ガンダム 鉄血のレコンギスタ   作:K-15

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第十一話 赤いモビルスーツ再び

 サブアームに握らせたロングレンジライフルのトリガーを引きながら、グシオンはハルバードの刃が届く距離にまで接近する。目の前に捉えたグレイズに目掛けて右手のハルバードを振り下ろす。

 

「うおおおッ!」

 

 ツインリアクターによるハイパワーから繰り出される攻撃は頭部を一撃で破壊する。更にダメ押しでコクピットに銃口を向けると銃弾を撃ち込む。装甲は破壊され、搭乗していたパイロットはすり潰される。力を失い漂うグレイズはどこかへ流れていく。

 

「はぁ、はぁ、これで三機目! 三日月は?」

 

 レーダーで確認する昭宏は離れて戦っているバルバトスの様子を見た。タービンズの計らいにより修理、改修されたバルバトス。両腕と肩を新規の丸みを帯びた装甲に付け替えられ、不安定だったリアクターの出力も向上し今まで以上に戦えるようになった。

 滑腔砲を右腕に抱えトリガーを引く。銃口から発射される大口径の弾丸にグレイズの装甲が一撃で吹き飛ぶ。

 衝撃に姿勢が崩れた瞬間を狙い、左手にメイスを握り急接近。敵機はガードする暇もなく、コクピット部分に鉄塊が叩き込まれた。

 昭宏は遠目からその様子を眺めていると思わず言葉が溢れる。

 

「スゲェな、あいつ……俺も負けてられねぇ! 新しいエイハブ反応、上からか!」

 

「フフッ」

 

メインスラスターの青白い炎を線のように残しながら接近してくる機体が一機。真紅の装甲、両腕に装備したブレード、グレイズとは一線を越える機動力と運動性能。

 昭宏はトリガーを引くが、真紅のモビルスーツは縦横無尽に動き一発たりとも当たらぬままブレードの届く距離にまで接近する。

 

「コイツは!?」

 

「鉄華団の新たな力、確かめさせて貰うよ」

 

「うおおッ!」

 

 ハルバードを力任せに振り下ろす。が、二本のブレードを頭上でクロスさせ簡単に防がれてしまう。一瞬の隙、グシオンの腹部に蹴りを撃ち込まれ両機の距離が離れる。

 昭宏は衝撃に歯を食いしばり操縦桿を固く握りしめ、それでも何とか姿勢を正すと前を見た。

 

「ぐぅッ!? 強い……」

 

「私とこのグリムゲルデを並のグレイズと一緒にされては困るな」

 

「やられるかよ!」

 

 サブアームのロングレンジライフルを敵に向けトリガーを引く。が、弾が数発発射された瞬間に詰め寄られブレードで銃身を切断されてしまう。

 

「くッ!」

 

 使えなくなった武器を投げ捨てハルバードで振り払うも、グリムゲルデは軽快に動くとヒットアンドアアウェイを繰り返す。

 何度ハルバードを振るえど、どのように攻撃しても、真紅の装甲に傷が付く事はない。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、どうなってやがる!」

 

「ツインリアクターの出力とその機体の特性は見させて貰った。当たらなければどうにでもなる」

 

「舐めてんじゃねぇぞ!」

 

「悪いが今のキミでは相手にならないよ。それでも強くなって貰わねばならない。私の野望の為に」

 

 振り下ろされる刃を半身を反らすだけで避けるグリムゲルデ。そのまま展開したブレードで斬り上げ胸部装甲にダメージが通る。

 昭宏が体勢を直す暇を与えず背後に回り込み蹴り飛ばし息つく暇も与えない。

 揺れるコクピットの中で歯を食いしばる昭宏に敵は攻撃を繰り出し続ける。斬られ、蹴られ、殴られ、グシオンの装甲はボロボロになってしまう。

 

「クソッ! こんな所で終わんのかよ、俺は? 何だ?」

 

『負ける筈がねぇ……俺の力はこんなモンじゃねぇ……行くぜみんな! アイツラを……あの忌々しい--共を--』

 

 不思議な物が見えた、聞こえた、感じた。けれどもそれが何なのか昭宏には理解できないし呆然とするしかない。ただわかるのは右を見れば、左を向けばグシオンと同じガンダムフレームが複数。そして目の前には見た事もない巨大な影が。

 

