ガンダム 鉄血のレコンギスタ   作:K-15

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第八話 激闘、宇宙マフィア!

 外では並列する二隻の艦に向かって砲撃が降り注いでいた。それをたった一機でどうにか守ろうとするのはベルリのGセルフだ。

 

「ミノフスキー粒子は散布されてないけれど発見が遅れた。戦艦がこんな距離にまで来てるなんて。イサリビ、聞こえますね?」

 

『こちらイサリビ。敵艦の数は一隻。ですがモビルスーツも展開しています』

 

「今からだとバックパックを装備してる時間がない。ビームサーベルだけで何とかしてみせます!」

 

 巧みに操縦桿を動かすベルリは右手にビームサーベルを握るGセルフを動かす。機体の全長よりも伸びる切っ先は迫るミサイルを一振りで斬り落としていく。

 暗闇に広がる火球。速度は早いが視認できるミサイルは破壊できるが砲撃はそうはいかない。その全てを防ぎきれる筈もなく、Gセルフの脇をすり抜けていく砲撃はイサリビとハンマーヘッドに直撃する。

 

「くっ!? こうも連戦続きだと……モビルスーツも来る! え、何なの!?」

 

 敵艦から現れるのは、また見た事のないモビルスーツ。ずんぐりとしたフォルムは装甲が分厚い事を視覚的に伝えてくる。関節までも装甲で囲う重装甲はそれだけで機体重量が重くなるが、宇宙のみでの活動を前提としているので見た目程動きは悪くない。

 その為に脚部は歩行脚ではなく可動ブースターが設置されている。深緑の装甲をした機体名称はマン・ロディ。

 ギャラルホルンともテイワズとも違う改良されたモビルスーツ。

 マン・ロディは装備するサブマシンガンを構えて三機編成でGセルフに迫る。

 

「カメじゃあるまいし! ビームサーベルなら!」

 

 リアスカートから推進力を得るGセルフは敵機に接近するとビームサーベルで横一閃。が、マン・ロディも装甲はナノラミネートアーマーで構成されておりビームを通さない。それに関節まで装甲で覆われている為に部分的に破壊する事もできなかった。

 

「この機体もビームを弾く!?」

 

『何だ今のは!? でもダメージはない。やれるぞ!』

 

「であああッ!」

 

 鉈の峰部分にハンマーを備えた格闘兵装、ハンマーチョッパーを手に取るマン・ロディは大きく振り下ろすが、Gセルフも左手を突き出す。

 マニピュレーターにはグローブのように余剰フォトンエネルギーが。

 ハンマーチョッパーの刃にぶつけるマニピュレーターはキズが付かない所か相手の武器を弾き飛ばす。

 

『こいつ、近づいて来るのか!?』

 

「隙ができた!」

 

『まだ負けた訳じゃない。囲い込め!』

 

 残る二機のマン・ロディは左右からサブマシンガンのトリガーを引きながらGセルフに迫る。視線を動かし危険を察知すると、右脚部で相手の胸部装甲を踏み付けて後退。更に首元からもう一本のビームサーベルを抜き両マニピュレーターを高速回転させた。

 残像が見える程に早いビームサーベルは即席のビームシールドに変わる。

 通常の弾丸ではビームサーベルのシールドを突き抜ける事はできない。

 

「フレームが見えないようにできてる。どう戦う? まだもう一機居る?」

 

 ベルリの前に現れた機体はマン・ロディに似ているが細部が違う。そのボディーは一回り大きく更に強固に見える。そしてマニピュレーターに握るのは巨大な鉄の塊。

 

「ハンマーだって!?」

 

『潰れろやァァァッ!』

 

「潰れない!」

 

 ビームシールドを解くと左右に横一閃。ビームサーベルの切っ先は近づいて来る敵影に接触するが、やはりダメージは通らない。

 ペダルを踏み込むベルリは相手の射程距離に入らないように後退すると、さっきまで居た場所に巨大なハンマーが振るわれる。

 瞬時にトリガーを引き頭部バルカンを放つベルリ。轟音が鳴り響き角の間に設置された砲門から弾丸が発射される。

 弾は直撃するが分厚い装甲を前に弾かれてしまう。

 

