Side Yuichirou――
「……」
「……」
気まずい……
図書館で偶然会った少女は八神はやてといった。
あのあと、事情を聞いて、僕のこともある程度説明したけど、早とちりで歓喜して泣いてしまったため、目の前で真っ赤になって俯いている。
はやてちゃんはやはり魔導師だった。彼女が言うには、二十一歳の時までこの世界で生きており、気付いたら三歳になる前に戻っていたということだ。
最近両親が死んで身辺整理が終わり、図書館に来たところ偶然逆行前の知り合いにあった為、嬉しさのあまり飛びついたらしい。
「それで、僕たちはどういう関係だったの?」
「それは……や」
「ん?」
「わたしら結婚したんや」
「……だれが?」
「わたし」
「……誰と?」
「……裕一朗さんや」
「……は?」
「裕一郎さんと結婚したんや! やっとの思いで結婚したのにまた昔に戻ってまうし、なんでこんなことになっとるねん!」
ということで、僕ははやてちゃんと結婚していたらしい。
さらに聞くと彼女の二十歳の誕生日に式を挙げて、そのまま一緒に暮らしていたらしい。他にも同居人がいて、二人きりの新婚生活じゃないがいろいろと満喫していたみたいだ。
お腹には子供もいて、幸せな生活が待っていると思った矢先に今の状況になってしまったらしい。
子供……
「すずかちゃんを出し抜いてやっと結婚できたのに……なんでこんなことに……。すずかちゃんの呪いなんか?」
すずかって誰だ……
「やっぱ共有物件にしたほうがよかったんやろか? 今回は間違えんで……」
「……」
「夜もタフやし……ブツブツ……」
自分の世界に入り込んでしまった少女は置いておいて、取り敢えずこれまでの情報を整理する。
彼女は夜天の書――現在では闇の書と呼ばれるロストロギアの所有者で、それが原因で下半身麻痺の状態が続いているらしい。
九歳の誕生日に闇の書が起動し、守護騎士が出てくる。そして、彼女の病状が悪化すると勝手に蒐集活動を始めてしまい、管理局に目を付けられる。
そして、なのはちゃんとフェイトちゃんと管理局の人たちと対立し、最後には闇の書の防衛プログラムが暴走し、協力して撃破、消滅させ、一人の犠牲を以て闇の書の呪いは終を迎えるらしい。
また、裏でグレアム提督という人物が闇の書の完成と永久封印のために動いて、捜査を攪乱し捕まったらしい。
夜天の書と闇の書、か。
闇の書については無限書庫で幾つか記述を見たが、この少女の話には矛盾はない。闇の書という名称でロストロギア指定されており、暴走とともに多大な被害を出していると記されていた。
最も新しい事件は僕が生まれた翌年、艦船を巻き込んで撃退したと記述が残されていた。闇の書という名称もこの資料が一番最初に出てきたものだ。
夜天の書が闇の書と言われるようになっていたのなら、夜天の書と闇の書の関係も腑に落ちた。無限書庫では紫天の書プログラムという物もメモがあったのでこのあたりも関係している可能性が高い。
はやてが言うには十歳の時僕に解析をしてもらったということだから、僕が十二か十三の時に夜天の書の解析ができたみたいだ。
そこで、早めに僕に会い、夜天の書の修復を手伝ってもらえれば一番だったが、なかなかそうはいかなかったという。
デバイスを作ってミッドに飛んで解析用の機械や設備を揃えようと画策していたらしいが、そもそもデバイスを作ることに苦戦していたらしい。
ここで出会えたことは彼女にとって僥倖だったんだろう。
それにしても……なのはちゃんの名前が出てくるということはこの子も原作関係者なのだろう。
というか逆行って原作設定なのか判断しづらいな。
どうやら結婚しているだけあって、僕の能力の一部を知っているらしく、転生していること、錬金術と蔵についても秘密を共有していたらしい。
この特典はどう考えても僕本人だな。
妹が生まれて転生者であることを隠そうと決めていたが、気持ちが変わったんだろうか。その世界の僕じゃないと分からないことだな。
一応、その僕と僕は同じだけど違う存在だということは納得してもらえた。最初は僕も逆行していると思っていたみたいだ。