「これは……くッ! 死ねるかよぉぉぉッ!」

 

 メインスラスターで加速しながらブレードを突き出して来るグリムゲルデに気合いだけで立ち向かう昭宏。

 両手でハルバードの柄を握らせ力の限り振り下ろす。それでも、寸前の所で回避されるとまたも背後に回り込まれる。

 

「ダメなのかよ……」

 

「安心したまえ、殺しはしない。それよりも本命が来たか」

 

「昭宏は下がって」

 

 大口径の弾丸がグリムゲルデに飛来する。各部のスラスターとAMBACで姿勢制御し最小限の動きで容易く避けた。見上げた先から来るのは三日月のバルバトス。

 

「三日月!? 悪い、倒せなかった」

 

「良いよ。あの赤い奴、前にも戦ったけど結構強かった。俺が何とかするから、昭宏はイサリビに戻って」

 

「すまねぇ……死ぬなよ」

 

 後退するグシオン。そして再び対峙するバルバトスとグリムゲルデ。三日月は滑腔砲の銃口を向けトリガーを引く。

 

「フフフッ、久しいな少年」

 

「お前、やっぱり俺達の敵だ!」

 

  高い機動力と運動性により弾は避けられる。三日月は続けてトリガーを引き続けるがやはり装甲にかすりもしない。

 

「どうせもう数は少ないんだ。直接潰す」

 

「ほぅ、思い切りが良いな。戦場で生き残るには必要な物だ」

 

 滑腔砲を捨てるバルバトスはメイスで接近戦を仕掛ける。対するグリムゲルデも両腕のブレードで待ち構えるが、それを邪魔する三機のモビルスーツ。

 三機編成でライフルの砲撃を浴びせながら近付いてくるのはアインの搭乗するグレイズ。

 

「見付けたぞ、白い奴! クランク二尉の仇!」

 

「他にも邪魔な奴が来たか」

 

 回避行動を取るバルバトス。グリムゲルデも砲撃を避けながらメインカメラでグレイズを捉える。

 

「チッ、目障りな。艦隊の動きが早いな」

 

 パイロットはコンソールパネルを操作しレーダーで周囲の状況を確認する。すると口元を釣り上げた。

 

「進んだ先では地球外縁軌道統制統合艦、見当たらないガエリオの機体。フフッ、中々良い作戦だ。聞こえるか少年? 今だけは手伝おう」

 

「はぁ?」

 

「仕切り直しは邪魔が消えてからだ」

 

 向かって来るグレイズにブレードを構える。そのまま加速するグリムゲルデは右舷から攻め込む。放たれる弾丸を回避、ブレードで素早く往なす。刃が届く距離にまで近づけば、後は独壇場だ。

 

「は、早い!?」

 

「何をしようと構わないが、私の邪魔だけは困る。ご退場願おう」

 

 ブレードを斬り上げライフルを切断。後退しながらライフルを投げ捨てバトルアックスに持ち替えるが、グリムゲルデは相手に攻撃する暇さえ与えない。

 鋭い刃と機体の柔軟性を合わせて振り落とされるブレードは装甲ごとグレイズの右腕を斬り落とした。

 

「コイツ、どんな性能をしている!?」

 

「消えて貰う!」

 

 右腕を振り払い首元を斬り頭部が胴体から離れる。メインカメラが機能しなくなりパイロットの反応が遅れてしまう。瞬間、左腕のブレードの切っ先がコクピットを貫き背部にまで到達した。

 動かなくなったグレイズを脚部で蹴り飛ばしブレードから引き抜く。

 

「他愛もない。残りの二機はどうなっている?」

 

 振り向けば少し離れた領域でバルバトスがメイスを振り回し敵機と応戦している。

 大きく振り下ろされるバトルアックスが白い装甲に触れる寸前でマニピュレーターで腕を掴む。

 

「止めただと!? どんなパワーをしている!」

 

「はぁッ!」

 

 バルバトスは相手の股関節部分に全力で右膝を叩き込む。激しい衝撃にフレームが歪むと同時にコクピットが激しく揺れる。機体はそのまま後方へ流されようとするが、マニピュレーターで腕を掴んだままのバルバトス。

 腕のフレームが悲鳴を上げながら強引に引き戻される機体。

 三日月は操縦桿を引きマニピュレーターを手放し、両手でメイスの柄を掴むと一回転して振り払った。腹部の装甲が叩き割られ、グレイズは為す術もなく闇の中へ飛ばされて行く。

