俺のハーレムアカデミア:RE   作:SHV(元MHV)

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まさかの一回目で1話が終わらないっていうね。
ちょっとアホの子で可愛いツンバク幼馴染みが可愛いのがいけない。


緑谷出久という 生き方

放課後。

 

授業が終わり教室内の生徒が雑多に帰っていく中、俺は今日の観察によって得た情報をさっそくまとめんとノートを手に取り帰ろうとすると、そのノートを横からかっさらう存在がいた。

 

言うまでもなく、かっちゃんである。

 

「話まだすんでねーぞデク」

 

デク、というのは俺のあだ名だ。いつの間にか彼女の身長を追い抜いていたからか、気づけば彼女からそう呼ばれるようになっていた。木偶の坊のことを言っているだと思うが、なんだか俺の名前を読めなくて無理矢理そう呼んでるって考えるとやだ尊い。

 

「カツキ何それ?」

 

「何々“将来の為のかっちゃん成長、き、ろく”……?」

 

まずい油断した。そこには俺がこれまで見てきたかっちゃんのスリーサイズの微細な変化から生理周期、果ては下着の色に至るまであらゆる情報が網羅されているというのに。

 

──ボム!!!!──

 

容赦ないかっちゃんの“個性”がノートに炸裂。ノートは原型を残さないほどに爆発四散した。

 

「ああああああああああ!!!!????」

 

野太い俺の絶叫が教室を埋め尽くし、取り巻きの連中が耳を抑える。

 

「ひどい……な、なんてことを……」

 

思わず愕然としてその場に膝を着く俺。でもぶっちゃけかっちゃんの顔が怖くて見れないんだ、てへ。

 

「な、なにが書いてあったんだ?」

 

「くそっ! アイツのことだ、きっと下着の色とかまで書いてあったに違いない! なんて勿体ないことを!!」

 

「あああんまりだあああああああっ!!!」

 

取り巻きの連中が一部ひどいことになっているが、かっちゃんはあえてそれらには触れずマイペースに自分語りを始める。はい、ドヤ顔いただきましたー。

 

俺は首もとに仕込んだ隠しカメラでかっちゃんの表情を撮影する。心なしかかっちゃんの顔が赤く見えた。

 

「一線級のトップヒーローは大抵学生時から逸話を残してる。オレはこの平凡な私立中学から、初めて

! 唯一の! 雄英進学者っつー、“箔”を付けてーのさ。まー完璧主義なわけよ!」

 

みみっちい。実にみみっちい。だがそんなところも実に可愛い。あと俺は全裸に剥いた君に金箔をまぶしたい。

 

「つーわけで一応さ。雄英受けるなナードくん♪」

 

ポン、と置かれた腕の感触と思った以上に近い距離感から来る彼女のニオイを全力で堪能しつつ、失われた彼女の記録へと想いを馳せてため息をつく。

 

「うおおおおおん!!」

 

「仕方がない! こうなったら卒業までに俺達が密かに集めた“カツキコレクション”を持ち寄ってアルバムを──ぶべらぁ!」

 

「ああ! モヒトがやられた!」

 

騒がしい取り巻き達を背後に、俺はこう思った。

 

(しゃーない。書き直そう)

 

真の男は大切な記憶は自分の脳裏に刻むものだ。無論、ノートの中身など一言一句違わず記録している。紙にアウトプットしているのは単なる趣味だ。

 

そう想い俺は取り巻きらの持つコレクションを回収しようと走り去るかっちゃんを眺めつつ、学校を後にするのだった。

 

 

◇▫️◇▫️◇▫️◇▫️◇

 

 

帰り道。高さ制限二メートルの短いトンネルを通った瞬間──ヤツは現れた。

 

「Lサイズの……隠れミノ……」

 

声をかけられ咄嗟に前へと飛び出したが、もう遅かった。

 

俺の全身には泥のような肉体の(ヴィラン)がまとわりつき鼻と口を塞いで呼吸をできないようにしてきている。

 

