これなら前話と合わせてしまっても良かったんじゃ(ry
一夏が1分遅刻した後、千冬の号令によって1組と2組による合同訓練が開始される。人数が増えたことで返事の厚みも増し、心なしか生徒達も身が引き締まるのを感じていた。
「さて、まず最初は実演を行ってもらうとしよう。赤星、前に出ろ」
「……?はい」
何故呼ばれたのか察せないまま、戦兎は生徒達の列から数歩前に出る。彼だけでなく、他の生徒も彼が名指しされたのか分からないでいる。
「先生、まだ訓練機の準備が出来てないんですけど」
「いや、お前にはビルドに変身してもらう。勿論、ISモードに切り替えてな」
「そういうことならそうしますけど……俺が実演しても勝手が違いすぎて参考にならないのでは?」
「別にお前1人に実演してもらうわけではない。ちゃんと対戦相手はいるし、今回はその相手の動きを皆に見てもらうつもりだ」
戦兎と千冬でそのように話していると、件の対戦相手が現れる。
「お、お待たせしました!」
先程からこの場にいなかった人物、真耶が訓練機であるラファール・リヴァイヴを纏って生徒達の前に着地する。座学での服装と違い、ISスーツの状態でISを装備している彼女の姿は生徒達からしてみると新鮮であった。
「山田先生は元代表候補生、それも今の現役達とは一線を画した実力を有している。多少骨のある相手でなければあっという間にやられてしまうだろうからな」
「そ、そんな……そこまで大したものではありませんよ」
「成程。そういうことなら俺も多少本気で挑まないとマズそうですね」
そう言うと戦兎はビルドドライバーとフルボトルを取り出した。ISスーツの姿でどうやってそんなかさばる物を持ち歩いているのか、観衆の気になるところではあったが戦兎はさも当然のように準備を進めている。
≪忍者!≫≪ガトリング!≫
≪Are you ready?≫
「変身!」
ドライバーのレバーを回し、紫色と鉛色のハーフボディに挟まれた戦兎は【トライアルフォーム・忍者ガトリング】に変身する。
≪ISモード!≫
そしてISとの試合では恒例の機能を稼働させ、準備を完了させる。
「では、開始!」
両者の用意が整ったことによって千冬の号令がかかり、ビルドと真耶は同時に空へと飛翔する。
先手を取ったのは真耶。今のビルドはタカやロケットの力を使っていないため、ISの操縦経験が勝っている彼女に軍配が上がる。
彼女は装備のショットガンを即座に構えると、射撃を開始。躱されつつも、正確な射撃はビルドが気を緩めれば命中しかねない精度であった。
対するビルドは大きく空中を駆け回って真耶の銃撃をなんとか回避しつつ、召喚したホークガトリンガーの装填を手早く行う。
≪10!20!≫
銃弾を躱すと同時に、真耶に向かって弾幕を張るビルド。
攻撃は巧みに躱されてしまうも、その間に4コマ忍法刀を手元に召喚しトリガーを3回引く。
≪風遁の術!≫
刀身に疾風が付与され、ビルドはそれを振るう。纏っていた風は刀から離れると共に、強靭な嵐となって真耶に襲い掛かった。
≪竜巻斬り!≫
「くっ……きゃぁっ!」
竜巻に巻き込まれた真耶はISの力のみではその風力に抗い切れず、きりもみ状態で風にさらわれる。
しかし彼女は風が弱まり始めた一瞬の合間に空中で体勢を整え、いつの間にかコールしていたアサルトライフルで発砲。鋭く駆ける弾丸はビルドのボディに見事命中した。
強い衝撃を受けて、ビルドはたまらず後方に仰け反った。
「ぐぅっ!?あの状態で当てるとか、すげぇな……!」
一流の手腕を持っていなければ為し得ない芸当。
普段はどこか頼りない印象を感じさせる副担任であるが、戦兎は彼女の実力を直接味わい、強く感心する。
「なら、こいつで!」
フォームチェンジを試みるビルド。懐から新たに2本のフルボトルを取り出して、手早く振るとそれをドライバーに装填する。
それは、最近になって発見した組み合わせ。
≪ライオン!≫≪掃除機!≫
≪ベストマッチ!≫
レバーを回転させ、ドライバー内部には2つの成分がパイプを伝って駆け巡っていく。戦兎の周囲に発生したスナップライドビルダーが黄色と水色に染まっていき、ハーフボディをそれぞれ形成していく。
≪Are you ready?≫
「ビルドアップ!」
2つの装甲に挟まれ、新たな姿となるビルド。
≪たてがみサイクロン!ライオンクリーナー!イェア!≫
【ライオンクリーナーフォーム】
