ガンダム 鉄血のレコンギスタ   作:K-15

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第十三話 シベリアの地

 列車が進み始めて二日が経過した。地球に降りて来たばかりの時に見えた海はもう見えなくなり、降雪地帯のシベリアにまで来ると周囲は雪景色一辺倒。

 揺れる食堂の中でオルガとビスケットは遅めの昼食を食べている所。

 

「ねぇ……オルガ……」

 

「あん? どうしたビスケット? 暗い顔してよ」

 

「うん……」

 

 スプーンをテーブルに置くビスケットはうつむきながらうなずく。なかなか口を開こうとしない彼にオルガも飲んでいたスープの器をテーブルに戻し、姿勢を傾けビスケットの表情を伺う。

 チラチラと視線を向けるビスケットは様子を見ながら重たい口を開いた。

 

「この仕事が終わったら火星に帰れるんだよね?」

 

「何だ、その話か。前にも話したじゃねぇか。報酬を貰わねぇと地球まで来た意味がねぇ」

 

「だったらもう良いんじゃないかな? クーデリアさんから受けた最初の依頼は地球まで送り届けること。それはもう終わったんだから、わざわざこんな危ない所に居なくても」

 

「でもお前だって聞いただろ。お嬢さんと一緒に蒔苗ってジジイをアーブラウまで送り届ければ報酬は二倍だ。こっから火星に帰るだけでも今の俺達にはギャラルホルンに狙われるリスクがある。だったら上がりのデカイ方が良い。そうだろ?」

 

 言われてビスケットはテーブルの下で爪が皮に食い込むくらい力強く拳を握る。静まり返る食堂の中で生唾を飲む音が聞こえた。

 

「帰ろう……」

 

「あ? 何でだよ?」

 

「元の報酬だけ貰って火星に帰ろう。タービンズにも払わなくちゃいけないお金があるからそう多くはないけれど、もうTGSだった頃とは違うんだ。もっと危なくない、堅実な仕事を火星でやろう」

 

「今はまだ駄目だ。このまま火星に戻っても鉄華団は弱小だ。鉄華団の名前をもっとでっかくしてからじゃねぇと、ちょっとは使えるガキ程度にしか思われない。そうなりゃ前と同じで良いように使われるだけだ。その為にはクーデリアのお嬢さんの仕事を飲むのは絶交のチャンスだ。お嬢さんの名前と一緒に俺達鉄華団の名前も広がる。そしていつかのし上がる。テイワズからも、蒔苗ってジジイからも――」

 

「もう良いッ!」

 

 突如立ち上がるビスケットは勢いで椅子をひっくり返し、声を張り上げオルガの言葉を遮った。突然の事にオルガは息を呑む。

 

「もう良いじゃないか。もう誰も死なず、傷付かず、安全な仕事をしていれば。みんなのことももっと考えてよ」

 

「俺が何も考えてねぇって言うのか?」

 

「そうじゃない。でもわざわざ危険な道に行く必要なんて――」

 

 感情を爆発させるビスケットだが突如として列車にブレーキが掛かり体が揺れる。テーブルで何とか体を支える二人。すると全車両にマイクでフミタンの声が響く。

 

『敵襲です。団長、至急先頭車両まで』

 

「ギャラルホルンか!? ビスケット、話は後だ。今はアイツラをどうにかすることだけを考えろ。こんな所で止まれねぇ……進むんだ!」

 

「オルガ……」

 

 言うとオルガは食堂から飛び出して行った。ビスケットも一旦はうつむき床を見るが、急いでその場から動き出す。

 通路を走るオルガ。先頭車両にまで到着し扉を開ける。そこで待つのは通信機を握るフミタンと双眼鏡で窓の外を見るメリビット。

 

「敵だな? 数は?」

 

「確認できるだけで正面に五機。どうするつもりです団長? ラフタさんやアジーさんにも出撃して貰いますか?」

 

「タービンズからのお目付け役のアンタからしたら二人を出した方が金になるってか」

 

「それだけではありません。増援が来る可能性だって充分にあるんです」

 

「わかってるよ。モビルスーツは全機発進させる。兎に角、目の前の奴らをどうにかしねぇと進めねぇ」

 

 頷くメリビットはフミタンに手を差し出し通信機を受け取り、貨物車両でモビルスーツと一緒に待機しているラフタとアジーに指示を送る。

 減速しながらもゆっくりと進み続ける車両の正面から見えるグレイズの姿が時間と共に近づく。

 片目を閉じ、舌打ちするオルガ。

 

「こんな所で……」

 