「大丈~夫身体を乗っ取るだけさ落ち着いて。苦しいのは約45秒……すぐ楽になるさ」

 

そう言いつつ俺の全身を包み込む泥型の(ヴィラン)。まずい、先手を取られ過ぎた。

 

俺は試しに泥型(ヴィラン)を掴んでみるがまるで手応えがない。

 

「掴めるわけないだろ流動的なんだから!!!」

 

どこかトラウマでも刺激したのだろうか。まあそれもそうか。こいつがこれまで生きてきたってことは、こんな身体でどうにか過ごしてきたってことだからな。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

俺は次に泥型(ヴィラン)ごと全身を擦り付けるように壁や地面へと体当たりする。多少はこそぎ落ちたが、決定打にはならない。

 

次に動きを止め、力を溜める。

 

「お、ようやく無駄な抵抗やめる気になったか?」

 

さきほどこいつは俺のことを“隠れミノ”といった。となればこいつは俺の身体に入るのが目的なんだろう。止めたいのは呼吸じゃなく息の根ってわけだ。

 

なるほど、流動的だから文字通り人を羽織って動けるわけだ。

 

(けどな、相手悪すぎだぜ?)

 

俺は体内に残った呼吸すべてをひとつに込め、筋肉を膨れ上がらせるのと共に一喝として叫び声をあげる。

 

はっっっっっっ!!!!!!!

 

仮に俺の目の前に人間がいたら、紛れもなく鼓膜は破れ下手をすれば脳震盪まで起こしただろう。

 

それだけの大音声が泥型(ヴィラン)を揺すった。脳がどうやって存在してるかわからないが、お前流動的なんだろ。だったら案外振動に弱いんじゃねえか?

 

「ぐrrrraaaaa、あgggggiiii……!」

 

弱々しく崩れその場でバタバタともがく様はまるで日に焼かれるミミズのようだ。さてどうしてくれよう。火でも放てば解決か? それとも何か飲み物と混ぜてしまうか。

 

「HAHAHA! こらこら、こんなところで“個性”を使っちゃいかんぞ?」

 

マンホールの蓋を開け、後ろから現れた人物の声に俺は思わず振り向く。

 

何度聞いたかわからない。子供の頃からずっと見てきた、聞いてきた。間違えるはずはない。

 

そうだ、あなたは──。

 

「オールマイト!!」

 

「HAHA、その通り()()()()! それにしても凄い“個性”だな、まるでプレゼントマイクだ!」

 

耳の穴を指でキュッキュとほじりつつ、オールマイトがこちらへ近づいてくる。その手にはビニール袋がぶら下がっており、中には二リットルのペットボトルが入っている。なるほど。

 

「いや、今のは“個性”じゃない、です。ただの、お、おおお大声で、はい!」

 

「へ? うっそすごいねそれ。あ、じゃあ悪いんだけど彼を拾うの手伝ってくれない?」

 

そう言ってオールマイトが差し出してきたコーラのボトルを受けとると、オールマイトがゴクゴクと自分の分を飲み干していく。ちょっと待て飲むのかこれ。

 

「ケプ。あ、捨ててもいいよ。それとも飲みたかったかい?」

 

「あ、いえいえ、そ、その……! 捨てます!!」

 

オールマイトから貰ったコーラ。是非ともいただきたいどころか持って帰って家宝にでもしたいところだが今は目の前でブルブル震えている泥型(ヴィラン)の捕獲が最優先だろう。

 

そうして俺とオールマイトは十分ほどその場で(ヴィラン)を回収した。オールマイトはオフだったらしく、慣れない土地でウカれてしまい巻き込んでしまったと丁寧に謝罪までしてくれた。おまけにいつのまにやらシャツにサインまで書いてもらえて、今日は最高の一日だったと言えよう。

 

「じゃあ私はこいつを警察に届けるので! 液晶越しにまた会おう!!」

 

