弟と一緒に地球という人外魔境に送られた下級戦士だけど何か質問ある? 作:へたペン
「あんたその怪我神竜に頼んで治してもらいなさいよ」
ドラゴンボールをピラフ城で見つけ、無事7つ揃えたところでブルマがそんな事を言ってきた。
惚気話からの推測だが、ガス部屋に閉じ込められたり、ガトリングを撃たれたり、私がピンチでもうダメだと思った側にヤムチャが居たりしたので、吊り橋効果で素敵な恋人はヤムチャが居れば必要ないと思うようになったらしい。
ヤムチャの女が苦手なのも、同じく緊張状態の中ブルマと一緒にいた事で改善されたようだ。
ヤムチャもドラゴンボールを使うつもりがなくなったということは願いは『女が苦手なのを克服』といったところか。
誰もかれもしょうもない願い事ばかりである。
「つまり願いは私に一任する、ということでいいのか?」
「あんたその怪我を放って他の願いを叶える訳?」
「骨が少し折れているだけだ。その内治る」
問題は実験不足で何を願ったらいいかが迷っているところか。
出来る事なら今回の願いで不老不死になりたいところだが、永遠の命を与える不死鳥という鳥が食中毒で死んだということを亀仙人と亀が話していた記憶がある。
さらに言うと、もしも不老不死で体の成長と共に戦闘力の成長まで止まってしまったら、永遠にこの星を支配できないまま生き続けるなんて事態になりかねない。
そんなこんなでまだ願いを考えているというのに「いでよ神龍。そして願いを叶え給え」とブルマが神龍を呼び出してしまった。
昼間なのに空が暗くなりドラゴンボールが光輝くと巨大な龍がその姿を現す。
「さあ願いを言え。どんな願いでも一つだけ叶えてやろう」
待ったをかけておけばよかったと後悔するが呼び出されてしまったものは仕方ない。
無難に適当な願いでも叶えるとしよう。
「私の育ての親、孫悟飯を生き返らせることは可能か?」
「死亡したものを蘇生することは可能だが、その者は天寿を全うした。魂に宿る命を使い果たし自然死した者を蘇生することは出来ない」
何でもという割には出来ないことがやはりあるらしい。
孫悟飯にまだ挑む為に生き返ってもらいたかったが残念である。
「キャロ……残念だったわね。その、気を落とさないで」
「スポーツ用パンツ、そんな憐みの目で私を見るな。ただたんに死者を生き返らせられるかを聞いただけだ。別に私はまた爺様と暮らしたかった訳ではない」
そう、思うことにした。
「ならば私を宇宙一強くしろ」
「それは無理な願いだ。私は神によって生み出された。したがって神の力を超える願いは叶えられん」
どうやらこの願いも無理なようだ。
叶えられる願いの幅が少ないのではないかと疑ってくる。
「なら、戦闘力の伸びはそのままに私を不老不死にしろ。不老不死の定義は傷ついたり死んだりしても常に健康な状態まで体が元通り再生するものとする。こいつも叶えられないかトカゲ野郎!!」
「成長する不老不死は矛盾している。不老不死にすることだけならばたやすい願いだ」
「戦闘力が伸びないならいらん!! スポーツ用パンツ、こいつ全然使えないぞ!! どういうことだ!?」
「不老不死になれるんなら十分だと思うけど、あんたも欲張りね」
確かに戦闘力が十分にあれば魅力的な願いであるが、戦闘力が未成熟な私にとって死よりも恐ろしい願いだ。
「最後の確認だ。戦闘力の向上はそのまま、このくらいの傷ならすぐに完治する体にしろ。そのくらいなら出来るだろう?」
「不老の定義をそこまで下げるのであれば力の増加は問題なく行える。不死ではないが願いはそれでいいか?」
「ああ、さっさとしろ」
痛みに耐えながら色々考えるのがバカバカしくなってきたので傷を治す事を優先する事にした。
傷の治りが早ければ格上との戦いで長期戦がしやすく有利に戦えるだろう。
「願いを叶えられなかったサービスだ」
神龍の目が光ると体から痛みが消え、ピラフマシンの攻撃でボロボロになり血と泥で汚れた道着も綺麗になる。
どうやら傷と一緒に道着も直してくれたらしい。
「願いは叶えてやった。ではさらばだ」
神龍が消えるとドラゴンボールが宙に浮きあがり四方八方に飛んでいく。
やはり世界中に散らばっていたのにはこういう理由があったようだ。
「ドラゴンボールみんなパーって飛んでっちまったぞ!!」
「あ、ごめんなさい。あんた達のお爺ちゃんの形見だったのよね。すっかり言い忘れていたわ」
「姉ちゃんの怪我は治ったし……ま、いっか。もう一度あつめれば」
相変わらずカカロットは軽い奴だ。
一年後探せるようにとカカロットはブルマからドラゴンレーダーを貰っている。
この後ブルマはヤムチャ達と共に西の都に帰るらしく一緒に来ないかと誘われたが、カカロットは亀仙人の爺に弟子にならないかと誘われているのでそちらに顔を出すようだ。
ブルマの頭脳も利用価値があるし都の様子を見てみたいところだが、まずは基本戦闘力がなくては話にならない。
あまりあのエロ爺には会いたくはないが、戦闘力を伸ばす事を優先して私もカカロットについて行くとしよう。
日が暮れ筋斗雲から落ちないようにカカロットに掴まっている最中。
今日は満月だったようでカカロットが大猿になり危うく殺されかけたけど、私はこの辺境の地で今日も元気に生きていきますとも、ええ。
不老不死は戦闘力が上がらないというのは、強さを求めるブラックゴクウが不老不死を願わずこの体だけで十分だと言ったところから考えました。(ただのサイヤ人の体に引っ張られた慢心だと思いますが)
キャロットの願いの効果も物語が進むごとに詳細が判明して行く事でしょう。