魔法の世界へ転生……なのはって?   作:南津

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#003 家族が増えるよ!

Side ???――

 

 

 ここはどこ?

 

「ここは世界の狭間です」

 

 なんで……。……私は死んだの?

 

「はい。あなたは死にました」

 

 直前のできごとを思い出そうとしても、思い出すことができない。どうやって死んだのか分からない。

 ……そういえばこういう空間でよく転生が行われる小説なんかがあった。神のミスとかで……

 

「ミス等ではありません。あなたが死に、選ばれたからここに居るのです」

 

「選ばれた?」

 

「はい、記念すべき一人目の転生者として」

 

「一人目?」

 

「はい。これからあなたを含めた一〇〇の魂に転生して頂き、世界の可能性を広げてもらいます。その一人目としてあなたは選ばれました」

 

「転生……行き先は決まっているのですか?」

 

「決まってはいませんが、あなたの世界におけるここ一〇〇年の間に生まれた世界に限定されます」

 

「それは、小説や漫画の世界も……」

 

「含まれます」

 

「それなら……『魔法少女リリカルなのは』の世界にしてください。大丈夫ですか?」

 

 危ない目もあるけど、なのはちゃんやフェイトちゃん、はやてちゃんの運命を少しでもいい方向に向くようにしてあげたい。なのはちゃんは寂しい時期があるし、一緒に過ごせればあの生き方も少しは変わるかもしれない。

 できればアリシアちゃんも助けてあげたいけど、プレシアさんが六〇近いし昔過ぎて難しい。

 それに、死者蘇生は人間が手を出すべきじゃない、と私は思う。

 

「大丈夫です。それでは特典を設定してください。あなたは四つの特典を設定することができます」

 

「魔力等はどうなりますか?」

 

「基本的に、その世界で主題となる能力――この世界では魔力となりますが、転生者には標準で高い適性が設定されます。リリカルなのはの世界においては初期値でAA~AAA、成長最高値S+~SS+までの値で設定されます。更に魔力が必要な場合特典にて設定してください」

 

 AAAか。なのはちゃんもそのくらいだったはずだし、十分かな? 負荷をかけて鍛えればSS近く上がるならお願いする必要はないかな。

 

「生まれる場所や年齢はどうなりますか?」

 

「生まれる場所、年齢は基本的にはランダムとなります。特典の一つを用いて出生を設定することができます。出生設定で選択できる範囲は年代、場所、環境、容姿等です。これらは纏めてひとつの特典として設定することができます」

 

 生まれる場所や時間は特典一つか……ひとつはこれで決まりかな。容姿は両親の特徴をもらって普通に暮らせればいいや。でもちょっと位期待したいな。

 

「デバイスはもらえますか?」

 

「デバイスは魔法技能の絶対必要条件ではないため、特典として選択することで手に入れることができます。または、魔導師の子供として生まれた場合や魔法世界に生まれた場合、手に入る確率は高くなります。管理外世界の一般人の子供として生まれた場合、環境によりますが手に入らない場合もあります。また、手に入れるデバイスの種類も状況次第となります。例えば、デバイスの中でもユニゾンデバイス等は開発するか原作に登場するデバイスを手に入れるか、発掘するなど行う必要があります」

 

 両親を魔導師にするようお願いすればデバイスは手に入るか。生まれる環境も決めれるみたいだし。

 

「そうですか。他は……例えばあらゆる漫画の能力なんかも特典に選択できますか?」

 

「出来ません。関連のない能力をひとつの特典として選択することは出来ません。例えば、魔法ですが、魔法の技術系統ごとに特典を消費しますし、異能はひとつにつき一つの特典を消費します。関連の技術や魔法、異能である場合は纏める事ができますが、こちらも様々な条件があります」

 

 ちょっと残念だけど当たり前か。それにあんまり目立つとマッドな人に狙われそうだし、あくまで補助的な能力がいいかな。それとユニゾンデバイスで底上げ位?

 他にも一〇〇人転生者がいるみたいだし、何人かは同じ世界に転生しそうだよね。最低な人やハーレム願望とかある人じゃなきゃいいけど。……最低な人になのはちゃんたちが引っかからないように目をつけておこう。

 ……敵対するかもしれないけど大丈夫かな……。

 

「そうですか……それでは、一つ目の特典は出生設定でお願いします。海鳴市で魔導師の両親のもとへ生まれる。年齢は原作主人公のなのはと同い年。容姿は指定しないけど、両親はちょっとだけ美形を希望します。それから、家族にデバイス技術を持つ人がいて、デバイスが手に入るようにしてください」

 

「分かりました。但し、デバイスに関しては技術を持つ者がいる、までで、そこから先はあなた次第となります」

 

「分かりました。二つ目は瞬間移動の異能をお願いします。いつでも、どこでも、どんな状況でも可能にしてください」

 

