INFINITE・BUILD-無限創造-   作:たいお

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第22話 ぶっとびモノトーン=ロケットパンダ

 

 ラウラが転入してから数日、戦兎は特に大きなトラブルに巻き込まれないまま生活を送っていた。

 

 一度だけ、大事になりそうな出来事はあった。それは土曜日の午後に皆でアリーナにてISの訓練を行っていた時である。

 一夏がシャルルに銃についてレクチャーを受けていた時に、ラウラが現れて彼に砲撃を仕掛けてきたのだ。近場にいたシャルルが咄嗟にシールドで弾丸を防いだお陰で誰にも被害が及ばず、すぐにアリーナの担当教師が駆けつけたのでそれ以上の事態に発展することは無かった。

 

『俺だ、戦兎。スマッシュが○○区郊外の採石場に出現したとの目撃情報が入ったぞ』

 

 マスターからの報告を受け、戦兎はいつも通り先生に断りを入れてからマシンビルダーに乗って現場へと急行した。

 幸いにも現場は人気の少ない場所で、目撃者である土木事業関係者も既に避難を完了させている。そこにいるのはスマッシュのみだ。

 

 件のスマッシュ――タックルスマッシュは目についた工事用プレハブハウスに目掛けて猛突進し、その強靭なパワーで小屋を貫通し、倒壊させた。

 上半身は筋骨隆々に膨れ上がっており、装甲の合間からそれらが見え隠れしている。目に該当する部分には赤と青のランプが点いたゴーグルを着用しており、交互に点滅を繰り返している。

 

 スマッシュが小屋を壊したところで、移動中にビルドに変身し終えていた戦兎はバイクで現場に現れる。彼の今の姿は忍者と掃除機のフルボトルで変身した【トライアルフォーム・忍者掃除機】である。

 ビルドは先手必勝とばかりに攻撃を仕掛ける。予め召喚した4コマ忍法刀を構え、そのトリガーを2回引く。

 

≪火遁の術!≫

 

 バイクで接近しながら、炎を纏った刀を敵に目掛けて振るう。刀からは猛烈な炎が噴出し、瞬く間にスマッシュを覆い尽くした。

 

≪火炎斬り!≫

 

 斬ってなくても火炎斬りである。

 バイクを旋回させて停止させ、地面に足を付けるビルド。そのままバイクからは降りずに燃え盛る炎の方へ目を向ける。

 

 その直後、スマッシュがショルダータックルの構えで炎の壁を破り、ビルドに向かってきた。ノーダメージではないものの、マッシブな体躯に見合った耐久力を持っているようで大したダメージを与えられていない。

 

『ッ!!』

「よっと!」

 

 スマッシュの特攻に合わせ、バイクを翻して回転させた前輪をぶつけて迎え撃つ。エネルギーを纏った前輪とスマッシュの肉体がぶつかり合い、激しい衝撃を周囲に齎す。

 

 力同士の衝突に押し負けたのは、ビルドの方であった。

 

「くっ……!」

 

 バイクの半身を弾かれ、転倒しないように踏ん張ることでバランスを保つ。

 再び突撃を行ってくるショルダースマッシュに応戦すべく、今度は後輪を尻尾のようにぶん回してスマッシュの横っ腹に叩き込む。横からの衝撃に対処しきれなかったスマッシュを吹き飛ばした。

 

「飛び道具の類いは使わないか……なら掃除機じゃ分が悪いか」

 

 敵の攻撃パターンを考察し、ボトルとの相性を確認するビルド。

 今のフォームは有効でないことに行き着いた彼は新たなボトルを取出し、それをシャカシャカと振ってからドライバーに装填する。

 

≪コミック!≫

≪ベストマッチ!≫

 

 ベストマッチのフォームを選択し、ベルトのレバーを回転させるビルド。

 

≪Are you ready?≫

「ビルドアップ!」

 

 紫色のボディと黄色のボディによって形成された、ニンニンコミックフォームが完成する。煙を噴き、スカーフを翻しながらその姿を現す。

 

≪忍のエンターテイナー!ニンニンコミック!イエイィ……!≫

 

 変身を終えたビルドは描いた物を実体化出来る左腕部のリアライズペインターを振るい、空中に絵を描き始める。

 完成したのは、スペインの国技として有名な闘牛に用いられる赤い布(ムレータ)であった。

 

「ウリウリ」

『ーーッ!!』

 