「ハンマーなんてェェェッ!」

 

『自分から近づいてくるなんて正気か?』

 

 巨大なハンマーはナノラミネートアーマーであろうと一撃で破壊できるだけの威力を持つ。そんな相手に自ら射程距離範囲内に入り込むのは自殺行為とも言える。けれどもベルリはやってのけた。

 懐に滑り込むと敵機がハンマーを振り下ろすよりも早く殴り掛かる。

 マニピュレーターが深緑の装甲にぶち当たり火花が飛ぶ。

 

「カメになんてやられてる場合じゃないんだ!」

 

『こ、こいつ!?』

 

「ビームが効かなくたって、動かなくさせる事はできる!」

 

 操縦桿を引いては押して、引いては押して。Gセルフのマニピュレーターがその度に相手の頭部を殴り付ける。

 何度目かのパンチの後、右脚部で腹部を蹴りつけるとGセルフは距離を離した。

 

『舐めてんじゃねぇぞッ! お前らも援護しろ!』

 

「狙われている……」

 

 離れて行くGセルフに四機編成で攻めに来るマン・ロディと新型機。だがベルリの元にも増援がやって来る。

 滑空砲の大口径の砲身が正確にマン・ロディを撃ち抜く。

 

「三日月さん!」

 

「ごめん、少し遅れた。敵は? 多いな……」

 

「相手は何なんです?」

 

「海賊だろ? 弾もないって言うのに。まぁ、これを狙ってたんだろうけど」

 

///

 

 ハンマーヘッドのブリッジでは名瀬が鋭い視線を向けている。睨みだけで相手を殺す程に怒気を孕む凄まじさ。

 それをモニター越しに受けるのは火星圏で活動をする宇宙海賊ブルワーズの頭領であるブルック・カバヤン。

 脂ぎった皮膚、肥え太った体に弛んだ皮のせいで顎が見えず顔と胴体が一体化している。その表情はニキビやデキモノもあり醜い。

 

「ほぉ、大きく出たな。本気で俺達に喧嘩を売るつもりか?」

 

『へへ、本気も本気だ。ケツがテイワズだからってデカイ面するのもここまでだ。俺達だってここいらじゃそれなりに名を広げてる。宇宙はギャラルホルンとお前らテイワズだけの物じゃねぇんだぜ。タービンズの大将さんよぉ? ここいらでお前らを潰す』

 

「潰すと来たか。漁夫の利を狙う三下が良い気になるなよ? 後で吠え面掻いて命乞いしたって許してやんねぇからな……」

 

『こっちのセリフだ』

 

 通信が終わるとモニターの映像も消える。けれども名瀬の怒りは収まってない。

 

「チッ、意気がったは良いが不味い状況だな。まったく……モビルスーツは順次発進させろよ。すぐに敵が来るぞ!」

 

 名瀬の声を合図にしたかのようにブルワーズの強襲装甲艦から砲撃が飛来し、モビルスーツの続々と出て来る。

 ハンマーヘッドからもアミダとアジーの百錬、ラフタの百里、イザリビからは三日月のバルバトスと昭宏のグレイズが出た。けれども前回の戦闘から充分に時間があった訳ではない。

 汎用性の高い百錬は間に合ったが、ワンオフ機であるバルバトスはツギハギだらけ。今までに回収したモビルスーツの装甲を無理やり肩や腕に使っている。

 右手にはメイス、左手には滑空砲、そして背中には新しい武器を背負いメインスラスターから青白い炎を噴射して加速しGセルフに合流した。

 その様子を注意深く見るのはブルワーズのエース、クダル・カデル。彼の搭乗するモビルスーツ、ガンダムグシオンは巨大なハンマーの柄を両手で握り一旦距離を離す。

 

「チィッ、一機やられたか。この二本角のせいで作戦が狂ったじゃないのよ! でも……」

 

 筋骨たくましい体格。しかしその顔はメイクやピアスに彩られており口から覗かせるのは爬虫類の舌のように別れたスプリット・タン。

 強烈な外見を持つクダルはペロリと唇をひと舐めする。モニターに表示されるのはバルバトスのエイハブウェーブとその識別反応。

 