 

「残りは……」

 

「白い奴! クランク二尉の仇!」

 

 アインが搭乗するグレイズがバトルアックスを片手に攻めて来た。反応する三日月はメイスでこれを受け止める。

 

「どうしてクランク二尉を殺した!」

 

「何言ってんだ、お前?」

 

「クランク二尉は貴様らに手を差し伸べようとした! 助けようとした! それを冷たく暗い鉄の部屋で圧し殺した! お前のような無慈悲で--」

 

「あぁ、うるさい!」

 

 押し返すバルバトス。機体性能の面から見ても戦力差は歴然だ。

 

「ぐぅッ!? お前だけは俺の手で倒す! クランク二尉の無念は晴らしてみせる!」

 

「いつまでもゴチャゴチャと」

 

 苛立ちを募らせる三日月は敵に目掛けてメイスを振り下ろす。操縦桿を素早く操作するアインは何とか攻撃を避けると右足でペダルを踏み込み機体を加速させる。狙うのは武器を握るマニピュレーター。

 バトルアックスを振り降りし刃をぶつけると、バルバトスの手から唯一の武器であるメイスが手放される。

 それでも機体にダメージは通っていない。

 

「これなら! 白い奴、お前は--」

 

「邪魔……」

 

 冷静に操縦桿を押し込む三日月はバルバトスの左手でグレイズの頭部を殴り付ける。揺れるコクピットでアインは歯を食いしばった。

 三日月はそのまま殴るのを止めない。次はフルパワーで右手を振るう。頭部を殴り、右脚部で脇腹を蹴る。

 

「ぐぅッ!? 姿勢制御、この程度で!」

 

 向き直るグレイズ、しかしバルバトスの動きは阿頼耶識システムと合わさりアインよりも早い。更にマニピュレーターを頭部に叩き付けメインカメラがスパークする。そして腕を引っ掴むと漂う隕石目掛けて投げ飛ばした。

 アインはペダルを踏み込みメインスラスターを全開にするが、間に合わずに背部から巨大な岩にぶつかってしまう。

 

「お前……楽しんでいるだろ? こうやってクランク二尉も殺したのか? なぶり殺し、自身の快楽の為に!」

 

「はぁ? 何言ってんの?」

 

「貴様のような人間に……いいや、人間以下だ! 血も涙もない悪魔--」

 

 どれだけ叫ぼうともアインの言葉が三日月に届く事はない。メイスを拾うバルバトスは加速すると鉄塊の先端を胴体に突き刺した。有り余るパワーで背面の隕石にヒビが入る。

 

「お前の話なんか聞いてる暇ないんだ。俺は--」

 

 そして三日月も見る。阿頼耶識システムを通じて、未知の物を感じ取った。

 

『グレモリーはこれ以上戦えない。後は俺がやる』

 

「これは……」

 

『討ち取ったぁぁぁッ!』

 

 三日月は初めて見る光景。少なくとも火星ではない。空はなく、周囲には無数の残骸が横たわる。

 目の前に立つのは巨大な影、それと戦うのは自身が搭乗する機体と同じ。

 

「バルバトス?」

 

「邪魔者は居なくなった。再開といこうじゃないか、鉄華団の少年」

 

 瞬きをする三日月は操縦桿を握り直し振り向いた。ブレードを構えるグリムゲルデが加速して接近して来る。

 

「あの赤い奴……」

 

 メイスを握るバルバトスも加速し敵機へ向かう。そして振り下ろす右腕、先制攻撃を仕掛ける。

 一方のグリムゲルデも左腕のブレードで受け流すと瞬時に背後へ回り込むと同時にもう片方の腕で横一線。

 

「ッ!」

 

 反応する三日月はメイスで攻撃を受け止めた。メインスラスターで加速し更に接近を試みる三日月はアインと戦った時と同様に肉弾戦を仕掛けようとする。が、相手は動きを読んでいる。

 

「確かにその武器でグリムゲルデを捉えることは難しいだろう。運動性能に特化した機体だからね。だが素直にやられる訳にはいかないな」

 

「追い付けないのか?」

 

「さぁ、私をもっと楽しませろ!」

 