 行く手を阻まれた以上は戦うしかない。火星とは違う地球の重力下での戦闘に一抹の不安を感じるオルガであったが、相手は何故かまだ攻めてこなかった。それどころか列車のレールを破壊する事もしない。

 疑問を抱いていると中央に立つグレイズのコクピットハッチが開放され中からパイロットが出てきた。

 パイロットスーツを装備し肩まで伸びる白髪が凍て付く風で揺れる。カルタはコクピットの通信機を外部音声に切り替え列車に乗るオルガ達に目掛けて呼び掛け、オルガもそれを鋭い視線で睨みながら聞く。

 

『私は地球外縁軌道統制統合艦隊司令のカルタ・イシュー。火星の不穏分子……本来なら問答無用で排除する所だけど一度だけチャンスを上げる。鉄華団とか言ったわね? 代表者が降伏に応じると言うのなら我々はこの場から手を引こう。さぁ、どうする? あまり気長にも待てないわ、十分で返事がなければ全力を持って排除する』

 

「チッ! また面倒臭い女だな。けど列車の線路上に待ち構えられたんじゃ止まるしか――」」

 

『進むんだ、オルガ』

 

「この声は……ミカ!?」

 

 線路の先で待ち構えるカルタと四人の親衛隊。列車の貨物車両で立ち上がる三日月のバルバトスはタービンズから支給された新兵器の対艦ランスメイスをマニピュレーターで握り、立ちふさがるグレイズの一機に狙いを定めた。

 ターゲットは指揮官であるカルタのグレイズ。

 

「こんな奴のせいでオルガの邪魔はさせない」

 

 モビルスーツの全長ほどの長さを持つ対艦ランスメイス。それを片手で振り上げツインリアクターのハイパワーでぶん投げる。

 瞬時に最高速に到達する対艦ランスメイスは空気の壁を突き抜け切っ先がコクピット目掛けて迫った。

 突然の行動にカルタは目を丸くして息を飲むしかできない。

 

「なッ!? なに――」

 

「カルタ様! にげ――」

 

 隣に立っていた親衛隊のグレイズが盾となりカルタの前に出る。鋭い切っ先はコクピットに直撃し、内蔵された火薬が爆発しパイルバンカーとして射出された。

 パイロット諸共に装甲は容易に貫かれグレイズは背中から倒れる。

 

「あと四機……」

 

 三日月は対艦ランスメイスをもう一本握りメインスラスターを全開にして飛び出した。三日月が狙うは一点、指揮官であるカルタのみ。一直線に突き進むバルバトスはグレイズを射程圏内に収めると切っ先を突き出す。

 呆気に取られるカルタは動きが遅く、コクピットのシートに座れどもハッチも閉じれていない。

 

「こ……こんなことがあってたまりますか……アタシはイシュー家の跡取りなのよ。このような屈辱――」

 

「カルタ様、退避を! はや――」

 

 横から割って入る別のグレイズが両腕を盾にしてバルバトスの攻撃を防ぐ。切っ先は装甲を貫きフレームにまで到達する。が、トリガーを引く三日月はパイルバンカーを発射した。強烈な爆薬の衝撃で左腕が吹き飛び、バンカーが再びパイロットと一緒にコクピットを破壊する。

 一瞬に間に二機のグレイズが撃破されカルタ機の左右に横たわり動かなくなった。

 

「ア、アタシの可愛い部下が……ゆるさない……絶対に許すものか!」

 

「あぁ、そう。邪魔……」

 

 背部からメイスを取るバルバトスはフルパワーで振り下ろす。

 殺意しかない無慈悲な攻撃にカルタはハッチを閉鎖しメインスラスターから炎を噴射し後方へ回避。

 叩き付けられた鉄塊、地面を砕き雪の塊を大量に撒き散らす。

 

「チッ……外した」

 

「お前達、防御の陣を取れ! 相手は一機よ。不穏分子に、ましてや不意打ちを仕掛けるような相手に手加減は無用。全力で排除なさい!」

 

 両刃の西洋剣のフォルムをしたバトルブレードを構える三機のグレイズはバルバトスを待ち構える。メイスを担ぎ接近して来るバルバトス。しかし来たのはそれだけではない。

 貨物列車から続々と出撃するモビルスーツ。ラフタの漏洩はバズーカを装備して左側のグレイズを一撃で吹き飛ばし、昭弘のグシオンは両腕に滑空砲を構え右側のグレイズ目がけて撃ちまくる。

 銃口から発射される大口径の弾丸が腕や頭部を撃ち抜いていく。その様子を見てラフタは活気ずく。

 

「やるじゃん昭弘!」

 