 ひらひらと煽るように布を振るってみると、それに興奮を示すようにスマッシュが反応し、雄叫びを上げながら突撃を仕掛ける。先程よりも勢いがある模様。

 しかし今のビルドはマタドール気分。ギリギリのところまでスマッシュを誘い込むと、身体を捻って突進を避ける。布でスマッシュの視界を遮り、混乱へと誘う。

 

 躱されたスマッシュが見失ったビルドを探す為に脚を止めようとした時、何かを踏んだ感触と共に強烈な電撃がその身を襲った。

 

『ッ!?』

「足元注意だ……え、遅い?」

 

 スマッシュに奔った攻撃の正体は、忍者ハーフボディの脚部から自動で撒かれる【スタンマキビシ】。その名の通り、まきびし状のそれを踏んでしまうと感電・気絶してしまうのだ。普通の人間が踏むと確実に気絶する代物で、スマッシュ相手だと気絶まで追い込むのは難しいものの、その動きを確実に止めることが出来る。

 

 痺れて身体を硬直させたスマッシュに対して、ビルドは先程まで使用していた布を頭から被せた。

 

「そらそらぁ!」

『ッ!?ッ!?』

 

 布に包まれたスマッシュに∞の軌道を描いた斬撃を浴びせていく。斬る度に布も併せて切断されていくが、スマッシュに蓄積された電気とナイロン製による静電気誘発が相まって布がしつこくひっつき続けるという地味な嫌がらせ効果を発揮している。

 

 刀で斬りつけていく中で、ビルドはその手応えを分析していた。

 先程の忍法刀による火炎攻撃もそうだったが、敵が頑丈な所為でどの攻撃も決定打には成り得ていない。確実に効いてはいるのだが、わざわざ敵のタフネスさに合わせる義理は無い。

 

「だったら、新しいフルボトルのお披露目だ!」

≪パンダ!≫

 

 シャルロット護衛の前報酬として受け取ったパンダフルボトル。

 忍者フルボトルをドライバーから取り外すと、代わりにそれを装填させた。

 

≪Are you ready?≫

「ビルドアップ!」

 

 紫色のボディに代わり、新たに白色のボディが装着される。

 そのボディの最大の特徴は、腕部の巨大なアームと鋭いクロー。パンダの腕力を表したその個所は、ゴリラハーフボディとは異なる力強さが漂っている。

 新たなボトルによるそのフォームは【トライアルフォーム・パンダコミック】。

 

 ビルドは大きな右腕部を構え、軽快なフットワークと共に相手に肉薄するとそのクロー付きアームをショルダースマッシュに振るった。

 

『ッ!?』

 

 これまでの攻撃よりも強力な一撃に、スマッシュの身体が大きく仰け反る。

 純粋なパワーではゴリラに次ぎ、そのゴリラには無い斬撃属性がこのパンダのボディには備わっている。それぞれを人間の扱う武器に例えるならば、前者はハンマーで後者は斧といったところだろう。

 そして目の前にいる筋肉質なスマッシュの特性上、パンダの鈍重な斬撃は相性が良かった。忍法刀のパワー不足が解消され、スマッシュの肉体に激しい火花を散らしつつ大ダメージを与えることに成功する。

 

 大きなダメージを与えられて混乱を始めたのか、これまで突進攻撃を繰り返してきたスマッシュがやや暴れるような形で格闘戦に挑み始める。

 恵まれた身体から放たれる強力な拳打や蹴り、1撃1撃が致命傷になりかねない攻撃を、ビルドは……。

 

「く~ね~くね~!くねくね~!」

 

 形容し難い奇抜な動きで巧みに避けていた。

 コミックハーフボディの左腕部と右脚部【エンターテイナーアーム】と【エンターテイナーレッグ】は笑いを誘う奇抜な動きを得意とし、そこから変幻自在な攻撃を行うことが出来る一風変わった性能を持つ。

 

「ぬ~る~ぬる~!ぬるぬる~!」

 

 尤も、ビルドが奇抜な言動をする必要性は皆無なのだが。

 一見するとおふざけのようにも見えるが、これでスマッシュの攻撃を全て避けているので成果は出してるといえば出してる。

 

 思うように攻撃が当たらず、スマッシュの攻撃がだんだんと雑になっていく。

 そこから生じる隙を見逃さず、ビルドはパンダのアームクローを的確に叩き込んだ。先ずは突き。

 

「そぉい!」

『ッ!?』

 

 すかさず距離を詰め、手の甲で叩く要領で薙ぎ払い。

 体勢を崩した相手に目掛けて、アッパーのように下から上に振り上げる形で巨腕を振るい、重い斬撃を以てスマッシュを吹き飛ばした。言ってくけどビルド、スマッシュに厳しいの。