「グシオンと同じガンダムフレームと出会えるなんて! おい、テメェラ! あの白い奴だけは生け捕りにしろ! 他の奴は邪魔になる、さっさと潰しなさい!」

 

 操縦桿を握り締めペダルを踏み込むクダル。グシオンはハンマーを構えるとGセルフは後回しにしてバルバトスを狙いに行く。

 それは三日月からも見えており、弾数の少ない滑空砲で応戦する。

 

「あのデカイのは俺がやる。ベルリと昭宏はイサリビを守って」

 

「了解。昭宏さん、無茶はしないで下さいね」

 

「わかってる。これでもシミュレーターでお前らと特訓したんだ。無様な姿は見せえねぇ!」

 

 モビルスーツの相手を任せるベルリと昭宏は後退して艦の防衛に当たる。二機が離れるのを横目で見る三日月は滑空砲のトリガーを引く。

 グシオンは避けようともせずに一直線に突き進み砲弾の直撃を受けるが、分厚い装甲はキズも付かずに弾き飛ばす。

 

「見た目通り硬いな」

 

「ガキ共! 気合い入れて突っ込め!」

 

 クダルの号令に従い複数マン・ロディがバルバトスに攻撃を仕掛ける。装備するサブマシンガンの銃口からマズルフラッシュと共に雨のように弾が飛ぶ。

 三日月は反射的に回避し滑空砲の砲弾を敵機に当てる。

 

「まずはひとつ」

 

「早い、それにあの動き!? あの白い奴、俺達と同じ阿頼耶識だ!」

 

「ふたつ……」

 

 また一機、滑空砲の撃ち抜かれる。だがそれを最後に弾は完全に失くなってしまいトリガーを引いても反応しない。

 投げ捨て両手でメイスに持ち替えると接近戦に持ち込む。

 

「う、うあ゛あ゛あ゛ァァァッ!」

 

「よっつ……あれ、違ったか?」

 

 メイスの重たい一撃がコクピット部分を潰す。完全な状態ではないがマン・ロディと比べバルバトスの方がまだ性能が高い。それにパイロットの技量も合わさり彼らでは到底太刀打ちできない。

 攻撃力も運動性能も三日月のバルバトスの方が強い。

 

「数が多い。あの大きいのも来るか」

 

「クソの役も立たないガキ共が! あの白い奴を捕らえればがっぽり金が入る! テメェラが壊したモビルスーツを修理してもお釣りが来る程のね!」

 

「ハンマーなんかで戦えるのか? 取り敢えず艦には近付けさせない」

 

 互いに自身の武器で大きく振り被る。鉄塊と鉄塊が火花を上げて激突し、衝撃にフレームまでも軋む。グシオンはバルバトスと同じガンダムフレーム。その心臓部にはエイハブリアクターを二基搭載しておりパワーは折り紙付き。その両者が正面からぶつかり合えば、残るは武器の性能が勝敗を分ける。

 バルバトスのメイスはマニピュレーターからはじけ飛び、阿頼耶識システムを通して三日月にも機体の状態が伝わって来た。

 

「ぐぅッ!? 手が痺れた。やっぱりハンマーを何とかしないとな」

 

「流石はガンダムフレームだよ。並の奴なら機体ごと潰せる物を」

 

「残った武器は……」

 

 背部にマニピュレーターを伸ばしマウントされた武器を手に取るバルバトス。それは湾曲した細身の剣、太刀とも呼ばれる武器。

 三日月は操縦桿を握り締め機体に意思を伝達させると素早く振り下ろした。が、刃は硬い装甲に阻まれてしまう。

 

「軽いな。でも威力がない。使いにくいな、コレ」

 

「何だい、その棒きれは? そんな物で!」

 

 グシオンのハンマーがバルバトスを襲う。迫る鉄の塊に反応する三日月、阿頼耶識システムがパイロットの意思を機体に伝達させスラスター制御とAMBACで寸前の所で攻撃を避ける。

