成り代わりヴァサゴのSAOライフ   作:kinopio

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やっと始まった


It's show time

2022年11月6日

 

人類は完全な仮想世界を手に入れた。

 

 

 

 俺は今非常に焦っている。

 

 俺はSAOがただのゲームではなくログインしてしまったが最後アインクラッド全百層を攻略するまで向け出すことはかなわず、仮想世界での死=現実での死というデスゲームと言うことを知っている。

 当然そんなもを彼女達にプレイしてほしいはずがない。故に発売日にどうしても抜けることの出来ない用事が入るよう調整し次の販売まで待ってもらおうとした。これでデスゲームが始まったとしてもその情報はすぐ全国を伝わり全て回収され彼女達が参加することはない。万が一ただのゲームであれば万々歳と抜け目ないものだった。

 

 

しかし彼女達の手にはSAOのソフトが。

 

 

 原因は超お人好し献身系医師の倉橋先輩だ。

 昼食を終えた後、珍しく先輩がこの家を訪れたのでご両親に何かあったのかと焦ってしまったのだが違うらしい。

 

「ではどうしたんですか?」

「ちょっと木綿季さんと藍子さんに渡したい物があってね」

 

まさか、いやいくら何でもそんなはずは…

 

「じゃーん!SAOのソフトだよ、ついでに君の分も買ってきてあげたよヴァサゴ君」

 

 

Oh…

 

 

 彼は俺が買えないことを知るとなんと無理矢理休みを作り買いに行ったそうなのだ。そしてサプライズとして今日まで隠しておいたらしい。とりあえずお金返しときます。

しかし俺は驚かざるを得なかった。

 医師は基本的に必要以上に患者とかかわるのはタブーだ。なぜなら治療の公平性がなくなる。

 たとえば初めて出会った患者といつも親しくしている患者がいて治療の順番の際に冷静な判断が出来なくなってしまうからだ。そのことをそれとなく聞くと、

 

「確かにボクは医師失格かもしれない。けれどね、ご両親が『現実世界では病気のせいで友達が出来なかったけれどそんなことがばれる必要のないゲームの世界なら友達が沢山出来るかもしれない』ってうれしそうに言っていたのを聞いちゃってね。そんなこと聞かされたら医師の前に大人として彼女達を助けたくなっちゃうんだ」

 

 こんなことを聞いてしまうと流石に責めようもない。彼みたいな理解のある大人達がもっと増えれば彼女達の苦しみは減っていくだろうに。

 

(しかし一体どうすれば…)

 

表面上は先輩戸の会話を楽しんでいるように見えるが彼との会話の内容尾は全く頭に入ってこない。

 

現在の時刻は12:58

本サービス開始まで残り2分しかない。

 

ナーヴギアを壊す? いやもう時間がない

 

もう一度何か理由をつけて彼女達を呼ぶ? いや時間がないし、目の前にいる先輩に「後でいいじゃないか」と止められる。

 

クソッ!どれももう時間がない。

 

 

 

そして

 

 

2022/11/6午後13:00、SAO本サービスが始まった。

 

 

浮遊城アインクラッド第1層 始まりの街

 

「おお…相変わらずすっごいなぁ~ここがゲームの世界だなんて思えないよ」

 

周りに見えるのは石造りの町並みと行き交う人々―――NPCがまるで現実の世界と錯覚してしまうような感覚だ。

それについ見入ってしまう。

 どのくらいそうしていたのだろうか、はっと我に返ってお姉ちゃんとの待ち合わせ場所に向かう。

 

「お姉ちゃ~ん、遅れてごめ~ん」

「大丈夫よ、私も今ここについたところだから」

「それじゃ早く準備をしてフィールドに出よう!」

 

歩きながら会話をしていると見知った顔の人物が前を走っていた。

 

「あ、ヤッホー、ベータテスト以来だね、キリト」

 

ボクがそう言ってぴょんぴょん跳ねながら両手を大きく振ると彼は気付いて立ち止まった。

 

「!……ユウキに、ランか。久しぶり」

「お久しぶりですキリトさん」

 

久しぶりに出会った友人と挨拶を交わしてキリトもまだ準備が終わってないらしくなら、一緒に行こうとなったので動き出したその時。

 

「おーい、そこの人たちー!その動き、ベータテスターだよな⁉︎

ちょ、ちょいとレクチャーしてくれよ!」

 

と、顔の前で手を合わせお願いしてくるバンダナを巻いたビギナーの男の人。

特に断る理由もないしボクとしては賑やかになりそうなので全然オッケー。

 

「ありがてー俺はクラインよろしくな!」

「ボクはユウキよろしくねクライン!」

 

