弟と一緒に地球という人外魔境に送られた下級戦士だけど何か質問ある?   作:へたペン

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姉と弟が対戦する話。


其之十七『姉弟対決』

 くじ引きで対戦相手を決める訳だが、一戦目からカカロットと戦う事となった。

 

「姉ちゃんと戦うの久しぶりだな」

 

 カカロットの能天気さが妬ましくも羨ましい。

 怒りに身を任せて戦うのは自分勝手な八つ当たりだとわかっている。

 わかっているが、やり場のないこの気持ちをぶつけられる相手がカカロットしかいなかった。

 

 

 拳を撃ち込み合い、受け流し合い、時には当て、時には当てられ正面からぶつかり合う。

 

 

 戦闘力はカカロットの方が上だ。

 このまま正面からの殴り合いを続ければいつか一方的に私が殴られるだけになるだろう。

 

 そうなる前に不意を衝いて一気に決めなければ私の勝機は薄い。

 右の拳に戦闘力を集め威力を高める事で想定以上の衝撃を与え強引にカカロットのガードを崩し、左ブローを腹部に食い込ませ怯ませ、そのまま回し蹴りを後頭部に叩き込む。

 

 この程度の攻撃でカカロットが倒せるとは思わないし、一度威力を変化させて見せてしまったから二度目は的確に受け流してしまうだろう。

 カカロットに勝つにはこのタイミングでさらに追撃を仕掛ける必要がある。

 ダウンしたカカロットに全力のスピリッツキャノンを叩き込んだ。

 

 

 

「へへへ、姉ちゃんもやっぱ強くなったな。今のは効いたぞ」

 

 

 

 それでもカカロットは嬉しそうに立ち上がって来た。

 ダメージは大きかった筈なのに動きは全く衰えず真っ直ぐ向かってくる。

 サイヤ人としての記憶がない筈なのに、私よりもずっとサイヤ人らしく戦闘を楽しんでいた。

 

 

 殴り、殴られ、蹴り、蹴られ、初めの内は攻防になっていたそれは次第にノーガードでの殴り合いになっていく。

 

 戦うのは私も好きだ。

 こうやって戦いを楽しめている間は自分もサイヤ人なんだと実感が湧ける。

 それでも迷いが、悩みが、どこまでも私の後ろからついてくる。

 こんなの全然サイヤ人らしくない。

 だから私は―――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、皆でどこかに逃げようよ」

「ダメだ。俺達はスカウターですぐに見つかってしまう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カカロットの拳を受けると同時に母ギネと父バーダックの言葉が脳裏を過る。

 何から逃げようとしているのかは理解出来なかった。

 それでも私が侵略目的で飛ばされた『飛ばし子』ではなかったと思う事が出来た。

 役立たずで捨てられた訳でもないという事は理解出来た。

 銀河パトロールに気を付けろと最後まで身を案じてくれていた。

 

 

 今思えば私の両親もサイヤ人らしくない優しさを持っていたなと頬が緩む。

 

 

 言葉を覚えていた筈なのに、なぜこんな簡単な事に気づけなかったのだろうと自分が馬鹿らしくなってくる。

 これだけのことで吹っ切れるのだから、カカロットの事を単純な奴だともう馬鹿に出来ない。

 

 

 だって、私の方がよほど単純で、よほど馬鹿だったのだから。

 

 

 互いに楽しみながら殴り合いは続く。

 結局殴り合った末、先に私の体力が尽きて倒れてしまい勝負は負けてしまった。

 悩み事は吹っ切れたが負けたのはやはり悔しい。

 次は勝つ為にもっと鍛えようと思う。

 

 

 

 

 

 この後カカロットは決勝戦まで勝ち進み、ジャッキー・チュンを名乗る亀仙人と比較的いい勝負をしていたが、今日は満月でよりにもよってそんな日に尻尾の再生が終わり、カカロットは大猿になってしまった。

 

 カカロットに人殺しをさせたくないので直ぐにエネルギーの刃で尻尾を切断しておく。

 私よりも強い癖して本当に手のかかる弟だ。

 

 

 そんな弟と二人で、地球で出来た仲間達と共に、私はこの辺境の地で両親が迎えに来てくれると信じて生きていきますとも、ええ。

 

 




思いっきり暴れて一先ずは色々吹っ切れたキャロットでした。
これからはサイヤ人らしくない自分と向き合って生きて行く事でしょう。
それでもあらすじの内容は変わらず、物語は進んでいきます。

キャロットの上下に激しく、殴られると思い出すポンコツ機械じみた精神の波をこれからも見守ってくれると幸いです。

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