「いや、このグシオンと阿頼耶識のおかげだ。初めての地球だってのに……すげぇな」

 

「ん……やっぱ阿頼耶識ってずっこい!」

 

「ずるいって言ってもよ……」

 

 残るはカルタのグレイズのみ。バルバトスが肉薄してメイスを振り回している為に援護はできないが、それでも力の差は歴然としており決着が付こうとしていた。

 グレイズはバトルブレードで袈裟切りするが、バルバトスはメイスを大きく横へ薙ぎ払うとマニピュレーターごと相手の武器を明後日の方向へ飛ばす。

 

「ぐぅッ!? 大切にしている部下を四人もやられ、相手に傷一つ付けられずにこのアタシが負けるだなんて……そんなことはあってはならない!」

 

「うるさい奴だな」

 

「戦いの作法も知らぬ不穏分子にアタシは負けない!」

 

 もう片方の手で腰部にマウントさせてあるバトルアックスを握ろうとするが、三日月がそれを許す筈もなくメイスの先端で胸部装甲を突く。分厚い装甲がへこみ、慣性で後ろに流されるグレイズ。

 カルタは懸命にペダルでスラスターを駆使し姿勢制御を試みる。

 

「アタシはこんな所で終わる人間じゃない! イシュー家としての誇り! そしてマクギリスの――」

 

 真っ白な雪の地面に足跡を残しながらどうにか止まるグレイズ。しかし目の前にはメイスを振り下ろすバルバトス。左肩に鉄塊がぶつかり、更に左膝の関節を脚部で蹴られダメ押しに頭部を突かれる。

 連続してコクピットに衝撃が襲い歯を食いしばる事しかできぬカルタ。グレイズはそのまま背中から仰向けに倒れ込んでしまう。

 

「これで終わりだ……」

 

「たす……けて……マクギリス……嫌よ……いやぁぁぁあぁぁぁッ!」

 

 瞳から涙を流し悲鳴を上げるカルタは操縦桿から両手を離して前方を防ぐ。

 一切の容赦がない三日月は倒れたまま動かないグレイズのコクピット目掛けてフルパワーでメイスを振り下ろす。

 が、甲高い金属音が響くと攻撃は途中で止められてしまう。

 目の前に居るには見た事のないモビルスーツ。

 

「コイツは?」

 

「ようやくこの前の借りを返す時が来た! カルタ、生きているな?」

 

 現れたのは白と紫を基調とした鎧騎士を思わせるモビルスーツ。四本の脚部、大型リアスカートとフロント脚部によるホバークラフトが地上での機動性を飛躍的に上昇させている。

 左腕にシールド、右手には大型ランスを握り三日月のバルバトスと対峙するのはガエリオ。

 

「ガエリオ!? な、何をしに来たのよぉ!」

 

「声が震えているぞ。下がってろカルタ、コイツの相手をするのは俺の役目だ」

 

 大型ランスでメイスを押し返す。雪上に立つガエリオの機体はフロント脚部を折り畳み二足歩行に変形し切っ先をバルバトスに向ける。

 その間にカルタのグレイズはこの場をガエリオに任せて後退して行く。

 

「久しぶりだな、今回は以前のようにはいかんぞ。ガンダムフレームなのは貴様だけではない。家の蔵から引っ張り出して来たこの機体、ガンダムキマリストルーパーでな!」

 

「どんな機体でも関係ない。オルガの邪魔になるなら倒すだけだ」

 

「不穏分子共め、ここで駆逐してやる!」

 

 キマリストルーパーが現れるのと同時に三日月達の前方からは続々と敵の増援がやって来る。無数のグレイズの大部隊。どれだけ三日月が強くとも大部隊を相手にはどうにもできないし、ガエリオも後続部隊へ手出しさせるつもりはない。

 

「昭宏、他の奴は任せて良い? コイツは俺がやる」

 

「ガンダムフレームとツインリアクターのパワー、今度は貴様が味わえ!」

 

「行くぞ、バルバトス!」

 

 互いに握る武器を振り下ろしぶつけ合う。甲高い金属音が響き渡り火花が飛び散る。並のモビルスーツならばバルバトスの攻撃にねじ伏せられるが、相手も同じガンダムフレーム。

 ガエリオのキマリスは大型ランスを自在に操りながらバルバトスを攻め立てる。斬り付け、振り払い、突き刺す。

 

「どうした? 所詮はその程度の実力か? ならば雪辱を果たさせて貰う!」

 

「くッ! 鬱陶しい奴!」

 

 メイスで攻撃を防ぎながらもキマリスの手数が多い。切っ先が左肩の装甲に当たり一撃で破壊してしまう。幸いにもフレームにダメージは通っていない。が、ガエリオの猛攻は止まる事はない。