うん、この人とはうまくやっていけそうだ。

 

 

「ぐへぇ!!」

 

突進してきたブレンジーボアをよけることが出来ず直撃してどもった声を上げながら腹を押さえながら転げ回るクライン。

 

「ははは!違うよクライン、こうズバーンってやるんだよ」

 

そう言いながらソードスキルを放ってみせる。そこで満面の笑みでピースをするとなんかみんなジトーといった目線をこちらに向けてくる。

 

「ユウキって教えるの下手ね」

「下手だな」

「教えてもらってる俺が言うのも何だけどよ、下手だな」

「うぐっ…そんなに言わなくてもいいじゃんか…」

 

そんなボクに代わってお姉ちゃんがクラインに教え始め、理解したのかすぐソードスキルを放てた。

 

「ボクそんなに教えるのむいてないかなぁ…」

「ユウキは感覚派だからな、俺もだけど」

 

そんなことをぼやきながらボクたちはフィールドでレベル上げをしていた。クラインも慣れてきている。モンスターの突進を軽くいなしながらふと時計を見ると、時刻は5時25分。

 

「お姉ちゃんどうする?そろそろ終わる?」

「確かに時間もいい感じね、キリトさん、クラインさん。貴方達も?」

「おう五時半に熱々のピッツァを予約済みだぜ!!」

 

 その用意周到さに舌を巻く。

右手を軽く下に降り、ウインドウを開き、横長の長方形をしたウインドウには本来、メニューの一番下に、《LOG OUT》と言うボタンがあり、それを押せばログアウトできる–––筈だった。

 

「……あれ?」

「……お姉ちゃんも?」

「…ありゃ?」

 

ログアウトボタンが–––なかった。

クラインとボクはまぁそんなバグもあるかといって様子で流している。けどお姉ちゃんとキリトの二人は深刻そうな顔だ。

 

「いくら面白いといえどこんなバグが出てたら今後の運営に関わる大問題だ。GMコールをしても出ないなんておかしすぎる」

 

キリトがそうつぶやいたとき―――

 

重く低い鐘の音が響き渡り体を青い光が包みこんだ。

 

 

あたりを見回すと石畳や、街路樹。そして正面遠くに見える宮殿。見間違えるはずがない。そこは《はじまりの街》中心広場だった。

 

「一体何が起きたんだ……?」

 

キリトが呟く。

どーなってんだよ……と腰に片手を当ててもう片方の手で頭をかきながらクラインが空を仰いだとき、上空に突如真紅の市松模様が発生し、空を染め上げていった。

 

「お姉ちゃん...」

「大丈夫よユウキ」

 

 なんだか怖くなり思わずお姉ちゃんに抱きついた。お姉ちゃんは私の背中をさすってくれるがそれでも心の中の不安は増すばかりだ。

 

そして告げられたのは死と隣り合わせの『デスゲーム』開始の合図だった。

 

 

 現実世界では多くの人が亡くなりSAOプレイヤーは全て病院に搬送された。木綿季と藍子もすでに両親と同じ病院にいる。両親もすぐ駆けつけ彼女達の手をとり泣いている。

 

「ヴァサゴ君、ご両親…彼女を巻き込んでしまったのは私の責任です。謝って済むとは思っていません…しかし申し訳ありません!」

 

 そういって頭を下げる倉橋先輩の体は震えている。彼が善意でやったのは明白であるので両親も彼を責めない。

しかし善意でやったからこそ彼はここまで責任を感じている。

 

「先輩、頭を上げてください。こうなってしまうことなんて誰も予測できません。今は彼女達の健康を維持しましょう」

 

 そこから非常に多くの人物がこの総合病院に搬送され、またその中の少なくない人数がすでに亡くなっていた。

―――この光景を見ると木綿季や藍子もいつ死んでもおかしくないのだと思い知らされた。

 

 もう日は暮れ外はもう暗くなっている。彼女達の両親はずっとここで彼女達の手を握っている。いつ死ぬのか分からない世界に自分達の愛する娘達がいるのだ。恐ろしいに決まっている。

 

俺はこの家族には返しきれない恩がある。なら俺のやるべき事は―――

 

「すみません、少しお話があります」

 

彼女達を―――木綿季と藍子を護ることだけだ

 

 

 

「ここがSAOの中か―――まるで現実、いやここはもう一つの現実だったな」

 

ある人はこの世界から抜けるために外に。

 

ある人は自分の命を守るために中に。

 

そのため薄暗い夜のこの広場には人の影はなく不気味なほどに静かだ。

 

「さっさとみつけてこのふざけたデスゲームを終わらせる」

 

彼はコツコツと地面をならしながら静かに歩み始めた。

 

 

 

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