成り代わりヴァサゴのSAOライフ   作:kinopio

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出会いは突然

ようやく日本にこれた。

 

日本に来るまでに多くの問題があった。

 

まずは裏社会の人間だと足がつかないようにするために経歴の偽装

 

それに合わせたパスポートの作成

 

そして組織からの脱退

 

 基本的に裏社会で情報を漏らされる事は一番危険視する事で俺のような幹部は―――まぁ幹部ぐらいの地位を持つと組織から抜け出す様な輩はいないのだが―――多くの重要な情報をつかんでいるので抜けだそうとすれば殺される。

別に暗殺者の一人や二人、三人や四人、どうって事ないのだが日本に行ってから毎日気を張るのは疲れるし面倒くさい。

 前の記憶が戻ってから今までは見捨てていた様なスラムの子供達を助けたりと随分丸くなったものだが人を―――それも悪人ともなれば―――殺すことに抵抗は感じない。

 故に念入りに準備をして他の組織の耳に入るようそれとなく情報を流し連日の抗争で疲弊したところで計画を実行した。

 

 怪しまれないレベルの金を持ち、日本での在留資格を得て今に至る

 

 

タクシーに乗り込み予め購入しておいた新しい家に向かう間に今後の計画を組み立てる。

 

(今が2018/11/6、SAOの本サービス開始が2022/11/6のはず、物語開始のちょうど4年前。物語の主要人物は開始時点で中学生つまり...今は小学生か)

 

 失念していた...

 

 というのも日本に来るまでは『どうやって日本に行くか』ばかり考えていたので『日本に着いてからどう過ごすか』をかんがえていなかった。この4年の間に何人かのコンタクトをしようかと考えていたが彼の年齢は18歳しかも生きるか死ぬかの弱肉強食の世界で生きてきたので風格が十代のそれではない。そんな人物が11、12才の小学生に近づこうものなら不審者扱い&職質待ったなしである

 

 自分らしからぬミスに側頭部に指を当てるがふっと笑みを浮かべてしまう。

 

まるで遠足に行く前の小学生のようだ、そんな人間くさいミスをしてしまった事実が本当の人間になれているようで喜ばしかった。

 

(しかしこれからどうするべきなのか...)

 

車窓から外を見ながら考えるが一向に案が浮かばない。そのまま時間だけが過ぎていき気づけば目的の家についていた。

 

とりあえず接触は諦めて今後の生活を考えるか

電子ロックを解除し日本は随分と進んでいるんだななどとどうでもいいことを考えた時。

 

「おにーさんここに引っ越してきた人?」

 

振り向くと天真爛漫な笑顔を向けた黒髪の少女と困り顔でオロオロした少女がいた。

 

「あぁ、ここに引っ越してきたヴァサゴ・カザルスだ。よろしくお嬢さん方」

「うん、僕の名前は紺野木綿季ですこれからよろしくお願いします!」

「こ、紺野藍子です。よ、よろしくお、願いします」

 

うん?

 

 

 

紺野木綿季

 

『アルヴヘイムオンライン』通称ALOと言われるゲームにおいて圧倒的な強さを誇りその反応速度ははキリトに『SAOにいれば二刀流スキルは彼女に渡っていた』と言わせるほど。

しかし現実では彼女を含めた家族全員が後天性免疫不全症候群―――AIDSを患い彼女以外は亡くなり最後は仮想世界の住人としてALOで息を引き取った人物。

その生き様はあまりにも鮮烈で短い人生を全力で生き抜いた姿は俺の中の知識としてはっきりと残っている。

 

「隣に引っ越してきヴァサゴ・カザルスといいます。これ粗品ですが」

「まぁ、ありがとうございます。お若いですね~一人暮らしも大変だと思いますが頑張ってくださいね。困ったら何か言ってくださいね」

「ありがとうございます」

「どうですか、中でお茶でも...」

「いやそこまでしていただかなくても...」

 

引っ越しの挨拶のために隣の家―――紺野家を訪れた。表面上は特に変わってないが

 

(まさか隣とは...)

