魔破竜人リントヴルム 第2部 作:魔破竜人リントヴルム製作委員会
『悪夢と共に死ぬ』…これが意味することがわからず、宗麟達は悩んでいた。だが、悠長に苦悩している時間はない。バイラノスの地球侵略計画は着実に進んでいる。もはや一刻も無駄にできないという中、ヴィヴィルがハッと声をあげた。
ヴィヴィル「悪夢…つまり『Nightmare』だわ!蒼鬼はもしかして…Nightmare matterと心中する気なんじゃ…」
宗麟「まさかそんな…!?でも、何のために?」
不穏な空気が流れる中、九頭龍博士が部屋に戻って来た。
博士「皆、これを見てくれ。蒼鬼がNightmare matterを盗み出した保管庫からこんな物が見つかった。」
博士が持って来たのはカセットテープだった。どうやらこれは蒼鬼が残した物らしい。博士は再生機器にカセットを入れて再生する。すると、こんな蒼鬼の声が流れてきた。
《姐さん。これを聞いてるってことは俺はもう九頭龍研究所から出て行ってるはずだよな…》
一方その頃、バイラノスは蒼鬼がNightmare matterを自分に変わって実験場に運搬してくれることにすっかり安心しきっていた。だが、彼の耳に衝撃の情報が飛び込んで来た。
部下のゲノム魔人「バイラノス様!オーガランスが貴方様のUFOを無断で操作し、そのまま逃走しました!」
バイラノス「何だと!?くっ、奴を信用してマスターキーを渡しておいたのが間違いだったか。オーガランスを追え!発見次第撃墜しろ!」
怒り心頭のバイラノスを余所にNightmare matterが3つも入ったケースを持ってバイラノスの移動用UFOを飛ばす蒼鬼。そして、太平洋のど真ん中の上空にUFOを止めた。おもむろにケースを開ける蒼鬼。そして、こうつぶやいた。
蒼鬼「結局、俺はエラクレル帝国に逆らうことはできなかった…だからといって、命の恩人である姐さんを死なせるわけにはいかない。それなら取るべき方法はただひとつ…この争いの種を永遠に消し去るしかない…!」
蒼鬼はNightmare matterをまず2つ取り出した。そして、それを重ね合わせた。すると、その力によってUFOの外の空間が歪み、亜空間が展開された。さらに、蒼鬼はオーガランスに変身し、最後の1つのNightmare matterを体内にねじ込んだ。その瞬間、凄まじい量のエネルギーがオーガランスの身体に流れ込み、早くも身体はオーバーヒートを起こしそうな状態だった。声を殺してはいるものの、その苦痛に七転八倒する蒼鬼。ボロボロの、破裂寸前の身体を何とか起こして、UFOの扉を開けた。
蒼鬼「はは…やっぱり俺にはこんな最期がお似合いだな。いずれ捨てられる運命だった…だから、それが今来ただけなんだ…なのに…わかっているのに…どうしてこんなにも悲しいんだ!」
そして、オーガランス、いや、蒼鬼はNightmare matterが作り出した亜空間に飛び込む。
蒼鬼(紅鬼…お前は俺の初めてできた友達だった…感謝してるぞ…姐さん…不甲斐ない俺を許してくれ…そして…絶対に俺の後を追わないでくれ…お願いだ…)
その直後、亜空間の中で大爆発が起き、やがて亜空間も爆発の衝撃で消え去った。こうして5つの内3つのNightmare matterは失われてしまったのであった。
バイラノス「オーガランスが死んだか…しかもNightmare matterの力でワームホールを作り、それらを道連れにしてしまったか。ええい!忌々しい!あの愚か者め!だが、こちらにもまだNightmare matterが1つだけ残っている。できれば5つ全部使う予定ではあったが、計算上は1つでも強大なネオ・キマイラを作り出すことは可能だ。いよいよ、始めるぞ。地球の人類はすべて我々ゲノム魔人に成り代るのだ!」
ところ変わって九頭龍研究所。ふと、宗麟は疑問を覚えた。
宗麟「それにしてもなぜ蒼鬼はモールス信号やカセットテープにメッセージを残したのでしょうかね?」
博士「きっとバイラノスが存在を知らないものを使ったのだろう。奴はおそらく地球に来てから日が浅い。地球の文化や技術をすべては把握できてないだろう。だから、蒼鬼の行動が発覚することはなかった。」
そして、宗麟、博士、ヴィヴィル、ヴァネッサは全員蒼鬼の残した音声に集中する。すると、そこには…
《俺はエラクレル帝国で作られたゲノム魔人だから帝国に逆らうことはできない。でも、姐さんには生きていてほしい…そんな思いから俺は争いの種となるNightmare matterをこの世から消すことにした。もし、5つ全部がバイラノスの手に渡ってたらもう勝ち目はなかった…俺1人の犠牲で姐さんが生き残れる確率が上がるなら安いものっすよ。だからこれは俺の遺言だ。俺のスマホの中にバイラノスが最強のネオ・キマイラを生み出すためのに向かう実験場の地図のデータが入っている。おそらくあいつは明日にはそこに向かうはず。先回りして実験場を破壊すれば最悪の事態は免れる。》
そして、一旦音声が止み、無音状態が数秒続いた。やがて小さな声だが蒼鬼の声が聞こえてきた。
《姐さん…いや、ヴァネッサ姫様。俺は貴女に助けられてとても感謝しております。しかし、それと同時に祖国を取り戻すために戦う、気高く美しい貴女に俺は心を奪われました。俺はホストクラブでバイトしてたけど、どの女性にも皆魅力を感じませんでしたね。だって、俺は姐さんを愛してましたから。すみません。身の程知らずで。でも、俺が貴女を守ろうとしたのは単なる忠誠心だけじゃなかったんですよ》
《最期にこれだけ言わせてください。姐さん。俺は貴女が好きでした。》
音声はここで途切れていた。その瞬間、ヴァネッサは再生機器の乗った机を壊れんばかりに叩き、顔をうつむけて泣き叫んだ。
ヴァネッサ「紅鬼、蒼鬼!2人とも!どうして私を置いていくんだ!ずっと一緒にいて欲しかった…それだけで良かったのに!私はついに独りになってしまった…これからどうすればいいんだ!」
その時、ヴァネッサの肩に宗麟はそっと手を置いた。そして、こう続ける。
宗麟「もう無理するな、ヴァネッサ。君はもう戦わなくていい。辛いんだろう?なら、ここから先は俺に任せてくれ。バイラノスだけは絶対に許さない!あいつは俺が倒す!」
ヴァネッサは何も言わなかった。泣き止んだが、顔を上げることはなかった。
宗麟「博士、クシナさん。ヴァネッサをお願いします。俺はこれから蒼鬼が教えてくれた実験場へ向かいます!」
ヴィヴィル「私も行くわ。もうこれ以上、後手に回って仲間が減るのは嫌だから。」
博士「わかった。だが、私も戦いを最大限アシストしよう。最高戦力で臨まなければ勝てる相手ではないだろうしな。」
クシナ「さっき、アメリカの科学研究所からハワイ諸島近海でおよそ地球上には存在していない物質による高濃度のエネルギー波の反応があったって報告が来たの。きっとそれが蒼鬼くんなのね…うん。私も九頭龍博士と同意見だわ。リントヴルムが勝てるように全力を尽くすわよ!」
さっそくバイラノスと決着をつけるために装備を整える宗麟とヴィヴィル。いよいよ最終決戦の足音が聞こえてきた。果たして、リントヴルムの運命は?そして、ヴァネッサはどうなるのか。
(続く)