ガンダム 鉄血のレコンギスタ   作:K-15

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第十四話 死線

 グリムゲルデと対峙するベルリのGセルフ。高トルクモードを展開した事により全身の装甲が深緑色だったが、それも元の白色へ戻っていく。

 ビームライフルを腰部へマウントさせ、相手との間合いを取る。

 

「逃げるだけなら簡単だけどそうもいかない。この人を相手にライフルは効果がない……ビームサーベルだけでやれるの?」

 

「二本角のモビルスーツ……ビーム兵器を搭載したその機体の実力、確かめさせて貰う」

 

 二機が同時に動く。Gセルフは両脚部のスラスターを吹かしホバリングしながら、グリムゲルデはメインスラスターから青白い炎を噴射して接近する。

 首元にマニピュレーターを伸ばしビームサーベルを引き抜くGセルフはそのまま横一閃。針のように細いビームの刃がグリムゲルデの真紅の装甲に触れる。が、装甲のナノラミネートのせいでダメージはない。

 グリムゲルデも左腕のブレードの切っ先でGセルフの胸部を突こうとした。しかし、コピペシールドを展開したシールドにより激しい閃光を上げながら防がれてしまう。

 

「そのシールドもただの鉄の板と言う訳ではないらしいな」

 

「やっぱり機体の運動性能が違う。もう一度、高トルクモードで!」

 

 素早くブレードを引くグリムゲルデ。コピペシールドに直接触れたがブレードには損傷は見当たらない。

 Gセルフはベルリの音声認識で再び高トルクモードを展開し全身が深緑に変化する。同時に機体の性質も変化し、ビームサーベルのグリップを戻し右腕を振り被った。

 

「ほぅ……」

 

 操縦桿を匠に動かすグリムゲルデのパイロット。瞬時に地面を蹴り後退するがGセルフの動きは早く、マニピュレーターの直撃を受ける所を二本のブレードで受け流す。そしてすかさずブレードによる連続斬り。

 縦から横から下から斜めから、息もつかせぬ斬撃。だが高トルクモードを展開するフォトン装甲は更に強固で、グリムゲルデの刃を通さない。

 肉薄するグリムゲルデをどうにかしようと再びコピペシールドを使うベルリ。シールドから発生するフォトン装甲が前方を囲うように展開し、真紅の装甲に接触し激しい火花を飛ばす。

 

「素晴らしい! ビーム兵器をここまで使いこなすか! この性能……パイロットの技量も合わさった物だがモビルアーマーよりも強いかもしれん」

 

「Gセルフは! トラクタービーム!」

 

 地面を蹴り後退するグリムゲルデだが、バックパックから発射される重力子ビームに機体が言う事を効かなくなる。が、両腕のブレードを突き出しメインスラスターを全開にした。

 トラクタービームの引き寄せる力と合わさり急接近するグリムゲルデ。ベルリは思わず息を呑む。

 

「なにぃいいッ!?」

 

 ナノラミネートが塗布されたブレードはビームを寄せ付けないが、コピペシールドを貫けるだけの威力はない。

 それにフォトン装甲へ直撃できたとしてもダメージは微々たるもの。故に相手はピンポイントでGセルフの関節部を狙う。

 二本の切っ先が両腕の付け根を突き刺さんとした瞬間、Gセルフの全身からまばゆいビームの閃光が走る。

 光に直撃するグリムゲルデは後方に押し返された。

 

「使いたくなかったけど……全方位レーザーなら!」

 

「そのような装備まで持っているとは……従来のモビルスーツからは考えられない性能だ。感動さえ覚えるよ!」

 

「フレームに当たってるのに!? あれもナノラミネート?」

 

「君との勝負の為に金に糸目は付けないでおいた。これで本気を出せるだろ?」

 

 Gセルフの全身から発射されたレーザーに雪煙が拡散し、グリムゲルデの真紅の装甲が白い闇の中へ消えていく。

 警戒心を強めるベルリは操縦桿を握り直す。

 

「ビームが効かないからって……アナタはここで止めます!」

 

「この私をもっと楽しませろ! 高揚させてみろ!」

 