掃除機ハーフボディの外見的特徴は、腕部の掃除機型アームと肩部に備わった筒状の装置。これまで多くのフルボトルが使われてきたが、その中でも直線的なデザインをしている。
左腕の強化掃除機【ロングレンジクリーナー】をガシャッと構えるビルドは、その吸引口を真耶に向け、稼働させる。
その直後、凄まじい吸引が巻き起こる。
「なっ……!?」
グンッと身体を引き寄せられる感覚を受け、思わず驚きの声を漏らす真耶。すぐに後退を試みたが、想像を上回る吸引力で易々と脱出することが叶わない状況に陥る。まるで両足を抑えられているかのようであった。
ならば、と真耶は速度を落とさずにビルドに向けてサブマシンガンを連射。
だが……。
「だ、弾丸も吸い込んでしまうんですか!?」
攻撃のために撃った銃弾はどれも掃除機の吸引に敵わず、次々とその口の中に収められて入ってしまう。
しかもビルドのステータスを確認してみると、削れていたシールドエネルギーが回復していることに重ねて驚かされた。どうやらあの形態は吸い込んだ物を自身の稼動エネルギーに変換し、回復してしまうようだ。
「ピタッ」
「え、きゃぁっ!?」
吸引が止むと同時に、真耶は解放された勢いで後方にバランスを崩す。
「さぁ、勝利の法則は決まった」
その隙を見て、ビルドはレバーを回し始める。
≪Ready go!≫
再び掃除機による吸引が始まる。しかしそのパワーは先程よりも強く、距離を離した筈の真耶をその射程圏内に捉えている。
再び吸引から逃れる真耶を視界に収めつつ、ビルドは反対側の腕部にエネルギーを集束。
「はぁっ!」
≪ボルテックフィニッシュ!イエーイ!≫
鋭く突き出されたビルドの腕部から、ライオンの頭部を模したエネルギー波が発生。さながら本物の獅子のような猛りを見せて突き進んでいき、標的となった真耶の元へ。
「っ!!」
そして、真耶を中心に爆発が起こる。
その爆発を見ていた生徒達は、真耶が敗北したのだと判断を下す。
しかしビルドはその爆発を真剣な様子でジッと見つめていた。勝利を手にしている状況なのに、そこにはそれに対する喜び等が感じられない。
それもその筈、何せ彼はまだ勝ってなどいないからだ。
「な、なんとか間に合いましたね……」
晴れていく黒煙の中にいたのは、傷の浅い真耶であった。
彼女が手に携えているのは中型の盾。消耗が見られる表面にはまだ少し煙が張り付いていた。
「どうも爆発が不自然だと思ったら……初見の技を防がれるなんて思ってませんでしたよ」
「これでも先生ですからね、おめおめとやられちゃったら立場が無いじゃないですか」
ふふ、と笑みを零す真耶。窮地を乗り切った直後からかやや笑顔が硬いが、無理に笑っているのではなく自然に現れたものである。
彼女がビルドの必殺技を防いだ一番の要因は、咄嗟に取り出した一発のグレネードだった。エネルギーが直撃する前に彼女はそれを前方に投げて誘爆を起こし、発生した爆風とエネルギーの衝撃を高速召喚した盾でなんとか防いでみせたのだ。
事前情報無しの技に加え、引き寄せられている状態でそれらの判断を選択することが出来たのもひとえに彼女の実力と経験の賜物である。
ビルドと真耶、両者が仕切り直しとばかりに武器を構え直したその時、地上にいる千冬の号令が届く。
「そこまで!」
その声を聞き届け、2人は動こうとする身体をピタリと止める。
「ちょっ、先生。今すっごいいいところじゃないですかー!」
「やかましい。これは試合ではなく実演に過ぎん、勝ち負けなど拘るところではない。さっさと降りて来い」
「あはは……赤星くん、降りましょうか」
真耶にも諭され、渋々ビルドは彼女と共に地上へ降り立つと変身を解除する。
2人が戻って来たのに合わせて、千冬は生徒達に向けて口を開く。
「先程の実演を見て諸君も理解しただろうが、IS学園の教員は数年間実戦を重ねてきた相手にも訓練機で十分に戦えていることから非常に高い実力を有している。以後は敬意を持って接するように」
「……あれ?先生、俺には何か一言無いんです?」
「ではこれよりグループに分かれて実習を行う。グループリーダーは専用機持ちの5人、1組毎8人で分かれろ」
華麗に無視。
そして生徒達は千冬の言葉の後にグループリーダーとなる専用機持ちの元へと詰め寄っていく。
一夏とシャルル、男子2名の元へと。
「織斑くん!優しく手取り足取り教えてください!」
「さっきは逃げられちゃったけど、今度は逃がさないわ!」
「私、デュノアくんに教えてもらえるなら生涯に一片の悔いも残さないから!」