 後退する事で肉弾戦の距離から離れるグリムゲルデ。ブレードを構え再び詰め寄ろうとするが、遠方から小型機が接近して来た。

 二機の小型機はグリムゲルデに狙いを定めると重力を制御するトラクタービームを発射する。

 

「これは……」

 

 身を捩るようにしてトラクタービームを避けるグリムゲルデ。だが逃げようとも小型機はどこまでも追い掛け攻撃を続けてくる。

 そして長距離から正確なビーム射撃が飛来した。

 強力なビームは左脚部をかすめるが、ナノラミネートの装甲にダメージはない。

 

「二本角か? このようなトリッキーなことまでできるとは。面白い」

 

 ビーム音を轟かせながら第二射が向って来る。

 三日月はその様子を見ながら攻撃を仕掛けるタイミングを伺っていたが、イサリビから通信が繋がる。モニターにはオペレーターのフミタンの顔が小さく映し出された。

 

『バルバトス、一度帰艦を』

 

「戻るの?」

 

『敵の作戦に引っ掛かりました。イサリビの前方にもギャラルホルンの艦隊が。機体の補給を済ませ次第、強行突破を試みます。団長より指示です』

 

「そう、オルガの命令なんだ。わかった」

 

『帰艦するまでGセルフの援護は続けますので』

 

「別に要らないけど」

 

 言うと三日月はグリムゲルデに背を向け、ペダルを踏み込みメインスラスターから青白い炎を噴射してこの領域から離れて行く。

 離れて行くバルバトスに相手はこれ以上の追跡はせず、正確な狙撃を避けながらもコクピットの中では口元を釣り上げていた。

 

「今日はここまでだな。収獲は少なかったがな。いや……」

 

 メインカメラが捉えるのは戦闘不能になり力なく漂うアインのグレイズ。グリムゲルデはブレードで鋭い一閃を繰り出し両脚部を切断。両腕を振り下ろすと両肩の根本から斬る。

 マニピュレーターでひしゃげた頭部を掴むと同様にこの場から去って行く。

 一方、イサリビの甲板からビームライフルによる狙撃を行っていたベルリは口から大きく息を吐きシートに体を預けた。

 

「三日月さんは離脱できた。トラックフィンを戻さないと。でも前方にはまだギャラルホルンの艦隊が居るんだから」

 

『Gセルフのベルリ・ゼナム、聞こえますね? 先行してモビルスーツ隊の相手をお願いします。グシオンの補給もすぐに終わります』

 

「わかりました。Gセルフ、出ますよ」

 

 甲板を蹴るGセルフはバックパックを左右に広げフォトンリングを発生させると瞬時に飛び立った。

 何事もないように通信でフミタンに返事をしたベルリではあったが、彼はいよいよ直面する事になる。薄々おかしい事には気が付いていた。けれどもそれを見ないように、知らないように、短い時間ではあるが鉄華団と行動を共にする事で気を反らしていたが、行く先で確実なる物を見る事になる。

 待ち構えるギャラルホルンの艦隊、その奥では青い惑星、青く光る水の星が。しかしそれだけ。

 どこをどう見ても地球があるだけだ。

 逆噴射で機体にブレーキを掛け立ち止まるGセルフ。コクピットの中で地球を見るベルリは呆然とするしかできなかった。

 

「あ……あぁぁ……こんなことを受け入れろって言うの!? だって僕はキャピタルガードなんですよ? それを……」

 

 操縦桿を手放し呆然を眺める事しかできないベルリ。しかし動きを止めたGセルフに敵は容赦なく襲い掛かって来る。メインスラスターで加速するグレイズの部隊がライフルの銃口を向けながら接近して来るが、グシオンの昭宏からの通信が寸前の所でベルリの意識を呼び戻す。

 

「何やってんだベルリ、動け!」

 

「ッ!? 狙われていた!」

 

 瞬時にビームライフルの銃口を向けトリガーを引くGセルフは再び動き始める。発射されるビームは正確にグレイズの右膝、装甲で覆われていない関節部を撃ち抜くと爆発して動けなくなった。

 

「ナノラミネートの相手にも慣れて来てるだなんてぇぇぇ!」

 

 頭部バルカンを撃ちながら加速するGセルフ。正面のグレイズの頭部に連射される弾丸が直撃するとメインカメラを破壊、パイロットが対応するよりも早くに首元からビームサーベルを引き抜き肉薄した。