「遊ぶんじゃない!」

 

 白い闇の中から飛び出すグリムゲルデに瞬時に反応するベルリ。首元からビームサーベルを引き抜き横一線。

 グリムゲルデの装備するブレードとぶつかり合い激しい閃光を上げながらも、ナノラミネートがサーベルのビームを弾く。

 しかし、軍配はベルリに上がった。振り下ろされるブレードは真っ赤に焼けただれ真ん中から切断されている。

 切っ先がGセルフの装甲に触れる事はなく空を斬り、その現象にパイロットは目を見開く。

 

「コイツ、一体何を!? そうか、さっきの光のせいか」

 

「もう片方の武器を奪えば!」

 

「しかしまだ引く訳にはいかんな。二本角、倒すまではいかなくとも性能を把握する必要はある。私の計画を実行し完遂する為にもな!」

 

「降参しなさいよ!」

 

 左腕のブレードを突き出すグリムゲルデは切っ先をGセルフの胸部に直撃させる。一方のGセルフも左腕を突き出し、シールドの先端を相手にぶつけた。

 衝撃がコクピットにまで伝わり後ずさる両機。だが二人の動きは早い。

 ベルリは操縦桿を動かしマニピュレーターにビームライフルを握らせ素早く銃口を向ける。

 

「今ならビームが届く!」

 

「あの光……ナノラミネートを溶解させたとは言えライフルなど使わせんよ」

 

 トリガーを引くと同時にブレードの刃が銃口を振り払う。発射されたビームは明後日の方向へ飛んで行き雪煙を上げる。

 だがベルリはそのままグリムゲルデに攻めて行く。

 

「トラックフィン!」

 

「させんよッ!」

 

 バックパックから遠隔端末を飛ばすベルリはそのままペダルを踏み込んだ。右脚部が深緑色に変化し眼前の敵機を蹴り飛ばす。姿勢を崩す敵にトラックフィンのトラクタービームが向けられるが、相手のパイロットも匠に操縦桿を操作して瞬時に機体を立ち直らせる。細身の機体でヒラリと攻撃を回避していく。

 

「逃さない!」

 

「そうだ、その機体の性能を全て出し切ってみせろ! それでこそ、私もとことん本気になれる!」

 

 ビームライフルを向け連続してトリガーを引く。無数のビームがグリムゲルデに迫るが、それも全て避けられてしまう。

 再び接近を試みる敵機に、ベルリはバックパックからフォトンリングを発生させてGセルフを飛ばす。そして上空から再びビームライフルを向けた。

 

「武装だけを破壊するなんてできそうにない……手加減できる相手でもない……」

 

「空からの攻撃か……しかし!」

 

 メインスラスターから青白い炎を噴射させて地面を蹴るグリムゲルデ。軽量コンパクトな機体と推進力とが合わさり数秒ではあるが飛べる。そのまま接近し右腕のブレードを振り上げた。

 

「飛んだだけで有利を取ったつもりか?」

 

「どこまでも付いて来る。アナタは何なんです? 別のモビルスーツの反応……来るって言うの? 鉄華団のみんなが危ない!」

 

 迫る刃を避け頭部バルカンを放つ。強固なナノラミネートをフレームにも塗布したグリムゲルデには直撃させても牽制程度の効果しかないが目眩ましくらいにはなる。

 メインスラスターを吹かしながら後退する敵機は右腕のブレードを盾代わりに使う。ベルリはその瞬間を見逃さない。

 ペダルを踏み込み一気に詰め寄るとビームライフルの銃口をブレードに密着させた。

 引かれるトリガー、高出力のビームは残るブレードを真ん中から真っ赤に焼け爛れさせる。

 

「これなら!」

 

「小癪な真似を……」

 

 ブレードを蹴り上げるGセルフは強度の低下したブレードをへし折る。唯一の武器を全て失ったグリムゲルデ。

 しかし、敵は逃げる素振りすら見せない。加速してGセルフに組み付き地上へと引きずり降ろす。

 

「ここまでやる相手なの!?」

 

「舐めてもらっては困るな。それに……時間だ……」

 