転生者の介入で彼女が逆行することになったのか、別の形で別の未来から逆行するはずだったのか……。
五歳から一人暮らしとか普通の子供はできんぞ。原作でも逆行者だったのかもしれないな。前の世界が原作における逆行前とかで。
時を駆けた少女か。
さておいて、これで本格的に原作と関わることになってしまった。この遭遇がなくても結婚するまでの仲になったということはどのみち巻き込まれる羽目になったのだろうが、今回はかなり早い段階で原作に関わるらしい。
「……せや、なのはちゃんも怪しかったな……。けど、フェイトちゃんはなのはちゃんやし――」
「はやてちゃん?」
「は!? な、なんや? け、結婚、結婚するか!?」
「……」
「あれ、ははは。ちょお暴走してもうたな……はは……。コホン。それで、なんや? 裕一朗さん」
「それで、はやてちゃんはこれからどうするつもり?」
「……リインフォースを、夜天の書を助けたい。犠牲も出さん。……といっても両親も助けられんかったわたし一人じゃ今んとこ、どうしようもないんやけど」
「……」
「ほんでも、できる限りのことはしたいねん。……裕一郎さんにはいろいろお願いしたいんやけど、……だめですか?」
おそらく、ここでの役目は闇の書の解析と夜天の書プログラムの構築だろう。蒐集については今は考える必要は無さそうだ。
幸い、似たようなシステムを作り出そうと思っていたので丁度いいといえば丁度いい。紫天の書の存在が気になるが、そちらも気にしておけば問題ないか。
はやてちゃんが言うには五年後の自分は一年で夜天の書を解析したらしいので、今の知識量で考えるとさらに一年ほどかかることになるかもしれない。闇の書のプログラムと合わせればもう少しかかりそうだ。
それから夜天の書のプログラム再構築のために古代ベルカの知識を集める必要もある。現状のプログラムと、過去の夜天の書の記載からシステムを推測し、構築していく必要がありそうだ。
途中で組み込まれたかもしれない紫天の書についても注意して情報を分解していく必要がある。
システムに介入できるのは管理者だけらしいけど、たとえロストロギアでも、人が作ったものならどこかに割り込む隙があるはずだ。途中で継ぎ接ぎされたシステムならなおさらだ。
幸い、錬金術用の能力のおかげで、構造的、魔法的な解析に関しては奥の奥の情報まで知ることはできる。機材に関しても、ちょうどいい機会なので、はやての家に一式作り上げることにしよう。錬金術に関して知っているなら彼女の前で隠す必要もないし。
「……わかった。出来るだけ力になるよ」
「ホンマに!? ありがとう! 裕一朗さん!」
「ああ。取り敢えず管理局にバレないように家族には内緒にしておかないといけないな……」
「あれ、裕一郎さんのご家族は管理局やったけ」
「まぁね。そういえばはやてちゃんと家の妹は同い年だな」
「妹さんがおるんや……」
「そっちでは居なかった?」
「うん。こんなところもいろいろと違うんやね。……未来知識はあんまりあてにならんかな?」
「あー……そうだね。情報の一つとして考えておくほうがいいね」
原作から転生者である僕が加わって平行世界が生まれ、そこからいくつにも分岐したのだろう。単純に考えて転生者が生まれるごとに多少の分岐があり得るということだ。
この世界で生まれなくても別の平行世界で生まれた転生者も居そうだな。
もしかしたら僕がいなくて、転生者の妹だけがいる世界もあるのかもしれない。原作知識がないことも影響があったりするかもしれないな。
「取り敢えず、はやてちゃんの家に行ってみていいかな? 場所を知っておかないとバスで行くにしても転移で行くにしてもわからないから」
「せやね。ごめんけど、車椅子押してってもらえるか? 海鳴市の堺に近いけど少し歩かんとあかんから……」
「いいよ。これでも運動は得意だからね」
「知っとるよー」
「そうだったな」
「これからについてだけど……」
「なんや?」
「取り敢えず一部屋を研究室にしていいかな? 家で闇の書を調べるわけにはいかないし」
はやてちゃんの家にやってきて、中を見て回ると、空き部屋がいくつもあり、一人暮らしでは寂しそうだった。
