魔破竜人リントヴルム 第2部   作:魔破竜人リントヴルム製作委員会

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外伝第1章『戯曲!悲劇へは行かせない』の結末

(続いて明日の天気です。明日は高気圧に覆われ…)

 

テレビの音をBGMに机で書きかけの原稿を睨む男が1人。彼は「反町 龍太郎」。ヒーロー番組『魔破竜人リントヴルム』の脚本を担当している。どうやら締め切りが来週なのにも関わらず、まだ未完成のようだ。しかし、そんな状況を知ってか知らず反町はウトウトと机に突っ伏して眠ってしまった。

 

反町「はっ!いかんいかん仮眠をとるつもりが…あれ?ここはどこだ?」

 

反町は目を覚ますとなぜか森の中にいた。携帯を取り出そうとするがあいにくポケットには何も入っていない。辺りを見回すと自分の寝ていた場所のすぐ近くに鞄が落ちていた。中には何とさっきまでにらめっこしていた書きかけの原稿が入っていた。

 

反町「まさか…ここは…」

 

嫌な予感がした反町は森の中を進む。すると目の前にあったのは…あのお馴染みの研究施設だった。

 

反町「『九頭龍先端科学研究所』…しかも番組の架空の研究所だ。はあ、夢にしては冗談がキツいな…」

 

そこへ2人の男女が反町に近づいてきた。

 

宗麟「入り口に誰かいると思って来てみたら…誰だ?」

ヴィヴィル「あの、すみません。どちら様ですか?」

 

反町は思わず「宗麟とヴィヴィルだ!」と言ってしまいそうになるがその言葉を飲み込む。初対面なのに名前を知っていたら怪しまれてしまうからだ。反町は何とか取り繕う。

 

反町「いやその…道に迷ってしまってね。君達、街へ行く方法を知らないかい?」

宗麟「だとしたらかなりの距離があるな…」

ヴィヴィル「それだったら九頭龍博士に頼んで車を出してもらいましょうよ。」

 

反町は九頭龍研究所に案内されてしまった。今まで目にしてきた人や物はすべて番組の中にしかないものばかりであった。どうして自分は、何のために自分は『魔破竜人リントヴルム』の世界に入ってしまったのだろうか。しかし、反町は夢から覚めようとはしない。なぜなら心のどこかではこの世界にいれば書きかけの脚本のアイデアが閃くかもしれないと思っていたからであった。

 

博士「何?山で迷った人がいる?わかった。私が麓の街まで案内してあげよう。私もちょうど街へ行く用事があるからな。」

反町「あ、ありがとうございます。」

 

番組で見た通りの九頭龍博士に連れられ博士の車に乗り込む反町。博士とは道中ひと通りの世間話を交わしたが…反町には引っかかる部分があった。

 

博士「仕事は何を?」

反町「脚本家です。あの…『魔破竜…いや、ヒーロー番組のシナリオを書いています。」

 

ここでも危うく『リントヴルム』と言いそうになるがまた言葉を飲み込む。

 

博士「ほうほう、脚本家か。いやはや、私は理系ゆえにそのような文系の仕事にはてんで疎くて…良ければ話を聞かせてくれないか…」

 

そんな話をしながら街に到着する。反町は駅前に降ろしてもらい博士に礼を言って別れたが急いで駅前の喫茶店に駆け込む。急いで起きた時に持っていた鞄を開けて書きかけの原稿を確認する。そこに書かれていたのは…

 

(龍崎宗麟:「入り口に誰かいると思って来たが…誰だ?」)

(ヴィヴィル:「あの、すみません。どちら様ですか?」)

(九頭龍博士:「何?山で迷った人がいる?わかった。私が麓の街まで案内してあげよう。私もちょうど街へ行く用事があるからな。」)

 

今までの会話はすべて脚本に書いてあることそのままだったのである。もちろん書きかけであるためシーンが飛び飛びになっているものの、上手い具合に台詞は全部シナリオ通りだった。

 

反町「もはや気味が悪いなこの夢…いや、確かに番組でしか会えないキャラクターに実際に会えるのは貴重な体験なんだが…」

 

でも、反町はどこか寂しさも感じていた。本来自分は物語を作る側であって登場する側ではない。宗麟達に会えたとしても宗麟達はシナリオ通りの言動しか起こさない。まるで反町は世界に無視されているようだ…そんな感情が芽生えたその時…あっ!と声をあげてしまいそうなことに気づいた。

 

反町「大変だ!次の展開はモンスターが現れて暴れ回るシーンだ!しかもそれより先が真っ白だ!」

 

自分の原稿を見てパニックになる反町だが、もう遅かった。外で爆発音が聞こえたからだ。

 

モンスター「グルル!グルァァ!」

 

まるでリザードマンのような、はたまたエイリアンのような名状しがたいモンスターが駅前の広場で通行人を襲っていた。とりあえず、反町はモンスターから逃げるために喫茶店を飛び出すが…

 

反町「えっ!?うわぁっ!」

 

モンスターの発射した怪光線がガソリンスタンドに当たり大爆発を起こした。反町はその爆発の衝撃で吹っ飛ばされてそのまま原稿の入った鞄を持ったまま失神してしまった。

 

暴れ回るモンスターの前にようやくリントヴルムとヴィヴィルが到着した。リントヴルムはモンスターにパンチやキックを食らわせるがあまり効いていない。さらにモンスターの怪光線をヴィヴィルがバリアでガードするもバリアが簡単に破壊されてしまった。