 

 もつれ合う二機が雪上へ落下する。衝撃に雪煙が舞い上がり、それでもGセルフは拘束を振り解き地上からジャンプした。

 

「武器がなくても攻めて来るだなんて……倒すしかなくなる! 捨て身の相手は怖いぞ……」

 

「ようやく来たか。その力を見せろ、グレイズ・アイン!」

 

 見上げた先には一筋の赤い光。断熱圧縮の高熱を耐え抜き、地球へと降りて来た一機のモビルスーツ。

 グレイズと比べて一回りも大きな全長、真っ黒な装甲。異色を放つ機体が鉄華団の前に立ち塞がる。

 

///

 

 バルバトスに敗北し後退したガエリオとカルタ。補給部隊に合流し、消耗した武器や装甲を簡易的にではあるが修理している。

 コクピットから降り、雪の大地を踏みしめる二人はテントの中へと入る。ガエリオは表情を歪めながら歩く彼女を椅子の上に座らせて、自らは片膝を着く。

 

「痛むのか?」

 

「このくらい……平気よ。補給が終わればすぐに出るわ」

 

「無理をするな。何年一緒に居たと思ってるんだ? すぐにわかる」

 

「子供の頃の話でしょう!? 今のアナタは特務三佐で、アタシが地球外縁――」

 

「長いから言わなくて良い。脇腹か? ちょっと見せろ」

 

 手を伸ばすガエリオは許可も取らずにカルタの制服をめくりあげた。素肌に冷たい空気が触れるが、カルタは顔を赤らめてその手を振り解こうとする。

 しかしガエリオはそれを許さなかった。

 

「な!? 何をしてるのよアナタは! それに! これくらいのケガで――」

 

「これぐらいなものか。肌が青くなっている……最悪、折れているかもな。無理をしてまで戦うような相手ではない。所詮は不穏分子に過ぎない。後のことは俺がやる」

 

「その不穏分子に過ぎない連中に負けたのはどこの誰かしら?」

 

「うるさい。初陣だったと言い訳するつもりはないが敵の性能が予想以上だった。だが次は負けん。まだキマリスもほんの少し乗っただけだ。性能をフルに発揮すれば倒せない相手ではない」

 

「ふふ……頼もしいことを言ってくれちゃって。昔はアタシがアナタを引っ張っていたのに」

 

「それこそ子供の頃の話だろう? それとな、引っ張るじゃない。引っ張り回すだ。これは譲れん。お前のせいで服は汚れるはケガはするは、帰れば父上に叱られるはで散々な目にあったのは忘れんぞ」

 

「それはアナタに意気地がなかったからでしょう? 川渡りだってもっと気合い入れて飛べば落ちはしなかったわ」

 

「おま!? まだそんなことを覚えてるのか! それだったらお前だってカエルに驚いて腰を抜かしていた!」

 

「十才にもなってお漏らししてた!」

 

「野菜嫌い!」

 

「チェスでマクギリスに五連敗した!」

 

「デザートのチーズケーキを取ったろ!」

 

 昔にさかのぼって互いに悪口をぶつけ合う。けれどもこんな事を言い合える相手がどれだけ居るだろう。

 物心付いた頃から一緒に居るこの二人だけ。二人だけの空間。

 カルタはムキになって言い合うガエリオに折れてあげ、クスリと笑みを浮かべる。

 

「何だよ?」

 

「いいえ、でもアナタがそうしてくれたようにアタシもアナタを守ってきたつもりよ? まぁこれも子供の頃の話だけれど」

 

「フン! ここで大人しくしていろ。すぐに鎮圧させてやる」

 

 テントから出て行くガエリオを眺めるカルタは乱れた制服を正す。雪景色の中へ消えていく彼の背中を見てポツリとつぶやく。

 

「こうして歳を積み重ねても変わらない物もあるのね。私は変わっていないつもりよ、マクギリス。アナタは?」

 

 テントを出るガエリオは自らの機体、ガンダムキマリストルーパーへ再び搭乗しコンソールパネルを叩く。ハッチを閉鎖し、レーダーと通信で戦況を確認した。

 