 右腕を振り上げれば針のように細いビームが敵機の右腕を根本から一瞬で切断する。

 

「これで帰って下さい! 次も来る!」

 

「ベルリ、補給は終わった。グシオンで援護を--」

 

「昭宏さんはシャトルの護衛でしょ! ここを突破したら周回軌道に突入するんだから……モビルスーツは僕が何とかして見せます!」

 

「でもよ!? ハンマーヘッドからも援護の機体?」

 

「先行して艦隊も抑えます! 昭宏さんは、三日月さんと一緒に降下体勢に入って下さい」

 

「待て、ベルリ!」

 

 昭宏の叫びも虚しく、ベルリは単独でイサリビから離れて先行して行く。Gセルフの加速にグシオンで追い付く事はできず、援護にと合流したタービンズのモビルスーツもその様子を見ているしかできない。

 

「あの二本角、本気かい?」

 

「昭宏、何行かせてんのよ!」

 

 タービンズのモビルスーツパイロットであるアジーとラフタは機体のマニピュレーターをグシオンに触れさせると愚痴を溢す。

 しどろもどろになる昭宏は話題を反らすだけで精一杯だ。

 

「だ、だって……ってかその機体、タービンズの新型か?」

 

「違う違う、装甲を入れ替えただけ。漏洩って呼んで。アンタらだけじゃ不安だからさ、私らも付いて行ってあげるの。勿論、お代は貰うけどね。本当はダーリンと一緒に居たいけど、外貨導入だって」

 

「アタシとラフタはモビルスーツ戦に慣れてる。そのガンダムフレームがどれだけの性能かは知らないけど、物にできる前に死んだら意味がないだろ? それに名瀬は鉄華団と契約を結んだんだ。地球に降りるまではキッチリ面倒見るよ」

 

 深い紺色の装甲。マッシブな外見はそのままに、重力下での戦闘もできるようにセッティングが施されている。

 二人はレーダーで状況を確認し、ベルリが向って行った先を見据えた。

 

「さて、どうするラフタ? 艦隊の数は六、モビルスーツはどれだけ居るかな? 普通に考えたらアタシらだけじゃ無理だよ」

 

「二本角も充分普通じゃないけどね。行くしかないでしょ。回収したらさっさと逃げて降下シークエンスに入る」

 

「だね。昭宏、グシオンは後方で援護。地球の重力に引かれたら助けてあげられないよ」

 

「わ、わかった」

 

ベルリの救援に向かおうとする三機だが、後方から一機のモビルスーツが高速で通り過ぎて行く。白い装甲を纏うそれは三日月のバルバトス。

 

「昭宏達はイサリビに戻って。ベルリは俺が連れて行く」

 

「お前まで!? それにバルバトスは補給してねぇだろ?」

 

「何とかなるよ。危なくなっったら逃げるくらいできる。頼んだよ」

 

「お、おい!」

 

 言う事も聞かず三日月もまた先行して行ってしまう。

 

///

 

 地球周回軌道近くで艦隊を配備して待ち構えるのはカルタ・イシューが指揮を取る地球外縁軌道統制統合艦隊。

 カルタはハーフビーク級宇宙戦艦のブリッジでシートに背を預けながら戦況を見ていた。

 

「単独で動くあの機体……ガエリオから送られたデータにあった機体」

 

「どうやらビーム兵器を使用するモビルスーツのようです。ですが資料によれば、ビーム兵器はナノラミネートアーマーの普及と性能向上により三〇〇年以上前に衰退したと記載されてます」

 

「その衰退した機体にどうして六機もやられてるの?」

 

「それは……」

 

 彼女の傍に立つ部下は返答する事ができず視線を反らしてしまう。たった一機のモビルスーツに翻弄されている事に苛立ちを覚えるカルタはシートから立ち上がり、右手を掲げると檄を飛ばす。

 

「残りのモビルスーツを順次出撃させなさい。我ら地球外縁軌道統制統合艦隊の名に掛けて、あの二本角のモビルスーツは何としても破壊する!」

 

「しかしカルタ様、敵戦艦はどのように?」

 

「艦隊による飽和攻撃。数も戦力もこちらの方が多いのよ? それにもし逃げられたとしても行く先は地球。ガエリオの作戦に乗るのは癪だけど、私も地球に降ります。これ以上、羽蟲同然の輩にウロウロされるのは目障りなのよ」

