魔法の世界へ転生……なのはって?   作:南津

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#013 デバイスたち

 

 

Side Yuichirou――

 

 

 さて、インテリジェントデバイスの“Noble soul”ことガハラさん、拘わっただけあって高性能だ。

 

 はやてちゃんからユニゾンデバイスの人格データの基礎を教えてもらったのだが、AIはインテリジェントデバイスよりはそちらに近く、ガハラさんにも感情と呼べるものが生まれていた。

 

 僕自身は、AIということで人格データの指標を作ってあとは成長させるモノだと思って作っていたのだが、実際はそこまで極端に成長せず、基礎人格データが重要になるらしい。長く使い続けることでインテリジェントデバイスも成長するらしいが、リンカーコアのあるユニゾンデバイスとリンカーコアのないインテリジェントデバイスでは根本的に違うようだ。人格がデバイスコアに宿るかリンカーコアに宿るかの違いだ。

 ついでに、製造コストも格段に違う。

 

 ユニゾンデバイスは主との融合によって同調が必要となるため、人格を人間に近づける必要がある。

 

 僕の作った――生み出したガハラさんは、ユニゾンデバイスような人格データをデバイスコアに宿していた。人間に近い人格のインテリジェントデバイスだった。

 

 将来的には僕のタイプのデバイスも増えるかもしれないが、実際は道具にそこまでの人格は不要と切り捨てる人もいるだろう。

 

 まぁ、なぜ今こんな話をしているかというと、転生者な妹に人間と同等の人格を宿したユニゾンデバイスがやってきたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、はじめまして、お兄さん! ユニゾンデバイスのさ、さくらです! 結衣ちゃんにリンカーコもがもが……」

 

「(シーだよ。さくらちゃん。内緒だって言ったでしょ)」

 

「(ほえ? ……あ、ご、ごめんなひゃいー……)」

 

「(まだ生まれたばかりだから仕方ないけど、気をつけてね。リンカーコアのコピーから生まれたって言われても普通はありえないんだからね)」

 

 30センチ程のユニゾンデバイスと名乗った少女の口を封じて小声で話し合っている結衣たち。しっかりとこちらまで聞こえているのだが、難聴系主人公のごとく取り敢えず聞こえないふりをしておく。

 

 おそらくこれも結衣の特典なのだろう。今の結衣がユニゾンデバイスを作れるわけないしね。

 

 ショートボブ、というのだろうか? 女性の髪型については詳しくないが顎にかかる程度の髪と二箇所で結ばれた髪飾り、二本の触覚(アホ毛?)がある。着ているものは何処かの制服だろうか。

 

 おそらく元ネタがあるのかもしれないが、残念ながら僕は知らなかった。ただ、何処かで見たことはある様な気はするのだ。

 朝の少女向け魔法少女もののキャラクターとかかな? 少女向けのアニメは見たことがないのでまったく自信がない。それに八年以上前にチラッと見たことがあっても、記憶に残っていないだろうし、名前に特徴があるなら切っ掛けになるが、普通の女の子にしか見えないので見た目だけだと判らない。

 

「お兄ちゃん、さくらのロードになったんだけど……」

 

「うーん、ユニゾンデバイスは初めて見るからなぁ……」

 

 はやてちゃんの言うリインフォースツヴァイという子が初めてになると思っていたが、こんなに身近にポップしたか。

 結衣がどんな理由付けをしてくるか楽しみなので、少しだけつつく。

 

「二人はどうやって出会ったの?」

 

「あうッ。えーっと……フェリ! そう、フェリが気を失ってたさくらちゃんを見つけてきたの!」

 

「ブイッ!?」

 

「そうなんだ? フェリ?」

 

「ブ、ブイー」

 

「お、お兄ちゃん! そんなことよりお兄ちゃんにお願いがあるの!」

 

「ん? なんだ?」

 

 露骨な話題逸らしだが、こんなことで嫌われたくないので結衣の話題にのる。結衣のお願いは魔力負荷バンドの件以来だ。

 

「さくらちゃんにデバイスを作ってあげて欲しいんだ」

 

「デバイス?」

 

「えーと、さくらちゃんは蓄積型デバイスの管制人格もできるらしいから、普段一緒にいられるように持ち運びできる蓄積型のデバイスを作って欲しいの」

 

「蓄積型か……。どういうデータを集めるかによるけど……」

 

「魔法データがいいな。私が使えない魔法もさくらちゃんが使えるようになるかもしれないし」

 

「……ま、いいか」

 

 蓄積するだけなら僕が作ろうとしているデバイスほど高度な演算能力はいらないか。知っている魔法を入力していくだけの物なら直ぐにでもできるだろう。

 夜天の書のような蒐集方法をとるものは与えられないが。

 