「補給は終わった。不穏分子の動きはどうなっている?」

 

『ボードウィン特務三佐、それが……』

 

「何をしている? 状況を簡潔に伝えろ!」

 

『上空より未確認機体が降下、鉄華団と交戦しています』

 

「未確認だとぉ? エイハブ反応はどうなっている!」

 

『グレイズと同じ物ですが、確認した限り外見は全くの別物です』

 

「ギャラルホルンが開発した機体ではないのか? もう良い! とにかく出るぞ!」

 

 バルバトスにGセルフ、グリムゲルデと知らない機体が続々と現れる事に苛立ちながらもガエリオは操縦桿を握り締めペダルを踏み込む。ツインアイを光らせキマリストルーパーが動く。

 

///

 

 全身を纏う黒く厳つい装甲。四本の爪で立つ脚部。グレイズより一回り以上も大きな全長。マニピュレーターには巨大なガトリング砲を握り、頭部から覗かせる赤いモノアイが不気味さを醸し出す。

 突如現れた謎のモビルスーツに鉄華団の面々は戦々恐々とする。

 ゴクリと生唾を飲み込む明宏は滑腔砲の照準を向けながらもトリガーを引けないでいた。

 

「なんだ……アイツは……ギャラルホルンなのか?」

 

 たじろぐ明宏とは違い、戦い慣れしているタービンズのラフタとアジーはペダルを踏み込み漏洩を加速させた。

 左右から挟み込みライフルの照準を向けてトリガーを引く。

 

「こう言う時は先制攻撃は基本ってね!」

 

「いつも通りに行くよ。ラフタは頭、私は足を狙う。動き出す前に仕留める!」

 

 ライフルによる一斉射撃。無数の弾丸が巨大な黒い装甲のモビルスーツに直撃するがそのボディーには傷も付かない。

 二機による攻撃を受け続けてようやく頭部を傾けると足を一歩踏み出す。

 

「コイツ、どうなってんの!? アジー、グレネード!」

 

「近づくのは不味いね。とにかく遠距離から射撃戦を続けるよ!」

 

 腰部にマウントしてあるグレネードを投げるラフタとアジー。動きの遅い黒いモビルスーツは避ける事もできずに巨大な爆発の炎に包まれた。

 普通ならば機体が大破するだけのダメージ。炎と黒煙に塗れる機体。

 しかし、赤いモノアイが不気味に光りガトリング砲の銃口をアジーの漏洩へ向けた。

 

「動き出した! ラフタ、散開して後退!」

 

 銃口から強烈なマズルフラッシュが絶え間なく吹き出し続ける。大口径の弾丸が容赦なく漏洩に襲い掛かり、回避行動を取るアジーだが正確な射撃が逃してはくれない。

 一撃で装甲が吹き飛び、左腕が引きちぎれ背中から倒れ込む。

 

「ぐあぁあ゛あああッ!」

 

「アジー! このデカブツ! こっちを見ろ!」

 

 ライフルのトリガーを引きながらもう片方の手でグレネードを投げる。

 爆発の直撃を受ける敵機だがこれだけの攻撃を与えても怯む様子さえ見えない。そのままガトリング砲の銃口を今度はラフタ機へと向ける。

 回避行動を取り何とか攻撃を避けるラフタだが、相手からの一方的な攻撃に顔を歪ませる。

 

「まるで効いてない。どうする……」

 

「ラフタ! 俺が前に出る!」

 

 言うよりも行動に移る方が早い。明宏のグシオンが両腕に滑腔砲を抱えたままメインスラスターを吹かして敵機に接近する。

 がむしゃらにトリガーを引きまくり大口径の弾丸を相手に浴びせた。しかし、ラフタは叫ぶ。

 

「明宏、アンタには無理よ! 下がって、来ちゃダメ!」

 

「やられる前にやれば良いんだろうが!」

 

「だからそれが! ぐぅッ!? 足がやられた、不味い!」

 

「うおぉおおおッ!」

 