 

「了解です」

 

 戦艦の主砲が砲身の向きを変えると前進するイサリビを狙う。

 

「全艦、砲撃開始!」

 

 大口径の砲弾が無数に飛来する。いくらGセルフでも艦隊の砲撃からイサリビを守り切る事はできない。

 それでもベルリは操縦桿を匠に動かすと、バックパックから青白い炎を噴射しながら進み続ける。

 ソレに対してグレイズのモビルスーツ部隊もライフルやミサイルによる砲撃を撃ち込むが、左腕のシールドから展開されるコピペシールドを前に一切の攻撃が通らない。

 確実に近付いて来るGセルフの存在にカルタは額に汗を滲ませる。

 

「モビルスーツ隊は何をやってるの? 早くあの二本角を仕留めなさい!」

 

「グレイズ、三機が戦闘不能。帰艦します」

 

「ぐぅッ!? だったら母艦を、あの赤い艦に攻撃を集中なさい! 艦が失くなればこれ以上は攻めて来ない!」

 

「やってますが捉えられません」

 

「何をやってるの!」

 

「新たなエイハブ反応、報告にあったガンダムフレームです。二本角の援護に来たようです」

 

「そんなことはわかってる! 兎に角……潰しなさい。潰せ、潰せ潰せ潰せぇぇぇッ!」

 

 癇癪を起こすカルタの言葉は指揮と呼べる物ではなく、ブリッジでは部下が懸命に対応するしかなかった。

 三日月のバルバトスは回避を優先しながら縦横無尽に動き回りながらベルリのGセルフに接近する。カメラで捉えた時にはグレイズを一機行動不能にしていた。

 

「トラクタービーム! こっちに引き寄せられる!」

 

「機体の制御が効かない!? 俺の知らない武装なのか?」

 

 動けない機体にライフルの銃口を向ければ素早く二連射。右肘と左脚部を撃ち抜けばグレイズはダルマのようにまともに動けない。

 三日月はその戦い方に違和感を覚えるも、接近すると装甲を接触させた。

 

「ベルリ、こっからどうする? モビルスーツはなんとかできるけど、艦は面倒だ」

 

「わかってます。ナノラミネートアーマーはビームを寄せ付けないけど、ブリッジを制圧すれば--」

 

「イラついてるのか?」

 

「イラつきを感じてる? 僕が!? ッ……そうかも知れません」

 

 ヘルメットを脱ぐベルリは大きく息を吸い込む。三日月に言われて少しだけ冷静になるとコンソールパネルを叩きパーフェクトパックの武装を選択する。この状況を必要最小限の労力で切り抜ける為に。

 

「三日月さん、フォトンサーチャーを使います」

 

「良くわかんないけど頼むよ」

 

「本来の用途とは違うけれど、目眩ましにはなります。イサリビ、聞こえますか?」

 

 後方のイサリビに通信を繋げるベルリ。応答するフミタンはいつものように冷静沈着だ。

 

『こちらイサリビ。Gセルフ、単独で先行しすぎです』

 

「すみません。でもこの位置からならフォトンサーチャーが使えます。一八〇秒だけ敵の視界を遮ります。その間に突破して下さい」

 

『一八〇秒ですね? 了解しました。ユージンさん、お願いします』

 

 通信が切れるとイサリビとハンマーヘッドは加速し、それを確認してベルリもGセルフの両腕を掲げた。

 

「いきますよ? フォトンサーチャー!」

 

 バックパックから真っ黒な砂のようなセンサー粒子を放出するGセルフ。粒子は瞬く間に広がり、敵艦隊の前方を闇で覆い尽くす。

 

「行きましょう三日月さん。イサリビに合流してそのまま大気圏に降下です」

 

「わかった。地球か……」

 

 振り返る三日月は火星の方角を見るが、爆撃と星々の輝きが見えるだけで火星はもう影も形も見えない。




 私の名前はカルタ・イシュー。地球外縁軌道統制統合艦隊の司令官よ。
 ガエリオが何を手こずってるのかは知らないけれど、あの鉄華団とか言う羽蟲は私が必ず潰してみせる。決戦の舞台は地球よ!
 次回、鉄血のレコンギスタ--鉄華団地球へ--
 私の華麗なる戦いを見てなさい!
 
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