 

木綿季と藍子に声をかけられた後荷物を置いて二人に―――主に木綿季だが―――つれられて彼女達の家まで案内されたが、そこは庭をまたいだ俺の家のすぐ隣だったのだ。こんな偶然もあるのかと驚き、そして自分で言うのも何だが初めて会った厳つい顔をした外人を何のためらいもなく声をかける彼女たちのコミュ力の高さに戦慄し、簡単に家まで連れてきてしまう警戒心のなさに呆れを通り越して不安になるというこの短時間で多くの感情が表れる。ちゃんとしてくださいよご両親。

しかしこの子供にしてこの親ありと言うべきなのかご両親も底抜けで優しく明るい人たちだった。あっちの世界じゃ考えられない彼女たちの性格に日本の治安の良さにちょっぴり畏敬の念を覚えた。

 

「ご遠慮なさらずに、ささっどうぞどうぞ」

「いやしかし…」

「ボクもお兄さんの話聞きたい!

 

そのまま紺野家の圧倒的なコミュ力と好奇心の強さに負けてしまった

 

「あ、あの…えっと…ごめんなさい」

 

俺に迷惑をかけてしまった事を気にしているのか藍子が小声で謝ってくる。気にするなという意味とこの家族のおそらくブレーキ役である彼女のこれからの苦労を考えてつい頭を撫でてしまった。

 

「へーメキシコから単身で」

「ええまぁ」

 

会話をしていて分かったが彼女らと俺の相性は意外と悪くなかった。俺自体日本に来るまでに仕事で様々なところに行った事もあり話題には困らない。しかし彼女らはすでにHIVに感染しているはずなのであまり遠出をしたことがないのだろう。聞き上手というか好奇心の塊といったほうが正しい気がする。俺が一息つこうとしてもすぐに話を振ってくれて途切れることはない。

 

「じゃあさ、お兄さん出身地のお話してよ!」

 

好奇心の塊のような弾丸少女はまるで旅行から帰ってきた友人のように話しかけてくる。

 

「メキシコの話か?特に面白い事はないぞ。表向きは華やかに見えるがあそこは麻薬、誘拐、殺人、とかそんな犯罪が溢れかえってる。夜になれば麻薬の売人が歩き回り、警察なんか犯罪者が捕まれば賄賂を要求するなんざ当たり前、ひどいところは政治家まで抱き込んでいる所もある。日本とは全くの別世界だ」

「へ、へー」

 

しまった、しゃべりすぎた

みんな若干引いている。日本に来てからこんなミスしてばっかりだ。いくら人間くさくなったのを実感出来るからと言っても時期にとんでもないことを暴露してしまいそうだ。

こほん、と咳払いをして

 

「とりあえず日も暮れてきたことですし夕食の用意もあるのでこのあたりで…」

「そうですね、長い時間付き合わせてしまってすいません」

「いえ、こちらも楽しかったですし」

 

そのまま玄関を出ようとしたとき木綿季と藍子が並んでまさに弾けるような笑顔という言葉が似合う、そんな笑顔で

 

「お兄さん、またねー!」

「ああ」

 

 

家に帰り何もない殺風景な部屋でコンビニのパンを食べながら彼女達のことを考えていた。

AIDSがいつ発症するのか分からないという恐怖があるにも関わらず純真無垢な打算のない笑顔で見送ってくれる彼女たち。あの少女と家族はAIDSを発症して亡くなってしまう。

『前』ではHIVの完治まではいかなかったがウイルスの増殖や活動を低下させ一般人とも変わらない寿命で子供を産む事さえでき、例えAIDSを発症してしまっても十分に助かる『コントロールが可能な病気』だったが、調べたところこの世界ではまだ不治の病という扱いになっている。

今まで悪意にさらされて、善意は何かの罠か悪意かという世界だったのであの雲りっけのないあの姿がなくなるのは非常に残念だ。まだ出会って数時間しかたっていないにも関わらずそう思ってしまうほどに彼女達に興味を持ってしまったらしい。

 今まで人の命を数え切れないほど奪ってきた人間の考えとは思えないしらしくないとも思う。けれどどのように生きるのかは俺が決めることだ。

 

俺は『人間』なのだから

 

 

 

 

 

 

 

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