 

 

 相手との距離が空いたが、ここでビルドが追撃に出ずにフルボトル交換のターンに費やす。

 

「さぁて、今日のベストマッチは実戦初披露だからな……覚悟しなよ?」

 

 そう言ってビルドが取り出したのは、ロケットフルボトル。コミックフルボトルのベストマッチは忍者であるうえに既出している。それ以外のフルボトルを出していない以上、必然的にパンダとのベストマッチとなる。

 

≪ロケット!≫

≪ベストマッチ!≫

 

 倒れていたスマッシュが起き上がろうとしている間に、ビルドはベルトのレバーを回して周囲に小型ファクトリーを形成させていく。

 

≪Are you ready?≫

「ビルドアップ!」

 

 2つのハーフボディに挟まれたビルド。

 水色と白色が交差した姿【ビルド・ロケットパンダフォーム】が噴出された煙と共に姿を現す。

 

≪ぶっとびモノトーン!ロケットパンダ!イエーイ!≫

 

 変身を完了すると共に、ビルドは左腕部のロケットのブースターを推進して低空を飛びながらスマッシュの元まで急接近し、その腹部にパンダクローを突き刺す。

 

『ッ!?』

 

 スマッシュの身体をそのまま持ち上げ、ビルドはそのまま急上昇を行う。

 スマッシュが抵抗する前にビルドは相手の腹部から腕部を離して更に上へと蹴り上げる。

 

「もう一発!」

 

 ロケット側の全パーツを合体させて、突撃ロケット【コスモビルダー】を腕から切り離して射出。

 ロケットは上空のスマッシュに着弾すると爆発を起こし、更に敵を空へと打ち上げる。

 

 ロケットが腕からいなくなったことによって自由落下を始めるビルドだが、その仮面の内側に焦りは無い。寧ろ、勝利の道筋を見出した余裕に溢れていた。

 ロケットパーツが無くなってフリーになった腕でレバーを回す。

 

≪Ready go!≫

 

 レバーを回し終えた直後、ビルドの左腕にロケットが新しく出現し、再び空にいるスマッシュを目指す。

 

 スマッシュの周囲にはラビットタンクの必殺技とは異なるグラフが突如出現し、落下を始めるその身体にロックオンする。

 そのグラフはビルドによって滑走路のように使われ、軌道線上にいるスマッシュにパンダ側の腕による一撃を見舞う。

 

「まだまだぁ!」

 

 一撃入れたらそのままグラフを滑走して、一周した先のスマッシュにもう一撃。更に一周してもう一撃。

 落ちていくスマッシュに対して推進力の掛かった攻撃を重ねて浴びせていくビルド。

 

≪ボルテックフィニッシュ!イエーイ!≫

 

 そして、止めの一撃がスマッシュに炸裂する。

 地表から十数メートルを切ったところでビルドがスマッシュの胴体にロケットボディによるパンチを叩き込み、そのまま地上に向かって垂直に落下していく。

 ロケットによる加速が加わったことによって地上に叩き付けられた際の衝撃が大きくなり、巨大な砂塵が巻き上がる。

 

 砂塵が晴れた中で立っていたのはビルド1人。

 地に仰向けに倒れ伏したスマッシュにロケットの拳を突き立てたまま、彼は勝負に決着をつけてみせた。

 

「んじゃ、いつものを……」

 

 おなじみ、エンプティボトルを用いて撃破したスマッシュから成分を抜き取る。成分を抜き取り終わると、スマッシュの姿から人間の姿へと戻っていく。日本人離れした顔立ちで、小洒落たスーツを着た中年の男性である。

 兎に角、これで用事は完了である。

 

「ぐ、うぅ……ここは……」

 

 先程までスマッシュだった男性が意識を取り戻す。

 基本的にはビルドが去るまでの間は気を失っているケースが多かったので、ビルドもそちらの方に目を向ける。

 

「あ、目が覚めた」

「……っ!お前は、ビルド!?何故お前がここにいる!?」

「なんでって、あなたがスマッシュになってたから実験させてもらったんでしょうよ」

「私がスマッシュに……?馬鹿な、話が違うではないか!デュノアの娘の暗殺は、他の適当な連中を使うと……!」

 

 男性はそこまで言うとハッと口を紡ぐが、時既に遅し。

 

 彼の口から零れ出た重要な言葉を、ビルドは聞き逃さなかった。

 