そう言って歩いていくオールマイト。十字路に行き当たると、その場でしゃがんだ彼を見てそれが跳ぶ前兆だと理解する。

 

「応援よろしくねー!」

 

ドップラー効果を残して去っていくオールマイト。俺は彼を見送ろうとして──どうしてだかその瞬間、咄嗟にオールマイトの足を掴んでしまっていた。

 

「ってコラコラーッ!!」

 

ここは上空百メートルはあるだろうか。ヒトに“個性”の使用禁止を言い渡しておいて自分はいいのかと突っ込みたいが、この人の場合この超人的パワーはどこからが“個性”なのかわからないからな。なるほどグレーゾーンというわけだ。

 

「離しなさい!! 熱狂が過ぎるぞ!?」

 

「今放すとちょっと助かる自信ないっす!!」

 

「確かに!!」

 

自分でもなんでこんなことをしたのかわからない。だが漠然と感じたのだ。このままオールマイトを行かせてはいけないと。

 

「……ゴホッ(Shit!!)」

 

結果だけを言えば、このとき俺が無理矢理オールマイトに引っ付いていったのは正解だったし、致命的な失敗でもあった。

 

 

◇▫️◇▫️◇▫️◇▫️◇

 

 

道に転がる()()()()()()を蹴飛ばしながら、かっちゃんこと爆豪勝己は取り巻きの連中を引き連れて街中を歩いていた。

 

「お前さぁ、幼馴染みなんじゃねえの?」

 

「ていうか付き合ってないの?」

 

「付き合ってねえよ!!!!」

 

ちなみに取り巻きの一人であるモヒトは自らが密かに集めていた“カッチャンセレクション”を全て没収され爆破KOされている。

 

「……いつまでもガキみてえにセクハラしやがって……! あんなんにオレはっ……ああクソ腹立つ!!!!」

 

抑えきれない苛立ちを掌から“個性”を発動させることで微量に発散させる。だが心の中の靄は晴れない。

 

「つーかてめェらタバコやめろっつったろ!! 身体に悪いだろうがっ!!」

 

怒りの矛先を取り巻きに向けつつ、勝己は彼らを振り向く。

 

しかしその表情は、怒る自分ではないナニカへの恐怖に染まっていた。

 

「お……おい!!」

 

彼らは震えながら咄嗟に指を指していたが、聞こえてきた背後からの気味の悪い声に勝己は何もできなかった。

 

「良い“個性”のnnnn隠れミノoooo」

 

 

◇▫️◇▫️◇▫️◇▫️◇

 

 

「……おお、地面が、ある……!!」

 

なかなか体験できるものではない高所への急上昇と急降下を味わい俺とオールマイトはどこかの建物の屋上へと降り立っていた。

 

「全く! 階下の方に話せば降ろしてもらえるだろう。私はマジで時間ないので本当これで!!」

 

その言葉に反省しつつ、しかし俺はどうにも焦る様子のオールマイトに何か事件が起きているのかと思ったが、彼の様子からはそういった第三者へと向けられる焦燥感を感じない。むしろ、もっと自分自身に原因があるような口ぶりだ。

 

「待ってくれ!」

 

「NO! 待たない「“個性”がなくても! ヒーローはできますか!?」……!」

 

その言葉がどういった変化をもたらしたのか、手すりに掴まるオールマイトの動きが止まる。

 

俺は今しかないと、自分が抱えてきた想いの丈をオールマイトの鍛え抜かれた背筋へとぶつける。

 

「“個性”のない人間でも、あなたみたいになれますか!?」

 

それは俺がずっと抱えてきた不安でもあった。確かに俺は鍛えてきた。しかし恵まれた肉体の才能が俺をどれだけ強くしてくれても、俺には決定的に不足しているものがある。“輝く一つの拠り所”がないのだ。俺には“個性”がない。

 

「“個性”が……」

 