「いいぞ。どんな形がいい?」

 

「カードタイプ?」

 

「今結衣が持っているようなものでいいのか?」

 

「あ、えっと、たくさんのカードで出来たものがいいかな。トランプとかタロットカードみたいな……だよね?」

 

「は、はい」

 

「タロットカードか……」

 

 まず、五歳児がタロットカードを知っている時点で普通なら色々とおかしいが、本人が気づいていないようなのでスルーしておく。この五年間でわかったが、結衣は少しアホの子のようだ。自分も人のことを言えないかもしれないが。

 

 バラけるのはまずいから何かケースに入れるべきだろう。デバイスとしての機能を持たせる訳だからそれなりの大きさのモノは必要になる。タロットのようなカードを本体にするには厚さが足りないからケースの方が本体になりそうだ。カードの方は夜天の書のページの役割が精一杯だろう。

 

「考えてみるよ。他に希望はある?」

 

「あ、あの……できたら、杖も欲しいです……」

 

「あ、そっか。杖もいるよね。お兄ちゃん……」

 

「まぁいいぞ」

 

 デバイスコアは創ればタダだし。夜天の書の試作タイプの物を改造すればいいだろう。僕が目標にしているデバイスの前段階の使用データとして稼動データを取れば、多少の手間を支払う意味はある。

 夜天の書の修復作業も今のところ急ぐ必要があるものは無いし、新学期前のこの休みで仕上げてみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『明日から学校なのでしょ?』

 

『そうだね』

 

『こんなことをしていていいのかしら』

 

『良いんじゃないかな』

 

『まったく、マスターは妹に甘いのね。このロリコン』

 

『そこはシスコンじゃないかな』

 

『結衣、はやて、さくら、なのは、ついでにフェリ。どう考えてもロリだわ』

 

 考えてみれば僕の周りにはロリしかいない。ただ、はやてちゃんは一応24歳児だ。

 それに今の年齢では仕方ないだろう。

 

 四月一日に妹のユニゾンデバイスがやってきてから、頼まれたデバイス作りを続けていた。

 ベースは夜天の書の構築データで、リンカーコア収集機能等は排除した。無限書庫で見つかった資料と夜天の書のプログラムから考えると、最初期の夜天の書は主と共に旅して魔法スキルを蒐集するだけの魔導書であり、防衛プログラムや守護騎士システムなども搭載されていなかったのだろう。

 それぞれのシステムで微妙に癖のような構文の違いがちらほらと見られた。

 

 タロットカードに倣い、七十八枚の蓄積ページとしてのカードと、タロットを収める程度の大きさの本を模したケースをセットとしてデバイスを組み上げた。カードはカードゲームのデッキのように自由に組み替えられるものとして、取り敢えず三セット用意した。予備のカードは、普段はデバイスの格納空間にでも収納しておけばいいだろう。

 

 ついでに、僕的にはタロットといえば真っ先にペルソナが思い浮かんだために、少し特殊な機能を作りこんだ。通常仕様の三セットとは異なり、特定の条件でカードが召喚出来て、使用可能になる。まぁ、解り易いだろうが。

 さすがに友情を育んで育てるなんてことは再現出来ないので、二十二枚のカードには予め魔法がインストールしてある。補助的な魔法がほとんどなので、結衣の助けになるだろう。

 

 結衣はいつも持ち歩けるようにと言っていたので、あまり大きいと邪魔になるだろう。ケース自体は長財布程度の大きさに抑えた。

 

 基本は、鍵となるさくらちゃんの杖からカードに魔法をインストールしてデバイスに蓄積。そこから先は管制人格となるさくらちゃんが魔法プログラムを制御することになる。

 それから、夜天の書にならってデバイスの召還機能をつけておいた。デバイスのマスターである結衣と管制人格であるさくらちゃんの両サイドから召喚が可能になっている。

 

 魔法は拙いもの以外は色々とインストールしておいた。中にははやてちゃんが記憶していた膨大な種類の魔法も少し入っていたりする。

 はやてちゃんはどうやら逆行前に蒐集していた魔法が全て頭の中に入っていたらしく、ガハラさんを介して殆ど書き出してもらったりしていた。古代ベルカ魔法の大切な資料になっている。

 

 現在は、そのデバイスも出来上がり、最終調整の段階だった。管制人格無しでも使用できるデバイスだが、昼間に一度さくらちゃんに実際に融合してもらい動作確認を行った。

 通常、プログラムである以上互いの調整もなしに融合なんて出来るはずはないのだが、さくらちゃんは綺麗に融合していた。現在は管制人格が元からあったかのようなデバイスに全体的に変化していた。

 

 とはいえ、僕が作ったシステム自体はこちらで調整する必要がある様で、一度全てのデータを取り直して全体を眺めながら調整している。僥倖だったのは管制人格兼ユニゾンデバイスの基礎データが取れたことだろうか。