「デュノアの娘、ねぇ……十中八九、それってシャルロットのことだな?」

「ちっ……その様子だと、あの娘の男装の件も明らかとなっているのだな」

「おう、生徒の間では俺だけだけどな。そして俺はあいつの護衛役」

「よりにもよって、一番厄介なやつを味方につけてきたか……くそっ」

 

 悪態を吐きながらも男性は戦闘の影響で気怠さが残っている身体をのそのそと起こし、地面に尻をつけた体勢に変える。

 

「しかしまぁ、実行犯が都合良く転がり込んでくるとはなぁ……これもてんっさいの日頃の行いの賜物か。で、なんで暗殺なんて物騒な真似しちゃってんの?」

「……お前には関係無いだろう」

「ふむ、まぁ確かに。ま、詳しい話は学園に連れ帰ってから先生達に任せるってことで」

 

 話も早々に切り上げ、ビルドは男を連行するべく座り込んでいる男性に近付く。男性は逃げようと試みるも、スマッシュ化と戦闘の影響で身体を自由に動かすことが叶わない。

 そしてビルドが、男を背負おうと身体に触れる直前――。

 

「っ!?」

 

 ガキィン、と1発の銃弾によって腕を弾かれた。

 ビルドは突然の出来事に驚きを隠せずにいる。男性が何かしたのかとも思ったが、彼自身も驚いている様子で素直に銃弾がやってきた方角に目を見やる。

 

 短銃の銃口をこちらに向けながら歩いてくる、コウモリの装飾がマスクに施された人型の怪人。以前に鈴音が転入前に遭遇し、彼女をスマッシュに変えた張本人でもある。

 

 その怪人の名は……。

 

 

 

 

 

「バットマン……!」

『ナイトローグだ』

 

 最後までシリアスで通して。

 

 

 

―――続く―――

 




ビルド「バットマンじゃない……?じゃあダークナイトリターンズ」
ナイトローグ『クソ映画やめろ』



■ロケットパンダフォーム■
【身長】189cm
【体重】114 kg
【パンチ力】18.8t(右腕)14.5t(左腕)
【キック力】16.9t(右脚)15.4t(左脚)
【ジャンプ力】43.6m
【走力】8.5秒
―パンダハーフボディ―
①フラッフィチェストアーマー:胸部の防寒装甲。表面は硬い毛皮のような防護布で覆われており、非戦闘時はふさふさで柔らかい。
②BLDネイチャーショルダー:右肩部。回復促進機能により、傷ついた植物等を癒すことが出来る。
③ジャイアントアーム:右腕部。パワーアシスト装置にとって腕力が高めらており、10本の竹を纏めて圧し折るパワーを発揮する。
④ジャイアントスクラッチャー:右拳のパワークロー。剛腕を活かしたクロー攻撃の破壊力は凄まじく、当たり所の悪かった敵は原型を留めることなく破壊される。
⑤ジャイアントレッグ:左脚部。パワーアシスト装置にとって脚力が高めらており、10本の竹を纏めて圧し折るパワーを発揮する。
⑥パンダフットシューズ:左足のバトルシューズ。カウンター気味のソバットを得意とし、竹林や、草木が生い茂る環境に於いて移動速度が上昇する。

―ロケットハーフボディ―
①アストロチェストアーマー:胸部の複合装甲。スペースデブリの衝突にも耐えれる防御力を誇り、内部には生命保持機能などのモジュールが格納されている。
②BLDロケットショルダー:左肩部のロケットパーツ。大推力の複合エンジンを搭載しており、宇宙空間を高速で移動出来る。また、左腕の全ロケットパーツを合体させて突撃ロケット【コスモビルダー】として運用可能。
③スペースライドアーマー:左腕部のロケットパーツ。宇宙空間で自在に動けるよう、姿勢制御用のロケットスラスタが組み込まれており、これにより急降下パンチが可能となる。
④BLDロケットグローブ:左拳のロケットパーツ付きグローブ。スペースデブリを除去する為にレーザー照射装置が取り付けられている。
⑤スペースライドレッグ:右脚部。宇宙空間で自在に動けるよう、姿勢制御用のロケットスラスタが組み込まれており、これにより急降下キックが可能となる。
⑥エアロシェルシューズ:右足のバトルシューズ。高剛性パーツによって耐衝撃性能が高められており、キックで敵の内部フレームを歪ませる。また、大気圏突入時に防護エアロシェルを展開し、装着者を高熱から守る役割を持つ。
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