・今作は魔法少女リリカルなのはと戦国大名武田勝頼のクロスオーバーという誰得な内容です。無双キャラや女体化キャラではなく信長の野望等のリアル寄りの勝頼ですので、最初から無双したりはできません。その辺を踏まえた上で読んでください。
・原作で明確になっていない部分はオリジナルな設定で補う可能性があります。特に勝頼は四百年以上前の人物という関係上、性格などの設定はかなりあやふやで皆様の想像とは異なる場合がありますので、その辺りはご容赦ください。
…こんなガバガバで誰得な設定でもよければどうぞ読んでいってください。
「くっ…国境はまだか…!」
鎧兜の無機質な金属音を鳴らしながら、男達は険しい山道を駆け上がる。その一団を率いる男の名は”武田四郎勝頼”。甲斐の虎と名高い武田信玄の息子にして、現武田当主である。しかし武田家は最早全盛期の頃とは比べようもなく落ちぶれてしまっていた。
「はぁっ…はぁっ…」
「居たぞ!武田の生き残りだ!」
「行けぇっ!勝頼を逃がすな!」
先程より明らかに迫っている織田兵の怒号。勝頼は背後を振り向き敵を探したが、まだ姿は確認出来なかった。しかし、新府城を出立した時には七百名近く居た兵士も僅か数十人にまで減り、その残った兵士達も疲労の色を隠せなくなっていた。そんな様子を見た勝頼は遂に覚悟を決める。
「勝頼様!次の山を越えれば、もう織田も追っては来れませぬ!お急ぎくだされ!」
「………」
「勝頼様…?」
「…もう良い。後はお前達だけで逃げるのだ」
「なっ…何をおっしゃいますか!」
「織田はもうそこまで迫って来ておる。満身創痍の我らではとても逃げ切れん」
「で、ですが殿を置いて逃げるなど、そのような真似は…!」
「頼む。儂の首さえ上がれば、お前達まで追ってくる事は無いかもしれぬ!…儂の最期の頼みだ。我が妻子を連れ…落ち延びてくれぬか?」
「勝頼様…」
「お待ちください!」
そんな折、会話に割って入ったのは、勝頼の妻である桂林院と息子の信勝であった。
「父上!何を申されますか!」
「お前達…」
「北条と手切れになった折…私は生涯武田の女として…お前様と生きてゆくと申したこと、忘れてしまわれたのですか!?お願いでございます…どうか…最期まで我らにもお供を…」
「…左様か。あいわかった」
泣き崩れる桂林院の肩を抱きながら、勝頼は最愛の息子へ言葉を投げかける。
「……すまぬな…儂が不甲斐ないばかりに…お前にも辛い思いをさせた…」
「何をおっしゃいますか…!私は、父上の子に生まれて幸せにございました!」
「信勝…」
「勝頼様!我らも最期まで織田と戦い、勝頼様の下で散る覚悟にございます!」
「私もです!」
「俺も!」
一点の曇りもない眼でこちらを見据える信勝。そんな様子を見ていた周囲の兵達も次々に奮起し、織田兵を食い止めようと山を駆け下りてゆく。
「さぁ勝頼様…我らとてそう長くは持ちませぬ。お下知を」
「分かった…介錯を頼む」
そう言うと勝頼はその場に座り込むと、脇から短刀を取り出し静かに目を閉じる。
(申し訳ありませぬ父上…私の力では…武田を守れませんでした…)
「さらばだっ…」
そう叫びながら短刀を腹に突き刺した数秒後、勝頼の視界は暗闇に包まれた。
朧なる 月もほのかに 雲かすみ 晴れて行くへの 西の山の端
ここに戦国大名、武田勝頼の生涯に幕が降りた───
───はずであった。