「移動に時間はかかりませんが、過去、未来への移動はできません」

 

「はい。三つ目は……ユニゾンデバイスをお願いします」

 

「分かりました。ユニゾンデバイスに関しての設定をお願いします」

 

「人格、容姿は……CCの木之本桜ちゃんでお願いします。リインフォースⅡと同程度の大きさで、私のリンカーコアのコピーを元にして適合率を上げてください。魔力光は桜色で魔力量は私と同じに。アウトフレームは本編と同じ小学校四年生と、中学生、高校生や大人に変化できるようにしてください。それから、闇の書の管制人格のようにデバイスの中に待機出来るようにできますか?」

 

「魔力量はあなたのリンカーコアをコピーした状況に依存し、ワンランク下の魔力値になります。ストレージデバイスの管制人格兼ユニゾンデバイスとして設定します。この際のストレージデバイスは夜天の書のように変形機構などのない蓄積型のデバイスに限定されます。人格のない蓄積型のストレージデバイスを入手した際に管制人格として融合できるように設定します。手に入らない場合は唯のユニゾンデバイスとなります。入手可能時期の設定をしてください。設定しない場合、ランダムとなります」

 

 ということは、ある程度魔力が上がってからのほうがいいのかな……。Sランクまで上げればAAAのユニゾンデバイスが出来るわけだよね。

 でも、原作前のなのはちゃんの周りでなにか起こったら必要になるかもしれないし、小学校入学前には欲しいかも……。

 早いうちに魔力負荷かけてSまで上げたいな。

 

「……五歳の頃にお願いします。ちなみにコピーリンカーコアを使用しないユニゾンデバイスを希望した場合適合率はどうなりますか?」

 

「その場合、適合率は相性次第になります。ユニゾンデバイスにも意思と相性がありますので、場合によっては不適合や融合拒否、暴走事故もありえます」

 

「そうですか……」

 

「それでは、五歳の頃に何らかの状況でユニゾンデバイスがあなたのリンカーコアを元にして誕生します」

 

「……何らかの状況?」

 

「〇から作り出すユニゾンデバイスと異なり、八神はやてとリインフォースⅡのように、あなたのリンカーコアを元にするため、入手時にリンカーコアのコピーを生成する必要があります。例えば、リンカーコアを酷使した魔法の使用中にユニゾンデバイス用にリンカーコアのコピーが生成される事態や、意図的にコピーのリンカーコアを生み出そうとした状況等です。コピーのリンカーコアを生み出そうとする状況を作り出すことをお薦めします。コピーしたリンカーコアがユニゾンデバイスの核となります。ユニゾンデバイスの基礎フレーム等は五歳から六歳の間であなたのもとへお送りします。それに核を入れてユニゾンデバイスにしてください。調整などは原則として必要なくなりますが、ストレージデバイスの管制人格となった場合、ストレージデバイスの調整などは必要となります。また、技術的にユニゾンデバイスはリリカルなのは世界に準拠しますので、解析して同型のユニゾンデバイスを作ることも可能ですが、ここで設定された仕様は最初の一騎のみとなります」

 

「そうですか……」

 

 融合事故が怖いから適合率が高いのは譲れない。

 原作のはやてちゃんのように作ってもいいけど、ユニゾンデバイス作れるかわからないし……リンカーコアをコピーするだけなら何とかできるのかな? できなくても生成されるみたいだしいいかな。

 

「最後の特典を設定してください」

 

「最後は……使い魔を。ポケットモンスターシリーズに出てくるイーブイで、イーブイの進化系全てに変化できるようにしてください。魔法生物という存在にして、リンカーコアを持っているようにしてください。」

 

「ポケモンに準ずる技の使用は出来ません。魔法で再現するか、特訓して再現してください。よろしいですか?」

 

「はい……」

 

「使い魔の入手時期を設定してください。契約済みの状態で卵から孵化するように設定します。卵の入手方法を設定してください」

 

「三歳の誕生日以降で、一人で外出したときの帰宅中、一人の状況で目撃者なし。大きめのカバンを持っている時にカバンの中に直接現れるようにしてください」

 

「わかりました。あなたが一晩抱えて寝ることで契約が完了し、孵化します。契約内容は『死亡するまで共に生きる』とさせて頂きます。他の人間がこのイーブイと契約することはできませんが、意思がありますのでその点を忘れないようにしてください」

 

「わかりました」

 

「それでは確認します。出生設定として魔導師の両親にデバイス技術を持つ家族、高町なのはと同い年で海鳴市に誕生、容姿の設定がありませんので両親準拠の容姿となります。瞬間移動の異能とユニゾンデバイス。ユニゾンデバイスの入手時期は五歳の時。ポケモンのイーブイを使い魔とし、イーブイは全ての変化が可能。入手時期は三歳以降一人の状況で入手します。以上でよろしいですか?」

