呼ばれる。乗れって事だな。
そこからそこなのにわざわざ車に乗るっていう行為。大変怠けていらっしゃるようだ。
「なら乗らないか?」
こ、こいつ!?心が読めるのか!?
「海?乗ろ?」
あ、はい
理子に促され、マイバッハのドアを開けて理子を乗せる。この行動も店にいた生徒達からも黄色い歓声。
アリア、俺たち、レキの順で武偵校に向かう。
そういえば無駄に敷地デカかったもんな...車で良かった。
来月から早速仕事との事だった。
伝説(問題児)の6人が武偵校にもどって来たと言う事でなんか色々と騒がしくなったとかならなかったとか。
ぜひ武偵校にいらっしゃる際は武偵校目の前の当店「Lupins Speisesaal」でお食事でもどうぞ。武偵校の生徒の方のみバイト募集中です。
それではまた機会があれば当店をご利用下さい。