 

ヴィヴィル「嘘でしょ!?これはどういうこと!?」

宗麟「俺達の攻撃が全部中途半端な状態にしかならない…なぜだ?」

 

だが、モンスターの攻撃もリントヴルムが片手で簡単に防御できる程度の威力であった。どうやらモンスターの攻撃も威力が不安定なようである。要するにどちらも決定打が足りないという状況であった。

 

ヴィヴィル「こうなったら必殺技の『ドラグーンボルトブレイク』を…」

宗麟「いや…だめだ!必殺技が使えない!しかもフォームチェンジもできないんだ!」

 

すると、モンスターは突然、リントヴルムに背を向けて走り出した。向かった先には倒壊したガソリンスタンドにいる気絶している反町のところだった。だが、そこへモンスターを追ってきたリントヴルムが反町を庇う。

 

宗麟「ヴィヴィル、その人を早く逃してやってくれ!」

ヴィヴィル「わかったわ!」

 

ヴィヴィルに揺り起こされてまたもやハッと目を覚ます反町。すると、脳内に直接こんな声が聞こえてきた。

 

(アイツを…消せば…オレは…負けない…)

 

反町「そうか…モンスターの奴は俺が狙いか。俺を消してモンスターは永遠に生き続ける気か…だが、どうする?ここには筆記用具もないし、こんな極限状況で原稿を書き足してリントヴルムが勝利する展開にするなんて無茶だ…でも、このままでは俺もリントヴルムもモンスターにやられちまうかもしれない…」

 

反町が葛藤している横でリントヴルムはモンスターと戦い続けるがやはり決め手に欠けるため、どちらも攻めあぐねている。これでは永遠に決着が着かない。

 

反町「仕方ない…最後の手段だが…奴をすぐに倒すにはこれしかない!」

ヴィヴィル「あっ!どこへ行くんですか!」

 

反町は身体を起こして鞄から原稿を全部出すとリントヴルムとモンスターがしのぎを削る場所へ向かう。やがて反町はリントヴルムとモンスターの間に割って入って叫ぶ。

 

反町「君達…本当に済まないと思っている…それもこれも俺が脚本を中途半端な状態で長いこと放置したのが原因だ…だから、決めた!俺はこの物語をもう一度書き直す!」

 

唖然とするリントヴルムとフリーズしてしまったモンスターを横目に何と反町は原稿をビリビリと破り捨てて、ガソリンスタンドの爆発で起きた炎に投げ込んだ。するとその直後、周りの空間が歪み出した。やがて竜巻に巻き込まれたように身体が浮き上がってぐるぐると回転し始める。おそらくこれは『物語』の崩壊なのだろう。そんな崩壊に巻き込まれている3人組がいた。リントヴルム、ヴィヴィル、モンスターである。モンスターは真っ先に消滅したが、リントヴルムとヴィヴィルは反町に何か必死に呼びかけていた。

 

宗麟「おーい!次は俺達どうなるんだー?」

ヴィヴィル「早く教えなさいよー!」

 

反町はその言葉にこう答えた。

 

反町「わからない!だけど待っててくれ!」

 

いつの間にか宗麟とヴィヴィルも居なくなっていた。反町はどんどん物語の崩壊の奥の奥へと落ちていく。やがて反町の目の前の光が消えて、視界は完全に闇に閉ざされた。

 

 

 

 

 

 

(さあ、始まりました!真夜中のバラエティ…)

 

ハッと目を覚ます反町。そこはいつもの自室だった。テレビは夕方のニュースからすっかり深夜番組になっていた。手にはビリビリに破いた新聞紙を持っていた。

 

反町「ヤバい!寝すぎた!もう夜中の1時だ…あれ?」

 

それまでスカスカだったはずの原稿が全ページびっしりとマスが埋まっていたのである。しかも、それは自分のさっきまで見ていた夢とほぼ同じ内容であった。

 

反町「いつの間に書いたんだこれ…。そうだ。試しにこれを監督に見せに行ってみよう。まだ1週間あるからたとえボツでも書き直す時間はあるな。」

 

 

翌日、反町は『魔破竜人リントヴルム』の監督にその脚本の下書きを見せに行った。すると、「オチがやや荒削りだけど、アイデアは斬新で面白い」と評価され採用となった。これを元にしたエピソードを来月あたりに撮影しよう。そういう運びになった。反町はホッと胸を撫で下ろしたのであった。

 

 

 

 

一方、ところ…いや、時空変わってここは九頭龍研究所。給湯室でクシナが紅茶を淹れているとそこへ宗麟がやって来た。

 

クシナ「あら、宗麟。珍しいわね。ここに来るなんて。」

宗麟「いや、何となく行きたい気分になって…というか身体に勝手に動いたというか…」

 

その返事にクシナはクスリと笑い、こう続けた。

 

クシナ「ねえ、宗麟。この世界は誰かが決めた世界で、私達の一挙一動も、もちろん人生も最初から決められているなんて話…信じるかしら?」

宗麟「まさかそんな…だったら俺が給湯室に来たのは誰かがそこに行くって決めたからってわけか?」

クシナ「ふふ、なんてね。でも、今もほら私達を見てる人がいるわ。」

宗麟「え?どこに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クシナ「ほら、画面の向こう側に。」

 

 

 

 

(完)

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