 無数の弾丸を受けても振り向きすらしないグレイズ・アイン。轟音を上げながら発射するガトリング砲はラフタ機の右脚部をものの数発で破壊した。

 崩れ落ちる漏洩、だが明宏の動きも早い。滑腔砲を投げ捨てシールドからハルバードを取り出しフルパワーで振り降ろす。

 

「やらせねぇッ!」

 

 砲身に刃が突き刺さりグリップがマニピュレーターから引き剥がされる。

 

「どうだ! こっから先はどつきあいのタイマンだ」

 

「ダメ、明宏! その機体、普通じゃない!」

 

「普通だろうと何だろうとやるしかねぇんだ! お前らは下がって列車を守ってくれ。コイツは俺が!」

 

 ラフタの助言も聞かずに明宏はハルバードでグレイズ・アインと対峙する。止められないと悟るラフタは損傷したアジー機を担ぎ列車へと後退。だが同時にガエリオの部隊も行動を再開した。

 

「チッ……ギャラルホルンの野郎……」

 

『ジャ……ラザ……』

 

 背部から二本の大型アックスを手に取るグレイズ・アイン。しかし標的は目の前のグシオンではなく背後から迫るグレイズ部隊。地面と蹴ると同時にメインスラスターから青白い炎を噴射して飛び上がる黒い機体は俊敏な動きで襲い掛かる。

 

「こ、コイツ!? 味方じゃ--」

 

 振り降ろす巨大な刃はナノラミネートアーマーを容易く破壊しコクピットのパイロットを絶命させた。

 それを見てギャラルホルンのパイロット達は標的を黒いグレイズに変える。

 

「撃て、撃つんだ! 一斉に攻撃すれば--」

 

 だが黒のグレイズは見た目にそぐわぬ柔軟でしなやか、そして俊敏な動きで向かって来る無数の弾丸を回避し次の標的に迫る。

 スラスターで加速し詰め寄られるだけで、ギャラルホルンのパイロットはその巨体に威圧された。振り降ろす大型アックスにライフルごとマニピュレーターを破壊され、脚部で胸部を蹴りつければつま先がドリル状に変形し装甲に風穴を開ける。

 激しい火花を上げドリルは内部構造までズタズタにしパイロット諸共破壊した。

 明宏はその残虐性に息を呑む。

 

「何だアイツ……本当に人間が動かしてんのか? いや、俺らと同じ阿頼耶識だな」

 

 バケモノと呼ぶに相応しいグレイズ・アイン。赤いモノアイを不気味に輝かせ、大型アックスを両手に持ちながら俊敏に動く。

 その巨体から出るパワーは見た目以上で、軽々と振り回す大型アックスでギャラルホルンのグレイズを次々と破壊して行く。叩き付け、振り払い、踏み付ける。

 続々と増えていく鉄塊、だが明宏はとても安心できないでいた。

 

「このままだと一人で全部倒しちまうんじゃないか? へへ……そんなバケモンを相手にしなくちゃならねぇのか。オルガ、敵の数は減ってるんだ。先に行け! 残った奴は俺と三日月でぶっ倒す!」

 

『明宏……わかった! 死ぬんじゃねぇぞ!』

 

「当たり前だ、誰に物言ってやがる! 進め、オルガ!」

 

 

 明宏の声を受け止まっていた列車を進めるべくマスコンのノッチを上げる。電力がモーターに供給されレールの上の車輪がゆっくり動く。

 だが時を同じくして四脚形態のキマリストルーパーが雪上を高速でホバーリングしながら迫って来た。

 

「不穏分子を逃がす物かよ! ここまで追い込んでおいて……あの黒い機体は何だ!?」

 

『特務三佐! う゛あぁあああッ--』

 

「チィ! こうもデータにない機体が立て続けでは……あの紅い機体は!」

 

 また一機、グレイズ・アインに為す術もなく破壊されてしまう。けれども部下の死を気に掛ける余裕などなく、目の前には以前に宇宙で戦った真紅の機体が立ち塞がった。

 両腕のブレードを失ったグリムゲルデだが、マニピュレーターには破壊されたグレイズが装備していたバトルブレードを一本握る。

 