「あ、ズルい!私も私も!」
「戦兎くんさっきは凄かったねー!」
「かなり変人だけど、やっぱり強いっちゃ強いんだね!」
男子に集まるのはこの学園においては予想出来たことであった。注目の人物である彼らに女子が反応しない訳が無い。
戦兎は専用機持ちではないが、先程の戦っている姿を見て素直に感心した一部の女子が彼のところにも集まっている。先日の無人機事件で彼に対して微妙な印象を抱く生徒も多いが、1組と2組はそこまで深刻な状況には陥っていないらしい。
ともあれ、男子達に偏っているこの状態に呆れた千冬は面倒くさそうにため息を吐いた後、怒号を放つ。
「出席番号順に1人ずつ各グループに入れっ!IS装備補助機能無しでグラウンド100週させられたくなければとっとと動けっ!赤星もだっ!」
その一言によって女子達は蜘蛛の子を散らすように移動を始め、指定のグループにつく。その姿を見て『最初からそうしろ』と千冬は小声で呟いていた。
戦兎が入ったグループのリーダーは、シャルルであった。
シャルルは戦兎がいることを認識すると、分かりやすく顔を綻ばせる。
「戦兎!戦兎も僕のグループなんだねっ?」
「みたいだな。よろしく頼むよ」
「うんっ、こちらこそ!」
シャルルの様子が先程よりも明るくなったことに、周囲の女子は目聡く気付く。
「おや?デュノアくんの様子が……」
「B……は必要無いね、このままで」
「美男子2人の絡み、美味しいれす」
シャルルの内情を踏まえると当たらずも遠からずな推察なのだが、性別の違いであらぬ誤解を招いているがこの場ではどうしようもない。
周りの声が聞こえていたシャルルはその内容に頬を赤らめて訓練に熱を入れようと誤魔化すが、その反応は逆に女子達に熱が入っている。
「そ、それじゃあそろそろ始めよう!出席番号順に始めるから、まずは戦兎!」
「分かった」
シャルルに声を掛けられ、戦兎はこのグループで用意されたラファール・リヴァイヴ訓練機への搭乗を開始し、歩行動作等を実践していく。授業以外で滅多にISに乗らない戦兎の熟練度は低いが、かなり速い呑み込みで慣らしてしまったのは教える側のシャルルを驚かせた。
そんな風で、男子2人が繰り広げるIS指導はなんの問題も無く行われていった。
「男2人の絡みって――」
「それはもういいから!」
周りは相変わらずテンションが高まっていた。
―――続く―――
■ライオンクリーナーフォーム■
【身長】189cm
【体重】104.3kg
【パンチ力】17.4t(右腕)7.1t(左腕)
【キック力】12.0t(右脚)21.3t(左脚)
【ジャンプ力】39.0m
【走力】3.6秒
―ライオンハーフボディ―
①BLDバトライオショルダー:右肩部。装着された尻尾は変身者の感情を表すように揺れ動く。尻尾は取り外し可能で、ムチのように扱える。
②ライオチェストアーマー:胸部の合皮装甲。武器による物理攻撃をほぼ通さないという特徴があり、自身の【レオメタルクロー】しか攻撃を通さないと言われている。
③ビーストラッシュアーム:腕部。腕力を増幅する伸縮素材【マスキュラーチューブ】が組み込まれており、連続パンチを受けた敵はグロッキー状態に陥る。
④ゴルドライオガントレット:右腕部の攻撃装置。全身各部から吸収した稼動エネルギーを利用し、咆哮衝撃波等の特殊攻撃を行うことが可能。ライオン型のエネルギー波を放ち、獲物を狩ることもできる。
⑤BLDバトライオグローブ:右拳の強化グローブ。指先に収納された鋭爪【レオメタルクロー】を展開し、鋭い貫手で敵の急所に大ダメージを与える。
―掃除機ハーフボディ―
①クリーンチェストアーマー:胸部装甲。表面に施された特殊コーティングにより耐久性がアップ、更に汚れが落ちやすくなっている。
②BLDトラッシュコンバーター:左肩部の変換装置。ロングレンジクリーナーで吸引した物を高速分解し、自身の稼動エネルギーに変換する。
③ステリライズアーム:左腕部。殺菌剤の散布機能があり、周囲に存在する有害なウイルス等を死滅させることが出来る。
④ロングレンジクリーナー:左腕部の強化掃除機。吸引力が凄まじく、周囲のあらゆるものを吸い込んでしまう。炎や水等の攻撃も吸い込める。
⑤ステリライズレッグ:殺菌剤の散布機能があり、周囲に存在する有害なウイルス等を死滅させることが出来る。
⑥ハイジェニックシューズ:右足のバトルシューズ。ボディスーツ内の衛生環境を改善する機能を持つ。