 ハンマーによる一撃の威力は凄まじいが連続しての攻撃はできない。その隙を突き三日月は空いた左手で相手の頭部を殴り付ける。鉄と鉄とがぶつかり合い火花が飛ぶがこの程度ではダメージにならない。

 更に続けて脚部で股関節を蹴り上げ、次に踵で腹部を蹴り飛ばす。この攻撃を利用して一旦距離を離すバルバトス。

 一方のグシオンはそれでもダメージは通っていないが激しい衝撃がパイロットを襲う。

 

「ぐぅッ!? 舐めてんじゃないわよ! その程度でどうにかできると思ってるの!」

 

「取り敢えずはできた」

 

 バルバトスが向かう先にあるのは手放したメイス。再びメイスを手に取るバルバトスは太刀をグシオンに目掛けて投げる。

 クダルは咄嗟に両手で握るハンマーの柄で太刀を防ごうとしたが、鋭い切っ先はそれを貫いた。

 

「これは!?」

 

「隙ができた!」

 

 一気に詰め寄るとメイスの先端をハンマーにぶつけ、そのまま内蔵されたパイルバンカーを発射する。一撃で鉄塊は砕け使い物にならなくなった。

 

「これなら潰せる!」

 

「誰が潰されるだってぇ? 死ねやぁッ!」

 

 グシオンの胴体に四門装備された四〇〇ミリ口径火砲が轟音と共に火を噴く。ハンマーと同様に強烈な威力を誇る火砲はナノラミネートアーマーを剥離させる程に強い。

 三日月はバルバトスの右腕を伸ばすと倒したマン・ロディの装甲を引っ掴み前方に放り投げる。

 巨大な砲弾はそのマン・ロディに直撃すると四脚をバラバラにしてしまう。が、それでも強力な衝撃と炎がバルバトスに迫る。

 

「ぐぅッ!? 火力も強い。装甲も硬いなら……」

 

「クソッタレ! 死ぬ程役に立たないだけじゃなく死んでも役に立たないか! 他の奴らはどうした? これだけ損害が出たんだ。何としてもガンダムフレームは頂くよ!」

 

 クダルはペダルを踏み込みメインスラスターで機体を加速させる。一旦はバルバトスから離れ、向かう先は他の機体が集結しつつあるイザリビの元。

 

「だったらあの艦を何としても制圧するよ! それと二本角とグレイズ、そのどちらかを捕まえれば動けないでしょ?」

 

「アイツ! オルガ、抜かれた。ベルリ、昭宏、そっちにパワーのある奴が行く」

 

 グシオンも見た目にそぐわぬ機動力を見せる。だが重量ばかりは誤魔化せない。他の機体と比べて重いグシオンでは推進剤の燃費も悪く戦闘継続時間も短くなってしまう。それでも活動限界時間にはまだ余力がある。

 三日月も投げた太刀を回収してすぐさまその後を追う。背部のメインスラスターから青白い炎を噴射して加速するバルバトス。

 その最中、三日月は奇妙な物を目にした。倒した筈のマン・ロディが微かにではあるが動いている。

 

「何だ、アレ……」

 

 コクピットを潰され、手足を斬られ、それでも微かにではあるが動いている。動こうとしていた。けれども長くはない。数秒もすると宇宙に漂うマン・ロディは完全に動きが止まった。

 ちらりと最後の灯火を見る三日月は気にせずペダルを踏み込む。

 

///

 

 イザリビとハンマーヘッドの窮地はまだ終わらない。ブルワーズは援護の艦を二隻用意しておりそれらのせいで敵の戦力は増えるばかり。

 敵の主力であるマン・ロディが次々に現れイザリビに襲い来る。艦隊に主砲はハンマーヘッドに向けられ回避運動に精一杯。

 百錬と百里は流れを断ち切ろうと敵艦の懐に取り付くべく前線に、Gセルフとグレイズは艦の防衛に当たっている。

 ベルリは巧みな操縦技術でビームサーベルで相手の攻撃を防ぎ、昭宏がライフルで敵機を狙う。

 

「右からも来る! 昭宏さん!」

 

「わかってる!」

 