一緒に暮らすわけにもいかないので、ここに闇の書用の研究室を作ることにした。
「ええけど、一階にしてな? この足じゃ二階に上がれへんし」
「わかった」
一階の奥、あまり使われていない部屋を教えてもらい、使わない荷物などを二階に移動し、研究用のスペースを作った。はやての部屋の近くで、はやてもここでデバイスなんかも作れるだろう。
以前から細々と用意していた機材を蔵から取り出し、設置していく。流石に高価な解析用機材は買えないが、ミッドの家にある機材一式は設計図におとして改良し、錬金術で細かいところまで再現して錬成し、後はソフトを組み込むだけという状態になっている。組み込むソフトは既に出来ているが、闇の書の解析ということで、多少手を加える必要が有りそうだ。
基本的に触れただけで、どこかの剣製の魔術使いみたいに内部の物理的構造や、ついでに魔法的構造までわかるので管理局研究室にある機材なんかもハードだけは複製している。
流石に魔法技術ではないソフトを記録した磁気まで読み取ることはできないので、ソフトについては一から作り上げなければいけない。
それでも、しばらく必要になる機材なら一、二年のうちに全て揃うだろう。
闇の書の解析ソフトを真っ先に作り上げ、少しずつ機材を揃えていくことにする。
「そういえば、聞いておきたいんだけど、僕に関することで未来知識からなにか役に立ちそうなことはないかな?」
「んーそやね。知ってることは裕一郎さんにも言ったように能力の事と、転生したってこと、あとは裕一郎さんが作った魔法の一部と、夜天の書の中身について。それから……裕一郎さんはあまり関わってなかったみたいやけど、なのはちゃんが魔法に目覚めるきっかけのジュエルシードについて、くらいやな。あとは特に関係ありそうな大きな事件もなかったと思うわ」
「僕が作った魔法?」
「せや。裕一郎さんは近接戦闘もやるやろ?」
「ああ」
「確か、転移魔法を効率化して、瞬間的に発動できるようにしてたな。おんなじ魔法で私が転移しても近接戦に使えるような転移はできひんかったけど、裕一郎さんは戦闘で使えるレベルでやっとったな。これは裕一郎さんに教えてもらってたから今も覚えとるで」
「瞬間転移か……後で教えてもらえるかな?」
瞬間転移……龍☆珠かな。それともTOXのジュードの戦闘か? 転移じゃないけど瞬間的に敵の後ろに回り込むみたいな感じの……確か集中回避だったか?
あれは回避だけど、確かに戦闘に使えるな。
パッと思いつくのは今のところこれくらいだな……。戦闘スタイルとしては格闘戦で間違ってないから丁度いいな。
「ええで」
「それから夜天の書の中身についてだけど……」
「そんなら、今度までにまとめて書き出しとくわ。すぐ全部思い出すんわ難しいしな」
「分かった。よろしく」
「任しとき!」
「はやてはデバイス持ってないんだっけ?」
「夜天の書が一応デバイスやけど、今使えるんは無いな」
「それじゃあ僕が使ってたストレージデバイスを貸しとくよ」
そう言って、蔵からO4Mを取り出す。
「あ、それ知ってるで。裕一郎さんの最初のデバイスやろ? ……たしか、フリーズノヴァやったっけ?」
「正解」
「ほんまにええの?」
「良いよ。最近インテリジェントデバイス組んだから、しばらくは使う予定ないし、SSクラスの魔力でも問題ないから、はやてちゃんも充分使えると思う」
「ほー、もうインテリジェントデバイス組んだんやね。確かガハラさん」
「あー、うん、正式名称は別だったんだけど今は愛称が“ガハラさん”になってるね。まぁ、今度紹介するよ」
ちなみにインテリジェントデバイスの正式名称は“
いつの間にか定着し、途中で愛称をガハラさんに設定した。
最初は愛称設定してなかったんだけど、今では愛称でしか呼んでいない。
いつもは煩いので家にいることが多い。
『マスター。なんだか失礼な思念を感じたのだけれど』
……家に置いてても念話は届くんだけどね。
――Side out
ヒロインは未定です(`・ω・´)キリッ
でもハーレムだから(キリッ
※14/01/07 誤字修正