 

「カルタに屈辱を味合わせた仇もある! 不穏分子はここで滅ぼす!」

 

「こんな所で終わる訳にはいかない……俺達は前に進むんだ!」

 

 地面を蹴り飛び上がるキマリス、メインスラスターの加速と重力も合わせて大型ランスをバルバトスの頭上から振り下ろす。

 一方のバルバトスもメイスをフルパワーで振り上げ、迫る大型ランスにぶつけた。

 強烈な衝撃に空気が震え、バルバトスが踏ん張る両脚部の地面にはヒビ割れが走る。

 

「はぁぁぁッ!」

 

「こいつ!? ぐぅッ!」

 

 三日月はメインスラスターを全開にして飛び上がり大型ランスを退け、キマリスに肉薄し股関節部に膝を叩き込む。大きく揺れるキマリスのコクピット。

 バルバトスは続けて空いたマニピュレーターで頭部を殴り付けるとキマリスが姿勢を崩し、更に胸部装甲を蹴り飛ばした。

 歯を食いしばるガエリオ、機体はそのまま背部から地面に叩き付けられるがスラスター制御で瞬時に立て直す。

 

「同じガンダムフレームなんだぞ? この俺が押されている? そんなことがある筈ないだろ!」

 

「バルバトス、お前の力を見せろ……」

 

 目の前の敵に冷酷な殺意を向ける三日月。けれども三日月が見るのはそれだけではない。阿頼耶識システムを通して見る三〇〇年前のバルバトスの記憶。

 

///

 

「もう動ける機体も限られて来た。どうする? アグニカだけに頼りっぱなしって訳にはいかねぇぞ」

 

「わかってる。だがお前にあるのか? 悪魔に魂を売る覚悟が?」

 

 二人の男は薄暗い格納庫の中でモビルスーツを見上げていた。そこに立つのは二機のガンダムフレーム。

 白い装甲を身に纏うのはガンダムバルバトス。隣に立つ白と紫を基調とした機体はガンダムキマリス。

 

「正直なことを言うと怖くて手が震える。だからアグニカのことは凄いって尊敬できる。モビルアーマーの侵攻は激しくなってるから、このままアグニカに頼ってるだけじゃ負けるってのはわかってる。でもよ……」

 

「俺はやるよ」

 

「やるって……」

 

「バルバトスのリミッターを解除させる。コイツに俺の魂をやる」

 

「本気……なのか!?」

 

「このままじゃ負ける。そんなんじゃ今までに死んでいった奴らはどうなる? 他の仲間や家族も守らなきゃならない。だったらやるしかねぇだろ」

 

 話していると遠くの方から爆発の音が聞こえて来た。咄嗟に振り向く二人。

 

「行くぞクレイグ。モビルアーマーを倒し尽くすまで戦いは終わらない。その為だったら俺は何だってやってやる」

 

「アラン……わかった。俺もやるよ、このキマリスで」

 

///

 

 バルバトスの動きが早くなる。最初こそ一方的に攻めていたガエリオだったが、今や油断を許さぬ状況だ。

 振り下ろされるメイスをバックステップで避けるが、次の時には大型ランスとメイスとで鍔迫り合いになる。

 

「何だコイツのスピードは!? いや、反応速度か?」

 

「わかる……こいつの使い方が……」

 

「性能は互角の筈だ! 俺の力はこんな物ではない!」

 

 バルバトスを押し返すキマリスはバク宙しリアスカートに格納されたナパームを発射する。装甲に接触すると同時に巨大な爆発が起こり炎がバルバトスの全身を飲み込む。

 だがこの程度で倒せる相手ではない。着地するキマリスは大型ランスの側面に内蔵された機銃を向けトリガーを引く。無数の弾丸が燃え盛る炎の中に飲み込まれていくが、まるで手応えがない。

 そうしている間にバルバトスが加速して炎の中から飛び出して来た。

 

「どうして勝てない! 沈めよッ!」

 

「今なら殺しきれる……」

 

 再びフロント脚部を展開しホバーで加速するキマリスは大型ランスを突き出し、バルバトスもこれを正面から迎え撃ちメイスの先端を突き出した。

 ぶつかり合う両者の武器。だがメイスからはパイルバンカーが打ち出され大型ランスを破壊していく。

 ガエリオは使えなくなった武器を投げ捨て、バルバトスに背を向けると一度この場から離脱した。

 

「アイツの動き……どうなっている? 俺一人では勝てないのか……」

 

「逃がすかッ!」

 