 額に汗を滲ませながら昭宏は操縦桿を動かしトリガーを引く。始めてのモビルスーツによる実戦、幾らシミュレーターをやったからといって感覚は違う。求められる条件はシミュレーターよりも数段キツイ。

 後方のイサリビを守りながら敵の攻撃も避けてこちらの攻撃は当てる。ベルリの援護があるとは言え簡単ではない。

 迫るマン・ロディに弾を放つが相手は簡単に避けて来る。

 

「チィッ、プログラムされてる回避パターンと違う。これは三日月と同じ阿頼耶識か」

 

「あのグレイズ、戦闘慣れしてないぞ! 奴を落とせば突破口が――」

 

 右脚部が突如として切断される。相手に接近を許していなければ砲撃を受けた訳でもない。股関節部の付け根が熱で赤く爛れている。

 パイロットの少年が視線を向けた先には二本のビームサーベルを握るGセルフ。サーベルグリップを重ね合わせる事で更にビームの出力を上げて距離のある相手に攻撃を当てた。

 

「今です、撃って下さい!」

 

「うおおおォォォッ!」

 

 片脚が失くなった事でバランスが崩れる。通常の操縦系統ならコンピューターのプログラムが機体の姿勢を戻そうと補正してくれるが、阿頼耶識システムだとそうはいかない。機体の右脚は失くなったがパイロットの右足は残っている。故に両足がある物として考える為に機体は無重力空間で上手く動けない。

 昭宏はその相手にライフルを撃ちまくる。マン・ロディの強固な装甲でも耐え切れず弾丸は装甲を破壊してコクピットを潰す。

 

「やれたな? ベルリ、助かった」

 

「まだまだ来ますよ! あの機体は!?」

 

 マン・ロディの小隊を引き連れたグシオンは再びGセルフの元へと来る。視認するベルリは更に気を引き締めた。

 

「昭宏さんは離れて下さい! あの機体の相手は僕がやります!」

 

「そんな事できるのかよ?」

 

「やってみせます!」

 

 スラスターを吹かすGセルフは昭宏のグレイズを置いて前に出る。クデルは隣のマン・ロディから無理やりサブマシンガンを取ると弾を連射して寄せ付けない。

 

「二本角が前に来るか。ガキ共はグレイズに攻めろ。俺は二本角を足止めする! その武器を寄越しな!」

 

 ハンマーチョッパーを取るグシオンは再びGセルフと対峙する。残りのマン・ロディは言われたように昭宏のグレイズに向かって行った。

 操縦桿を力強く握り締めクデルは右腕を前に出す。

 

「鬱陶しい奴だよ、碌な武器もないくせに!」

 

「僕はこんな所でやられる訳にはいかないんです! それにこれ以上、鉄華団の人達を傷付けさせません!」

 

「洒落臭い! 死ねよやァァァッ!」

 

 トリガーを引くクダル、胴体の四〇〇ミリ口径火砲が火を拭いた。マン・ロディを一撃で破壊した火砲だが、Gセルフは二本のビームサーベルを高速回転させて簡易ビームシールドを形成するとコレを完全に防ぐ。

 高い威力を持つ火砲だが、それだけに装填できる弾数は少なく限りがある。

 

「また当たらなかったって言うの!? クソ、どいつもこいつも!」

 

「いっちゃえぇぇッ!」

 

 針のように細いビームサーベルが更に伸びる。両腕を振り下ろすGセルフ、片方は深緑の胴体を斬り、もう片方が握るサブマシンガンを切断した。

 瞬時に手放すグシオン、ビームのエネルギーが残る弾薬に誘爆し小さな火球が生まれる。

 

「この俺をこうまで苛つかせたのはお前らが始めてだ。フラストレーションが溜まりまくりだよ! ガキ共を痛め付けるくらいじゃ到底発散できないくらいにね!」

 

 言いながらグレイズに向かわせたマン・ロディの様子を伺う。イサリビの対空砲火の直撃に合い破壊されてしまった機体も居るが、その内の一機がグレイズに取り付いた。

 

「はぁッ! 気合いのあるガキも居るじゃないか! あとは人質にでもすれば!」

 