 

「あ、イーブイの性別はメスでお願いします。ザッフィーみたいにごつい人が出てくるとちょっと困るので……。他は問題ありません」

 

「わかりました。それでは、新しい人生をお楽しみください」

 

 

――Side out

 

 

Side Yuichirou――

 

 

 悲鳴のような産声が上がる。

 二月二一日。予定日より二日ほど早く僕の妹が生まれた。前世では兄弟も姉妹もいなかったので、この誕生は素直に嬉しい。普通の子供なら、親を取られたと思って反抗的になるかもしれないが、妹には目一杯構うことにしよう。

 元々うちの親は子供を放ったらかしで仕事に出る。女の子だから家に寄り付くようになるかもしれないが、どちらにしても共働きで、家には祖母と僕しかいない。

 育児休暇が終われば面倒をみる機会も増えるだろう。

 

 ……反抗期が来て「きらい」とか「うざい」とか言われたらどうしよう。

 幸い両親ともに容姿は良いので外見で「きもい」とかは言われないだろうが、将来的にうざがられる可能性は十分にある。前世で聞いた話では兄妹はそんなもんらしい。

 妹が彼氏を連れてきたとき「俺を倒したら認めてやる!」みたいなことやったら絶対ウザがられるな。やめておこう、恋愛は自由だ。

 

 ……今から気にしても仕方ないか。

 

 海鳴大学附属病院の分娩室のランプが消える。どうやら滞りなく出産が終了したようだ。父さんは入口付近に張り付いている。

 ……そこは邪魔になるだろう。

 

 しばらく経って、室内に通される。母さんが眠った赤子を抱いていた。くしゃくしゃで猿みたいな顔だった。

 

 その後母さんと妹は個室に移り、僕と父さんは病院内の喫茶店で軽く一息つき、病室を訪ねる。僕の時は大部屋だったらしいが、夜間はあまり眠れなかったとか。

 室内に入ると、新生児用のベッドに妹が寝かされており、母さんはその様子を静かに見守っていた。

 

「お疲れ様。(はるか)

 

 父さんが母さんに言葉をかける。ちなみに遥とは母さんの名前だ。

 

「あなた、裕。結衣(ゆい)は今寝たところよ」

 

 どうやらさっきまで起きていたらしい。喫茶店で一服している間に起きて寝たのだろう。妹は静かに眠っている。

 妹の名前は結衣に決定した。「ゆういちろう」と「ゆい」で同じ音が使われていて少し嬉しい。漢字は迷ったらしいが、最終的に結衣の字で決定した。

 両親とも黒髪(に近く)、わずかに生えている髪の毛は母さんと同じ(ほとんど)黒だ。光の具合で若干青っぽく見えたりもするが黒だ。

 父さんは逆に少し茶色が入る黒で、管理世界出身らしいが、日本人の血でも入っていたのか少し日本人の特徴が入った外人だ。僕は日本の血が濃い目だが、僅かに外国人っぽい顔立ちで、少し母親似。女っぽいという意味ではないが、比較的整っている……と思いたい。

 

「結衣も裕と同じくらい魔力があるわ。裕の時よりは少ないけど」

 

「ん……本当だね。こんなところも兄妹で似たのかな?」

 

 ……ん? 本当だ。やっぱり転生者の兄妹はある程度似るのかな? まだ不安定で正確にはわからないが、AAAには届かないかもしれないけど結構な魔力だ。

 

 ……結衣のデバイスは僕が作ってやろう。同じ教育方針なら三歳の時にデバイスが渡されるはずだ。その時までにデバイス作りをマスターしておこう。技術吸収効率の成長限界値を引き上げておけばちょろいはずだ。

 インテリジェントデバイスは資金的に難しいかもしれないが、女の子だし父さんは甘いはずだ。デバイスコアくらいは金を出してくれるだろう。無理ならデバイスコアを研究してデータ以外を錬成し、データは自分で組めばいい。

 他の部品も錬金術で特殊合金を用意してやれば、高性能で安くデバイスが作れる。

 この間、昔映画で見たアダ……なんとかっていう超硬度の金属と、魔力伝導率の高い軽量金属等を使った高硬度合金が錬成できた。今も自分用のパーツにこっそり採用しているが、結構な強度で若干の重量増加で済んでいる。リカバリーでの再生以外、錬金術でしか加工できない合金になってしまったが、壊れることは殆どない筈なので大丈夫だろう。

 ……調べられたら拙いので自分の物以外は、壊れたらまずいデバイスコアだけその合金を採用する程度にしておいたほうがいいだろうか?

 とにかく、あと三年でインテリジェントデバイスまでマスターし、妹に最高のデバイスを送ることに決めた。

 

 ……なにかを忘れている気がするがきっと気のせいだろう。

 

 

――Side out


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