静かに答えようとするオールマイトの変化を、俺はそのとき俯いていて見ることができなかった。

 

だが一度溢れだした不安は言葉という形になって口から飛び出し、彼の背中へとその気持ちをひたすらにぶつけ始めた。

 

「俺は……“個性”がないって言われた日からずっとヒーロー達を見てきました。彼らは世間が思った以上に“個性”に頼っていない! むしろそれ以外の判断力、行動力、決断力の方をずっと頼っている! それはあなたも同じですオール……マイ……ト……?」

 

見上げた俺の目の前にいた人間をなんと言えばよいのだろうか。

 

確かに身長は同じだが、その体躯は細くガリガリの骨と皮。鍛え抜かれたとはとても言えない全身の服装は、しかし紛れもなくオールマイトそのものだった。

 

しばし無言で対峙する俺とオールマイト。先に口を開いたのはオールマイトだった。

 

「私はオールマイトさ」

 

「と、吐血ってちょっと大丈夫ですか!?」

 

口からどばっと血を吐く“平和の象徴”。思わず嘘だ、といいたいが俺の知る全ての知識が、というか状況そのものが裏付けている。

 

()()()()()()()()()()()と。

 

「プールでよく腹筋力み続けている人がいるだろう? アレさ!」

 

「いやそんなレベルじゃないと思うんですけど……」

 

たじろぐ俺に、オールマイトはその場で座ると自身の服をめくり自身がなぜそうなったかを説明してくれた。

 

「見られたついでだ少年。間違ってもネットには書き込むな? ……5年前、(ヴィラン)の襲撃で負った傷だ」

 

その傷をなんと形容したらいいのだろうか。傷口の大きさからして恐らく片方の肺は機能していない。死んでもおかしくない傷を、無理矢理溶接して繋ぎ合わせたかのような歪さが、そこにはあった。

 

「呼吸器官半壊。胃袋全摘。度重なる手術と後遺症で憔悴してしまってね。私のヒーローとしての活動限界は今や一日約三時間ほどなのさ」

 

「……!!!!」

 

衝撃の事実だった。だが同時に納得もした。世間は隠していたし巧妙に偽装されていたが、確かにある時期から彼の露出は露骨に減っていたのだから。

 

「5年前っていうと、毒々チェーンソーと戦った時……?」

 

「くわしいな。あんなチンピラにやられはしないさ!」

 

ぐっと拳を構えるオールマイト。自分で言っていても思ったが、確かに彼があんな程度の相手にやられるくらいだったらこの世はとっくに終わっている。

 

「これは世間に公表されていない。公表しないでくれと私が頼んだ。人々を笑顔で救い出す“平和の象徴”は、決して悪に屈してはいけないんだ」

 

重い、言葉だった。その通りだと思った。もし“象徴”である彼が弱っていると、悪に屈したことがあると知られただけで世間はどうなる? 混沌渦巻く地獄絵図の始まりだ。

 

「私が笑うのは、ヒーローの重圧、そして内に湧く恐怖から己を欺く為さ。プロはいつだって命懸けだよ。……確かに君は規格外だが、“個性(ちから)”がなくとも成り立つとはとてもじゃないが……口に出来ないね」

 

残酷だが、事実だった。

 

わかっていた。わかっていたのに、それを目の前にいる“平和の象徴”に突きつけられると、さすがに来るものがある。

 

「人を助ける事に憧れるなら警察官って手もある。“(ヴィラン)受け取り係”なんて揶揄されちゃいるが、あれも立派な仕事だ!」

 

どこか弱々しく立ち上がるオールマイト。俺は、彼に手を貸すこともできないほどに打ちのめされていた。

 

「……夢見るのは悪いことじゃない。だが……相応に現実も見なくてはな少年」

 

そう言ってビルを後にするオールマイト。

 

街のどこかで聞き覚えのある爆発音がしたような気がしたが、今の俺にはそれを気にする余裕はなかった。

 

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