 グシオンはGセルフを無視して更に奥へと侵入して行く。ベルリはそうはさせまいと機体を動かすが、まだマン・ロディの数は残っている。パイロットの少年達は捨て身でGセルフに飛び掛かって来た。

 

「どうしてこんな事を!? クッ!」

 

「まだだァァァッ!」

 

「お前を抑えないと俺達が!」

 

 ハンマーチョッパーを振り上げながら接近するマン・ロディにGセルフはすかさず詰め寄ると頭部目掛けてパンチを繰り出す。

 衝撃に機体は後方へ吹き飛ばされ、接近するもう一機もサブマシンガンのトリガーを引きながらGセルフに挑む。ベルリは回避行動を取りながら相手との距離を詰め、構えるサブマシンガンを掴み上げ頭部のメインカメラにバルカンを放つ。

 

「う、うわァァァ!?」

 

「これで帰れるでしょ! 昭宏さんは?」

 

「こいつ、手加減してるつもりか? 俺はなぁッ!」

 

 強力なバルカンは確かにマン・ロディの頭部を破壊、メインカメラを使い物にできなくさせた。けれどもパイロットの闘志は失くならない。補助カメラを駆使して、満足に前が見えない状態でも戦おうとする。

 ベルリはそんな彼らの戦い方に恐怖した。

 

「そんな!? どうして……出て来る!」

 

「うお゛お゛お゛ォォォッ!」

 

 尚も振り上げるハンマーチョッパー。ベルリはビームサーベルの切っ先をコクピットに向けようとするが、攻撃を仕掛けるよりも早く後方から別の機体が来た。

 頭部を踏み付け、メイスの先端を首元に突き立てながら更にパイルバンカーを打ち込む。内部フレームごとコクピットは押し潰されパイロットも絶命した。

 

「ベルリ、アイツは?」

 

「イサリビの方向、昭宏さんが居ます」

 

「あのデカイのを落とせば少しは楽になるだろ。少し待ってて、ここは任せるから」

 

「わかりました」

 

 三日月のバルバトスはパイルバンカーを引き抜きメイスに戻すと、破壊した機体を足場にしてジャンプした。向かう先はグシオンの居る場所。

 昭宏のグレイズはライフルからバトルアックスに持ち替えて迫るマン・ロディに挑む。果敢にバトルアックスを振るうが敵機は優れた反応速度で攻撃を避け切る。

 

「どうして避けられる? これが阿頼耶識の性能か」

 

「脇がガラ空きだ!」

 

「やられるかよォォォッ!」

 

 ハンマーチョッパーで袈裟斬りするも、昭宏のグレイズは寸前の所で相手の腕をマニピュレーターを掴む。同時に空いた腕も押さえ付け頭突きするように相手の頭部に自らの機体の頭部をぶつけた。

 

「阿頼耶識だろうとコレなら関係ないだろ? ここから先には絶対に進ませねぇ!」

 

「何だ、こいつ!?」

 

「俺の背中にはあいつらが居るんだ。意地だろうと何だろうと、やられる訳にはいかねぇんだ!」

 

「馬鹿か? 動けないのはお前も同じだろ? お前も死ぬぞ」

 

「死なねぇ! スペースデブリだ何だと言われても関係ねぇ! 俺は生き抜いてやる!」

 

 昭宏はペダルを踏み込み相手の股関節に膝を叩き込む。何度も何度も何度も、火花が飛び衝撃がコクピットにまで伝わる。ナノラミネートアーマーが変形しフレームにまでダメージが届く。だがそれはグレイズも同じ。

 それをわかっていても昭宏は攻撃を止めはしない。

 

「うおおおォォォッ!」

 

「どうする? それにこのままじゃ推進剤が!?」

 

『そこを動くんじゃないよ!』

 

「え……」

 

 敵パイロットが後方に意識を向けた先に居たのはハンマーチョッパーを握るグシオン。右腕を大きく振りかぶり、グレイズの頭部目掛けてフルパワーで叩き付けようとした。

 瞬間、マン・ロディのパイロットである少年の脳裏に走馬灯が走る。思い出すのは懐かしい幼少期の思い出。父と兄と一緒に過ごした家族の温かさ。

 

「兄ちゃん? 何で……」

 

