弟と一緒に地球という人外魔境に送られた下級戦士だけど何か質問ある?   作:へたペン

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占いババの館に行った話。


其之三十一『占いババの館』

 占いババの宮殿に着いたものの、占ってもらうには一千万ゼニーか五対五の勝ち抜き試合に勝たなければならないようだ。

 亀仙人からそんな事は一言も聞いていないが、おそらく腕試しをして来いという意図が含まれての紹介だったのだろう。

 当然ながら試合をして占ってもらう事にした。

 

 こちらの参加メンバーは私、カカロット、クリリン、ヤムチャと四人しかいないが何とかなるだろう。

 そう思っていたら最初の相手ドラキュラマンにクリリンが油断して簡単に負けてしまう。

 最初に調子に乗って油断していた事と、相手が蝙蝠に変身して翻弄された事が大きな敗因になったが、クリリンの潜在能力なら油断していても十分勝てた相手だとも思えた。

 やはり重力制御室でみっちりと体を鍛えてやる必要がありそうだ。

 

 こちらの二番手ヤムチャは蝙蝠状態のドラキュラマンを空中で鷲掴みにして場外である湖に投げ込むことで難なく勝利を収めている。

 次の透明人間スケさんとやらも、攻撃を耐える事で相手の位置を把握し即座に反撃するという方法で狼牙風風拳を決めて勝利した。

 この調子ならヤムチャ一人で五人抜き出来てしまうのではないかと思えるほど快調だ。

 

 

 だが第三試合は試合場所が変わり、下が猛毒の沼で狭く細長い柵のないつり橋のような足場で戦わせるという、空を飛べない者にとって戦い辛い環境だった。

 今の所ヤムチャの長所は戦闘力以外だと隙をついてのラッシュ技しかない。

 足を生かせず一度防戦に持っていかれたら不利な地形はヤムチャの不得意な場と言えるだろう。

 

 

 

 

 

「ヤムチャ。まだ私とカカロットが控えている。不利になったと思ったら降参しておけ」

「キャロットと悟空が出るまでもないさ。強くなった俺の力を皆に見せてやるぜ!」

 

 

 

 

 

 と言いながらヤムチャは対戦相手のミイラ男に負けた。

 一応フォローしてやると途中までは互角の攻防をしていたのだが、狼牙風風拳を放った時に足払いをされ足場から転落してしまったのだ。

 カカロットが如意棒を伸ばして助けたからヤムチャは無事だが、手助けをしたので反則負けとなった。

 

 

「すまない、俺とした事が油断した。まさかこんなところにあれ程の奴が居るとは……」

「あの狼牙風風拳という技、足元ががら空きなのは何とかならないのか?」

「い、今まで技中に狙われたことなんてなかったんだ……面目ない」

「姉ちゃん。次オラが行っていいか? オラまだ自分がどれだけ強くなったか試してないんだ」

「構わんが油断するなよ。下に落ちたらシャレにならんからな」

 

 

 カカロットがやる気満々で試合場に向かっていく。

 詳しい数値はスカウターを着けていないからわからないが、今のカカロットの戦闘力は私よりも大きく感じる。

 対戦相手のミイラ男と比べてみてもカカロットの方が上だ。

 余程下手な戦い方をしなければ負けはないだろう。

 

 安心して見送ると、カカロットは試合開始直後にミイラ男を一撃で倒してしまう。

 まだ自分がどれだけ強くなっているのか実感が湧いていないようで首を傾げつつも、気絶して返事のないミイラ男を次の試合の邪魔にならないようにと控え室に運んでいく。

 

 

 次の試合アックマンはようやく力の加減を掴んできたのか、カカロットの一方的な試合なものの一撃で勝負が決まる事はなかった。

 しかし武器を使い出したアックマンにカカロットが怒り、最後はやはり一撃で決めてしまう。

 

 

 カカロットだからよかったものの、途中で撃ってきたアクマイト光線は私だったら不味かった。

 悪の心を膨れ上がらせて相手を爆発させる技と言っていたが、効果がえげつないと思う。

 この星の住民は何でこうも初見殺し技を持っているのだろう。

 

 

 

 

 

 そして最後の対戦相手、お面をつけているが声を聞き間違える事はない。

 

 

 

 

 

 天使の輪を頭に浮かばせた孫悟飯が「やあ」なんて暢気な挨拶をカカロットにしている。

 神龍でも生き返らせる事の出来ない孫悟飯がなぜこんな所にいるのかわからない。

 天使の輪がついているという事は死んだ状態でこの場にいると思えばいいのだろうか。

 

 カカロットはまだ相手が孫悟飯だと気づいていない。

 あれが孫悟飯だと教えてやるべきだろうか。

 いや、もしかしたら親しい誰かに化けて相手の心を乱す類の物の怪という可能性もまだある。

 

 そんなもやもやした気持ちを抱えたまま「この小僧とは思いっきり戦ってみたい」という孫悟飯の願いから、外の競技場へと移動する事になる。

 

 

 結論から言うと孫悟飯だった。

 試合前に一礼する礼儀正しさ、構え、戦い方、私達サイヤ人は尻尾を強く握りしめられると力が抜ける弱点を知っている私達への情報力。

 生前よりも戦闘力が増していたが、名乗られる前から孫悟飯だという要素を沢山見せつけられた。

 

 

 孫悟飯が降参して「わしじゃよ」と名乗りを上げ、カカロットが再会に泣きながら喜び孫悟飯の顔に飛びつく。

 

 

「キャロットも元気じゃったか?」

「それなりにな」

「久しぶりにキャロットも組手をするかの?」

「爺様は私よりも強い。それで今の私は満足している」

「そうかそうか。女の子らしい恰好をするようになったみたいだし一安心じゃわい」

「ブルマが……そこにいる女が勝手に着せたんだ。私の趣味じゃない」

「いい友達に巡り合えたみたいじゃな」

「……まあな」

 

 

 積もる話は沢山ある。

 だけど話せば話す程きっと未練が残ってしまうだろう。

 だから後は言いたい事を一言だけ言ってお別れしよう。

 

 

 

 

 

 

 

「爺様、育ててくれてありがとう」

「元気に育ってくれてありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 ようやく言えたお礼の言葉をお礼の言葉で返されてしまった。

 本当に孫悟飯には敵わないなと思う。

 

 




キャロット自身は戦わないので、さらっと流した占いババ編でした。
それでも変わっているところが色々あったりします。
(ヤムチャとかヤムチャとかヤムチャとか)

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