 夜天の書の管制構造に通じる部分もあり、夜天の書修復の貴重な参考データになる。それに、ユニゾンデバイスをその内制作するときにもデータを流用できそうだった。

 

 一応これからの調整、検査用にユニゾンデバイス用の機材も揃えておいたほうが良いだろうか。

 

『小児性愛は犯罪よ』

 

『データに欲情はしないよ』

 

 人型ならともかく、ここにあるのはただのユニゾンデバイスの基礎データだ。それにたとえ人型でも僕は別にロリコンじゃない。どちらかといえば桃子さんのような女性が好きだな。

 精神の蓄積年齢的にもそろそろ三十なので、桃子さんと結婚した士郎さんが少し羨ましい。

 

『そんな……私とは遊びだったのね』

 

『愛してる』

 

『私は、別に愛してはいないわ』

 

 アァ、ヒドイ。

 

 

――Side out

 

 

Side Yui――

 

 

 お兄ちゃんが一週間でやってくれました。

 

「すごいね。結衣ちゃんのお兄さん」

 

「うん。それ、気に入った?」

 

「えへへ、うん!」

 

 しかも、出来上がったデバイスはカードキャプターさくらのクロウカードのあれによく似ていた。中身はタロットを模した魔法カードで、一枚一枚を個別に使用することもできるようになっていた。

 

 装飾は、さくらちゃんがピンクが好きだということでピンク色に飾られ、魔法カードには桜の花びらを模した柄がついている。カードとデバイスに記された魔法陣は、ミッドチルダの丸い魔法陣にベルカの剣十字の紋章が加わり、地球産の六芒星等も混ざっている。

 ミッドの魔法陣と地球のものは殆ど似ているので地球とベルカの混合のようにも見える。

 

 私の目の前では小学生の姿をしたさくらちゃんが大切そうに二つのデバイスを抱いている。

 蓄積型のデバイスには最初からお兄ちゃんが使える幾つかの魔法もカードにインストールされているようで、私が見たことのない魔法なども含まれていた。

 

 古代ベルカ式の魔法もあり、原作でも見たことがある氷結の息吹やデアボリック・エミッションなどの広域攻撃魔法もインストールされていた。

 一体どこから持ってきたのだろうか。

 

 さらに、どう見てもミッド魔法でもベルカ魔法でもない魔法も幾つかあった。それらは魔法陣を見るだけで違うのがわかる。発動プロセスに至っては二つの大系と完全に違う。

 

 大体は平面のものだが中には立体系の魔法陣等ある。魔法陣に描かれた文字は地球の文字みたいだけど、お兄ちゃんのオリジナルの魔法なんだろうか。それとも地球に魔法文化でもあったの?

 漢字を使ってある魔法陣もいくつかあった。

 

 ただ、それらの魔法には全てミッドチルダ式の魔法陣も用意されていたので、特殊な魔法陣自体は趣味のようなものなのかもしれない。

 

 私が魔法陣を書いたらそれを使って魔法を作ってくれるかな?

 

「あとはバリアジャケットだね」

 

「うん……、でもどうしたらいいんだろう」

 

 さくらちゃんといえば知世ちゃんが作った衣装なんだよね。いろんな衣装着てるけど、でも一番覚えてるのはアニメのオープニングの衣装。

 どれも可愛いけど、個人的には二期のOP衣装が好き。

 

 だけど、一巻の表紙と一期のOP衣装が私的にはさくらちゃんの衣装って感じなんだよね。

 

 他にも一枚絵に描かれていたフリフリのたくさん付いた衣装も印象に残っている。

 

「う~ん、悩む」

 

 劇場版の衣装も可愛いし……うん。

 

 今覚えてる限りの衣装を登録しておこう。はっきり言って細かく覚えてはいないけど、お兄ちゃんのインテリジェントデバイスでイメージを衣装にしてもらえばいいのだ。そうしよう。

 私はまだストレージしか持ってないからそこまでできないんだよね。

 

 いや、さくらちゃんにイメージを伝えてあげればいいのか。守護騎士たちができたんだからユニゾンデバイスのさくらちゃんでもそのくらいはできるはずだ。

 

「よし、さくらちゃんのファッションショーだ!」

 

「ほえ? ……ほええぇぇぇ~っ」

 

 

――Side out

 




ほえ、とか、はにゃぁん、とかしか覚えてないかも。
絶対、大丈夫じゃないよ……

二十二枚のタロットは裕一郎のあそびのようなものなので、特殊すぎる魔法は入っていません。変身魔法やらゲーム産の魔法とかです。


裕一郎はロリコンではない。ということはカードキャプターを知らないということ。証明終了。

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