「何だと? おい、お前――」

 

 昭宏の声が届くよりも早く、グシオンの猛攻が迫る。反射的に操縦桿を動かしてしまう昭宏は捕まえるマン・ロディを盾にしてハンマーチョッパーの攻撃を防ぐ。強力な一撃はズングリとした頭部をかち割り刃はコクピットブロックにまで到達している。

 目の前で動かなくなったモビルスーツの姿に何かを感じる昭宏。

 

「何だったんだ、コイツは? チッ! アイツは……」

 

「クソッタレがァァァッ! 味方の時は何の役にも立たない癖にこう言う時は邪魔をして! もう追い付かれたか?」

 

 コクピットの中で激昂するクダル。操縦桿を引いてハンマーチョッパーを引き抜き死に体となったモビルスーツを捨てると振り返りバルバトスに敵意を向けた。

 瞬間、フルパワーで投擲されたメイスが迫る。咄嗟にマニピュレーターに握るハンマーチョッパーで薙ぎ払う。

 が、メイスは弾き飛ばされても内蔵されたパイルバンカーが発射された。クダルの操縦技術でもここまで防ぐ事はできず、重たい一撃が胸部装甲に直撃する。

 

「ぐゥゥゥッ! 装甲が剥がされた!? 来るのか――」

 

「これなら殺せる……」

 

 衝撃を受けながらも意識を向けた時にはもう遅い。バルバトスは既に目前に迫っており、両手に握られた太刀の切っ先は剥がされた胸部装甲に突き立てられた。

 分厚い装甲さえ失くなれば攻撃は容易に通る。鉄の刃はグシオンの胴体を貫きパイロットであるクダル・カデルを殺した。

 

「ふぅ……面倒な奴は倒した。昭宏、何ともない?」

 

「あ……あぁ、こっちは大丈夫だ」

 

「そう。ベルリ、一度イザリビに戻って。バックパックって奴を背負った方が強いんだろ? その間は俺が保たせる」

 

「わかりました!」

 

 言われてベルリのGセルフは戦線を離脱。

 ブルワーズのエースであるクダル・カデルとガンダムグシオンが敗れた事でこの戦況もガラリと変わる。もはや量産機であるマン・ロディと少年兵では鉄華団のバルバトスとテイワズの三人を止める事はできない。

 機体の数も着実に数を減らしていき、強襲装甲艦のブリッジのシートでブルック・カバヤンは脂汗を滲ませる。

 

「グシオンのエイハブ反応が消えた!? 他の機体はどうなっているんだ? こっちの戦力の方が上回っているんだぞ!」

 

「艦長、二本角がこちらに接近して来ます」

 

「二本角だと? だってアイツは――」

 

 シートから前に乗り出すブルックはスクリーンに目をやる。するとさっきまでとは違いパーフェクトバックパックを背負うGセルフが戦場の中を駆け抜けていた。

 高い機動力と運動性能は防衛網を掻い潜り、ビームライフルの射程距離にまで接近すると対空砲に狙いを定めトリガーを引く。

 ビーム音が轟き光が走る。ナノラミネートが施されていない対空砲は一撃で破壊されてしまう。

 

「な、何の揺れだ!?」

 

『もうこれ以上戦う必要はないでしょ! 抵抗するのならライフルのトリガーを引きますよ?』

 

「子どもの声!? パイロットなのか?」

 

『聞こえてるでしょ。抵抗しないで下さい』

 

「わッ! わかった、戦闘は中断する。モビルスーツは後退させろ!」

 

 ブルックの指示に従い通信兵が全部隊に通達する。これにより戦いは集結した。

 鉄華団の構成員達はその事に安堵するが、昭宏だけはグレイズのコクピットの中で言い様のない不安に苛まれてていた。




 アミダ・アルカだよ。アンタ達、女の扱いをまるでわかってないね。まず聞き上手になりな。ホストでも何でも、モテる男は話を聞くのが上手いもんさ。アタシみたいな良い女を捕まえるには、それだけじゃ足りないけどね。
 次回、鉄血のレコンギスタ――休む間もなく――
 良い夢を見なよ……
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