「黒いモビルスーツも倒す。不穏分子も排除する。それでも、貴様に負けた屈辱を晴らすのが先だ! 斬られた左腕の借りは返させて貰う!」

 

「この私に勝てるとでも?」

 

「舐めるなぁああッ!」

 

 大型ランスを片手に全速力で突っ込むガエリオのキマリス。内蔵された機関銃を放ちながらグリムゲルデに詰め寄ろうとする。が、相手は悠々と攻撃を避けていき鋭い切っ先の一撃も空を突く。

 モビルスーツ形態に変形し設置する脚部でブレーキを掛ける。そのままメインスラスターを全開にして地面を蹴ると今度はグリムゲルデの頭上から大型ランスを振り下ろした。

 

「どれだけやろうと無駄だよ。お前の動きは手に取るようにわかる」

 

「はあああッ!」

 

 半身を反らすだけでキマリスの攻撃を回避する。着地するガエリオは間髪入れず操縦桿を動かし大型ランスによる連続突きを繰り出す。

 だがそれもグリムゲルデのパイロットはタップを踏むようにして避けながら、握るバトルブレードを振り上げキマリスのマニピュレーターから大型ランスを奪う。

 

「なッ!?」

 

「だから言っただろう? 手に取るようにわかると」

 

 明後日の方向に飛んで行く大型ランス。ガエリオは目で追いながらもマニピュレーターを左腕に伸ばし、シールド裏にあるサーベルを取り出した。

 

「この俺が! 同じ相手にそう何度も負ける訳がないだろ!」

 

「いいや、今回も私の勝ちだ」

 

 刃が交わり火花が散る。何度も互いの剣を振り合いぶつけ合う両者だが、額に汗を滲ませて操縦桿を握るガエリオの方が押されていた。相手の動きの方がわずかに早い。

 振られる刃は空気すら切断する程に鋭かった。

 袈裟斬り、振り上げて胸部装甲を突き刺し横一線。紫色の装甲に傷がつく。

 

「その太刀筋!? お前は……お前は……」

 

「既に語る舌など持たん。ガエリオ、ここで死ね」

 

「お前はあああッ!」

 

 キマリスの攻撃が激しさを増す。握るサーベルを懸命に操るが、そのどれもが簡単にいなされる。

 振り払うグリムゲルデのブレードがキマリスの右手を破壊しサーベルが地面に突き刺さった。息を呑むガエリオだが相手は一切の容赦がない。

 間髪入れず切っ先を突き立て次は左腕の関節を切断した。

 

「くッ!? ランスさえあれば……」

 

「やらせるとでも? ガエリオ……お前は……ここで……終わりだッ!」

 

 素早く袈裟斬りするグリムゲルデ。振られた刃はキマリスの胸部装甲に再び直撃し装甲を斬り裂く。その開いた隙間から見えるコクピット内部からはパイロットスーツを装着するガエリオの姿が見える。

 

「このまま何もできないで死ぬのか、俺は? 負けるのか?」

 

「フン……」

 

 加速するグリムゲルデの切っ先がコクピットに迫る。避ける隙などない。死を覚悟するガエリオ。

 だが、突如現れたグレイズがガエリオのキマリスを突き飛ばし壁となった。

 

「な、何だ!?」

 

「子供の頃の約束、覚えてないの? 守ってあげるって言ったでしょ--」

 

 切っ先がコクピットを貫く。悲鳴も何も聞こえない。

 静まり返る空気の中でガエリオが最後に聞いた声は誰の者なのか。

 

「そのグレイズは……パイロットは--」

 

 けれどもそれも一瞬、倒れ込むキマリスのコクピットにもグリムゲルデの切っ先は突き立てられた。残るのは沈黙のみ。




 名前? 三日月・オーガス……
 もう少しでこの戦いも終わるんだろ? オルガの邪魔をする奴は全部倒す。そうすれば鉄華団のみんなも生きて帰れる。俺は今までと同じ、オルガに付いて行くだけだ。
 オルガ、次は何をすれば良い?
 次回、鉄血のレコンギスタ--バルバトスとの契約--
 俺は見たいんだ……オルガが目指すその先を……
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