ざっくり内容
・上記のまま
ネタが思いつかない時はこうしてリクエスト募集するのもいいですね。
「はあぁぁぁ!」
洞窟に響き渡る雄叫びを上げながら女冒険者が長剣を横に振るう。蛇のような髪を持つ頭が、長い尾である下半身の体から斬り刎ねられ、水溜まりがある岩の地面に転がっていく。
この怪物――メデューサは髪が複数の蛇で出来ており、下腹部から下が蛇の尻尾になっている。異形化した人間は獣と同じ爪や牙、高い身体能力があり、それだけでも元同胞である人間の驚異だ。とある異形らはそれに加えて何らかの“異能”を行使出来るようになる、火吹き、硬化、瞬間移動等。メデューサも己の瞳を見た者を石に変える異能を持ち、彼女らの縄張りには犠牲者である砕かれた石像が見かける。研究者はメデューサの瞳に反射した光が何らかのエネルギーを込められたという説を発表していたが、詳しいことは未だ不明である。
首を切断されて動かなくなったメデューサを、息を切らしながら見つめる女冒険者。彼女は街でメデューサ討伐の依頼を受け、街の近くにあるここの洞窟でメデューサに勝負を仕掛けた。
瞳を見て石化されないように目をそらしながら戦ったが、鋭い爪、下半身の長い尾の攻撃でダメージを受けてしまっている。地面を蹴って砂を飛ばし、メデューサが目を閉じた隙に斬り刎ねるのが遅かったら、洞窟に飾られている石像の一つにされていたかもしれない。
「これで……街も安全に……」
強敵との戦いに深呼吸しながらそう呟く女冒険者。後は討伐した証拠としてメデューサの首を持ち帰るだけだ。地面に転がっている蛇頭を見つけ、目隠し用の布を取り出す。神話の中のメデューサは生首にされても石化能力は残り、英雄に怪物狩りの道具として使われてきた。首を刎ねたといってそのままにするのは危険だ。
女冒険者はメデューサの目元を布で覆おうとする。鱗が生えている蛇のような顔を動かし、横から見た瞬間だった。
虚ろだったメデューサの目がこちらに向いた。死に対する恐怖と、己を死に追い込んだ人間への憎悪が籠もっている縦長の瞳孔、女冒険者は見てしまった。
驚いた彼女は咄嗟に懐からナイフを取り出し、すぐさまメデューサの生首に突き刺した。自分に向ける負の感情が消えない。短い刃を抜いて二度刺した。まだ消えない。
「……ッ!! 死ね! 死ねッ!」
メデューサの視線で石化される前に殺し切らないといけない。死んでこいつらみたいに化け物になるなんて嫌だ。女冒険者は焦りと恐怖に駆られ、ナイフを突き刺すのを止められない。無数の蛇が斬り放されて地面に落ち、顔も酷いことになっていた。
やがて、メデューサの顔に思いっきりナイフを刺したところで女冒険者の手が止まった。しかし、彼女自身がその手を見て怯え始めた。
「い、いや……」
ナイフを握っていた女冒険者の手が、灰色に、無機質に、硬く、動かなくなっていた。殺したはずのメデューサの異能が効き始めてきた。
石化が手から腕に伝わっていき、変化に耐えられないのかヒビが出来て、欠片が地面に落ちていく。それが自分の身体で起こっている光景を目にした女冒険者は、もう片方の動かせる手でナイフを掴み、自分の首を切ろうとした。
しかし、死ねなかった。首元も石化が進んでおり、ナイフの刃が欠ける結果になった。人として死なせてくれないことに絶望する女冒険者。
自決するための指が、助けを求める口が、ここから逃げ出す足が、体の至るところが石に変わっていく……その様子を、地面に転がる生首のメデューサは笑みを浮かべて死んだ。
数日後、洞窟には女冒険者の石像が残されていた。何も知らぬ者が見れば、「まるで人が石になったかのように再現されている」と感想を述べるだろう。
突然、石像が震えた。同時に石の塵が落ち、あらゆる部位に大きな亀裂が生じる。腹部が左右に割れ、鱗に覆われた蛇の胴体が現れた。
それはまるで、蛹が羽化するか、または卵が孵化するかのように……
「おーいみんなー! メデューサを退治に行ったあの子が帰ってきたぞー!」
近くの洞窟にいるメデューサを討伐しに行ってから帰ってこない女冒険者を、街の人々が心配してきた時だった。女冒険者の帰還を目にした一人が皆に知らせてきた。
騎士団が崩壊している今、自らを守れぬ民達はギルドを頼っており、この街では特に女冒険者に助けられてきた。怪物から守ってもらう代わりに、彼女を精一杯世話するのがこの街でのルールだ。
街の出入り口から入ってきた女冒険者を出迎える人々。いつも明るい彼女が何故か冷たく感じるのが気になるが、今は彼女を休ませるのが先だ。
「お帰り! 怪我はないか? よく無事で!」
「怪物を倒せたお祝いに宴をしましょう! 今夜はあんたが好きな料理を作るわ!」
好意の言葉をかける街の民達だが、女冒険者は何も返さない。疑問に感じた一人が彼女に尋ねる。
「どうした? 怪物との戦いで怪我でもしたのか?」
心配しながら女冒険者と顔を合わせる。その時、恐ろしいものを目にした。
彼女の両目には縦長の瞳孔があった。まるで蛇のような目だ。
異常に気づいた人々が驚愕と恐怖の声を漏らし、女冒険者から離れる。彼女は口の端を上げた直後、自分の身体を石化させる。
全身の石の表皮から鱗が突き破って生えてくる。
顔を覆う石が割れ、蛇に近い顔が現れる。髪の毛が無数の蛇と化してうねっている。
背中側の腰を突き破って生えた鱗の長い尾。その際に人間の下半身が切り離された。
かつての姿への擬態を解いた女冒険者の姿は、彼女が討伐したメデューサと同じモノだった。
その後はあっという間だった。メデューサと化した女冒険者は躊躇いなく街の住民を石像に変えていった。誰もか苦痛と絶望の表情を浮かべている。街はメデューサ一匹の巣になり、人間が変えられた石像は彼女の卵のようなモノだ。
数日後には石の表皮が割れ、中から新たなメデューサが出てくるだろう。