『待て、ミカ!』

 

 追い掛けようとする三日月だがオルガから通信が繋がり足を止める。

 

『敵の数が多い。一人で前に出過ぎるな。それにここを切り抜ける作戦ならある。一度戻って昭宏達と足並みを揃えろ』

 

「うん、わかった」

 

 メイスを担いでバルバトスも離脱する。鉄華団とギャラルホルンとの戦いはまだ始まったばかり。

 

///

 

 オルガは通信機を片手に指示を飛ばす。このままギャラルホルンとの戦闘が長引けば勝ち目が薄くなってしまう。

 しかし敵の数は膨大だ。確認できるだけで二十機相当。

 

「アイツラ……本気で俺達を潰す気だな。ベルリ、聞こえてるな?」

 

『はい、Gセルフで出ますよ?』

 

「頼んだぞ。空を飛べるお前の機体なら行ける筈だ」

 

 オルガの指示に従いベルリもGセルフで出撃する。バックパックから青白い炎を噴射して空に飛び立つGセルフは列車の傍で防衛を続ける昭宏やラフタの頭上を悠々と飛び越えて行く。

 

「ベルリが出たのか!? これで少しは楽になる」

 

「昭宏は阿頼耶識があるし、ベルリは空を飛ぶなんて! やっぱずっこい~!」

 

 フォトンリングを発生させて更に加速するGセルフ。ベルリは上空からビームライフルの銃口を向け狙いを定める。

 

「悪いけど! 今はやり方を選べる程、僕も冷静ではいられないから!」

 

 トリガーを引き高出力のビームを発射。一直線に進むビームはモビルスーツが装備する武器だけを破壊し爆発の炎が上がる。

 連続してトリガーを引くベルリ。続けて発射されるビームが上空から迫りグレイズ部隊は回避行動に移る。

 

「空からも敵が!?」

 

「各機散開! 第五から第七部隊は上空の機体を狙え」

 

 動き出したグレイズ。そうなればGセルフの性能とベルリの技術を持ってしても撃破は難しい。ビームは装甲に直撃し、ナノラミネートアーマーが弾き飛ばしたビームが分散して雪上に当たる。大量の雪煙と水蒸気で瞬く間に視界が効かなくなってしまう。

 

「しまった!? 見えないと撃てないじゃないか! え……何なの?」

 

 Gセルフの更に上空、宇宙から降りて来る真紅の機体。両腕にブレードを装備するその機体はヴァルキュリアフレームのグリムゲルデ。

 

「久方ぶりだな、二本角の機体」

 

「あの機体は!?」

 

「君には大人しくして貰う。この場を安々と抜けられては私の計画が狂うのでね」

 

 加速するグリムゲルデ。ベルリは振り返りビームライフルの銃口を向けたが、トリガーを引くよりも早くにグリムゲルデが組み付いて来た。

 

「ぐぅッ! このぉ!」

 

 頭部からバルカンを放つが数発当たるだけでダメージにはならない。グリムゲルデはGセルフを押さえ付けたまま加速して地上に向かって急降下した。

 ベルリは懸命にペダルを踏み込みバックパックから青白い炎とフォトンリングを発生させて押し返そうとするが、地上からの攻撃がGセルフを襲う。フォトン装甲は実弾兵器の直撃で傷が付くような性能をしていないが、それでも激しい衝撃がコクピットに伝わる。

 食いしばりながらも操縦桿で機体を匠に操作するベルリ。

 

「間に合わない! 高トルクモード!」

 

寸前の所にまで地面が迫る中、ベルリの音声に反応してGセルフの全身の装甲が深緑色に変化する。グリムゲルデもGセルフから離れるとメインスラスターで浮上し難なく着地。

 ようやく動けるようになるGセルフはフォトンリングを発生させて一瞬だけ浮力を得るが間に合わず、背中から地面に落下してしまう。

 コクピットが激しく揺れるがそれでも操縦桿を動かすベルリは素早くGセルフを起き上がらせる。

 

「機体はなんともないようだけど……見逃してはくれないか」

 

 ベルリの眼前には両腕のブレードを展開するグリムゲルデ。鉄華団やベルリの思惑通りに事はなかなか進まない。




 団長のオルガだ。ここまで来たんだ、仕事は何があってもやり遂げる。そうすりゃ鉄華団の名前はデカくなる。こっから先、みんなを食わせていくことができるんだ。
 だから引かねぇ……前にだけ進むんだ! 行こうぜビスケット、俺達の手で掴み取るんだ!
 次回、鉄血のレコンギスタ――死線――
 見ようぜ、俺達の未来を!
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